コメディ・ライト小説(新)

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罪恋***好きでいてもいいですか?***
日時: 2017/06/12 01:29
名前: Aika

+:*;.・。prologue。・.;*:+



最初は見ているだけで幸せだった。

結ばれなくてもいい。
遠くから貴方の笑顔を見られるだけで充分だった。
それ以上は何も望まなかった。


なのに。



いつからだろう。
こんなにも、 あふれ出すぐらい。
抑えきれないぐらいに。
貴方を好きだと思い始めたのは――――。



罪恋***好きでいてもいいですか?***

更新start→2017.4.2


***目次***

登場人物紹介>>1

*.・1章・.*
第1話>>2第2話>>5第3話>>6第4話>>7
第5話>>10第6話>>11第7話>>12第8話>>13
第9話>>14第10話>>15第11話>>16第12話>>17



Page:1 2



Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.4 )
日時: 2017/04/03 23:44
名前: Aika

→ *ましゅ様*


こちらこそ、初めましてです(*´ω`*)ノシ
Aikaです!初コメだぁ!嬉しいですo(^o^)o
しかも、『恋花火―ひと夏の恋―』から読んでいただけて、幸せすぎてテンションがおかしくなってます(笑)ありがとうございます~(;_;)

新作の『罪恋***好きでいてもいいですか?***』も恋花火同様、切ない恋愛物語になっていくと思います。年齢の壁、先生と生徒という立場の違い…それらをふまえて桜は自分の想いとどう向き合っていくのか…今後の展開に注目ですね(´・ω・`)

文才皆無なのと亀更新ですが、これからも温かく応援してもらえたらなぁと思います!よろしくお願いします(’-’*)


Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.5 )
日時: 2017/04/04 00:45
名前: Aika

Episode2:貴方がくれたもの。




貴方の言葉に、わたしは何度救われただろうか。
少しだけ大げさかもしれないけど
貴方がいなければ、きっと今のわたしはいないんじゃないかって思う。


それぐらい貴方はわたしにとって、すごく大切なひとなんです。



********************************************


――中学3年の冬。
今日は高校受験の合格発表の日だった。

「落ちてたら…どうしよ」

心配性のわたしは、朝から重い顔。
正直、自信は全くなかった。
自己採点の結果もあまり良くなかったし―――。

なんてことを悶々と考えながら、家の扉を開けると。

「「あっ…」」

ちょうど、マンションの隣の扉もあいて…そこから出てきたのは見知った顔。

「おはよう…祐樹さん」

そう。お隣から出てきたのは、現在大学4年の祐樹さん。見事に教員採用試験に合格が決まって4月から高校の教師になるみたいだ。

「おはよー!…そういやぁ、今日が合格発表だっけか?」

朝一番に笑顔でそんなことを言う祐樹さん。
わたしは、思いっきりひきつった顔で答える。

「もー!朝から嫌なこと言わないでよー」

むくれながら、そう言うと祐樹さんは屈託のない笑顔で悪気もなく言う。

「あははっ…わりぃわりぃ。それでテンション低いんだなお前」

駅までの道のりを二人でそんな会話をしながら一緒に歩く。バッタリ会ったときは、わたしたちは大体自然な形で途中まで一緒にすることが多かったりする。

「だってー!全然入試問題わかんなかったしさー…自信なんかないよ」

下を向いてそう言うと。
祐樹さんはわたしの頭に優しく手を置いて。
撫でながら口を開いた。

「桜なら、ぜってー大丈夫だ」

力強い言葉とわたしの頭を優しく撫でる仕草ひとつにまた、ドキッとした。

「俺はお前が頑張ってたの知ってるから。努力は報われるっていうしな。自信もって見に行ってこいよ!それで駄目だったら俺んところ来て泣いていいからよー」
「不吉なこというな!」
「あははっ…まぁ、今のはお前が暗い顔してるから笑わせようと」
「笑えない冗談は止めて」

不思議だ。
祐樹さんといると、さっきまでの不安でいっぱいだった気持ちが一瞬でどこかへ消えてしまった。
なぜか、重い顔が明るい顔になってる。

「じゃあ…俺はこっちの電車だから」

駅のホーム。祐樹さんは違う電車。
ここで、お別れか。なんだか名残惜しい。
もっと一緒にいたい…だなんて思う自分はバカだと思う。

「うん、またね」
「あとさー」
「ん?」

祐樹さんはバッグからゴソゴソと探して何かを取り出した。
そして、それをわたしに手渡す。

くれたのは、 合格祈願のお守り。

「ほんとは…受験当日に渡したかったんだけどな。遅くなっちまってわりぃ」
「えっ…嘘!祐樹さん用意しててくれたの…?」

驚きでいっぱいだった。
祐樹さん自身だって自分の就職のことで大変だったはずなのに。
それなのに、 わたしの事も考えてくれていて―――。

こんなこと、 されたら。

「ありがと、祐樹さん。行ってくるね」
「おう!行ってこい!」

わたし、 貴方の事。

今よりももっと…好きになっちゃうじゃんか、バカ。


**********************************************



入試の結果は。
見事に合格だった。
一緒に受けた友達もみんな、合格で。
幸せすぎて嬉しすぎて涙が出て―――。

友達と抱き合って泣いた。

ひとしきり、泣いて。
落ち着いたときに。
鞄からスマホを取り出した。
祐樹さんあてにLINEでメッセージをうつ。


『サクラサク!(^^)/』


そう伝えると。


すぐに返信がきて。


『やったなー!おめでとう!ヽ(*´▽)ノ♪』


「顔文字…ウケるんですけど」

クスッとその返信に思わず笑ってしまった。
ありがとうスタンプを送って携帯を閉じる。


―――3月のまだ、冷たい風が吹く。




上を見上げると。



雲ひとつない澄みきった青空が広がっていた。






Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.6 )
日時: 2017/04/09 00:04
名前: Aika

Episode3:あの日、 伝えられなかったこと。




あの日、 もしも貴方に告白してたら?
わたしたちの関係は、何か変わったのかな―――。


********************************************



―――中学の卒業式。

同じクラスの友達の坂下志穂は、中1の時からずっと好きだった男の子に告白するって騒いでた。
それを聞いて
自分とは違う積極的な彼女を少しだけ羨ましく思ってしまった。

「桜は好きな人に告らないの?」

明るく聞く彼女に。
わたしは、困ったように笑いながら答える。

「わたしの場合…告白したら絶対にフラれるから最初から言わないって決めてるんだ」

祐樹さんは絶対にわたしのことなんか、一人の女の子として見てない。
たぶん、彼からしたらわたしは、妹みたいな存在なんじゃないかと思う。

―――そんな彼にもしわたしが告白して駄目だったら…きっと前みたいに自然に話せるようになるまで絶対に時間がかかるし。
今の関係を壊したくない。
だから、 わたしはこの気持ちは一生、しまっておく。
あの頃から…祐樹さんを好きになったあの日からそう決めていた。

