コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

恋花火―ひと夏の恋―
日時: 2017/04/03 15:31
名前: Aika

*:+;-prologue-;+:*




パッと咲いて
切なく、 鳴り響く花火の音。



隣には。



愛しい君がいて…
この手を離したくない。
そう思っていた、のに―――。










その願いは叶わなかった。






***恋花火―ひと夏の恋―***



更新start→2016.6.11
更新end →


<<目次>>

登場人物紹介>>1

@1:止まった時間
第1話>>2 第2話>>3 第3話>>4 第4話>>5
第5話>>6 第6話>>7 第7話>>8 第8話>>9
第9話>>10第10話>>11 第11話>>12 第12話>>13
第13話>>16 第14話>>17 第15話>>18 第16話>>19
第17話>>20 第18話>>21

@2:絡み合う想い。
第19話>>22第20話>>23

Page:1 2 3



Re: 恋花火―ひと夏の恋― ( No.16 )
日時: 2016/11/29 01:04
名前: Aika

Episode13:過去の記憶。



*:.・。七夏side。・.:
*


『わりぃ。七夏とはもう付き合えねーわ』

――高校1年の夏ごろだった。
中学2年からずっと付き合ってた海里に…突然別れを告げられたのは。

わたしは、いきなりのことに何も言葉を発することができなくて――。
ただ呆然と立ち尽くすばかりだった。

青空の下。風の音だけが響いている。
お互いに無言を貫いているのが耐えられなくて。
わたしは、震える声で言葉を必死に紡いだ。

『あっ…わたし、何か嫌われるようなことしたかな…?』

なるべく明るい声のトーンで言うと。
海里が慌てて否定する。

『違う!七夏は何もしてねー!』
『じゃあっ…どうして?』

駄目だ。聞いちゃいけない。
それ以上、踏みいるべきじゃない。頭ではそう分かっていても口が勝手に動く。

『わたしのことっ…好きじゃなくなった?』
『ッ…それ、は―――』

口ごもる海里を見るのが辛くて。わたしは目をふせた。

『……ごめん、七夏』

そっか。
これが、 海里の今の気持ちなんだ。
受け入れなくちゃいけない。
そう思っていても。
気持ちの整理がつかなくって―――。



『……ッ…』



わたしの瞳からは大粒の涙が次から次へと…こぼれ落ちるばかりだった。



『ごめんっ…』
『おいっ!七夏!』




泣きじゃくる顔を海里に見せることが辛くて。
わたしは、その場から逃げるように走り去った。

認めたくなかった。
海里に…他に好きな人ができたことを。
たしかに最近のわたしたちは一緒にいても喧嘩ばかりで、上手くいっているとはいえない感じだった。
別れてしまおうかって考えたりもした。でも、いざ言おうとすると言えない自分がいた。

その理由が、ずっと分からなくてモヤモヤしてた。
だけど、 今になって痛いほど分かった。





海里と別れたくない――。
そう想ったのは。


――わたしが、 海里のことを手放したくないほど…本気で好きだからなんだ。



Re: 恋花火―ひと夏の恋― ( No.17 )
日時: 2016/12/04 00:03
名前: Aika

Episode14:refrain



夏の夜―――。


みんなの想いがそれぞれに交差して
すれ違っては傷ついて
誰かが涙する。



みんなが幸せになるのは、
難しいことなのでしょうか――?


