コメディ・ライト小説(新)

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狂女
日時: 2016/03/20 20:21
名前: 魅雨

彼女は、狂っていた。
美しい心や容姿は人々から愛されず、頼れる親は他界し、彼女は徐々に感情を無くしていった。
最終的に残ったのは、楽しい、という得もしない感情のみ。
どれだけ楽しいと思っていても、彼女はそれを声や顔に出さず、心の無い人間として、日々を過ごしていた。

そんな狂った彼女が、日記に書き記した、ちょっとした物語を、綴ってみようと思う。

●月●日
「桜の花弁を拾った。」
ある春の日の日記だ。
当時高校2年生だった彼女は既に狂っており、普通は苦痛であろう学校へ行くのを楽しみにしていた。
傷が付いた手で桜の花弁を拾い、ちょっとだけ口角を上げると、再び学校へ向かって歩きだす。
膝の傷も額の傷もまるで初めから存在しなかったかの様な振る舞いを見せた彼女は、大きな瞳を輝かせ、狂った笑顔を見せた。

彼女は、虐められていた。
ペンで落書きされた靴箱を開くと、鈍く光った画鋲と、これもまたペンで落書きされた靴が、まるで恥じているかのように顔を出した。
彼女は溢れていた画鋲を靴の中に押し込むと、切れた指を控えめに舐め、もう片方の手で画鋲を玄関にぶち撒けた。
―嗚呼、楽しいなぁ。
彼女は狂った目で金色に輝く画鋲に目を向け、見下すように笑うと、遅刻寸前で廊下への扉を開いた。

●月●日
今日は画鋲が無かった。
あの鈍い輝き方も、全てを投げてしまう感覚も、全部、たのしかったのにな。
油性マジックで落書きされた机を愛おしむかのように指でなぞり、彼女は噂話に耳を傾けた。
どうやら、転入生が来るらしい。
―それも、容姿が素晴らしいのだとか。
女子が獣の唸り声かの如く発狂している為、男子だと思われる。

案の定転入生は男子で、世の言う「イケメン」というヤツだった。
彼は、誰も座りたがらない彼女の隣に座ると、「よろしく」と微笑み、彼女の瞳を見た。

●月●日
彼も、彼女とは違う意味で狂っていた。
彼女のことが好きだと言い出し、彼女が虐められていたら物凄い形相で説教した。
彼女は何とも思っていない、と思っていたが、心の深い奥では、好意を抱いていたのだとか。

●月●日
彼女は反抗した。
彼が助けてくれると信じて。
勿論虐めっ子は怒り狂った。
そこで彼女達が取り出したのは、

銀色に光る、カッターだった。

彼は焦った。
だって、彼女が傷付けられてしまうかもしれないのだもの!
彼は虐めっ子がカッターを振り上げると同時に、彼女の前に飛び出した。
そのカッターは

彼の目に、突き刺さった。

彼女の前で蹲った彼。
そして軽快な音を立てたカッター。
彼女は徐にカッターを拾った。

―憎い、
―憎い?

―っ、憎い!

彼に好意を抱き、それと同時に虐めっ子に憎い、という悪意を抱いた。

その2つの感情の赴くままに、彼女はカッターを振り回した。

●月●日
皆で仲良く退学処分。
彼も彼女の退学に合わせて中退した。
彼は彼女と幸せに過ごしー…

あははは、
あはははははは!
何が「彼」だ、馬鹿馬鹿しい!

これは、「彼」と「彼女」のお話。
これは、「僕」と「嫁」 のお話。

愛する娘と一緒に、嫁の日記を見た。
そして、そこにあった物語を、僕は綴った。
あ、お母さん帰ってきた、なんて言っている。
僕は日記を閉じ、娘と玄関へ向かった。


―僕が、君を、幸せにするんだ。

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