コメディ・ライト小説(新)

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帰宅部オーバーワーク!II
日時: 2016/11/05 22:15
名前: ガッキー

ごきげんよう、ガッキーです。
旧コメディ・ライト小説で『帰宅部オーバーワーク!』を書いていました。これはその続編にあたりますが、別に前の作品を読んでいなくても大丈夫なように書くつもりです。ですが、混乱する方がほとんどなのでキャラの自己紹介だけでも↓




前野(まえの)。


『帰宅部』の二年生。女子。三つ編み眼鏡。ツッコミに回る事が多い。古泉によくからかわれる。生徒会副会長と仲が良い。『帰宅部』のツッコミ担当。




青山(あおやま)。


『帰宅部』の二年生。頭脳明晰、曇り眼鏡。落ち着いた紳士のような態度から、学校内にファンは多い。眼鏡をクイッとやる仕草はとても似合う。『帰宅部』のブレイン。




ベネディクト(べねでぃくと)。


『帰宅部』の三年生。足が滅茶苦茶速い。パッと見外国人だが、日本育ちなので英語は話せない。フランスの血を持っている。フランス語も話せない。『帰宅部』のスプリンター。




古泉(こいずみ)。


『帰宅部』の三年生。着崩した制服に、茶髪。鋭い目付きに口調の悪いこと悪いこと。周囲からは不良のレッテルを貼られているが、中身は優しい、かも知れない。『帰宅部』の部長。




生徒会長(せいとかいちょう)。


古泉との縁もあり、『帰宅部』の設立を許可したが、今となっては公開している。古泉に恋心を抱いている。周囲にはバレていないと思っているが、古泉を除いた周囲からはバレバレ。生暖かい目で見られている。




副会長(ふくかいちょう)。


とある一件で、ハッピー◯ーンを通じて前野と仲良くなった。以来、たまに前野が生徒会室に遊びにきて◯ッピーターンを一緒に食べる仲。生徒会長に尊敬の情を抱いている。古泉を目の敵にしている。




このくらいですかね?不足している部分が見付かったら追加していきますね。




では、また。

Page:1 2



Re: 帰宅部オーバーワーク!II ( No.2 )
日時: 2016/11/06 22:03
名前: ガッキー

季節外れのハロウィーンネタを投下します。あっ、因(ちな)みに、時間とか季節の概念がぐちゃぐちゃになってます。サザ◯さんみたいな感じで、歳はとらないです。でも、彼等が大人になった話とかもいうか出来たらなぁ。

Re: 帰宅部オーバーワーク!II ( No.3 )
日時: 2016/11/06 22:05
名前: ガッキー

「ハロウィーン、ねぇ・・・」
月曜日の朝、テレビ画面の右上にオレンジ色のテロップで『ハロウィーン特集』と書かれているのを見て、古泉はそう呟いた。去年は、自分が放ったクラッカーの火薬に火災報知器が反応し、スプリンクラーが部室をびちょびちょにした記憶しか無い。
(ん?アレは去年だったか?いやでも、去年はまだ『帰宅部』は出来てねェし・・・、あー・・・・・・夢かも知んねェな。イベントが好き過ぎて夢に見た、とか)
頭の中に確かに存在する、ハロウィーンの記憶。しかし、時系列的に考えると辻褄の合わないソレを、古泉は夢と割り切る事にした。
兎に角、今日は楽しい楽しいハロウィーンな訳だ。存分に(後輩をイジって)楽しもうじゃないか。古泉は鞄にお菓子を詰め込み、上機嫌で家を出発したのだった。


