コメディ・ライト小説(新)

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罪恋***好きでいてもいいですか?***
日時: 2017/12/15 00:43
名前: Aika

+:*;.・。prologue。・.;*:+



最初は見ているだけで幸せだった。

結ばれなくてもいい。
遠くから貴方の笑顔を見られるだけで充分だった。
それ以上は何も望まなかった。


なのに。



いつからだろう。
こんなにも、 あふれ出すぐらい。
抑えきれないぐらいに。
貴方を好きだと思い始めたのは――――。



罪恋***好きでいてもいいですか?***

更新start→2017.4.2


***目次***

登場人物紹介>>1

*.・1章・.*
第1話>>2第2話>>5第3話>>6第4話>>7
第5話>>10第6話>>11第7話>>12第8話>>13
第9話>>14第10話>>15第11話>>16第12話>>17
第13話>>18

*.・2章・.*
第14話>>19第15話>>20第16話>>21第17話>>24
第18話>>25第19話>>26第20話>>27第21話>>28
第22話>>29

Page:1 2 3 4 5 6



Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.25 )
日時: 2017/08/29 16:14
名前: Aika

Episode18:想いを言葉に。






「ありがとうございましたー」

パンケーキ屋さんを出たあと。
わたしたちは、何となくショッピングモールのなかを回っていた。

なんか…こうして並んで歩いてると。

やっぱり、 わたしたちって付き合ってるみたいに見えるのかな―――。


そんなことをぼんやりと考えていると。
雑貨屋さんのところで智也が立ち止まり、不意に口を開いた。


「このぬいぐるみ…めっちゃ桜に顔似てんなー」

智也がそう言って指したのは。
可愛い顔の熊のぬいぐるみだった。
わたしは、ムッとして言い返す。

「何それー!わたしが熊みたいってことですか!」

てっきり。
そうだよって言って…いつもみたいにバカにしてくると思った。


だけど。



返ってきた言葉は。




「ちげぇよ!こいつみたいに…可愛いってコト」




わたしはそれを聞いて。
ポカンとしてしまって―――。



何も言わずに智也から目をそらした。



やばい。



わたし、 多分…
いま、顔赤い―――。




「あのさー…これから、行きてぇところあんだけど…いいかな?」

頬をポリポリとかきながら、そう言う智也。
わたしは、無言で頷いて。
智也に着いていった。




*******************************************************



連れてこられた場所は。
綺麗な噴水のある公園だった。
ショッピングモールの近くにこんな公園があるのなんか知らなかったな―――。

「智也…よく知ってたね、こんな場所」
「まぁな…なんか考え事したいときとか、一人になりたいときとか…行きたくなるんだよな、ここ」

ベンチに腰掛けながら智也はそう呟く。
わたしも、智也につられて隣に腰かけて言葉を紡ぐ。

「じゃあ、ここは…智也にとってお気に入りの場所なんだね」

智也は頷いてから。
わたしの方を向いて、真剣な瞳で言う。


「―――この場所教えたの…桜が初めてだから」


智也にとっては特に何の意味も持たない一言なのかもしれない。
だけど…。そうわかっていても。


わたしの鼓動はさっきからドキドキしてばっかりだ。

わたしは、 真っ赤な顔で言い返した。


「あのね、智也!それは好きな人とかに言うことであって…さすがのわたしも誤解するから!マジで」
「―――誤解じゃねぇし」

遮るような智也の言葉に。
わたしは、ビックリしてキョトンとした。

そして、智也はさらに言葉を重ねる。




「この場所に連れてきたのも…お前に聞いて欲しいことがあるから」





これは。




まさか。






智也は息を大きく吸って。
わたしの方を真っ直ぐに見つめながら。







自分の気持ちを言葉にする。










「―――俺…ずっと前から、 桜が好きだ!だから、俺と付き合ってください」









それは。
智也らしい、 ストレートな告白だった―――。










5月の風がそっと吹いて。
新緑の木々を力強く揺らしていた―――。

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.26 )
日時: 2017/09/03 18:16
名前: Aika