*************************************


七夏side


「あれから…1年、か」

花火が鳴り響くなか。
ぽつりとそう呟いた。


今でも鮮明に覚えてる。

海里と付き合ってたときのこと――。


「楽しかったと思ってたのは…わたしだけだったのかな」

ずっと中学の頃から好きで…
やっとの想いで告白して片想いが実ったときは本当に嬉しかった。

なのに。


ある時…気づいた。
それは、高校に入ったばかりで
空と、友達になって輝とも、知り合って。
5人で行動することが、多くなったころ。



「海里のやつ…日直サボってどこ行ってるんだか」

先生の雑用を頼まれて。
一人で大量のプリントを文句を言いながら廊下を歩いていると。
遠くに海里の影が見えた。

「あっ…かい――」

そう言いかけて止まった。
そこにいたのは、今までに見たことがない
優しげな瞳をした海里がいて―――。


その瞳に映っていたのは、 わたしなんかじゃない
別の女の子だった。


しかも、 その女の子は。
私がよく、知ってる…空だった。



二人は何かを話していて。
空は楽しそうに笑っていて。
海里はその顔を今までに見たことのない表情で見つめていて。




「っ…」



その時。
確信した。




海里の瞳に映るのは、わたしなんかじゃない。
アイツが本当に好きなのは。






空だってこと―――。





■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □




ボーッとしながら。
フラッシュバックするのは、そんな記憶で。

「分かってたけど…やっぱり、辛いな」




何回も諦めようとした。
何回も他に好きな人を見つけようとした。

でも、できなかった。



やっぱり、貴方を目でおってしまう。



「誰か…教えてよ」


涙で滲む視界を必死に手でぬぐう。


それから、静かに口を開いた。





「どうすれば、 貴方を忘れられますか――?」

Re: 恋花火―ひと夏の恋― ( No.18 )
日時: 2016/12/13 23:27
名前: Aika

Episode15:夏の夜空、 咲き乱れる想い。



.・。*青葉side*。・.



「あのさ、輝。うちら5人で花火大会来たんだよね?」
「んー、まぁそうだな」

人混みから少し離れたベンチに二人で並んで腰掛けながら
わたしたちは、花火を遠目で見ていた。

「なのにさぁ…何で最終的にうちら2人だけになってるわけ?」

そう。
なぜか、輝と二人っきりで。

輝はというと、わたしがそんな事を口走っても
さして気にする様子もなく顔色一つ変わらずに言う。

「別によくね?はぐれたのは、あいつらだし」

その言葉にわたしは、なにも言えなくなる。
たしかに、そうだけど―――。



なにも言わずに輝のことを見ていると。
不意に目があって。
真面目な顔で輝は口を開いた。

「何?…二人っきりで意識してんの?」


突然、そんな風に聞いてきたから。
わたしは、とっさになんて返したらいいのか分からなくて。


「えっ…?」


なにも言葉が出てこなくて。
そんな風に呟いたあと、呆然としてしまった。

輝は、 なにも言わないわたしに対していつもの調子でいう。


「お前なぁ…黙んなよ。いつもみてぇにバカとか言えよ」
「だっ…だって、あんたが急に冗談とは思えない顔で変なこと言うからっ…」

びっくりするじゃん。
まぁ、輝がわたしのことを何とも思ってないことは知ってるけどさ。
急に真面目な顔されたら、わたしだって


ドキッとするよ―――。





「じゃあさ…もし、俺がお前と二人で意識してるって言ったらどうする?」





――パンッ…

え?



花火の音と同時に。
輝はそんなことを言った。



輝はわたしの方には顔を向けず、ただ花火だけを眺めている。




今日の輝…どうしたんだろう。
いつもと、なんだか違う気がする。
気のせい、かな?



まぁ、いつもの冗談だろうし軽く聞き流しとけばいいか。



「あのねぇっ…そう、何回もあんたの冗談に引っ掛からないし」
「――冗談じゃねぇし」

かぶせるように、 力強く重なったあなたの声に。
わたしは、なにも言えなくなる。
そして、 大輪の花火が咲き乱れるなか。
夏の夜空の下。





輝は真っ直ぐにわたしに視線を向けながら言葉を紡ぐ。






「―――俺、お前が好きだから」






吸い込まれそうな貴方の瞳に。
わたしは、視線を逸らすことができずに
ただ貴方のことだけを見つめてしまっていた――。

Re: 恋花火―ひと夏の恋― ( No.19 )
日時: 2016/12/23 22:36
名前: Aika

Episode16:すれ違う恋模様。





―――『俺、 お前が好きだから』


たしかに、そう聞こえた。
聞き間違いなんかじゃない。
頭のなかでは、そう分かっていても
なぜか、 素直に認められなくて…

「輝…あんまり冗談いうとマジで怒るよ」
「冗談じゃねーって言ってるだろ」

強い口調ではっきりとそう言う輝に。
わたしは何も言えなくなった。

力強い視線で見つめてくる輝が
いつもの輝とは違いすぎて。
わたしは、真っ直ぐに輝の顔を見ることができなかった。

夏の夜の冷たい風がわたしの髪を静かに揺らす。

しばらく、沈黙が続いて
不意に輝が口を開いた。

「まぁ…青葉が俺を何とも思ってないことは知ってる。それでも今日、言おうと思ってたんだ」
「……フラれるって分かってるのに告白したんだ」
「まぁな…他にいるんだろ?」

