コメディ・ライト小説(新)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

名無し天使の不安定日記
日時: 2017/01/22 14:57
名前: 北風

こんにちはじめまして。
北風です。

一応ジャンルはファンタジー&ヒューマンドラマです。
楽しんでいただければ何より。

Page:1



Re: 名無し天使の不安定日記 ( No.1 )
日時: 2017/05/02 10:13
名前: 北風

我輩は天使である。

名前は普通にある。

どこで生まれたか、一応見当はついている。

天界です。

そして、これからも天界でまったりとエンジェルライフを過ごしてゆくものだと思っていました。
私のような下級天使は下界での仕事を与えられることも無く、天界で一生雑務をこなしていく運命なのだと、弱冠十五歳にして悟っていたのです。


ですがここは、今私のいる場所は、天界ではありません。

下界です。

人間たちが暮らす、下界です。


はい、お仕事です。

こんな私でもお仕事を頂けるだなんて……。
天界はなんてホワイトな職場なのでしょう――

と、言える余裕はありません。

そんなものがあったら、こんな風に――恐怖に震えてるわけがありません。





「誰か……助けて……」



こんな台詞を呟いているわけが、無いのです。

Re: 名無し天使の不安定日記 ( No.2 )
日時: 2017/02/12 18:28
名前: 北風


話は数時間前に遡ります。

深夜、閑静な住宅街。

「もうすぐこの辺で誰かがお亡くなりになるはずなのですが……」

辺りには人っ子一人見当たりません。
……ひょっとして場所を間違えてしまいましたか?
少し不安に駆られます。
いやでも流石に初仕事。
念入りにチェックしときましたよ。

「……とりあえずこの辺をうろついときますか」

誰にともなく呟き、あまり最初に降りた場所から離れないように注意しつつもぶらつき始めます。
一応持参してきた地図を片手にゆっくりと歩を進めました。
と。
目の前をすっと通る人影が視界に入りました。
顔を上げて確認すると、どうやらお仕事帰りの若い女性のようです。
お勤めご苦労様です、と後ろ姿に頭を下げます。
そして、頭を上げると。
女性は地面に倒れ伏していました。

「な!?」

いや、よく見てみれば全身真っ黒の人影に押し倒されているではありませんか。
黒い帽子に黒いパーカー、黒いズボン。
唯一白いマスク。
地上に来るのは初めての私でも分かります。
これは明らかに……

「不審者ですー!!」

つい大声で叫んでしまいました。
女性がハッとした様子で私を見ます。
恐怖に顔は歪んでいますが、口を黒い人物に塞がれていて声は出せないようです。
ですが、涙を浮かべる目が訴えています。
助けて、と。