「後悔、 しない?」

わたしの心を見透かすような、そんな瞳で志穂に聞かれた。心が少しだけ…揺れてしまいそうになった。わたしは大きく頷いて笑顔で言う。

「うん。…しないよ」

嘘だ。…ほんとは、もうおさえることが苦しいぐらいに祐樹さんのことを好きになってる。

『好き』その一言を伝えたい。
けど、それは出来ない。
そのもどかしさが、わたしにとってひどく辛い。



*********************************************


卒業してから数日後。
志穂からLINEがきて。

『告白上手くいった!高校は別だけど付き合うことになりました~(^^)』

そんな知らせに。わたしは。

『よかったじゃん!志穂、がんばったもんね。おめでとう!』

友達の恋が成就した。志穂はわたしとは違って可愛くって…女の子らしくって。そのうえ、好きな相手にはとことん積極的に攻める性格だ。
彼氏ができても、当たり前だと思う。
それに比べて…わたしは―――。


何もしてない。






「―――わたしも…祐樹さんに」

―――告白、 してみようかな。

関係が壊れるのはたしかに怖いけど。

でも、フラれたとしても
告白したら…少しはわたしのことを気にしてくれるかもしれない。
妹として、だけではなく…一人の女の子として意識してくれるかもしれない。
今は無理でも…いつかは、わたしと付き合ってくれる日が来るかもしれない。

わたしは、スマホのLINEを開いて。
祐樹さんに向けてメッセージをうつ。

『少しだけ…話がしたいので今から会えませんか?』

すぐに既読の文字がついて。
返事が帰って来た。

『俺もちょうど、桜に話したいことがあったから今から駅前のカフェで会おうか』

え?…話したいことって、 何?
もしかして。祐樹さんも…わたしのことを―――。

わずかな期待を胸にわたしは勢いよく鞄を持って家を飛び出していった。



□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □


――カラン、カラン。

息を切らしながら、 カフェに入っていくと。
すでに祐樹さんは席に座っていた。

「すみません…わたしから呼び出したのにお待たせしちゃって」

彼のもとへかけていって、正面に腰かける。
謝ると彼は笑いながら答える。

「いいよ、別に。それで話したいことって?」

四月から社会人なだけあって、大人な雰囲気のある祐樹さんにまた、ドキドキしてしまった。
かすかに香る煙草の匂いに年の差を感じる。

「わたしのは、大した話じゃないし…祐樹さんから言っていいよ」

駄目だ、わたし。
祐樹さんを前にすると何も言えない。
こんなはずじゃなかったのに。

「そう?じゃあ、俺から言うか」

祐樹さんは、コーヒーを口にしながら静かに口を開いた。

「―――実はさ…俺の四月からの勤務先がお前と同じ高校になったんだ!すごくね?」

―――瞬間。
凍りついたかのように体が固まった。
同時に、 その話を笑顔で話す祐樹さんを見てわたしのことなんか眼中にない。瞳に写ってないことを重い知らされた感じがした。

その事については初めから分かっていたんだ。
ただ―――。

同じ高校になるんだったら、告白なんかしたら…祐樹さん、いや。

―――先生を困らせてしまう。



「――そっか。よろしくね、先生」


やっぱり、言っちゃいけないんだ。
わたしのこの想いは。


「うん、よろしくな。…それで、お前の話ってなんだよ?」
「えっ!…高校受かったしどっか遊びにいかない?」

とっさの言い訳が思い浮かばなくてそんなことを口走っていた。

「んだよ、そんなことかよ。わざわざ呼び出さなくてもLINEで良かったんじゃねーの?」
「いいじゃーん!ここのココアめっちゃ美味しいし」
「お前なぁ…まぁ、いっか。考えといてやるよ」

そう言って。わたしの髪にふれて。
くしゃくしゃっと、なでる。
その大きな暖かい手が心地よくて…。
やっぱり、 好きだなって思ってしまう。





―――先生。






諦められるその時が来るまで。






あなたを好きでいても、 良いですか?










Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.7 )
日時: 2017/04/09 00:48
名前: Aika

Episode4:友達。




―――友達。
そう思っていたのは、 わたしだけだったのかな。


貴方はわたしに何も話してくれない。
それは、 わたしを信頼できないからなのでしょうか?




*********************************************


―――ピピピピッ…


目覚ましの音で目が覚めた。

「もう、朝か…」

1人、部屋のなかで誰に言うのでもなくポツリと呟いてベッドから起き上がりカーテンを勢いよく開ける。

窓の外からは太陽の眩しい光が入ってきた。
その光に目を細める。

「なんか…懐かしい夢を見てた気がする」

夢の中で…先生と初めて出会ったときのこととか、懐かしい思い出を見てたような…そんな気がするのは、わたしの気のせいだろうか。

そうぼんやりと思いながら制服に着替えて身支度を整えてから勢いよく家を出た。

「行ってきまーす!」



―――わたし、岡崎桜は今日から高校2年生になります。



■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



「あっ!桜ー!おはよ」

学校につくと、中学からの親友の坂下志穂とバッタリ下駄箱で会い笑顔で挨拶をしてきた。
わたしも、笑顔で返す。

「おはよ、志穂!何組だった?」
「あたしはね、5組だったよー!桜は?」
「うっそ!同じクラス!」
「まじか!超嬉しい!よろしくね」

志穂と同じクラスと知って、不安だった気持ちが少しだけ和らいだ。人見知りの激しいわたしにとって、志穂と同じクラスというのはとても心強い。

志穂は愛想もよくて…さっぱりとした性格でわたしとは違って誰とでもすぐに仲良くなれる。
おまけに、見た目も可愛いから男子ともすぐに仲良くなれるし。ほんとにいつも感心してしまう。
きっと新しいクラスでもすぐに馴染めるんだろうなぁ…。

「あれ?志穂に桜じゃん!」

途端に自分の名前が呼ばれて振り向くと。
そこには、よく知った顔があった。

「智也か。何?あんたも5組なの?」

嫌そうな顔でそう言う志穂。
あからさまなその表情にわたしは苦笑してしまう。

「そうだけど?つか、そこまで嫌そうな顔しなくてもよくね?俺、結構傷つくんですけど」
「そうだよ、志穂。可愛そうだよ」
「いや、別に嫌じゃないけどさー!あたし、智也と中1からずっと同じクラスなんだよ?もう、さすがに勘弁してほしいんだよー」

ああ、なるほど。そういうことか。
たしかにこの2人はずっと同じクラスだったかも。

「そういやぁそうだな。今気づいたわ」

しれっと、そう言う智也にイライラしながら返す志穂。

「あんたは、どんだけあたしに関心ないのよ!」
「いや、別にそういうわけじゃねーけど」

噛みつくように言う志穂に戸惑う智也。
志穂はため息をついて。
それで、にやついた顔でからかうように言う。

「まー!あんたは、誰かさんと同じクラスになることだけが目的なんでしょ、どうせ」
「ばっ…何言ってんだよ、お前は!」

ん?誰かさん?