Episode19:想い、 想われる恋。





『―――俺…ずっと前から桜が好きだ!だから、俺と付き合ってください』


吸い込まれるような…真剣な瞳で智也はわたしに向かってそう告げた。
わたしは、そんな智也のことを直視できなくて。
思わず目を背けてしまった。

それから、 震える声で目を伏せたまま…口を開いた。

「―――本気、 なの?」

智也の気持ちを疑ってるわけじゃない。
だけど…特別可愛いわけでもない、何の取り柄もない自分を好きだって言ってくれていることが嘘みたいで―――。

思わず、 そう聞いてしまった。

おそるおそる、顔をあげると。
そこには、優しく微笑む智也がいて―――。

わたしの質問に答える。



「―――本気に決まってんだろ、 バーカ」



はっきりとそう言われて。
わたしは、戸惑ってしまい。
何も返事ができずにいると。

智也がわたしの頭をポンポンしながら、言う。


「別に今すぐ返事が欲しいわけじゃねぇからさ。ただ、お前に…俺の気持ち知ってもらいたくて言っただけだから気にすんな」


わたしを気遣う智也の優しさに。
複雑な気持ちを抱えてしまった。

―――今まで、 わたしは智也のことをただの友達としてしか見てなかった。
男の子として見たことなんか…一度っきりもない。

だって。




わたしの瞳には…。









裕樹さんしか、 見えていなかったから―――。










「―――ごめん、智也。わたし、好きな人がいるの。ずっとずっと…好きな人がっ…だから」
「―――そんなこと、知ってる」
「え?」


驚きもせずに。
智也はハッキリとそう言った。

なんで…。 誰にも好きな人がいるなんて、言ったことないのに―――。




「―――好きなんだろ?…相田のこと」




わたしの瞳を真っ直ぐに見つめながら、そう言う智也は。少しだけ、 どこか切なそうに見えた。
わたしは、罪悪感を感じながらも。
小さくコクリと頷いた。



「先生だし…何回も諦めようとした。けど、無理だった」

消せなかった―――。
この恋心は。

たとえ、 許されないとしても。

わたしは、 あの人を好きでいたい。



「―――それでもいい」



智也の予想外の言葉に。わたしは、ビックリして目を見開いてしまった。



「お前が相田を本気で想ってるように、俺だってお前に本気で惚れてる。だから、相田のこと…いまはまだ忘れられなくていい。俺がアイツのコトなんか忘れられるぐらいお前を幸せにしてやる」