中学からの付きあいなだけに。
輝にはなんでもお見通しだ。

わたしは、輝の問いかけに何も言わずに
静かにうなずいた。

「やっぱりなー…まだ、好きなんだな」

優しい顔で
見つめてくる輝にわたしの胸は途端に苦しくなる。

「ごめん」

わたしは、ただ謝ることしかできなかった。

「謝るなよ。…余計にむなしくなるからさ」

輝のことは、嫌いじゃない。
むしろ、好きな方だ。
でも、この気持ちは恋愛とは少し違う気がする。
友達とか気を使わずに話せるそんな感情に近いやつだ。
あの人への想いとは違う―――。

「あいつ以外を好きになろうとか思わねぇの?」
「何度も…そう思ったよ。でも、無理だった」

他の人を…何回も好きになろうとしたし、好きでもないやつと付き合ったりもした。
それでも、 ダメだった。
他の男の人といても、あいつの顔が頭に浮かんで離れない。

「叶わないってことは知ってる。この気持ちを伝えられないのだって分かってる。
それでも、 あたしはアイツしか見えないからごめん」

それだけ言うと。
輝は小さくため息をついて。

「はっきりと言うんだな。おめぇらしいけど」
「ごめん」

また誤ると。
輝はあたしの髪をくしゃっとして
大声で言った。

「だーかーらー…謝んなよ。俺がただ言いたかっただけだからさ」
「でもっ…結果的に輝を傷つけたし」
「いいよ、別に。今まで通り友達でいてくれれば。…それに」

続けて輝はにこっと笑いながら言う。

「一度、フラれたぐらいで諦める気はねぇからさ」
「なっ…それ、すごく困るんですけど」
「そういうわけだから、これからアタックするんで。じゃあなー」
「ちょっと!」

そう言いのこして、輝は帰っていった。

「ったく、言いたいことだけ言って帰っていきやがって」

人の気持ちも、知らないで。
男なんてみんな勝手だ。
人の気持ちばっかり振り回して。
かきみだして。

「…帰るか」

スマホで時間を確認すると
もう21時を過ぎていた。
あんまり帰りが遅いとお母さんとかうるさいしなー。

そんなことを考えながら歩いていると。

「あれ?…青葉?」

背中から声がして。
振り返るとそこにいたのは。



「…えっ!爽…なんでここに」



好きだけど、 絶対に叶わない。
あたしの恋する君がいた。

Re: 恋花火―ひと夏の恋― ( No.20 )
日時: 2016/12/25 01:20
名前: Aika

Episode17:許されざる想い。





この想いを貴方に伝えられたら、どんなに楽だろう。
でも、 あたしには
それは許されない―――。

諦めなくちゃって、 頭では痛いぐらいに
わかっているのに…それができない。


諦めるどころか、 気持ちは降り積もるばかりで―――。

神様…
こんなあたしを許してください。


**************************************************


「爽…来てたんだ」

目の前にいるのは、見知った顔をした
あたしのよく知っている人物。

「まぁなー!青葉も友達と来たのか?」

屈託のない笑顔であたしのもとへと駆け寄る爽。
あたしは、爽から顔を背けてぶっきらぼうに答える。

「…まぁ、そんなとこ。今から家に帰ろうかなって思ってたけど」
「マジで!?俺もそろそろ帰ろうかなって思ってたから一緒に帰るか」

爽が突然、そう言い出すもんだから
あたしは、冷たい口調で言う。

「別に一緒に帰る必要なんかないでしょ」
「何?…今日の青葉、機嫌悪くね?彼氏と喧嘩とか?」

茶化すようにそう言う爽に苛立って言い返す。

「彼氏なんかいないし!」
「あり?てっきり輝と、付き合ってるのかと思ってたけど違うの?」
「付き合ってねーし!輝はただの友達!」

お祭りの喧騒のなか。
二人で言い合っていると。

「爽〜!次、どこまわる…って、その隣の人だれ?」

人混みをかきわけて、爽の名前を呼ぶ女の子があたしと爽の前に現れた。
小柄で女の子らしいピンクの花柄の浴衣のよく似合う可愛い女の子だった。
あたしとは、正反対って感じの子だ。