「志穂、誰かさんって何?」

わたしがそう聞くと。直後、智也が慌て始めた。

「だー!桜は知らなくて良いことなんだ!志穂っ!おめー、ちょっとこっちこい!コラ!」
「痛いなー、引っ張んないでよね」

智也が志穂の制服を引っ張って、ズンズンと歩いて2人でどこかへ消えてしまった。
わたし、1人を取り残して。
何だったんだろう、 誰かさんって?
もしかして、智也の好きな人かな。智也に好きな人がいたなんて初耳だな。
あの様子だときっと志穂は知ってるんだろうな。

なんで。


「智也…わたしには、教えてくれないのかな」


わたしも、 協力したいのにな。智也の恋。
友達だから、 わたしにできることなら何でもしたい。

なんで。
わたしには、 何も話してくれないのかな―――。



「なーんて…わたしじゃ、きっと役にたたないから教えてもらえないんだろうな」


そう1人でボソッと呟いて。足早に教室の方へと向かった。






Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.8 )
日時: 2017/04/09 22:33
名前: てるてる522 ◆9dE6w2yW3o
参照: http://From iPad@

こんばんは!
……お久しぶりです←

Aikaさんの新作だ!……と思って閲覧して読んだらもう夢中になっちゃって……( ;∀;)♡
「恋花火」も大好きな作品でしたがこの「罪恋」もすごく大好きになりました(*´▽`*)

桜ちゃんの祐樹さんに対する心情描写とか、切なさがもう伝わってきて←
好きな人だけど、自分の先生になっちゃうって辛い(´;ω;`)

もう本当に桜ちゃんと同じくらい苦しくなりました。


これから始まる桜ちゃんの高校生活、すごく楽しみにしてます♪
個人的には智也くんも応援したいなぁと思っています(。¯﹀¯。)

更新頑張ってください!
また「恋花火」にもお邪魔します(o´罒`o)

それでは(*゚▽゚)ノ

byてるてる522

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.9 )
日時: 2017/04/16 18:26
名前: Aika

→*てるてる522様*


お久しぶりです(^^)/
恋花火に続いて罪恋のほうも読んでいただけて嬉しいです~(´;∀;`)

好きな人に思いを伝えられない桜の気持ちを考えると
たしかに辛いですよね(´・ω・`)
高校生活どうなっちゃうんだろう…作者にもわかりません(笑←え

智也くん!新キャラがここで登場ですねw
前回の更新で智也の好きな人が誰なのか何となく予想がついたんじゃないかなーと思います(笑)ますます修羅場の予感ですね(―ω―)
のろしゃん更新ですが頑張っていきます♪
よろしくお願いします(・∀・´)ノシ




Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.10 )
日時: 2017/04/16 18:55
名前: Aika

Episode5:重なる視線の先。






好きになってはいけない―――――。

そう思えば思うほど、 なおさら
好きになってしまうのはどうしてですか?



****************************************************************



智也の好きな人が誰なのか分からないまま
モヤモヤしながら教室に入ると。
すでに志穂と智也は教室の自分の席に座っていて。
言い合いをしているようにも、見えるけど
仲良さそうに話していた。

もしかして。

智也の好きな人って…志穂?
いや、でもそれなら志穂に恋愛相談なんかしないだろうし。
やっぱり、分からないなぁ。

「あっ…桜ー!!」

途端に志穂と目が合って大声で名前を呼ばれてしまった。
わたしは手を振って、志穂と智也のほうへと向かっていった。

「わりぃな、桜。さっき置き去りにしちまって」

わたしが二人の元へと駆けよると
智也が決まりが悪そうにそう言った。

「ううん、いいよ。気にしてないから」
「ったく…志穂が余計な事ばっかり言うから」
「いいじゃん、別に。いつか言うんでしょ?」
「だーかーらー!!…お前、本当に黙っててくれないかな、頼むから」

わたしは言い合う二人を見てくすっと笑ってしまった。
なんか、夫婦漫才みたい。
でも…志穂はほかに彼氏がいるし、智也はほかに好きな人がいる。
この二人がくっつくことはない。そう思うとなんか、残念な気持ちになった。

――――キーンコーン…


チャイムの音が鳴って。
バタバタと全員が席に着き始めた。
わたしも慌てて自分の席に着く。

そういえば、クラスの担任の先生誰なんだろう。

ふと、脳裏でそんなことをぼんやりと考えていた時。

教室の扉が勢いよく開いて…。
入ってきた人物にわたしは目を見開いてしまった。



その人物は黒板に自分の名前を書き、みんなのほうへと向き直った。
それから口を開けて自己紹介をする。


「―――今日からこのクラスの担任になった相田祐樹です。1年間よろしくな」


途端に。
クラスメイト達がざわざわっと騒ぎ出した。

「マジで!??相田ちゃんが担任か」
「嬉しい!!」
「かっこいいし、国語の教え方もうまいしー…」
「1年間楽しくなりそうだよね」

祐樹さんは…男女を問わず生徒からの人気が高い。
1年生の時もわたしは祐樹さんのクラスじゃなかったけど
祐樹さんが担任だったクラスの友達がイケメンだし最高っていつも騒いでた。

頬杖をつきながら。
祐樹さんのほうへ視線を向けると。

ふと、 視線が重なった。

その時。
わたしに向かって祐樹さんは優しく笑いかけた。
その笑顔を直視できなくって。
わたしは慌ててうつむいてしまった。
今のって…わたしに笑いかけてくれたの??
でも、違ってたら…恥ずかしいし。
突然のことに頭がごちゃごちゃになって整理がつかなくなっていた。

―――先生は、 ずるい。








そんな風に笑いかけられたら。








「―――諦められないじゃんか、 バーカ…」










か細く、小さな声は。
クラスメイトのざわめきで…かき消された。



Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.11 )
日時: 2017/04/21 17:49
名前: Aika

Episode6:二つの心。





わたしは、自分の気持ちばかりしか見えていなくて。一番近くにいる、二人の想いに何一つ気づかない―――。



******************************************************



新学期がはじまり早くも1週間が過ぎて、授業も本格的に始まった。
今は国語の現代文の授業。
勿論、教えているのはわたしたちの担任・祐樹さん。

「―――それで、この時の筆者の考えが」

教科書を片手に板書をしていく祐樹さんの背中をわたしは頬杖をつきながらボーッと眺めていた。

机に置かれた教科書は開かれていなくて閉ざされたまま。ノートも取る気になれず、わたしは窓の外の雲ひとつない澄みきった青空を眺めているだけ―――。

いざ、同じクラスになると。

祐樹さんがいかに遠い存在なのか。
はっきりと思い知らされる。
正直、 これなら違うクラスの方が顔を会わせる機会だって少ないからほっとするのにな。

ほんと、 最悪だ。




―――キーンコーン。




そんな考えばかり思い浮かべていたら。
いつの間にか授業の終わる時刻になっていたみたいでチャイムが鳴り響いていた。

そこで、ハッとして顔を上げる。

「んじゃあ…今日はここまでな。あ、日直!これ運ぶの手伝ってくんねーか?」

そう言って祐樹さんはクラス全員分の宿題のプリントをひらひらとなびかせながら、こちらの方を見て言っている。

あれ?今日の日直って…。

「早くしろよー、 桜」

わたしじゃねーか!
しかも、祐樹さん普通に下の名前で呼んでるし!!