〜生徒会長〜


退屈な授業も終わり、放課後。普段の古泉なら真っ先に部室に向かうのだが、今日は生徒会室に行ってみる事にした。いつもなら忌避する生徒会室に向かう理由はただ一つ。ハロウィーンだから。
「チィーッス」
生徒会室のドアを乱暴に開け放つ。室内には、早くも執務に取り掛かろうとしていた生徒会長が居た。うむ、感心感心。
「な、何よいきなり」
「なァに、ちょっと(生徒会長で)遊びに来ただけだ」
「不穏な下心が見えた気がしたんだけど」
「気のせいだ」
まぁ座れ座れ。と、どちらが来客か分からない態度で古泉が生徒会長に着席を促す。生徒会長は奥にある、所謂(いわゆる)お誕生日席に座った。そこが生徒会長の席だからだ。古泉も空いていた副会長の席に座り、偉そうに足を組んだ。位置関係としては、生徒会長の右前に古泉が座っている感じ。
「ほら、今日はアレだろ?」
「あぁ、ハロウィーンね。浮かれて問題起こすんじゃないわよ?」
「大丈夫だ。浮かれてなくても問題は起こすからな」
「アンタの行いは世間的に言うと、不良だからね」
「オレの見た目がもう不良扱いだからな。今更だーーって、そうじゃねぇよ。ほら、オレに言う事あるだろ」
「?」
首を傾げる生徒会長。
(えっ、コイツ分かってねェのか?)
「アレだよ、合言葉みてェなヤツ」
「我々【古泉を抹殺する会】は、古泉の首を神に捧げる事を誓います」
「何だそれ!いつの間に変な組織創りやがったのか!?」
「冗談よ。トリックオアトリート、だったかしら?」
「そうそう、正解だ。ほら」
合言葉を聞いた古泉は、満足して鞄からそれを取り出した。袋の中に入った白くて薄いソレを見ても、何なのか分からなかった生徒会長は古泉に問うた。
「・・・・・・何よコレ」
「ナンだ」
「ナン!?お菓子を寄越しなさいよ!」
「メキシコの方では、ナンは立派なお菓子なんだぞ?生徒会長のクセにそんな事も知らねェのか」
「えっ、そうなの?」
「嘘だ」
「キィィィィ!」
完全に古泉に騙された生徒会長は、怒って手元にあったペンケースを投げた。それを古泉は首を傾けて避けーー

「失礼します。会長から預かったこの書類なのdーーグハッ!」

丁度生徒会室に入ってきた副会長の顔面に命中した。背中から地面に崩れる副会長と、その周りをヒラヒラと舞う書類。
「おいおい、ここの生徒会長は酷ェ奴だな」
「アンタのせいだからね!」
古泉が後頭部を掻きながら副会長に近寄り、手を貸した。「すまない」と副会長が古泉の手を握り、立ち上がる。
「って、お前古泉じゃないか!会長に何をした!」
「何もしてねェよ。強いて言うならお菓子をあげたくらいだ」「お菓子じゃないわよね!?」
「は?」
生徒会長のツッコミよりも、普段は嵐のように暴れ回る古泉の様子がいつもと違う事に気付いた副会長が面食らう。
「今日は何の日だ?」
「平日」
「ぶっ殺すぞ」
「悪かった。謝るから胸倉から手を離せ」
ハロウィーンを純粋に楽しんでいる古泉が副会長の胸倉に手を伸ばすまで、瞬間の出来事であった。
「十月三十一日と言えば・・・ハロウィーンだろ?教室でも友達から言われた」
「分かってンじゃねェか。だったらほら、言う事あんだろ」
「トリックオアトリート」
「よく出来ました」
「副会長、気を付けなさい。コイツは普通の物は渡してこないわよ」
鞄の中を弄(まさぐ)る古泉の後ろから、そんな声が聞こえる。生徒会長の言う事は絶対信じる副会長は、身構えた。
(コイツ、何を渡してくる気だ・・・?カラーボールか、蛇の玩具か)
まともかまともじゃないか以前に、そもそもお菓子を渡されるとは思っていない副会長。事態に備え、頭の中で勝手な予想をする。
「ほら、お前の大好きな」
古泉が袋に入ったモノを副会長に渡す。恐る恐るそれを受け取り、副会長が古泉に問うた。
「何が入っている」
その言葉の裏には、『変な物だったらタダじゃおかない』という怒りが込められていた。
「ハッ◯ーターンだ」
「何だと!?」
お菓子の名前を聞いた瞬間破れんばかりの勢いで袋に手を突っ込む副会長。袋から取り出さずに、手で中身の形を把握した副会長は
「やった・・・!◯ッピーターンだ
・・・!!」
と涙した。実は副会長、ハッピーター◯が大好きなのだ。
「手探りで中身把握出来る程ハッピータ◯ンの形を知り尽くしてンのも異常だし、ハッピ◯ターンぐらいで涙流すのも異常だしよ・・・。大丈夫かコイツ」
「大丈夫よ、多分」
「そうか。ーーじゃあ、またな」
「古泉、ありがとう。心から感謝する」
「おうよ」
生徒会室から颯爽と退出する古泉に、副会長は本心を口にした。
部屋に残った生徒会長と副会長。数秒してから思い出したように。