「ああ…こいつは早瀬青葉」

爽が親指をあたしの方に指して、その女の子に紹介してくれた。
あたしに、やきもちをやく資格なんかないのに。
と、いうか妬いちゃいけないんだ。

だって、 あたしと爽は―――。



「――俺の姉」






姉弟なんだから―――。






「え!?爽ってお姉さんいたんだ!あんまり似てないから彼女かと思ったわー」

その子の反応を見て、爽は顔色一つ変えずに言う。

「まぁ…本当の姉弟じゃねーからさ」
「え?」
「1年前に父さんが再婚して…それで姉弟になったから正確には本当の姉弟じゃないから似てねーよ、そりゃあ」


シーンと…あたしたちの間に沈黙が走る。
その気まずさに耐えきれなかったのか
女の子が捲し立てるように言う。


「あー…その、ごめん!変なこと聞いて!今日は帰る、ね…」
「ああ…じゃあな」

爽はその子のことをよそ見もせずに
帰っていく後ろ姿をずっと眺めていた。
彼女なのかすごく、気になるけど。
あたしが聞いたら爽は変に思うと分かっていたから
あえて、その事には触れなかった。


「青葉はさ…」


不意に静けさを消すように。
爽が口を開いた。


あたしは、何も答えずに。
ただ爽の方に視線を向けた。


「俺と姉弟になって…良かったって思ってる?」

予想外もしなかった質問に。
あたしの頭は真っ白になる。
なんで、そんなことを聞くのか
爽が何を考えているのか
あたしには、全く理解できなかった。

あたしは、とりあえず頷いて答える。


「良かったって…思ってるに決まってるじゃん!やっとお母さんが幸せになれたんだから」


本当は…1ミリもそんな事を思った日なんかなかった。
どうして、お母さんの再婚の相手が爽の父親なのって
何回も何回も…神様を恨んだ。

そして。

爽の前でこんな風に、自分を偽っていることが
どうしようもなく辛い。
自分の気持ちを一生、打ち明けられないことも
本当に辛くて…嫌になる。



爽は、 あたしから目を背けて。
低い声で静かに呟いた。



「そっ…か。…なら、いいんだけどさ」



夏の夜の冷たい風が二人の間に静かに揺れた。
まるで、あたしの心をかきみだすように―――。



「じゃあっ…母さんが心配するしそろそろかえるか!」
「…ん。そーだね」


先をずんずんと歩いていく
貴方の背中は大きくて…たくましくて。
弟とは思えない感情が溢れていく。

これ以上、 好きになっちゃだめだって
頭のなかでは分かっているのに
貴方のことばかり、目でおってしまう。



ごめんね、 爽。




こんなあたし、 姉失格だ―――。

Re: 恋花火―ひと夏の恋― ( No.21 )
日時: 2017/02/12 18:28
名前: Aika

Episode18:新学期。



それぞれの想いが交錯して
すれ違うこの恋の行方に…

誰かが幸せになる未来はあるのでしょうか。



********************************************


*空side*

花火大会から
とくに5人で会うこともなく、無難に夏休みは
終わっていった。

わたしはといえば、海里からの突然の告白と
蛍との数年ぶりの再会とか色々ありすぎて
頭のなかが混乱して…ぐちゃぐちゃだ。


「もう…2学期、か」

そんなことをボソッと呟き
制服に着替えてスクールバッグを手に取り家を出た。
行きたくない。その気持ちが大きく憂鬱だった。
大体、海里に告白されたことなんか七夏に絶対言えないし。
そもそも、七夏は海里に告白したのかな。
何一つ七夏からは何も聞いてなくって。


その事もあるから、余計に学校に行きたくなかった。


「そーらっ!」
「ひぃっ!!」

急に後ろから声をかけられたものだから
変な声を出してしまった。

「そんな挙動不審に声あげなくても…」

振り返るといつもと変わらない七夏の姿。
屈託のない笑顔でわたしに顔を向けている。

「な…なか…」

状況が読めなくて。唖然としてしまった。

「ほらっ!急いでいかないと新学期早々遅刻するぞー」
「あっ!待ってよー」

海里に…フラれたわけじゃないのかな。
でも、花火大会から結構時間もたってるわけだし
七夏なりに気持ちに踏ん切りがついたのかもしれない。それか、無理に強がっているだけなのか…。

