コメディ・ライト小説(新)

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罪恋***好きでいてもいいですか?***
日時: 2019/07/24 21:27
名前: Aika
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12215

+:*;.・。prologue。・.;*:+



最初は見ているだけで幸せだった。

結ばれなくてもいい。
遠くから貴方の笑顔を見られるだけで充分だった。
それ以上は何も望まなかった。


なのに。



いつからだろう。
こんなにも、 あふれ出すぐらい。
抑えきれないぐらいに。
貴方を好きだと思い始めたのは――――。



罪恋***好きでいてもいいですか?***

更新start→2017.4.2


***目次***

登場人物紹介>>1>>39

*特別企画*
参照600突破記念!雑談会>>41

*.・1章・.*
第1話>>2第2話>>5第3話>>6第4話>>7
第5話>>10第6話>>11第7話>>12第8話>>13
第9話>>14第10話>>15第11話>>16第12話>>17
第13話>>18

*.・2章・.*
第14話>>19第15話>>20第16話>>21第17話>>24
第18話>>25第19話>>26第20話>>27第21話>>28
第22話>>29第23話>>30第24話>>31

*.・裕樹side 回想編・.*
第25話>>32第26話>>33第27話>>36第28話>>37
第29話>>38第30話>>40

*.・3章・.*
第31話>>42第32話>>43第33話>>44第34話>>45
第35話>>46第36話>>47第37話>>50第38話>>51
第39話>>52第40話>>53

*.・4章・.*
第41話>>54第42話>>55第43話>>56第44話>>57
第45話>>58第46話>>59







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Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.55 )
日時: 2019/02/04 01:53
名前: Aika

Episode42:見えない未来に、思うのは。




その日のお昼休みのこと―――。
志穂は、珍しく教室じゃなくて屋上で食べたいと言い出した。
わたしは、笑顔でいいよと返した。

きっと―――。

屋上にした理由は…誰にも聞かれずにわたしに相談したいことがあるからだと察したからだ。


「―――あたし…智也が好きみたい、なんだよね」



屋上の夏の生暖かい風が吹くなか。
志穂は、優しい声色でそう言った。
わたしから、背を向けていたため
志穂が今、どんな表情をしているのかは分からなかった。

今朝の二人の様子で…本当になんとなくだけど察していたからわたしは、さして驚かなかった。


少しの間のあと、わたしは…ゆっくりと口を開いて志穂に問いかける。



「―――もしかして、さ…夏祭りに告白したりした?」



聞くべきではない、
そう頭では分かっていても考えとは裏腹にわたしは
はっきりとそう口にしていた。


「おー…桜ってば~、ダイレクトに聞くね」



そう言って志穂は、乾いた笑い声を見せて。
それからうつむいたまま、答えた。



「―――気持ち、抑えられなくて…告ったんだけどフラれた」



震える声で…か細かった。



知らなかった―――。




ずっと、志穂と智也の傍にいながら。
わたしは、 志穂の想いに全く気づけずにいた。
いったい、いつから智也のことをそういう対象として見ていたのだろうか―――?
ましてや、志穂は…智也のわたしへの気持ちにも気づいていた筈なのに―――。

きっと…諦めようと忘れようと…そう思った瞬間だってあった筈なのに―――。

それでも…諦められず好きでいた気持ちは、きっと辛かったはずなのに。

誰にも言えずに…1人でずっと抱え込んでいた。



そう思うと…わたしから大粒の涙が溢れてこぼれ落ちて。


「桜?…どーしたの?」


急に泣き出したわたしにビックリした様子で志穂が見ていた。


「ごめんね…わたし、志穂が智也をそういう風に見てるの全然わかんなくって…それなのにわたしと一緒にいるの…辛かったよね」

そう言うと…志穂がゆっくりとわたしの元へと駆け寄ってくれて。
ハンカチでそっと涙をふきとって口を開いた。


「―――桜はなんも悪くない。たしかに智也に一途に愛される桜が羨ましいって感じる時もあったけどさ…その前にあたしは桜のことも大好きだから!」


ね?