「アイツ、何で副会長には普通のお菓子あげてんのよッ!!」


〜ベネディクト〜


生徒会室から『帰宅部』の部室へ向かう途中、同じく部室へ向かっているベネディクトに会ったので声を掛ける。
「おーい、ベネディクト」
「あっ、古泉クン!ハッピーハロウィーン!」
「話が早くて助かる。ハッピーハロウィーン」
イェーイ、と廊下で二人でハイタッチを交わす。ベネディクトが高身長なのと、加えて片方は校内では(悪い意味で)有名な古泉が居るのもあって、とても目立っているのだが二人は気にしない。
「古泉クン、トリックオアトリート」
「おう、ほらよ」
ベネディクトの言葉を聞いた古泉は、鞄から袋を出す。それをベネディクトに渡した。
「わーい、ありがとう!」
その場で開封するベネディクト。袋の中身は、板チョコレートだった。
「あっ、チョコだね!」
チョコレートの包装を破き、食べ始めた。古泉が呆れと照れ臭さの混じった瞳で見ていると、ベネディクトが
「・・・半分食べる?」
とチョコレートを半分割って差し出してきた。
「そういう意味じゃなかったンだが・・・ありがとよ」
お菓子は分け合うともっと美味しいとどこかで聞いた事があるが、それを易々と実行出来るベネディクトは、やはり優しいのだろう。
(オレだったら絶対あげないしな)
チョコレートをもぐもぐと食べる。窓の外に目を向けると、空には飛行機雲。
「平和だねぇ」
「平和だなァ」
十分程まったりしてから、古泉が切り出す。
「そう言えば、部室の鍵って誰が持ってンだ?」
「多分青山クンじゃないかな?」
「そうか・・・。じゃあな、オレは用事を思い出したから行くぜ」
「うん。ボクも部室で寝る事にするよ。お菓子ありがとうね」
(部室で渡そうとすると、前野と考地に一緒に渡す事になッちまう。それは前野のリアクションとかその他諸々の理由で面白くねェから、考地に先に渡した方が良いな)
トリックオアトリートーーイタズラされるかお菓子を渡すかを選ぶ立場なのに、前野へのイタズラを考えてニヤニヤと笑う古泉。
二人に渡すお菓子は、もう決まっていた。