どちらにしても、七夏の気持ちを考えると
わたしも胸が苦しくなる。



わたしのせいで。
七夏が傷ついた。




その事実は変わらないんだから―――。




□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □




教室に入ると。かなりギリギリに着いたらしく
ほぼクラスの全員が席に座っていた。

「遅刻ギリギリだったなー」

隣の席の海里がいつもと変わらない様子で話しかけてきた。
わたしも、なるべくいつも通りの感じで返す。

「まぁねー」

あれ?いつも通りって…どんな感じだったっけ?
わかんないよ、 そもそも海里と話すのってあの花火大会以来だし。
こんなに、 素っ気なくわたしっていつも返事してたっけ?
やばい、 考えれば考えるほど分かんなくなってくる。

「……もしかして、花火大会のときのことまだ気にしてる?」

海里に図星をつかれて
ギクッとなる。

海里はそんなわたしを見て楽しそうに笑う。

「あはははっ…ほんっと空って分かりやすっ!」
「そっ…そんなに笑うことないでしょ!わたしだってどうしていいのか分かんないんだから……」

誰かに…あんなに本気で告白されたのは…
蛍の時以来だし。
やばい。 絶対、今のわたし…顔、赤い。

海里の顔を見れなくて俯く。
そんなわたしを見て、海里も困ったように髪をかきむしっていた。

それから、不意に口を開く。



「わりぃ。俺は空のことを困らせたくて言った訳じゃねーんだ。ただ、空に…俺のことを一人の男として見てほしくて告白したんだ」

それは、 休み時間の喧騒のなかだったけど。
はっきりとわたしの耳には届いて―――。

止めてほしい。そんなこと、言われたら―――。




海里の優しさに…甘えてしまいそうになるから。




「だからっ…これまで通り普通に友達として、接してくれねぇかな。難しいかもしれないけど、空と話せなくなるのだけは嫌だから」

その言葉に。
わたしは、小さく頷いた。


「うん。 ありがとね、海里」



海里の気持ちには答えられないけど。
だけど、 きっと。
友達には戻れる。




今だけは、 そう信じていたい。

Re: 恋花火―ひと夏の恋― ( No.22 )
日時: 2017/03/05 01:44
名前: Aika

Episode19:動き出した時間。





愛しかった貴方と再会して
止まっていた時間が再び動き出す―――。




****************************************************************



海里と向き合っていると。
朝のホームルームの時間になり扉が勢いよく開いて担任の先生がやってきた。
途端にクラスのざわめきはなくなり、静まり返る。
先生は出席を確認した後に口を開く。

「じゃあ、今日からこのクラスに転校生が入るから今から紹介するな」

その発言にクラス中がざわつきはじめた。
わたしも勢いよく心臓が飛び跳ねてドキドキしていた。
夏休み、 夏祭りのあの日。
蛍と再会して…2学期から同じ学校に来るって言っていた。
もしかして――。

そんな思考が頭の中をグルグルしていた。

「それじゃあ、入っていいぞー」

扉に向かって先生が声を張って言うと。
しまっていた扉が開いて。
廊下から見覚えのある男子生徒の姿が目に映った。

やっぱり…そうだ。


「それじゃあ、簡単に自己紹介してくれ」

先生の言葉にうなずき、その生徒は一歩前に出て口を開いた。

「九条蛍です。…京都から来ました。よろしくお願いします」

静かな口調。
わたしは頬杖をつきながら、ぼんやりと蛍の姿を眺めていた。
その時、感じたこと。
――やっぱり3年前とは違う。
あの頃よりもクールで、大人っぽくなった感じがする。
なんていうのは、わたしの気のせい、だろうか。


女子のヒソヒソ声が耳に入った。


「なんか、結構かっこよくない??」
「ねー…背も高いし大人っぽいし」
「うち、狙っちゃおうかなー」

正直、 聞きたくなかった。
彼女じゃないし、わたしには関係ない。
そう言い聞かせてはいるけれど―――。

大きくため息が出た。

わたし、 性格悪すぎ。


****************************************************************



上の空のまま。一日は過ぎていて。
気づけば放課後になっていた。
今日、わたしは日直だったため誰もいない教室に一人残って日誌を書いていた。
日誌を書きながらも心はここにあらず状態で…ただ手だけを動かしてシャーペンを走らせていた。