そう言いながら見せる志穂の顔はとっても優しくって…。
わたしは、また涙がひとつ、こぼれた―――。



神様は意地悪だ―――。



みんながみんな、幸せになれればいいのに。
それなのに。
この世のなかには、想いを寄せる相手に報われずに涙する人もいて―――。



恋というものは、時には残酷で儚いものだとあらためて実感した―――――。





わたしと、裕樹さんはこのさき…一緒にいられる未来が存在しているのかな―――?


裕樹さんは教師でわたしは生徒だから
今の関係がずっと続く自信なんか微塵もない。
だけど―――。






今だけは…この先もずっと隣にいるのは裕樹さんであってほしい―――。





そうやってわたしは…固く信じていた―――。









Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.56 )
日時: 2019/02/08 01:48
名前: Aika

Episode43:夕暮れのなか、揺れる想い。




―――キーンコーン…。


放課後を告げるチャイムが鳴り、あっという間に新学期初日は終わってしまった。


先ほどの…志穂の泣きそうな顔がさっきから脳裏によぎっては離れずにいた。

―――志穂のあんな辛そうな表情…初めて見たかも。

何とも言えない複雑な想いを胸に抱えて…教室から出ようとしたときだった。

―――ドンっ

扉の前で…
ちょうど、教室に入ろうとした人物とぶつかってしまった。

「あっ…すいませ――」

そう言いかけた言葉が詰まる。
そこにいたのは…

智也だったから――――。



ヤバイ。


志穂のこともあるし…今はどんな風に智也と接したらいいのか分かんない。


わたしが、しどろもどろしていると。



智也はさして、気にした様子もなく。



「桜かー、 大丈夫だったか?怪我とかしてねぇか?」


ほんとに…いつも通りすぎて。
調子が狂いそうになる。


わたしは、智也から視線をそらして


「うん…だいじょーぶ…じゃね」


自分でも不自然だと思いながら、逃げるようにその場から去った。
だって…志穂の気持ちを考えたら。


もう、 智也と前みたいに仲良くなんて話せない。



だから、 だから――――。



「―――待って!」


瞬間。

後ろから腕を捕まれた。

な、 なんだろ。
わたしが横目で見ると…智也が髪をかきむしりながら、問いかけてきた。

「―――桜、さ。なんか、よそよそしくね?」

―――ギクッとした。

なんで…いつも智也は…わたしの心の奥底を読み当てるのだろう―――。

なにも答えられずにいると。
智也は優しく笑う。


「―――志穂から…祭りの時のこと、聞いたんだろ?」
「なっ…なんで、わかんの!?」

ビックリして…過剰な反応をしてしまい、周囲の視線が私たちに突き刺さる。
罰の悪い顔になってしまったわたしに、智也は耳元でコソッと言う。


「―――部活…今日はねぇから、一緒にかえろっか」
「あ……」

答えられずにいたわたしを無視して智也は鞄を取りに行ってしまった。



ほんと…勝手なやつだ―――。



ぼんやりとわたしは、そう思いながら扉の前で結局、智也を待ってしまった―――。



■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


いつもの帰路を智也と今日はふたりだけ。
けど…お互いに無言を貫いていて、静寂に包まれている。

―――いつも…智也と何を話してたっけ。

ヤバイ…頭が真っ白だよ―――。


「桜…だいじょーぶ?」
「へ?…あー、ごめん。なんか、智也と二人っきりが久々すぎて何を話したらいいのか分からなくなってるだけだから、ほんっと気にしないで」

捲し立てるようにそう言うわたしを見て、智也はクスッと笑った。

な、 なんで…笑うんだ?


すると、智也がこちらを優しい表情で見る。


「それってさー…俺のこと、意識してくれてるってこと?」


しばらく…思考が停止して。
ハッと我に返って言葉の意味を理解する。


「ちっ…違うから!断じてあんたのことなんか意識してない!」
「えー、そんなに否定されるとさすがの俺も傷つくなー」

全力で否定するわたしを見て。
智也がまた、茶化すように言う。
絶対にからかわれてる。
そう確信して睨んでいると楽しそうに智也が笑う。

「ごめん、 桜と二人でいられるのが嬉しくって…つい、からかっちまった」

不意に言われたその言葉に。
ほんの少しだけ、胸の鼓動が高鳴ってしまった。

無邪気な顔で…そういうこと、言うのはずるいな―――。
なんて、考えていると。
突然、智也は歩を止めて真剣な顔を向けて口を開く。

「言っとくけど…俺はまだ、お前が好きだから」

夕暮れのなか。
夏の…生暖かい風が、二人の間に流れる。

わたしは、俯く。

智也の想いは、嬉しい―――。

けど、わたしには…先生がいるし。
それに志穂のこともある。
だから…智也を選ぶことはたぶん、この先ない。

はっきりと、そう言おうとした。
だけど。






「―――たとえ、桜が先生を好きだとしても。俺は諦めない―――」






あまりの真っ直ぐな智也の視線から目が離せなくて―――。
気づけば…見とれている自分がいた―――。



Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.57 )
日時: 2019/03/01 00:53
名前: Aika