Re: 帰宅部オーバーワーク!II ( No.4 )
日時: 2016/11/14 21:00
名前: ガッキー

「おぉーい、考地ー!」
廊下を歩いていた青山に声を掛ける。青山は声に振り向き、「古泉先輩。こんにちは」と礼儀正しく挨拶をしてきた。古泉は「おう」と返す。
「今日は何の日だか知ってるか?」
ニヤついた古泉からの突然の問いを何かの試練とでも勘違いしたのか、青山は眼鏡のブリッジをクイッとしてから考え始めた。
「え、いやそんなマジになって考えなくて良いンだが・・・・・・すぐに出てくるだろ?」
その呟きを煽りだと勘違いして燃える青山。自らの知識を総動員して青山は考え、正解に辿り着いた。
「分かりました」
「おう、何の日だ?」
「日本茶の日です」
「は?」
「1192(建久2)年のこの日ーーつまりは十月三十一日は、臨済宗の開祖・栄西が宋から帰国し、茶の種子と製法を持ち帰った日です。これによって日本茶が誕生し、それを記念して十月三十一日は日本茶の日となりました。因(ちな)みに抹茶の日は二月六日。緑茶の日 は五月二日。麦茶の日は六月一日。無糖茶飲料の日は六月十日。紅茶の日と玄米茶の日は十一月一日ーーつまりは明日ですね。今は日本茶を持ち合わせていないので、明日は自宅にある茶葉を持って来て皆さんでいただきましょう」
「・・・・・・ハロウィーンって知ってるか?」
「ハロウィーン?えぇ、確かハロウィーンも十月三十一日でした。それがどうかしましたか?」
「何でハロウィーンよりも先に日本茶の日が出てくンだよお前は!初めて知ったわ!あとお茶系の記念日をお前は何故丸暗記している!?」
「そこまで褒められると照れます」
恥ずかしそうに頬を染め、視線を逸らす青山。
「ぐぬぬぬぬ・・・!」
しかし、青山が変な所で天然なのは古泉が一番良く知っている。青山の頬を引っ張ってお説教しそうになるのを堪えて、優しく言った。
「考地、オレはハロウィーンが大好きなんだ」
ここで、前野だったら「へぇ、そうなんですか」という応答になるのだが、青山は更に先を行く。ハロウィーンが好き→トリックオアトリート→お菓子が欲しい。と頭の中で変換し、応えるのだ。
「申し訳ありません。学校に必要の無いモノは鞄に入ってませんので知りませんでした。僕は古泉先輩の期待に沿う事が・・・・・・」
「凹むな凹むな!逆だ逆!」
「という事は」
青山は顎に手を当てて考える(様になっている)。
「トリックオアトリート、ですか?」
「おう、正解だ。ほら」
青山からその言葉を引き出せた古泉は、満足したように鞄の中からお菓子を取り出した。
「ありがとうございます。部室に行ったらいただきます」
微笑んで、礼を言う青山。古泉から貰ったお菓子は鞄にしまった。『廊下で飲み食いするな』という校則を守っているからだ。
「あぁ」
「・・・参りました。僕はお菓子を持っていないので、このままだと古泉先輩に悪戯(いたずら)されてしまいますね」
「やれやれと額を抑えつつ、何でお前はちょっと嬉しそうなんだよ」
「古泉先輩が僕にどんな悪戯をして下さるのか、少し興味がありまして」
「頭の良い奴の考える事は分からんな・・・・・・。まぁ、お菓子は要らねェ。オレは皆にお菓子配ってるだけだからな」
古泉がそう言った所で、青山は古泉の両手を掴んだ。
「この青山、感銘を受けました!」
瞳に涙を滲ませながら、そこそこの声量でそう言い放った青山。一応、ここは廊下なのだが。青山の迫力に古泉がたじろいだ。
「お、おう?」
「まさか古泉先輩がそんなボランティアをしていらしたとは!皆さん聞いて下さい、古泉先輩は素晴らしい人dもごもごもごもご」
「ば、馬鹿野郎!」
突然選挙活動のように声を張り上げて周りに語り出した青山を、古泉がその口を押さえて慌てて止めた。
「そんなんじゃねェからな!あと、前野の前でお菓子食うンじゃねェぞ!」
青山の声に反応してこちらに注目しだした周囲の目から逃れるように、青山から逃げる古泉。
そんな古泉の否定も、青山は謙遜と受け取ったのだった。