その言葉に。わたしは、涙が溢れそうになった。
本気で…智也はわたしのことが、 好きなんだ―――。

でも、そんなに想ってるならなおさら―――。



そんな、智也の気持ちを振り回すようなことできるわけない。




「―――だからさ…その上で俺と付き合うこと、考えろよ」




そう言って智也はまた、いつもみたいに。
わたしの髪をくしゃっとした。

もう、何を言っても。
きっと、智也は引き下がらない。
そう思ったからわたしは。


「―――分かった。そこまで、言うなら…考えてみる」


とりあえず、頷いて。そう返事をした。
すると、智也は嬉しそうに笑った。

その笑顔に胸の奥がチクッと痛む。





■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■




「じゃあ、また明日な」
「うん、ここまで送ってくれてありがと。今日は楽しかった」
「おうっ!じゃあな」


わたしのマンションの下で智也とお別れしわたしは、階段を上がっていく。
自分の家の階まで上がると。


―――ドンッ。



勢いよく人とぶつかってしまい、尻餅をついてしまった。




「―――すみません、急いでたもん、で…」

ぶつかった人がそう言って、手を差し出していたから。わたしは、とっさにその手を掴み顔を上げると。そこにいたのは、見知った人物。

「―――せん、せい?」

裕樹さんだった―――。




ここ数日間、まともに視線なんか合わせてなかったから。こんな間近で見るのは久しぶりで―――。

わたしは、なんだか緊張して顔を見れずにいた。




「す、すみません。あの、ありがとうございます」
「別に…俺の方こそ悪かったな。怪我とかしてねぇか?」
「はい、大丈夫です。それじゃ」


二人っきりが耐えられなくて。
わたしは、そそくさと自宅へ向かおうとすると。

途端に。

腕を力強く握られた―――。



まるで、 『行くな』って言ってるみたいに―――。




「―――あの、先生?…なにか」
「―――アイツと…長谷部となんか、あった?」




アイツって…智也のこと、 かな。

もしかして、 顔に出てたのかな―――。




「もしかして…告られた?アイツに―――」




必死に聞いてくる、先生に。
わたしは、何も答えられずにいると。

さらに、握られた腕に力が込められて―――。



「っ…痛ッ」


思わず、そう叫んでしまった。
すると、先生は我にかえって。

「悪いッ…ごめん。俺、何きいてんだろーな。関係ねぇのに。今のは忘れて」

それだけ、捲し立てる様に告げて。
そそくさと、わたしのもとから去っていった。

ポツンとひとり、取り残されたわたしは。
さっきまで握られていた腕をそっと片方の手で支える。
それから、 目頭が熱くなり。
ポロリと涙が頬を伝った。



―――はじめて。




裕樹さんのことを、 怖いと思った。




「ねぇ、先生…わたし、先生のことが分からないよ」




小さい頃からずっと一緒で、近くにいたのに。
なんか、今は。
ずっと遠いところに裕樹さんがいるみたいで―――。



先生は、 なんで。
わたしと智也の関係を気にしてるの―――?

妹として幼馴染みとして、 心配してるの?
それとも―――。






先生の気持ちを知りたいのに。
わたしには、 その一歩が踏み出せなくて―――。





その場で立ち尽くしたままだった―――。

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.27 )
日時: 2017/11/11 22:41
名前: Aika

Episode20:すれ違う心。





みんながみんな…幸せになれる方法があればいい。
そうしたら…こんなにも傷つくことなんかないのに―――。



■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


昨日の今日で…なんとなく、智也と顔を合わせるのが気まずかった。
智也と付き合う気なんか、なかったのに。
なのに。


「なんで…考えとく、 なんて無責任な事言っちゃうかな…わたし」



智也のことを…好きか嫌いかで言えば好きだ。
でも、この『好き』は…ひとりの男の子としてじゃない。
単純に友達として好きだってこと―――。

そんなの、 わかってるはずなのに。



あの時の智也の真剣な顔を見ていたら。
なんだか、 気持ちが少しだけ揺れた気がして―――。
気づいたらそんな風に口走っている自分がいた―――。



重たい足取りで教室まで向かっていると。
廊下の隅で裕樹さんが数人の女子生徒に囲まれているのが目に入った。

いつも通りの事なので、その前をスルーして…教室の扉に手を伸ばしたときだった。


「相田先生さー、昨日の夜…駅前で綺麗な女の人と一緒にいましたよね?」


そんな会話が聞こえて。わたしは、とっさに教室の扉を開ける手を止めて。
裕樹さんの方へ慌てて振りかえる。


裕樹さんは、その女子生徒の言葉に。
表情も変えずに返していた。


「人違いだろ。俺、昨日はずっと家にいたし」


ずっと…家にいた?
そんなの、 嘘だ。
だって…わたしは、 知ってる。

昨日…裕樹さんと夕方ごろにマンションの廊下でぶつかったし。
あの時の裕樹さんはかなり慌てた様子で急いでて―――。

まるで、 人を待たせてるみたいな感じだった―――。



「えー!絶対、先生だったよ!あれ、彼女ですよね?」
「彼女だったらめっちゃショックなんだけど!」
「だーかーら、 違うから!」


そう言い捨てて…裕樹さんは、 女子生徒の集団から逃げるように離れていった。


「あ、先生逃げた」
「これから、職員会議なんだよ。お前らにかまってる暇はないの」


女子生徒にそう言い返したあと。
裕樹さんと視線が合って。

わたしは、パッと勢いよくそらして…さっさと教室の扉を開けて入った。

―――わたし、 何を動揺してるんだろう。
裕樹さんに彼女がいようがいまいが…わたしの恋は叶わない。
そんなの、 知ってるはずなのに。



それなのに。




こんなにも、 悲しいのは…どうして?