Episode44:秘密の休日。




―――『たとえ、桜が先生を好きだとしても。俺は諦めない』



その言葉に結局何も返せないまま。
その日のわたしは、帰路について気がつけば家にいた。

自分の部屋のベッドにダイブする。

「―――何を…揺れてるんだろ、わたしは」


先生のことが……好きなのに。
智也に揺らいでる自分が情けなかった。

先生といる時間が短くて、不安になっているからだろうか―――?
だとしても、最低すぎる。


ため息をついていると。
不意にスマホの着信が鳴った。
その表示されている名前にわたしは、驚く―――。


―――相田 裕樹


「えっ……嘘」


わたしは、 スマホを手にとって電話に出た。


『あっ……もしもし?桜?』
「ゆっ……裕樹さん、 どうしたの?」


電話とはいえ久しぶりに学校以外で話をしているからか、わたしの声は緊張で震えていた。


『あ…んーと、これといって用はないんだけどさ…桜の声が聞きたくなっただけ、てきな?』

笑いながら、 裕樹さんはそう言っているけど
わたしの顔は途端に熱くなっていた。
電話でよかった―――。

これなら、 照れてるのバレてないし―――。


「もー、 何それー」


照れてるのを隠すように、 取り繕ってそう返した。すると、裕樹さんの笑い声が向こう側から聞こえてくる。
やっぱ、 電話で話すと微妙に声のトーンとか違うよな―――。
なんてことを、ぼんやりと考えていると。