「さてさて、最後は前野か」
場所は部室。少し肌寒い程度の季節に、自分が座っているソファの前にストーブを出してその上で小さい鍋をかき混ぜながら温める古泉。暑いのが苦手な古泉は、ストーブで室内が暖まるのを恐れて窓を開けていた。何とも勿体無い使い方である。
因(ちな)みに、部室内にはベネディクトと古泉しか居らず、青山と前野はまだ来ていない。そろそろ来る頃か。
「こんにちはーーあ、古泉先輩。今日は鍋の日ですか?」
ドアを開け、挨拶をして前野が入ってきた。角度の関係で鍋の中身が見えない前野は、そう問い掛けた。
「ンな訳ねェだろボケ」
「返答が酷過ぎる!」
「まぁまぁ、今日はアレだろ?」
「・・・ハロウィーンですか?」
空いていた椅子に座りながら、前野は答えた。
「そうだよ、それだ」
「トリックオアトリート」
「馬ァ鹿、年功序列って言葉を知らねェのか」
「ハロウィーンで年功序列を主張されるとか初めての経験なんですけど」
「古泉様の特別ルールだ。ッてな訳でオレから言わせてもらうぜ」
「まぁ良いですけど」
普通はお菓子をあげるのは年上が先じゃないの?とか色んな思惑を身体の中で渦巻かせつつも、古泉の言葉を肯定する前野。この部長が横暴なのは、今に始まった事ではない。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・?」
「・・・・・・!」
「ーーいやいやいやいや!なんで何か閃いてるんですか!?早くトリックオアトリートって言って下さいよ!!」
「言う訳ねェだろ」
「もうこんな先輩嫌だ!」
「ほら、言えよ」
「えぇ〜・・・トリックオアトリート」
「よく出来ました」
渋々といった感じの声色の前野の言葉を聞いて、鍋をかき混ぜていた手を止めた。
「え、お菓子下さいよ」
「お菓子だろうが、ほらよ」
鍋つかみで鍋を掴み、前野の前まで持ってくる古泉。前野の鼻腔を甘い匂いがくすぐった。
(うわぁ、良い匂い。古泉先輩は何を温めていたんだろう・・・?)
「水飴!?」
鍋の中でゆっくりと波打つ半透明のそれは、間違い無くーー疑いようの無く水飴だった。
「そうだ、味わって食えよ」
「水飴をお菓子としてカウントしないで下さい!」
「贅沢な奴だな。このオレが丹精込めてかき混ぜたって言うのによ」
「古泉先輩って中々にクレイジーですよね」
「へへっ、よせやい照れるだろうが」
「何故に嬉しそう・・・」
げんなりする前野。
(ベネディクト先輩が美味しそうに食べてるアレは、まさか古泉先輩があげたチョコレートじゃないでしょうね。そうだったらブチ切れ必至なんですけど)
「まぁ、そんな冗談もこれくらいにして」
「へ?」
水飴の入った鍋をストーブの上に戻し、鞄を漁る古泉。
「はい、ハッピーハロウィーン」
ぽけーっとする前野の手のひらに本当のお菓子を置いた。
「ーーえ、マジですか?」
「よく考えてみろよ。こんな優しい先輩が、トリックオアトリートと言ってきた後輩に水飴をあげると思うか?」
「優しい先輩は『ボケ』とか『馬鹿
』とか言わないと思うんですけど」
「シャラップ」
ズビシ、と前野の頭にチョップ。
「痛っ」
「兎に角、折角のハロウィーンだからな。味わって食えよ」
「・・・・・・ありがとうございます」
怒るか感謝を述べるか数秒悩んだ末、そう言った前野。その表情はとても複雑だった。
古泉から渡されたお菓子はペロペロキャンディ。水飴と飴を掛けたのだろうか。小さい頃に食べて、その大きさからあまり食べる機会の無かったソレ。包装を解いて舐めてみた。食べ難い。しかし、美味しかった。








「そういえば、鍋の中の水飴ってどうするんですか?」
「あー、オレは水飴好きじゃねェんだよなァ」
「私も食べるのは嫌ですよ?」
「おーいベネディクトさんや」
「zzZ・・・・・・」
「寝てますね」
「しゃあねェ。考地にあげるとするか」
「古泉先輩が食べろと言ったら完食し兼ねませんからやめてあげて下さいよ。自分で作ったんですから、自分で食べたらどうですか?」
「・・・・・・」
「そんな死の間際みたいな顔されても困るんですけど」
「・・・・・・分かった」
「お、腹をくくりましたか」
「この鍋は封印だ」
「・・・ハァ?」
「部室の片隅に保管し、来るべき時が来たら使おう」
「意味有りげに言ってますけど、食べるの面倒だから放置するだけですよね?固まっちゃいますよ?」
「良いんだ。生徒会がこの部室に押し掛けてきたらこの鍋で・・・」
「飴になった水飴をあげるんですか?味としてはイマイチだと思いますけど」
「固まっていた水飴が衝撃で割れて良い演出するかもな。砕けて水飴の欠片が宙を舞ったり」
「鍋でぶん殴る気だこの人!」