その瞬間。
クラスがざわめき始めた。

「え、何で相田ちゃん、桜のこと名前よびなんですか?」

気になったクラスメイトの女子が祐樹さんに向かってそう聞いていた。
まぁ、普通気になるよね。

「え…何でって俺と桜は幼馴染みで小さい頃からよく知ってるからだけど?」

しれっとした顔で普通にそう言う祐樹さん。
その事実にクラス中がまた、ざわざわとどよめき始める。
それを聞いたクラスメイトが目の色を変えてわたしの方へと駆け寄ってきてあれこれ聞いてきた。

「何々?幼馴染みってことは、付き合ったこととかあるの?」
「あ、それ気になる!どーなの、桜!」
「てか、現在進行形で付き合ってないの?」

一度に色々聞かれて戸惑っていると。
そこに祐樹さんが現れて。
わたしの腕を掴んだ。

「――俺と桜はただの幼馴染みなんだから馬鹿なこと聞いてんじゃねーよ。行くぞー」
「ちょっ…ゆう…先生!」

クラスメイトにそう言い残して。
わたしを引っ張って教室から出ていった。

その光景を一部始終見ていた志穂と智也は――。

「マジかー…桜と先生って幼馴染みだったんだねー。あの様子だと先生は桜に気がありそうだね、智也」
「そんなの…見てりゃー分かるわ。…けど」
「けど?」
「―――あんな奴にアイツを渡すつもりねぇし」

智也が真剣な顔でそう言うと。
志穂は小さく笑って。

「強気だね、さすが智也だわ」

二人ががこんな会話をしているのも知らず。
わたしは、ただ先生に引っ張られるがまま、後をついていっていた。

「あの…祐樹さん」
「何だよ」
「そろそろ…離してもらってもいいっすか?」

恐る恐るそう聞くと。
祐樹さんは慌ててわたしの手を離して謝った。

「あっ…わりぃ!引っ張っちまって。痛くなかったか?」
「いや、それは全然大丈夫です。でも…幼馴染みとか言って大丈夫ですか?変な噂とか流れたら――」

わたしが目を伏せてそう聞くと。
安心させるかのように優しい瞳でわたしの頭に手をおきながら。

「大丈夫だよ。アイツらにはただの幼馴染みってちゃんと言ったしな」
「そう、だけど」
「俺、隠し事とかできないからさ。それに今更桜のこと名字で呼ぶのもなんだかなー」
「わたしは、先生ってちゃんと言ってるのに」
「あれ?さっき俺のこと名前で呼ぼうとしてなかったっけか?」

からかうような問いかけにうっとなって言葉がでない。
無駄なところだけ覚えてんだから。

「あと、お前さー今日の俺の授業、全然聞いてなかっただろ」
「えっ!何で知ってるの!??」
「何でって…お前、そんなの―――」

―――キーンコーン…。

祐樹さんがそう言いかけると休み時間が終わるチャイムがなって。

「やっば!教室戻んなきゃだ!じゃーね、祐樹さん!!」

話の途中でわたしは、慌てて自分のクラスに戻っていった。
取り残された祐樹さんは。
誰もいない廊下でポツリと呟いた。



「―――そんなの…桜のこと、ずっと見てたからに決まってるだろが。気づけよな、 バーカ」





その声は当然、 わたしの耳には届くはずもなかった。




Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.12 )
日時: 2017/05/19 01:42
名前: Aika

Episode7:条件。




高校2年生に進級してから1ヶ月が経って
もう5月―――。

もうすぐ、 中間テストだ。

「今のところ…大事だからしっかり押さえとけよー」

佑樹さんも…テスト前だから授業内容もテストに狙われそうな部分を重点的に指導してる形だ。

「まぁ、テスト問題作るの俺じゃないから、出るかはわかんねーけど」
「なんだよ、それー」
「先生、適当ー」

先生のそんな発言にクラス中が笑いに包まれて穏やかな雰囲気になる。

わたしも、テスト前で勉強ばっかりでイライラしてたのに…自然と気持ちが和やかになって笑みがこぼれる。
やっぱり…先生のこういうところ、 好きだな―――。

「…なーんて、 ね」

諦めなくちゃいけないのに。
教師と生徒なんだから、 好きになってはいけない。そもそも、 一生叶わない気持ちだって…痛いぐらいに分かっているのに。

―――諦められずにいる。

それどころか、 日に日に好きが溢れてくる。
うっかり伝えてしまいそうになるときもある。
そんな自分に嫌気が差してくる。

誰か教えてほしい…。





どうしたら、 好きを止められるの―――?






****************************************************************



結局…そんなことばかり考えているうちに1日が終わってて気づけば放課後。

ほぼ授業の内容が上の空状態だったために頭に入ってないし今回はヤバイかも。

なんてことを考えていると親友の志穂がわたしのもとにやってきた。

「さーくらっ!」
「志穂に智也」

隣には智也の姿もあった。
いつもなら、部活動で智也は帰りが別なんだけど今はテスト週間のため部活は休みなので一緒に帰っている。

「今日さぁ…3人でカフェにでも寄ってテス勉しない?」
「何だよ、わかんねーところでもあるのか?」

志穂に向かって鼻で笑いながらそう口走る智也に苛立ちながら志穂は言い返していた。

「それもあるけど!…あたし、1人だとぜってー勉強しないからさぁ」
「あはは…志穂は集中力続かないもんねー」
「そうなんよー!どっかのバカと違って桜なら分かってくれると思った!」
「おい!バカって俺のことか」

志穂の発言に突っ込みを入れた智也を志穂はスルーする。

「ってな訳で…カフェへgo!」

うちらの了解も聞かずに先をずんずんと歩く志穂。
思わず智也と顔を見合わす。

「どーする?…志穂、やる気みたいだけど」

智也にそう聞くと。ため息をついたあと、頭をかきむしりながら答える。

「珍しく勉強やる気になってるっぽいし、いんじゃね?…俺も1人になったら多分やんねーしな」

たしかに。
わたしも、今のこの状態じゃあ1人だと勉強しないかも…。

「…そだね。わたしも分かんないところあるし2人に教えてもらおうかな」


そう言って智也に笑顔を向けると。
智也はパッとわたしから視線をそらして、ぶっきらぼうに答えた。

「まぁ…英語以外なら見てやるよ」
「智也…英語、苦手だもんねー」
「うっせ!桜だって現代文、ダメだろうが」
「いやいや、智也の英語よりはマシだし!」

なんて、言い合っていると。
ふと、智也が何かを思い付いたかと思いきや、にやついた顔で提案した。

「じゃあ、今度のテストで勝負するか?」
「え?」
「俺が英語で、桜が現代文。それぞれ苦手科目で競って負けたほうは―――」

そこで言葉を区切って、 智也はわたしに向き直る。

そして真剣な顔でこう告げた。





「―――負けた方の言うことを何でもきく」







出された条件は…そんなもの。








「なっ…何でもきく?」


わたしが黙り混むといつもみたいにからかう智也。


「あり?もしかして、桜…自信ねーの?辞退するなら俺の勝ちってことで」
「はぁ!?そんなんじゃないから!いいよ、受けてたちますよ!」

やけになってそう答えると。

「うっし!これでやる気出たわ」

わたしの方に人差し指を突きだして。
智也はこう告げた。





「―――ぜってぇ、負けねぇから」





この時のわたしは。
智也がなんで、 こんな条件を出したのか。




その真意が何一つとして、 わかっていなかった―――。



Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.13 )
日時: 2017/06/12 00:28
名前: Aika