************************************************************




「それじゃあ、うちらのクラスの出し物はメイド喫茶に決定しましたー」

ホームルームの時間。
文化祭実行委員の進行のもとクラスの出し物の話し合いをしていて。

結果、メイド喫茶になったみたいだ。


やだなー…できれば、メイドだけは避けたいな。
絶対似合わないし。
あんなヒラヒラの服なんか着たくない。


「じゃあ、準備が中心の裏方の人と衣装係と会計と…あとは本番活躍する厨房係とメイドの子を決めていきたいと思います」


うーん。わたしは、やっぱり裏方がいいな。
文化祭当日は楽できるし。
うん、それでいこう。


心のなかでそんな風に頷いていると。


「桜、お前メイドやれば?」


余計なことを言う男子生徒がいた。
わたしは、ジト目でその男子生徒を見る。
その男子生徒とは昨日、わたしに告白してきた智也だ。

「やるわけないでしょ!そういうのは、可愛い子がやるって相場があるんだから」
「え!桜、メイドやってくれるのー?」

実行委員の女の子が今の会話が聞こえたらしく目を輝かせながら嬉しそうに言ってきた。

「いや、違います違います。わたし、やりたくな――」
「桜、めっちゃメイドがいいって言ってましたー」


スパーンと、智也の頭をおもいっきりひっぱたく。
このバカは何を余計なことを言ってるんだ!

「いってぇな!何すんだよ」
「それは、こっちの台詞だから!頼むから余計なことを言わないでー!」

言い合っていると。
実行委員の女の子が勝手に話を進めていて。

「じゃあ、メイドの一人は智也くんの推薦で桜ってことでいいのかな?」
「え!いや、待って待って――」

否定する前に。

クラスの全員が。


「まぁ、いいんじゃね?」
「そーだねー、桜可愛いもんね」
「似合いそうだよな」


納得をしはじめていて。
わたしは、言葉を失ってしまった―――。


「あ…じゃあ、はい。それでいいです」


もはや、クラスの雰囲気を壊したくないばかりに反論せず引き受けてしまった。
なんか、一気に文化祭が憂鬱になったわ。

「あ!桜がメイドやるならあたしもやりまーす」

その時。 手を挙げた女子がいた。
それは、親友の志穂だった。

「志穂!ありがとう!」
「うん!一緒に頑張ろうね~」

志穂が一緒なら…まぁ、いっか。
そうポジティブに考えることにした。

そんな感じで着々とクラスの人の役割がどんどん決められていった。




*******************************************************

放課後。
わたしは、さっきの文化祭の役割決めについて、余計なことを言った智也に詰め寄る。


「智也!さっきは、よくも余計なことを言ってくれたね!」

そう言うと。智也はため息をついて。
わたしに向き合う。

「なんだよ、まだ怒ってんのかよ」
「当たり前でしょ~。裏方の方が良かったのに最悪」
「いーじゃねーか。メイドだと準備とかねーし、本番だけ活躍すればいいんだぜ?そっちの方が楽じゃん」