不意に裕樹さんが口を開いた。


『あのさ、桜。 今週の土曜日って予定ある?』
「え、 ないけど…」
『じゃあさ、 デート…しない?』

突然の裕樹さんからのお誘いにわたしは、ビックリした。

「え、 いいの?」
『まぁな!遠出でも大丈夫か?』
「うん、大丈夫ー」
『じゃあ、 決まりな!』

詳細はLINEでやりとりをすることになり、その日の電話は終わった。

「裕樹さんと…デートか」

前回は夏祭りでみんなと一緒だったけど。
今回は、初の二人っきりのデート。
つまり、


ほんとの初デートだ―――。



「楽しみだなー…何着てこうかな」



この日のわたしは、 土曜日が楽しみすぎて
まったく寝つけなかった―――。




■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □


それから、 土曜日―――。



ついに、 デートの日です。




「おまたせっ!」



マンションの下で待っていた裕樹さんの元へそう言って駆け寄る。

「待ったかな?」
「いや、俺もいま来たところだから。じゃあ、行くか」
「うん」

それから、 裕樹さんの車に乗って出発した―――。


そういえば、 裕樹さんの車に乗るのって
すごく久しぶりかも。
中学生の時以来かもしれないな。

なんてことを、ぼんやりと考えていると
不意に裕樹さんが口を開いた。


「服、 可愛いじゃん」
「へ!!?」


まさか、 誉められると思っていなかったので変な声が出た。


隣で運転している裕樹さんを見ると顔が赤く染まっていた。
裕樹さんでも…照れたりするんだな―――。

「あ、 ありがと」

わたしは、うつむきながらそう言った。
それから、気をまぎらわそうと思い話題を変えた。

「とっ…ところで今日はどこに行くの?」
「あー、 遊園地行こうと思って!少し遠いところなんだけど」
「遊園地かー!いいね!楽しみだな~」



そんな感じで他愛のない会話をしながら車の中での時間は流れた―――。



―――車を走らせて2時間。




目的地に到着した。



「わぁー!すごーい!久しぶりの遊園地だー」
「どれから乗ろうか」

マップを見ながら二人で悩む。

と、いうか。
我に返ると、すぐ触れそうな距離に裕樹さんがいることに気づき鼓動が高鳴る。

―――ヤバイ。


鼓動が…苦しいぐらいに高鳴ってる。

「桜?どした、ボーッとして」
「なっ…なんでもない。あ、あれ乗ろうよ」

わたしは、誤魔化したくて
適当な乗り物を指差して裕樹さんの手を引く。

「おっ…おい、桜!お前、ほんとにあれに乗る気かよ!」
「いいのいいの!どれ乗っても楽しいし!」
「けど、お前…怖いの苦手じゃ―――」


裕樹さんの声がこのときのわたしには、まったく届いておらず
そのアトラクションがお化け屋敷だと気づいたのはなんと、わたしたちの番になってからだった―――。

「ぜっ…絶対に手を離さないでねー」
「分かってるよ。お前こそちゃんと掴んでろよなー」
「うっ…うっさいー」

裕樹さんの腕にしがみつきながら、前に進む。
半泣きの状態のわたしに比べ裕樹さんは平然と前へ進んでいた。

怖く、 ないのかな。


「裕樹さんってさー、 お化け屋敷怖くないの?」
「こんなの作り物だろー、全然怖くねぇ」

うっ…さすが、大人だな。
こういうときも、冷静でクールなんだ―――。

なんか、 新しい一面を見つけた気がする。


瞬間。

―――ガタンッ。
急に後ろから物音がして。


「ひぃっ!!!」


わたしは、ビックリして
裕樹さんの体に抱きついてしまった。

それから、数分して何も起きないことを把握してから…改めて今の状況を理解した。

あれ?
わたし、いま…裕樹さんに自分から抱きついてる?
途端に恥ずかしさで顔が赤くなってわたしは離れようとした。


「ごっ…ごめん、 今離れ―――」


すると、 裕樹さんが
さらに強くわたしを抱き締め返してきた。


「―――え?」





何も言わずに、 ただ抱き締める貴方に対して。
わたしも、そっと裕樹さんの背中に腕を回した。
耳元から伝わるのは…裕樹さんの鼓動の音―――。



何ともない様子でいつも、わたしと一緒にいるけど…裕樹さんもこんな風にドキドキしたりするんだ―――。




そんなことを、このときのわたしはぼんやりと考えていた―――。



Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.58 )
日時: 2019/07/13 22:12
名前: Aika

Episode45:時の流れは、 瞬く間に。






この時間がずっとずっと…続けばいいのに――――。

この時のわたしは、 無邪気にそんなことを考えていたんだ――――――。



***************************************


気がつけば、 日は暮れていて―――――。
すっかり夕方になっていた。

「もうほとんどのアトラクション乗りつくしたなー」
「うん、 そうだねー」

裕樹さんの隣を歩きながら改めて1日が早かったことを実感する。
裕樹さんと一緒にいると…時間が早く感じるのはなんでだろ―――――。

ボーッとそんなことを考えていると。
不意に裕樹さんがわたしの手をとって、走り出す。

「えっ…」

ビックリして…力なくそんな声を出すと。
裕樹さんが、観覧車を指差して笑顔で言う。

「最後…あれ乗って帰ろうぜ!」

その言葉にわたしは、笑顔で大きく頷いて。
握ってくる、温かい裕樹さんの手を…力強く握り返した。



***************************************


観覧車に乗る頃にはすっかり、辺りは暗くなっていて。

「うわー…きれー…」

街灯やビルの明かり…車のライトなどが夜の暗闇の中で輝いていて…観覧車から見る景色はすっかり夜景になっていた――――――。

「だな!なんか、夜の観覧車ってワクワクするよなー」
「何それ…裕樹さん、子供みたい」
「うるせー…男ってのは幾つになっても子供みたいなものなのー」
「へぇー」

何気ない会話のやりとりの、ひとつひとつが楽しく感じてしまう。

このまま…時が止まってしまえばいいのに。


そんな風に思えるぐらい…先生との時間は楽しくて一緒にいる日々を重ねる度に、かけがえのないものへとなってきている。


「――――今日…楽しかったか?」


脈絡もなく、突然そんなことを聞かれて。
わたしは、一瞬唖然とする。
ポカーンとしていると。裕樹さんが言葉をさらに重ねる。


「いや…あのさ、桜の好きなことっていまいちよく分からなくて…とりあえず、遊園地にしちまったんだけど…楽しんでもらえたか本音を言うと心配でさ…それで気になって聞いたんだけど――――」