Episode8:ぬくもり。





カフェで勉強してたらすっかり外は真っ暗になっていた。

「もう遅いし…今日はこの辺までにしとこっか」

志穂が数学の教科書をそう言って閉じる。
わたしと智也も志穂の発言にうなずく。

「そーだな。結構すすんだしな」
「お母さんとかも心配するしねー」

カップに残っていたキャラメルラテを飲みほして
わたしたちはお店を出た。




***********************************************************


「じゃあ、俺はこっちだから」

いつもの交差点のところで。
智也はわたしと、志穂にむかって背中を向けてそう言う。
それから、歩を止めて。
くるりとわたしの方へ視線を合わせて口を開いた。

「あの賭け…マジだから。ちゃんと覚えとけよ」

真剣な声のトーンで念を押すかのようにそう言って
逃げるように智也は去っていった。
そんなに何回も言わなくたって、覚えてるのに―――。

なんてことをボーッとしながら考えていると。
状況の読めていない志穂が質問してきた。

「え?え?何よ、賭けって??」

わたしは、一度ため息をついた。
それから暗闇に染まったいつもの帰り道を歩きながら事の成り行きを志穂に説明をした。

「―――まぁ、そんなわけで。負けたほうは勝ったものの言うことを何でもきくという条件で勝負することになったんだわ」

黙って聞いていた志穂が。
不意に口を開いた。

「桜は…もし、負けたら。ほんとに智也の言うことを何でもきくつもりなの?」
「え?」

それは思いもよらなかった質問だったから。
府抜けた声が口から出てしまった。

「そりゃあ…そういう条件だから。約束は守るつもりだよ?」
「もしもっ…それが―――」

そこで何かを言いかけて。
志穂は困ったかのように言葉を詰まらせていた。

少しの間のあと。
真剣な表情から一転して、急に明るい笑顔で言葉を紡いだ。

「―――ううん、やっぱり何でもない。そういうことなら負けらんないね、テスト」
「うん、ありがと。勝ったらなんか、おごってもらおうかなー!」
「おー!いいじゃーん!ついでにあたしの分もお願いしたいわー」
「志穂は相変わらずちゃっかりしてんなー」

志穂が何を言いかけたのか。
ほんとは、 すごく気にかかるけど。
聞いちゃいけない…そんな気がして。



なんとなく、 このときのわたしは。




その部分に触れることができなかった―――。





■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■



「じゃーね!桜!また明日ー」
「うん!バイバイ」

志穂ともいつもの分かれ道で別れて。
そこから1人の通学路になる。
この辺は人通りも少なくて夜になると月明かりと街灯しかないので少し怖かったりする。

「すっかり、暗くなっちゃったなー。一応、お母さんには連絡したからだいじょーぶだけど…」

歩きながらスマホをしていると。

「ねぇねぇ、君」

後ろから突然声をかけられた。

「えっ…」

振り返ると見知らぬ男の人の集団がいた。人数は3、4人ぐらい。
なんだろう。…すごく嫌な予感がする。

「えっと…なんですか?」
「かわいーね。これからどっか遊びにいかない?」

嫌な予感が的中してしまった。
これは、まずいやつだ。
どうしよう、逃げなきゃ―――。

「おっと。逃がさないよー」

踵を返そうとした瞬間。腕を強く握られてしまった。

「ちょっと!離して―――」
「暴れんじゃねーよ!」

力強い声でそう怒鳴られて。思いっきり平手打ちされた。鈍い音が静かな路上に響き渡る。
平手打ちされた部分を手で押さえて、瞳にじわりと涙が滲む。

―――こわい、 誰か…助けて。






そう思った刹那。








―――ダンッ。







わたしの頬を平手打ちした男の1人が突然、誰かに殴られて。力なくその場に気絶した。
突然のことにわたしは、唖然としてしまった。




「―――オイ…汚い手でコイツに触れてんじゃねーよ」





その声は。
わたしのよく知っている人のもので―――。


世界で一番大好きな、 人。


「なっ…なんだよ、お前!」





殴りかかる残りの男の集団もその人に敵うことなく次々と返り討ちにあっていて。
気がつくと全員、 倒れこんでいた。



―――ずるいなぁ、この人は。


人がせっかく諦めようって頑張っているのに。
なのに。
なんで…こういうときに現れて助けてくれるの?



こんな風に守られたら―――。



ときめいちゃいけないって、分かってても…
ドキドキが止まらなくなるじゃん―――。




「桜!!」



その人は真っ先にわたしのもとに駆け込んできた。
それから、わたしの頬に優しく触れて。
わたしの大好きな、 優しい声で聞いてきた。

「大丈夫か?」


―――駄目だよ、裕樹さん。



こんな風に優しくされたら。
諦めたい気持ちも諦められなくなる―――。


気持ちが溢れそうになって…苦しくなる。



それからしばらくして、我に返ると。
恐怖心がなくなり、安心して。
滲んでいた涙が溢れて。
無意識でわたしは、ボロボロと大粒の涙を流しながらその胸に飛び込んでしまった。

―――「裕樹さんっ…ありがとうっ…助けてくれて…」

涙を流しながら、 そう言うわたしを。
裕樹さんは優しく背中に手をまわして抱き締め返してくれた。

「ったく…あまり俺を心配させてんじゃねぇよ、バカ」

裕樹さんは耳元で小さくそう呟いて。
そのまま、わたしが泣き止むまで抱き締めてくれた。








Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.14 )
日時: 2017/05/27 00:35
名前: Aika

Episode9:夜風吹く帰り道で。





ひとしきり、泣いて…落ち着いたあと。
街灯だけの暗い夜道を裕樹さんと一緒に歩いた。
隣を歩く裕樹さんの横顔が、なんだか格好よく見えて…心臓の高鳴りが止まらない。

「なんだよ?…俺の顔、なんかついてる?」

まじまじと見すぎたのか。
不思議そうな顔で裕樹さんにそう聞かれてしまった。わたしは、慌てて首を横に振って答える。

「いや、べつに―――…」

その時。
車が後ろから猛スピードでやってきて。

「あぶねっ…」

車道寄りにいたわたしを裕樹さんが勢いよく自分の方へ引き寄せた。
また、裕樹さんと身体が密着して。

心臓がうるさく、鳴り響く。

「あ…あり、がと」

触れられた手が熱い。
―――きっと、 今のわたし…顔赤いんだろうな。

「ったく…気をつけろよな」

ぶっきらぼうにそう言って裕樹さんは手を離す。
離された手が…なんだか名残惜しく感じた。

―――前までは好きでいるだけで、こうして傍にいられるだけで幸せだったのに。

今は…もっと触れてほしいって心のそこで叫んでる気がする。

そんな自分にため息が出た。
嫌だな、恋って―――。
好きになればなるほど…どんどん欲張りになっていく。



そんなことを思いながら裕樹さんの後ろを歩いていると―――。




「お前、 さ…長谷部と付き合ってんの?」




予想もしていなかった裕樹さんからの言葉に。
わたしの思考が停止した。



「え?」



間の抜けた声でそう聞き返してしまった。
長谷部って…智也のこと、だよね?