Re: 帰宅部オーバーワーク!II ( No.5 )
日時: 2016/11/29 21:55
名前: ガッキー

「猫派ですか?犬派ですか?」




放課後、『帰宅部』部室にて。前野がポツリと呟くように三人に問い掛けた。それに対する反応は様々だ。
「ハァ?」
と、小馬鹿にしたような声を出すのが古泉。
「僕は猫派ですね」
と、読んでいた本を閉じてから答えるのが青山。
「zzz・・・」
そもそも聞いてさえいないのがベネディクト。
「大体よォ」
寝転んで雑誌を読んでいた古泉が、起き上がって頭を掻きながらそう言った。
「何でまた、そんな話題をぶッ込んできやがったンだよ」
「ここらで、猫と犬のどちらが愛されているのかを決めておこうと思いまして。あ、自宅でペットを飼ってる人っていますか?」
誰も応えず。つまりは、みんなペットは飼っていないという事だ。
「青山君は猫派。・・・・・・古泉先輩はどっち派ですか?」
「オレか?ライオン派」
「えーっと、・・・猫派で良いんですか?」
呆れたような目で古泉を見る前野。古泉が何かしら巫山戯(ふざけ)てくるのは予想出来ていたので、前野は然程(さほど)驚かなかった。
「猫が好きか?って聞かれると、そうじゃねェんだよな」
「同じネコ科なら良くないですか?」
「オレはあくまで、ライオンの鬣(たてがみ)が格好良いと思ってるだけなんだよ」
「鬣派、と」
「それで良いんですか・・・」
前野は次にベネディクトに聞こうと思ったが、気持ち良さそうに寝ているのをわざわざ起こすのは何となく躊躇われたので、青山に視線を移した。
「青山君は猫のどんな所が好き?」
「そうですね、あの自由気ままな所が可愛いです。日向で寝ている姿も可愛いですし、欠伸をしている顔もとても可愛いと思います」
「凄い、青山君の語彙力が微妙に低下している・・・!?」
それくらい、猫が可愛いという事だろうか。
「古泉先輩は、ライオンのどんな所が好きですか?」
てっきり「さっき鬣が格好良いッて言ったばっかだろうがボケ」とか言われると思っていた前野だが、以外や以外。古泉は顎に手を当てて真面目に考えていたのだ。
「あー、犬の好きな所ねェ」
「犬!?」
「何だよ、オレの犬好きはご近所さんの間でも有名だろうが」
「聞いた事ありませんしーーさっきライオン派って言ってたじゃないですか!」
「アレは嘘だ」
「本っ当この人は・・・!!」
「犬って、阿呆面晒して飼い主に従う所が可愛いよな」
「全国の愛犬家に土下座して下さいよ。阿呆面ってアンタ」
「良い意味でだ。何か可愛くねェか?『散歩ですか!?散歩行くんですか!?ご主人!』みてェな」
「うーん、微妙に分かっちゃうのが複雑な所ですが。確かに可愛いですよね」
そう考えると、古泉先輩に従う青山君もどこか犬っぽいな。やっぱ二人って良さげな関係なのかな。
と、前野はボーっと考えるのだった。
「ボクも犬派だなぁ」
「うわっ、いつの間に起きてたんですか」
知らぬ間に会話に入ってきていたベネディクト。犬派らしい。
「犬のどんな所が好きですか?」
「あのね、枕にすると気持ち良いんだよ」
「何だかベネディクト君らしいです」
カーペットの上。大型犬の胴体を枕にして眠るベネディクト。犬も眠っていて、しかし尻尾だけは嬉しそうに動いているーー想像出来過ぎて前野は苦笑した。
「今の所、猫派が青山君。犬派が古泉先輩とベネディクト君ですね」
「前野さんはどちらがお好きですか?」
「私?」
自分が聞かれると思っていなかった前野は、うーんと考えた。数十秒程たっぷり悩んでから結論を語る。
「どっちも好きだけど、強いて言うなら猫派かなぁ。寝てる時に足元で丸まってくれると温かいんだよね」
「理由がやけにリアルじゃねェか。飼ってるのか?」
「おばあちゃんの家に泊まった時の話です。可愛いんですよね〜」
「うーん、猫も良いよねぇ」
幸せそうな前野とベネディクト。最近はもう肌寒く、猫で暖を取りたい季節だ。外が寒いから、ついつい外飼いの犬を家の中に入れたくなる季節だ。
「・・・・・・あの」
「何、青山君」
「結局、犬と猫のどちらが愛されているのでしょうか?」
「ボクと古泉クンが犬派で、青山クンと前野チャンが猫派」
「同点じゃねェか!おい言い出しっぺ、何一人で妄想に浸ってやがる!」
「もうどうでも良くないですか?どちらにもそれぞれの良さがあり、どちらも等しく愛くるしいーーそれで良くないですか?」
「納得いかねェ!気分的にもモヤモヤするし、オチとしても弱過ぎるぞ!」
「えー?じゃあ、第二回クイズ大会でも始めます?」
「うぐッ・・・」
「良いじゃないですか、オチが弱くたって」
猫の事を考え過ぎた副作用か、いつもよりもダラダラしている前野。恐ろしきかな猫ちゃん。ベネディクトも、犬の事を考え過ぎて寝てしまっている。いや、いつも通りか。
「どうするよ、考地」
「そうですね。ここで締めてしまうと、確かに少しばかり短い気もします」
「・・・・・・仕方ねぇ。いっちょアレやるか」
「アレ、とは?」
「困った時は、過去に逃げれば良いンだよーーってな訳で、前野がこの部活に入った経緯を教えてやろうじゃねェか」
「そう言われてみれば・・・、僕もあの事態の全貌は未だ知らされていませんね」
「古泉クンが勝手に連れて来ちゃったもんねー」
「よし、決まりだな」
「えっ、アレを話しちゃうんですか?古泉先輩が私を無理矢理拉致ーー」
「それ以上言うな!ネタバレになるだろうが!」
「もう手遅れなのでは・・・?」
「えぇい、全員黙りやがれ!」
騒めき始める部員達を手振りで黙らせ、古泉は神妙な面持ちに切り替えた。ソファの前のテーブルに肘を付くその様は、悪の親玉のようだ。他の三人も、それぞれ着席する。みんなワクワクしていた。
それもその筈、古泉以外にあの事態を完全に把握していた人物は誰もいないからだ。青山はただただ古泉に従い、ベネディクトはノリに任せ、前野は被害者。