大丈夫なのかな、わたし。
こんな状態で蛍と同じクラスで毎日顔を合わすことになって―――。


「蛍への気持ちに…どう区切りをつけたらいいんだろう…」

3年間。
ずっと貴方のことだけを想い続けてきたのに。
なのに。

「…ッ…ヒック…」

ここは学校だ。誰かに見られたらヤバい。
泣いちゃダメ。そうわかっていても、あふれる涙は止まらなくって――。



――ガラっ。



その途端。
勢いよく教室の扉が開いた。
わたしはビックリして立ち上がり振り返る。

そこに立っていたのは。




「ほた……る……?」

涙声のかすれ声で…わたしは愛しい人の名前を呼ぶ。
彼はそんなわたしを見て、 目を見開いていた。

「…空。 お前…泣いてたのか??」

涙をぬぐったものの。
そんなにすぐには泣き止むことができなくて。
蛍には見透かされていた。

「なっ…泣いてない!!ただ目にゴミが入っただけだから気にしないで」

言い訳をして…蛍から目をそらす。
正直、今は蛍の顔を見るのが辛い。
だから…早く出て行ってほしい。
わたしにかまわないでほしい。


そう心の底から思っているのとは裏腹に
蛍はわたしの元へと近づいてきた。
わたしは、 そんな彼の行動にビックリして視線を合わせた。

3年前よりも背が伸びていて…どことなく大人びたその雰囲気に
鼓動が高鳴って…苦しかった。

彼は黙ったまま。
右手でそっとわたしの目元に浮かんでいた涙をぬぐって…
優しく抱きしめた。

予想外の彼の行動にドキッとして。
何も言えなくなる。




――なんで…私たち、もうあのころには帰れないんじゃなかったの??
なのに…なんで、 こんなことするの??





聞きたいことはこの時…山ほどあったのに。
抱きしめられていることが心地よくって。
わたしは、 ただ彼のぬくもりを感じていた。



Re: 恋花火―ひと夏の恋― ( No.23 )
日時: 2017/04/02 21:40
名前: Aika

Episode20:思わせぶりの彼。





彼のぬくもりも、匂いも、声も―――。
全てが懐かしくて愛おしくて…

もう貴方のもとに戻れないとわかっていても
やっぱり、好きだと感じてしまう。


**************************************************************


誰もいない放課後の夕日が差し込む教室の中で。
聞こえるのは窓から入る風でカーテンが揺れる音だけ。

――何してるんだろう、 わたし。

本当は突き放さなくちゃいけない。
蛍にはあの夏の夜にはっきりとフラれたんだから。
甘えちゃいけない、 のに。

なのに、 どうしてですか?





「―――どう?少しは落ち着いた??」

どうして、 こんなに蛍はわたしに優しくするの??