なんで…裕樹さんがそんな事を気にしてるのかわたしには全く理解できなかった。


「付き合ってないよ…智也はただの友達だから」

そう正直に答えると。
裕樹さんは背を向けたまま表情を見せずに口を開いた。

「ふーん…いつも一緒につるんでるみてーだし、俺はてっきり付き合ってんのかと思った」

その言葉を聞いて。
わたしは、愕然とした。
ただの…興味本意かって、なんとなく確信したから。
今の質問に…わたしに対する恋愛感情なんか微塵もないんだって悟ったから。

「先生は…いないんですか?付き合ってる人とか好きな、人…とか」

―――ずっと聞きたかったけど。聞く勇気がなくて聞けなかったことをわたしは聞いてしまった。

すると、先生の歩がピタリと止まった。

夜風がそよぐ音だけが路上に響いていた。


「―――付き合ってる奴はいねぇけど…好きな女はいるよ」


そう言いきって振り返る。
月明かりに照らされた裕樹さんの顔はいつになく真剣で。

その表情をみて。わたしは、なにも言えなくなる。
沈黙を破るように裕樹さんは続ける。



「―――まぁ、でも。…この想いを伝える気は一生ねぇけどな」

投げやりにそう言いはる裕樹さんに。
わたしは言葉を返す。

「どうして?…好きなら伝えればいいのに―――」
「―――叶わねぇよ」
「え?どう、して…」

即答で帰って来た言葉に。
わたしは唖然とする。

なんで、 叶わないなんて簡単に決めつけるんだろう。そんなの…伝えなきゃ分かんないじゃん。
そう疑問に感じていると裕樹さんがわたしの方へ視線を向けて。
それから小さく笑って再び続けて話す。

「―――好きだって言いたくても…言えないからな」


言葉の意味が理解できなかった。
言いたくても…言えない?




「他の人と付き合ってるとか?ですか?」

そう聞くと。裕樹さんは困ったような顔をしている。違ったのかな。

「あー!俺の話は終わり!大体、なんで教師と生徒で恋ばななんかしてるんだかな」
「いや、裕樹さんが振ってきたんじゃん!」
「え、そうだっけか?」
「うん。それで伝えられない理由はなんですか?」

興味津々にもう一度、そう聞いても。

「だーかーらー!その話は終わりだ。さっさと家帰って勉強しろ!テストなんだろ?」

言われて気づく。
そうだった!テスト勉強しなきゃだった!

「そーだった!ヤバイー!特に現代文ー!」
「あー…お前、中学のときから苦手だったもんなー」
「苦手って言うのもあるけど智也とテスト勝負しててさー…負けたほうは何でも相手の言うこと聞かなきゃなんないんだよねー」

何気なく裕樹さんにそう言うと。

裕樹さんが急に真面目な顔でわたしにむかって言う。

「は?…お前、長谷部とそんな約束してんのか?」
「え…まぁ」

そう言うと。裕樹さんは、大きくため息を吐いた。

「お前って…ほんっと、何も分かってないわ」
「え?え?何よ、急に」

狼狽えていると。
裕樹さんがわたしに人差し指を突きだしてきた。

「―――簡単に、男とそんな約束すんな」

低い声色で…少しだけ機嫌が悪そうな顔でそう言う裕樹さん。
何で、急に不機嫌になったのか分かんないけど。
とりあえずわたしは、頷いて答える。

「…わかった」

そう言うと。裕樹さんがいつもの柔らかい顔に戻った。その顔をみて、わたしはホッとする。

「あ!言っとくけど…今年からうちの学校、赤点とったら補習だから覚悟しとけよー」
「は!?聞いてないんだけど!」
「そりゃあ言ってねぇからなー。お前だけだぞ、今のところ知ってるやつ」

ヤバイよ、現代文赤点常連のわたしにとって滅茶苦茶辛いよ。

てか、これってもう補習確定じゃないのわたし。
わたしがこの世の終わりみたいな思考に走ると。
見かねた裕樹さんが助け船を出してくれた。

「あー…あのさ。俺でよければ教えてやるけど?」

その言葉に。わたしは目を輝かせる。

「ほんとに!?…やった!裕樹さんが教えてくれるなら赤点回避できるかもしんない!」
「オイオイ…大袈裟すぎ…」
「ありがとう、裕樹さん!」

笑顔でお礼を言うと。
裕樹さんは照れたようにそっぽを向く。

「ばーか!そう言うのは赤点回避してから言えよ」
「はいはい」

こういう風にわたしが困ってると。
助けてくれるところとか。
照れ隠しするところとか。素直じゃないところとか。





貴方の色んな表情とか仕草とか…言葉に一つ一つにドキドキして。






そして感じる。








やっぱり、 貴方が大好きだってこと―――。

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.15 )
日時: 2017/06/06 00:14
名前: Aika

Episode10:特別だから。




叶わないって痛いほど分かっていても。
届かない気持ちだって知ってても。

それでも。




君が好き―――。



***********************************************************



「だーから…何度言えば分かるんだよー。そこはラ行変格活用でこう直すの!」

現在。午後9時過ぎ。
わたしの部屋にて裕樹さんと勉強中。
古典で分からないところを徹底的に教えてもらっているのですが―――。

全く分からなくって困っている。

「もうワケわかんない!何よ、変格活用って!全然覚えらんないんだけど!!」

こんな表、今からやっても覚えられる気がしない。まぁ、常日頃から勉強していなかったわたしが悪いんだけど!

「ったく…桜は直前にいつも詰め込もうとするから駄目なの!前もってやっておきなさい」
「裕樹さんは何ですか、わたしのお母さんですか!」
「なんだよー、それ」

そう突っ込みを入れると裕樹さんは楽しそうに笑った。
その笑顔にまた、鼓動が大きく揺れる―――。

それと同時にその優しい笑顔をわたし以外の生徒に向けていると思うと。
心の中が黒い感情で渦巻くような嫌な気持ちになった。
やだな、わたし。
何をそんな小さなことに苛立っているんだろう。
彼女でも何でもないくせに―――。