「や、やめなさーい!」

弾かれるように私は二人に向かって駆け出しました。
黒い人物は慌てて身動ぎします。
その隙を突いて女性は人物の手を振り払いました。

「!」

黒い人物の口から僅かな声が漏れますが、解放された女性は振り向くことなく逃げ出しました。
おお、働く女性は逞しい。
女性の姿はじきに見えなくなりました。

「……」

黒い人物は呆然と座り込んでいます。
ざまあみろです。
悪いことはするもんじゃありません。
いやあそれにしても私、良いことをしまし──

「わあぁっ!」

急激に平衡感覚が失われます。
気持ち悪い浮遊感。
の後に訪れる衝撃。
気が付けば私は地面に尻餅を突いていました。

「いたた……」

顔をしかめつつ足許を確認すると、黒い人物が確りと足を掴んでいました。
憎しみの籠った目で私を睨み付けています。

「ひっ」

途端、私の身体に恐怖が根を張りました。
黒い人物の手には街灯を受けて輝く小型のナイフ。
それが私に向けられています。

「あ……あぁ……」

カタカタと震える身体は、思うように動いてくれません。
ああ、つくづく先程の女性を尊敬します。
よくこの恐怖に打ち勝って逃げ出せましたね。

「■■■■っ!!」

黒い人物が何か叫びながらナイフを振りかぶりました。
照準は真っ直ぐ私の喉元。
あ、死んだ。
と、直感的に思いました。
仮にも天使が人間に刺殺された、と。
降りてくる前にこうなる可能性を一切考慮していなかったので、実際地上にいる天使が刃物で刺された所で死ぬのかどうかは分かりませんが。
ですが、この鋭利な銀色が私の柔らかい喉の皮膚を破って骨と骨の間を上手いこと抜けてその奥の大事な器官に突き立った場合、何事もなくケロッとしている自分が想像できないのです。
無惨に口から鮮血を吹き、光の消えた瞳を半開きにしてアスファルトに転がる自分しか想像できません。
その脳内映像が更に私の身体を地面に縛り付けます。
ああ、でも人を庇って死ねるだなんて、素敵な死に方だとは思いませんか?
私は思いませんね。
死ぬ事自体どう転んでも素敵な出来事には昇華されません。
我が人生(?)に、大いに悔いあり──


「熱ッ!?」

絶望によって途切れた意識が、その温度によって引き戻されました。
頬っぺに感じる感触は液体のそれです。

「なんです……これ」

ぼーっと譫言のように言いながら手の甲で頬を拭います。

「あ……でもこれ、熱いというより……」

温かい?
お湯?
何の気なしに手の甲を眺め、再び硬直しました。
文字通り、目の覚めるような赤。
ドロッとした触感。
独特の甘ったるい匂い。

「…………」

唖然とする私の横にドサリと何かが落ちてきました。
ギギギ、と機械のようなぎこちなさで、私はその方向に顔が向くよう首を回します。

そこに倒れていたのは、鮮血にまみれた、黒ずくめの人間。

紛れもなく、私を刺し殺そうとしたあのお方でした。

「■、■■■……」
「ひぁ!」

突然声が頭上から降ってきて、私はびくんと身を強張らせました。

「……?」

恐る恐る上を見上げます。
そこにはスーツ姿の男性がおり、民家に取り付けられた塀の上に立っていました。
年齢は30前後でしょうか。
男性にしては長髪で髪型は多少崩れてはいますが、黒縁眼鏡の奥の瞳は真面目なサラリーマンらしい真っ直ぐなものです。

「…………」

ぽかんとしてしまいました。
え、サラリーマン?
塀の上に?
訳が分かならいシチュエーションですが、ずっと座り込んでいるわけにも行かず、私はのろのろ立ち上がりました。

「うっわっ!」

そして再び地べたに腰を下ろします。
忙しい女ですね、私。
でも仕方ないと思いますよ。
だって先程は角度の関係で暗くて見えませんでしたが、男性の右手の中には──日本刀が握られていたのですから。

「あわ、ぁうぁあぁ……」

生き物の命を奪うことに特化したそのフォルムの持つ迫力は、私をもう一度恐怖のどん底に突き落とすには十分でした。
震えて意味をなさない声を漏らす私をサラリーマンさんはじっと見つめます。
そして、ポタポタと一定感覚で液体が垂れるその日本刀を手から離しました。
ガシャンと派手な音が鳴り響き、私の心臓は更に縮み上がります。

「■■■■■」
「ふぇ……?」

サラリーマンさんが何か言いました。
ですが、その意味は分かりません。
何故なら、私の生まれ育った天界とここ日本では使われている言語が違うからです。
天界では世界中のどこの地方でも使用されていない言語を使っています。
天界に訪れた方ならば誰でもその言語が自然と使えるようになる、不思議な力を持つ言語です。
そのメカニズムは未だ闇の中です。
いや、きっとメカニズムなんて存在しないのでしょうね。
理由は『天界だから』『神だから』で済むことです。
神様に不可能はありません。
とまあ、軽く産みの親を立てるようなことを言ってはみましたが……その言語を全員共通で使えるのは、天界に居る時だけ。
ここは現世です。
人と人の繋がりを阻む言葉の壁は燦然と直下たっています。
つまり、このサラリーマンさんが今『ご無事ですか? お嬢さん』と言っていようが『次はお前だ! 小娘』と言っていようが、私には理解出来ないのです。
嗚呼、何故神様は私達天使にどんな言語でも理解できるような能力を与えてくれなかったのでしょう?
答えは一つ。
普通、天使は現世の人間と会話をすることなくスタイリッシュに仕事を遂行するからです。
……結局は私のせいなんですよ、そうなんですよ。

「あああ……私はただ人助けをしたかっただけなのにぃ……」


Page:1



スレッドをトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


E-Mail


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。