必死になっている、裕樹さんが可愛くて。
わたしは、クスッと笑ってから答える。

「―――――わたしは…隣に裕樹さんがいてくれるなら、どこでも楽しいよ」

そっか。
この瞬間…なんで、裕樹さんと一緒にいると時間が早く感じるのか…わかった。


簡単なことだった―――。
好きな人と一緒にいると、楽しくって…時間が経つのを忘れてしまうから、 なんだね―――――。




「桜」



耳元で…そっと、裕樹さんがわたしの名を呼ぶ。
そして、ぎゅっとわたしの手を握って。
口を開いた。



「好きだよ。 ずっと、一緒にいような」



その言葉にわたしは、迷いもなく答えた―――。



「うん、 わたしも…大好きだよ」



それから、観覧車のゴンドラが頂上にちょうど差し掛かる頃――――。




二つの影が重なって…わたしたちの唇が触れ合った。





この瞬間… わたしは、 一番幸せだと
そう思っていた――――――。





Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.59 )
日時: 2019/07/24 21:31
名前: Aika

Episode46:黒い感情。





休み明けの月曜日―――――。
わたしは、土曜日の…先生とデートしたときのことを思い出しては、にやけていた。

―――ヤバイ。こんな顔で教室なんか入って行ったら完全に変なやつだよ………。

心の中でそう呟いて、わたしは軽く両手で頬を叩いてから教室へ向かおうとしていた。

その時―――。




不意に…
視界に入ったのは―――。

廊下の窓際で楽しそうに話す女子生徒と…裕樹さんだった――――。




思わずその場に立ち尽くす。


わかってる――――。
裕樹さんは…あくまでも先生として生徒と話しているだけだってこと。
裕樹さんは…わたしのことがちゃんと好きだってこと。

だけど…。
やっぱり、 裕樹さんが他の女の子と仲良く話している姿を見るのは…つらい。

その場から凍りついたように動けなくて、ただ仲良く話している二人の姿を見つめていると。
裕樹さんがこちらに気づいて、目が合ってしまった。
とっさのことに動揺してしまい、わたしは思わず目をそむけてしまった。

それから…逃げるように教室へと入った。

こんな小さなことで、嫉妬してしまう自分に嫌気が差した――――。



*****************************************

―――「ここは、模試とかでも重要になってくるところだから押さえておくように」

現代文の授業中…。
付き合ってからは裕樹さんの授業の時は付き合う前よりも真面目に聞くようになってたけど。

今は…さっきの女子生徒のことでモヤモヤして…授業どころじゃなかった。

あの女の人…。
上履きの色が違ったから、3年の先輩…かな。
すごく大人っぽくて綺麗な人だったな―――。
裕樹さんもやっぱり、ああいう人が好みなのかな。

そうだとしたら…わたしに勝ち目なんかないな―――って、なんでわたしが彼女なのに弱気になってるんだろう。

いかんいかん。
彼女なんだから…もっと、自信持たないと!

「じゃあ…最後にこの間やった小テスト返すぞー」

小テストか―――。
あんまり、自信なかったやつだ。
ヤバイな……。

返される前から気落ちしていると、わたしの名前が呼ばれた。
返事をして、取りに行き自分の席に戻る。
おそるおそる得点を見ると…60点という数字が見えた。
まぁ、赤点を取ってた頃よりかは成長してる、か。
なんて、自己満足な気持ちでいると。
答案用紙の一番最後の問題の隣に何か書いてあるのに気づいた。

『―――今日、元気ないけどなんかあったのか?なんか悩みごとがあるなら今日の夜、電話して。俺でよければ相談に乗るから』

気づかれてることに
ビックリして、顔を上げると。
裕樹さんは、ニコッと微笑んでくれた。

途端に鼓動が大きく高鳴る。



―――裕樹さんは、 仕事中で大変なのに…ちゃんとわたしのこと見てくれてた。

それなのに、わたしは。
小さいことに嫉妬して…ひとりで落ち込んで。
どうしようもないな。





裕樹さんのこと、 もっと…信じなきゃ駄目だよね。




このときのわたしは、固くそう心の中で思っていた。




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