好きじゃないんだったら、放っておいて帰ればいいじゃん。
無視すればいいじゃん。
じゃないと、 わたし。



いつまでたっても
貴方のこと、 好きなままじゃんか――。




「うん、 ありがと。蛍」




涙は引っ込んだけど。
胸に残ったのは、 わけのわからないモヤモヤとした感情。

今の蛍は何を考えてるのか全く分からない。

蛍はわたしから離れると
安心したような顔でわたしの頭をポンポンと叩きながら
口を開いた。

「そっか。なら、よかった」

昔と変わらない、 笑顔を向ける彼に。
わたしの鼓動はうるさいぐらいに高鳴る。
――顔が熱いのも、 赤いのも。
きっと、 窓から入る夕日のせいだ。

わたしは、 蛍から視線を背けて。
ぶっきらぼうに言う。

「じゃあっ…わたし、日誌も書き終わったしそろそろ帰るわ」

これ以上、 こんな場所で二人っきりでいたら
気が変になる。きっと、冷静なんかじゃいられなくなる。

スクールバッグを肩にかけて逃げるように教室の扉のほうへ向かった。

「あっ…おいっ…」

呼び止める蛍の声も聞こえないふりをした。
だって、 ここで立ち止まってしまったら。

きっと、 わたしはあなたを諦められない。
前に進めない。





だからっ、 ごめんね。蛍。







わたしは蛍を一人、取り残して。
放課後の教室から去っていった。



「何してるんだろうな、 俺は」


一人、 そう呟いた蛍の声を知らずに。
わたしは誰もいない廊下をひたすらと駆けていった―――。

Re: 恋花火―ひと夏の恋― ( No.24 )
日時: 2017/04/07 16:03
名前: Aika

Episode21:月明かりの夜に。




みんなが幸せになれる方法があればいいのに。
現実は意地悪で…思い通りにはいかない。



********************************************


■青葉side■


―――ガンっ。


部活中。
もう、何回シュートを外したんだろう。

「青葉、最近調子悪いじゃん。具合でも悪い?」

先輩にそう聞かれた。
あたしは、すぐさま返す。

「いえ…大丈夫です」
「そう?…ならいいけど」

やばいな、このままじゃ。
レギュラーおろされるかも。

それだけは、 阻止しなきゃ。

それからあたしは、無心で部活に取り組んだ。

「……………」

その様子を輝が見ていたとも知らずに。



■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


「じゃあ、今日はここまで!」
「「「ありがとうございましたー!!」」」

部活終わり。あたしは制服に着替えて更衣室を出ると。

「青葉」

そこには。
久々に見る、 輝の顔があった。
あたしは、輝の顔を直視できずに目を背けてしまった。
そんなあたしに構わず輝は言葉を続ける。

「一緒に…帰らねーか?少しだけ話したいこともあるから、さ」

輝も気まずいのか、途切れ途切れにそう言っていた。あたしも、輝とこのままの状態は何となく嫌だったから頷いて一緒に帰ることにした。



いつもの帰り道を輝と二人。
ならんで歩く。
すっかりと暗くなっていて…辺りは月明かりと車のライトだけだった。

「お前さ…最近、部活に集中できてねーだろ」

真剣な顔でそう聞く輝。
図星をつかれて、あたしは何も言えなくなってしまった。
そんなあたしを見て、肯定していると受け取ったのか輝は。

「そっか。…悪いな」

そう謝った。
突然、謝られて。あたしはきょとんとしてしまった。

「なんで、あんたが謝るの?」

思わずそう口走っていた。
すると、輝は髪をかきむしりながら答える。

「お前が集中できてないのって…俺が告白したせいなんじゃねーの?」

輝が歩いていた足を止めて。あたしと向かい合う形になる。
たしかに、それもあるけど。


脳裏にうかんだのは、 爽の顔で―――。



「それとも…アイツのこと、 考えてた?」



ドキッと波打つ鼓動。
輝は薄く笑った。



「ほんっとに…お前は分かりやすいよな」
「うっさい、バカ!」


冷たい夜風が吹いて。
あたしと輝の髪を揺らした。


「そんなに、 アイツがいいんだな」
「あっ…あたしだって!あんなやつのことなんかさっさと忘れたいよ!なのにっ…」

なのに。
それが出来ない自分にイライラしてる。


「たぶん、その苛立ちが…今の部活に集中できてない一番の理由だから。だから、あんたは何も悪くないから。気にしないで―――」
「――なんで、青葉は…そんなにアイツが好きなの?」
「え?」

不意にそう聞いた輝の表情はひどく悲しそうで。
切ない感情がひしひしと伝わってくるような―――。

そんな顔をしていた。

「ひか」

名前を呼び掛けた瞬間。
腕を引っ張られて。

―――唇をふさがれた。


重なったのは、 輝の唇で。



突然の事にあたしの頭は真っ白になった。






何が起こっているのか…わからなくなった。






離された瞬間。







輝はあたしの横を素通りして。






「―――ごめん」






そう一言、 小さな声で呟いて。







あたしの前から去っていった。



















Re: 恋花火―ひと夏の恋― ( No.25 )
日時: 2017/04/21 01:56
名前: Aika

Episode22:2回目のキス。




報われない想いほど
ひどく、 辛い感情なんてない―――。
それなら、諦めてしまえばいい。
誰だってきっと、そう思うだろう。

だけど、現実はそう簡単になんか回ってくれなくて。
諦めようとすればするほど、 貴方のことばかり考えて…もっと好きになってしまう。


*******************************************************


■青葉side■


去っていく輝の背中を…あたしは追いかけることもできず、ただ呆然と立ち尽くしていた。
思考も完全に停止している状態だった。

――あたし、 今…輝にキスされた?