「―――桜?ボーッとしてどーしたんだよ」
「えっ…いや、なんでもない」

いかん。今は勉強中なんだから集中しないと。
裕樹さんだって時間を裂いて教えてくれてるんだから。
それにしても―――。

「裕樹さんがわたしの勉強見てくれると思わなかった」

それも、裕樹さんから勉強を見てくれるって言ってくれた。
先生の立場だから一人の生徒に肩入れなんかしないだろうなって感じてたから。

裕樹さんの方へちらっと視線を向けると。
裕樹さんは少しだけ頬を赤く染めながら。

「―――お前は…特別だから」

予想外の言葉に。
わたしの思考は停止した。驚きのあまり握っていたシャープペンを落としてしまって。
コロコロ…と、床へと転がっていってしまった。

それをとっさに拾おうとしたとき。

わたしの手の上に。
裕樹さんの手が重なって。

手が熱を帯びたみたいに、熱くなった。

「っ…ごめんなさい!」

反射的に手を引っ込めようとすると。
裕樹さんに勢いよく腕を捕まれた。

その行動にまた、ビックリして―――。

わたしが顔を上げると。




―――すぐ近くに裕樹さんの真剣な顔があった。




「あ…の…裕樹、さん?」



震える声で彼の名前を呼ぶと。
裕樹さんはハッとして。


「わりぃ!」


そう言って。
パッと掴んでいたわたしの手を離した。


静まり返った室内には時計の針の音だけが鳴り響いていた。

しばらくして、 裕樹さんが口を開く。


「もう遅いし…帰るわ。勉強はまた今度な」


わたしは、その言葉になにも返すことができなくって。去っていく彼の姿を見送るばかりだった。
力なく閉まる玄関の扉の音を聞いて。

わたしは、 自分の部屋でうずくまる。





捕まれた腕は…まだ、 彼のぬくもりが残っていて―――。





『お前は…特別だから』






特別ってなに?
幼馴染みだから?それとも―――。






聞きたいことは山ほどあったのに。
このときのわたしは。






なぜか、その場から一歩も動けなかった―――。









Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.16 )
日時: 2017/06/10 17:38
名前: Aika

Episode11:賭けの行方。




あのとき。
貴方が触れた手のぬくもりが。



今でも鮮明に残っていて。
忘れられない―――。



*********************************************************



―――あれから…なんとなく裕樹さんと気まずくなってしまって。
学校で目が合っても、すぐにそらされてしまう。
廊下ですれ違っても挨拶を交わすどころか、なにも言わずに素通りされてしまう。

そんな日々が続いてあっという間にテストの日がやってきて―――。

そして。




テスト返却の日―――。





「岡崎~」




裕樹さんに名前を呼ばれて、テスト用紙を取りに行くと。
そこに書かれている数字に衝撃が走った。



「んげっ!!」



わたしは、ヨロヨロとした足取りで自分の席へと向かう。
すると、智也がニヤニヤした顔でわたしのもとへ寄ってくる。


「さーくら!何点だったー?」


わたしは、横目で智也を睨み付けながら答える。


「28点」


すると。
智也は吹き出した。


「に…28点って、おまっ…あはははっ」
「笑いすぎだよ、智也!そして、わたしの努力の結果を笑うとか最低だわ」
「わりぃわりぃ…じゃあ賭けは俺の勝ちだなー。俺は赤点なんもねぇし」
「うぐっ…」

そう。
今回、智也は苦手科目を見事にクリアしてというか、全科目80点以上という珍しく好成績を出している。
智也は勉強すればなかなか頭が良かったりするからな…。


「はぁ…補習やだなぁ」
「桜。話を逸らすな」

話題を転換して遠ざけようとしたけど智也には見破られた。鋭い。

「わーかりましたよー!何がご希望なんですかね?」
「なんで、ちょっと喧嘩腰なんだよ、お前。まぁいいや…あのさ」


智也は少しだけ間を開けてから。
それから、わたしの瞳を真っ直ぐにみて言う。





「―――俺と…1日だけ…デート、してくれない?」






突然の智也からのそんな言葉に。
わたしは、戸惑ってしまって…唖然としてしまった。
聞き間違いかと思った。
だけど、 智也の真剣な瞳と少しだけ赤い頬をみて…。
そうは思えなくなってしまった。



「い…言っとくけど拒否権はお前にはねぇからな!今週の日曜の10時に駅前集合だから!ちゃんと来いよ!」


そう吐き捨てて。
智也は自分の席へと帰っていった。
何よ…わたしの都合も聞かずに勝手に決めて。
まぁ、日曜は暇だけど。


でも。





なんで。







智也は…わたしなんかとデートに行きたいのかな。







そんな事を頬杖をついて、窓の外の景色をぼんやりと見ながら考えていた。








その様子を。








「………………」







―――裕樹さんが見ていたとも知らずに。





Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.17 )
日時: 2017/06/12 01:35
名前: Aika

Episode12:期待。




言葉にしなければ
心の奥底にある気持ちなんて
相手には何一つ伝わらない―――。



ねぇ、 教えてください。



貴方はわたしのこと、 本当はどう想っていますか―――?