「これは、この『帰宅部』が本格的に活動する事になった切っ掛けの話だーー」

Re: 帰宅部オーバーワーク!II ( No.6 )
日時: 2016/12/08 20:43
名前: ガッキー

「俺が語るかと思ったか?残念、うそだ」
「嘘ですかい」
「便利な回想シーンの始まりってな」




前野は焦っていた。そして、走っていた。
二年生に上がったばかりの四月。クラス替えをして、クラスのメンバーが望んでいたのと違い、ガッカリしつつもどうやってクラスに馴染んでいこうか考えていたのが今日の午前三時。深夜だと気付き慌てて眠ったのだが、やはりと言うか案の定と言うか。

寝坊した。

(新学期早々遅刻なんてしたらクラス内で浮いちゃうじゃん!)
クラス内ボッチになるのだけは避けたかった前野は、学校への道を急いだ。視界にチラチラと映り込むピンク色の桜に気を取られている暇は無い。
息を切らせて、門を潜る。時刻は八時三十五分。走って教室に駆け込めば間に合う。前野は気合を入れ直し、脚に力を込めーー
「きゃっ」「うおッ」
前にしか視線を向けていなかった前野は、死角から出てきた人影に気付かなかった。停止する事も出来ず、ぶつかる。その場に尻餅を付く前野とは違い、ぶつかられた人影はビクともしなかった。
「痛たたた・・・」
「おいおい、大丈夫かよ」
座り込んだ前野に差し出される手。ここから始まるラブストーリー。そんな訳無い。前野は視線を差し出された手の位置から更に上に向けて絶叫した。
「不良!?」
「誰が不良だッつうの。どっからどうみても優等生だろうが」
「その言い分には無理がありますよね!?」
前野に手を差し出してきた人影の正体は、茶髪の男だった。制服からこの学校の生徒だと分かるが、こんな男は入学してから今まで見た事が無い。きっと、普通の学校生活を送っていたら出会う事の無い、アウトローな生徒なのだろう。前野はそう思った。
「まぁ、そんな事はどうでも良いとして。大丈夫かよ」
「え、あ、はい。大丈夫です」
差し出していた手を掴み、引っ張られて起き上がる。前野は殆ど力を入れてなかったのだが、男は軽々と前野を引き上げた。
「お前、何年だ」
「えっ」
突然の問い。前野は理解した。この男はきっと、学年を聞いておいて後から金を要求しに教室迄突入してくると。
(流石は不良。やる事がえげつない)
「黙ってンなよ。学年くらい言えるだろ?」
「だ」
「だ?」
「誰かぁぁぁぁぁ!!」
前野は男に背を向け、逃げ出した。
「あ、おい!ーークソ、仕方無ぇ!」
取り敢えずは適当に学校の敷地内を逃げ回り、不良を撒いてから昇降口に入ろう。そう算段を立てていた前野の意識が刈り取られる迄に、一秒も掛からなかった。