事の状況を把握し始めたのはそれから数分後ぐらいで。徐々に冷静になるにつれて顔が熱くなっていくのがわかった。

重なった唇の感覚も力強く引っ張られた腕の感覚も…まだ、かすかに残っていて。
現実のことだと言わんばかりに主張しているようにも感じる。

「ほんっと…やめてほしい」

爽のことで頭がいっぱいなときに。
こんなことするなんて。

「輝と…明日からどんな顔して会えばいいの?」



■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



それからどこをどう歩いて帰って来たのか、思い出せない。そんな上の空状態のまま帰宅した。

「おー!青葉おかえり。遅かったな今日」
「ただいま。まぁ、部活が長引いて…あれ?お母さんとお父さんは?」

家のなかには爽の1人しかいなくて。
気になって話の途中で聞くと。

「何言ってるんだよ、青葉。今日から二人で旅行って言ってただろ。一泊二日で」

その言葉に衝撃が走った。

「はぁ!?マジで!??」
「うっせーな、大声出すなよ。前から言ってたぞー!知らなかったのか?」
「いや、今日初めて聞いたけど」
「あー、まぁ…青葉はいつも部活で家にいねーことの方が多かったから知らなくてもおかしくねぇか」

1人でそう言って納得している爽。
いや…大声だして驚いたのは、旅行にいくことじゃなくて。年頃の血の繋がりのない姉弟を置いていく親ってどうなのってところで反応したんだけど。
でも、まぁ。爽のやつは普段と何も変わらないし。
あたしばっかりが意識しても馬鹿みたいだし何も考えずに過ごそう。うん。

今夜だけ耐えれば明日には帰ってくるわけだしね。

「飯、食うか?」
「あー!食べる」

爽にむかって答えると、あたしの分のご飯をレンジで温め直して出してくれた。なんか…こういうちょっとした優しさにドキドキしちゃうんだよな。

「ありがと」
「おー。じゃあ、俺は風呂入ってこようかな」

そう言い残して。爽はリビングから出ていきお風呂場へと向かっていった。
爽がいなくなって、ほっとするあたし。

爽は、きっと…あたしと二人っきりでも何も意識なんかしてないんだろうな。
そう考えると少しだけ胸が痛む。わかってたことなのに。

「あたしばっかり意識して…ほんとバカみたいだわ」

それから何も考えないようにして、黙々と夕飯を食べ進めた。食べ終えてから洗い物をした。そんな一通りの家事を終えてから、ソファで横になっていると―――。

瞼が徐々に重くなって。それから閉じられる。

夢の中に出てきたのは―――。



『青葉―――』



誰?
あたしの名前を呼ぶのは、 誰の声?





あたしの方へとその声の主は手を差し出す。
その手を取るようにあたしも手を伸ばしたけど。
掴めずにその姿は消えてしまった。


―――嫌だ、 待って。
あたしを置いてけぼりにしないで。



「っ…爽―――!」

そこで目を開けると。

「うわっ…びっくりしたー」

すぐ近くに爽の顔があって。とっさに握ってしまったのかあたしの手のなかには爽の服の裾の部分が入っている。

「そ…う…」

目にはなぜか涙がたまっていて。
今にも泣き出しそうな顔をしている。
なんで、 悲しくもないのに涙なんか出てるんだろう。

「ごめっ…すぐ離す、からっ…わっ!」
「えっ…」
ソファから起き上がって裾の部分を離すつもりが謝って強くつかんでしまい。立ち上がりかけていたバランスが崩れて、爽を間違えて引き寄せてしまった。そのせいで爽があたしの上に馬乗りになる形になってしまった。

「えっと…」

この状況は…ヤバイのではないのかな?

近くにある爽の顔。
お風呂上がりで濡れた髪。かすかに香るシャンプーの匂い。唇までは、ほんのわずかで触れる距離。



「青葉―――」



不意に名前を呼ばれると。



彼は小さく呟いた。



「ごめん」







それから、 唇にそっと触れたのは。










愛しい貴方の唇―――。






Page:1 2 3



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


E-Mail


URL


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大4000文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。