***************************************************************



「はぁ…補習、 やだなー」


―――放課後。
現代文で赤点を取ってしまったわたしは、補習対象者になってしまったため重い足取りで国語準備室へと向かっている。

本当に最悪だ―――。

何が最悪かと言うとクラスで現代文に関して赤点を取ったのはわたしだけだったらしく。
1人で補習を受けるという状況が尚更嫌だった。

しかも。

補習を担当するのは…相田先生。
つまりは、裕樹さんということになる。

それが、 耐えられそうにない。

だって、 今…まともに口聞いてないし。
向こうがなんか、わたしのこと避けてるし。
それなのに。

「2人っきりで…補習とか…マジで勘弁してくれー」

そう呟いて。
今日の1日で何回出たかも分からないぐらい、わたしはため息を大きく吐いた。

――そして。

気がつけば、国語準備室の前―――。

「うだうだしてても仕方ないし。ちゃっちゃとやって、さっさと帰ろ」

やけになって、勢いよく準備室の扉を開けると。

そこにいたのは―――。

「先生―――?」

椅子に座って眠っている裕樹さんの姿―――。

窓は少しだけ開いていて…5月の少しだけ涼しい風が優しく吹いている。
そして、 裕樹さんの黒髪をわずかに揺らしていた。

わたしは、不覚にも。

初めて見る裕樹さんの寝顔に。
少しだけ…ときめいてしまった。

いつもは、眼鏡をかけているのに。
外しているところとか。
読みかけの本を手に持ったまま眠りこけているところとか。

わたしの知らない、違った表情を見つける度に鼓動が高鳴って…ドキドキが止まらない―――。

「疲れ…溜まってたのかな」

わたしには、裕樹さんの仕事内容まではよくわからないけど。テスト明けだし採点の作業で疲れてたのかもしれないなーと、ぼんやりと考えていた。



しばらくの間。



傍によって…気持ち良さそうに眠りこけている裕樹さんを眺めていたら。

―――触れたい。



素直にそう感じてしまった。




「少しぐらいなら…大丈夫、だよね」




わたしは、そっと。
手を伸ばして。
裕樹さんのサラサラの髪に触れて、 優しく撫でた。

―――すると。


バサリッ…。

裕樹さんが手に持っていた本が勢いよく床に落ちたと思ったら。
勢いよく、 腕を捕まれた。


捕まれた腕の方に目をやると―――。



「なに、 してんの?」



そう言って。
裕樹さんは、 寝起きの顔をわたしに向けていた。

眼鏡がないから。
見慣れないその表情に。
また、 心臓がバクバクしてうるさい。


わたしは、 とっさに言い訳をした。


「えっと…その…髪にゴミがついてたから取ろうと思っただけ!」


苦しいかな…と、思いつつもわたしがそう言いきると。
裕樹さんは。


「ふーん…ま、いいや」


1言。そう言ってからわたしの手を離して。
眼鏡をかけて。
机の引き出しから補習プリントを取り出してわたしに手渡した。
それから、対して気にした様子でもなく。

「じゃ、そのプリント全部終わらせたら帰っていいから。分からなかったら聞いて」

淡々とした風にそう言って。
わたしの横に座った。

―――なんだろう。
別に怒ってないのかな―――。

わたしは、シャーペンを走らせて。
渡されたプリントを無言で解き続けた。

だけど。
心の中の奥底では。
裕樹さんが何を考えているのか全く理解できなくって―――。
モヤモヤとした感情が渦巻いていた。

「あのさ―――」

―――不意に。

裕樹さんから、口を開いた。

わたしは、シャーペンを走らせながら。

「ん?なにー?」

耳だけを裕樹さんの方へ傾けた。
すると。
裕樹さんは頬をポリポリとかきながら。
わたしの方へは視線を向けず、こんな質問を投げかけた。

「―――長谷部に…賭けの内容、なんて言われたんだよ?」

途端。
シャーペンを走らせていた手がピタッと止まる。

まぁ、現代文のわたしの点数からきっと賭けに勝ったのは智也だって裕樹さんも薄々感じたんだと思う。
だけど。

なんで。
賭けの内容を裕樹さんが気にするのか。
それがわたしには、分からなかった。

―――わたしがプリントの問題から遠ざけて。顔を上げて裕樹さんの方へ目をやると。

裕樹さんは、目線を合わせてくれず。
うつむいていて、表情はよく見えなかった。

わたしは、正直に打ち明けた。




「―――今度の日曜…デートしたいって言われた」




しばらくの沈黙のあと。
裕樹さんは、か細い声で聞く。




「行くの?…長谷部と」






わたしは、小さく頷いた。






「そりゃあ、約束だし。破るわけにはいかないっしょ」







本音を言えば。
裕樹さんが好きなのに。
他の人とデートに行くのは…気が引けた。

裕樹さんが引き留めてくれたらな―――。

なんていう、夢物語を心のなかで感じていると。







「―――行くなよ」










空耳かと思った。










「え?」









ビックリして。
呆けた顔でそう言うと。







目の前には、 今までに見たことがない
裕樹さんの真剣な顔があった。









「―――なーんて、な。冗談。…デート、楽しんでこいよ」






嬉しい…そう思ったのも束の間で。
すぐさま、裕樹さんはそう付け足したかのように言った。それからいつもみたいにわたしの頭を優しく撫でた。

―――やっぱり、 子供扱いだ。







一瞬だけ。








『行くなよ』








そう言った言葉が。
本音かと思ったのに―――。
もしかしたら、 両思いかもってほんのちょっとだけ期待したのに。







裏切られたみたいで。
わたしにとっては、すごくショックだった―――。
















Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.18 )
日時: 2017/06/23 18:39
名前: Aika

Episode13:嘘と本音。





「――――――よしっ。プリントは大方合ってたしこの位なら合格だな。帰っていいぞ」

1時間ぐらい、解くのにかかった何枚ものプリントを机の上で整えながら
裕樹さんはニコッと笑ってそう言った。

わたしはペンケースや教科書を鞄にしまいながら、さっきの言葉を思い出していた。

『―――行くなよ』

裕樹さんは冗談だって笑いながら言った。
だけど、 やっぱりわたしは心の中で納得がいっていなくって。

だって…
あんなに、 切ない瞳をしてたのに?
あれは、 本当に冗談だったって…裕樹さんは言い切れるの??

今すぐにでも貴方の口から聞きたかった、 けど。

聞いてしまえば。








今の関係が壊れるんじゃないかって…思う。









それが
すごくこわい――――。








「―――桜??うつむいて、どうしたんだよ」







気づけば。
すぐ近くに、 わたしをのぞきこむ裕樹さんの心配そうな顔があった。

「具合でも悪いのか??」

わたしは…そっとうつむいていた顔を上げて。
裕樹さんのシャツの裾を軽くつかんで。
すがりつくように、聞いた。
頭では聞くべきじゃないことだって分かってる。
だけど。



もう、 止められない――――。




「―――さっきの言葉は…本当に冗談??」




裕樹さんは、一瞬固まった。
それから一呼吸置いてから口を開く。




「さっきの…言葉って??」




本当は…何のことか、 分かってるくせに―――――。
とぼけようとする裕樹さんにいらだちを感じながら、わたしはもう一度言う。

「……智也と…デートに行くって言ったら、行くなって言ったじゃん」

少しだけ荒っぽい声になったと自分でも思う。
だけど、 わたしは貴方の本音が聞きたくて。
ただそれだけで、この時はいっぱいだった。

「あれはっ…嘘かって聞いてんの!!」

なぜだか、 わたしの瞳は涙でいっぱいになっていた。
どうして、 涙なんか出してるんだわたしは。
ただ、 わたしは裕樹さんの本音が聞きたいだけなのに。
それ以上なんか何も望んでないはずなのに。
なのに。


どうして、 こんなにも辛くって…胸の奥が苦しいの――――??





「―――桜…あの、さ」
「ごめん、 やっぱりいい」




答えようとする裕樹さんの声を遮った。
それからわたしは涙をぬぐってから先生と向き合う。



「今のは…忘れて」
「おいっ…さく―――」

先生のわたしを呼ぶ声も聴かずにわたしは教室の扉を勢いよく閉めて走り去る。
廊下を駆け抜けながらも、 ぬぐってもぬぐいきれない。
とめどなく流れる涙の雨。

わたし、 最低だ。

自分から聞いたのに。
先生の答えも聞かずに逃げるなんて―――。

一気に階段を駆け下りて、 着いたのは下駄箱。
わたしは下駄箱にもたれかかって。
力なくその場にしゃがみこんだ。

髪をかきむしりながら、一人ポツリとつぶやく。

「何がしたいんだ、わたしは…」






情けなさすぎるよ、 ほんとに。





入り口の扉からは。
夕陽の光が差し込んでいた。



****************************************************************


■裕樹side■






桜が出て行った扉の方を。
俺はその場でただ、 呆然と見つめていた。



「泣いてたな、 アイツ」



まぁ、泣かせてしまったのは…俺、なんだけど。



『桜…あの、さ』


あのとき、 俺は無意識で。
桜に、 伝えてしまいそうになった。

自分の心の内に。
秘めていたもの。


途端に。
顔が熱くなって。
恥ずかしくなる。




「あーっ…桜の奴…何、言わそうとしてんだよ!!つーか、なんでいきなりあんな顔して聞いてくんだよ!!まぁ、冗談とか言って嘘ついた俺が悪いんだけどさ…」

だけど。



―――言えるわけない。



窓に映る夕焼け空を見ながら。
ポツリとうそぶいた。



「―――桜が好きだから…長谷部とデートに行くな、 なんて」







その言葉は。














誰にも届くことなく、 消えてしまった――――。


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