「・・・・・・もしもし、もしもーし。大丈夫ですか?」
誰かが自分を呼んでいる。そんな漠然とした思いで、重い瞼(まぶた)を持ち上げた。続いて上体を起こす。ボヤけた視界。瞼を擦り、眼鏡を掛けた。視界はクリアになっていた。
「えーっと・・・・・・誰?」
辺りを見渡すと目に入ったのは、室内で思い思いの行動をしている三人の男。三人共中々の美形で一瞬前野はドキッとしたが、訳の分からないこの状況では怖気の方が上回った。しかも、三人の内一人は先程の茶髪の不良だ。嫌な予感しかしない。
「目が覚めましたか」
前野にずっと呼び掛けていた、眼鏡を掛けた男がそう言いながら安堵の溜め息を吐いた。
「全く、古泉先輩も自重してほしいものです。お昼過ぎ迄意識を取り戻さなかったなんて・・・」
眼鏡の男が古泉という名の誰かに丁重に叱責。敬語が似合うなぁと前野はぼんやり考えていたが、眼鏡の男の台詞の中に聞き捨てならない単語を思い出した。
「え、お昼過ぎ?意識を取り戻さなかった?」
「貴女は今朝から今の今まで気絶していたのです。申し訳ありませんでした。全面的にこちらが悪いので、如何なる処分も受け入れるつもりです」
本当に、申し訳ありませんでした。眼鏡の男は深々と頭を下げた。前野は面食らう。
(え、起きたらいきなり謝られるってどういう事?というか私は、何でお昼過ぎまで気絶してたの??)
首を傾げていると、眼鏡の男は「分かりました」とレンズを光らせた。
「指、詰めます」
「は?」
言葉の意味を理解する前に、眼鏡の男はどこからか彫刻刀を取り出した。それを自分の小指にーー
「ちょっ、ちょっとぉぉぉおおおお!?ストップ!ストォォォォォォップ!!」
「小指だけでは足りないと、貴女はそう言うのですね?了解です。ならば両手指全てをーー」
「話を聞いて下さいよぉぉ!誰か!この人止めて!」

閑話休題。

「ハァ・・・ハァ・・・、良いですか?指は、詰めなくて良いですから・・・・・・」
凶行を強行で止めた前野は、息を切らしながら眼鏡の男にそう諭した。
「申し訳ありませんでした。気が動転していたようです」
床に正座をして、眼鏡の男はまた頭を下げた。彫刻刀はもう手元には無い。危なっかしいので前野が取り上げた。
「何で私は気絶したんですか?」
この話をいつまでも続けていると、また暴走されかねない。そう危ぶんだ前野は話を切り替えた。
「古泉先輩が・・・」
問うと、眼鏡の男は気まずそうに指を指した。視線を移す。
「ア?」
そこには、今朝ぶつかった茶髪の男がソファで寛いでいた。
「やっと目ェ覚ましやがったのかよ」
溜め息を吐き、ガシガシと頭を掻きながら古泉と呼ばれている男は立ち上がった。
(私が眼鏡の人を止めている時に何故助けてくれなかったのかという件については小一時間程問い詰めたい所だけど・・・今するべき質問はそれじゃない)
「何で私はお昼過ぎ迄気絶してたんですか?」
「よく漫画とかであるだろ?首の後ろをトンッてやるヤツ」
「それを現実でやっちゃったんですか!?」
「一度でも良いからやってみたかったんだよな」
「そんな一生モノの思い出みたいなれ普通それを女子に食らわせますかね!?」
「俺の『首の後ろトンッ童貞』はくれてやるよ」
「全く嬉しくないですし!それと、せめて念入りに練習してからやって下さいよ!!」
いや〜、軽く食らわせたつもりだったンだがなァ。そう呟く古泉。一人は指を詰め始めるクレイジー眼鏡、一人は女子に手を上げるクズ、一人はこんなに騒いでも身動(みじろ)ぎ一つしない大物ーー三人共ヤバい奴等だと悟った前野は、寝かされていた(机を並べただけの簡易的な)ベッドから降りてすぐさま部屋のドアに向かって歩を進めた。
が、肩を掴まれて動きを止められた。振り向く。
「まあまあ、ちょッと話聞いてけよ。な?」
悪役のような笑みを浮かべる古泉に、前野の嫌な予感メーターは限界値を軽々と振り切ったのだった。


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