わたしは、正論に何も言い返せず。
言葉に詰まっていると。
志穂がやって来て。
会話に加わった。

「まぁまぁ、桜落ち着きなって!智也はただ桜のメイド姿が見たくてあんなこと言ったんだからさ」
「―――えっ」

突然の志穂の言葉に。
わたしは、言葉を失った。

智也は慌てて否定している。


「アホか!そんなわけ、ねーし」
「じゃあ、なんで顔が赤いんですかね?」
「うるせーよ」


わたしがそんな智也を見て。
クスッと笑うと。


「なに、笑ってんだよ」


不機嫌そうにそう呟いた。
わたしは、笑顔のまま。


「いや…なんか、可愛いなーって思っただけ」



そう言うと。
智也はますます顔を赤くして。
ゆでだこみたいになっていた。

その顔がほんとにおかしくって。
わたしと志穂は大声で笑っていた。




「おめぇら、笑うんじゃねぇ!つか、見るな!」
「やっば!写真とりてぇ!」
「とるなー!」




その様子を。




「………………」



裕樹さんが切なげに見ていることなんか知らずに―――。


Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.28 )
日時: 2017/11/11 23:39
名前: Aika

Episode21:迷い道。




好きな人を簡単に忘れられる方法があればいいのに―――。
そしたら、 こんなにも悲しい気持ちになることなんかないのに。



*****************************************************


文化祭の準備は着々と進み―――。
遂に今日は文化祭当日です。


「わぁ!桜、やっぱり可愛い!メイド似合ってんじゃ~ん」

隣でわたしのメイド姿を見て、はしゃぐ志穂。
わたしは、複雑な表情で返す。

「えー…そうかな?志穂の方が可愛いと思うけど」「そんなことないって!あたしなんかよりも桜の方が可愛いよ」

とりあえず、誉めてくれた志穂に笑顔でお礼を言う。それから、わたしはふと気になったことを口走る。

「そういやぁ…今日、志穂の彼氏は文化祭、遊びに来ないの?」

すると。
志穂は明るかった表情から一気に暗い顔になって。
それから。
そっと口を開いた。

「―――それなんだけど、さ。実はあたし…彼氏と別れたんだ」

衝撃の一言に。
わたしは言葉を失った。
そんなわたしに気を使ってか、志穂は明るく笑顔で振る舞う。

「まぁ…最近、すれ違ってばっかしで喧嘩も多かったし!仕方ないっしょ!」

―――ほんとは、辛いのに。
無理に笑う志穂をみて、わたしは胸がチクリと傷んだ。
彼氏と上手くいってないのは…なんとなく、知ってたけど。
そんなに、こじれてたとは思わなかった―――。

「ごめん、わたし…嫌なこと聞いて」
「ううん!黙ってたあたしが悪いんだし桜が謝る必要なんか何もないよ」

志穂の優しさに。
罪悪感が少しだけ和らいだ。
すごいな、志穂は。
辛くても、そんな風に笑顔でいられて―――。


わたしだったら、 きっと…
志穂みたいに強くないから、 泣いてしまうだろうな―――。


「わぁ!智也くん、めっちゃかっこよくない?」
「写メ撮りたい!」


女子のキャーキャー騒ぐ声が聞こえて。
志穂とわたしで声の方を振りかえると。
そこには、 ウェイター姿の…智也がいて。


不覚にも。


その姿に、 一瞬…ドキッとした。




「智也、似合ってんじゃん!いいね、その衣装」

志穂が親指を立てて智也にそう言うと。
智也はにかっと笑って。

「サンキュー!志穂もいいじゃん、それ」
「へいへい、お世辞をどーも」

そんなやり取りをしたあと。
智也はわたしの方へ視線を向けてきた。

目が合って。

なんだか、恥ずかしくなってわたしは視線をそらした。
そんなわたしに構わず。
智也はわたしの元へと近寄ってきて。
耳元でそっと、 ささやいた。


「―――めっちゃ可愛い。すっげぇ似合ってる」


予想外すぎて。
わたしは、とっさに智也から距離を取って。
口をパクパクさせていると。
智也が吹き出した。

「おっまえ…ほんと面白いな。見てて飽きねぇわ」

遊ばれていることにムッとして言い返す。

「からかわないでよ!バカ!」
「悪かったよ。でも、今言ったことは嘘じゃねーから」

そう言って。智也は優しく、また笑った。
その笑顔…ずるいよ。
許したくなるじゃん。

まぁ、 許すんだけどさ。


「そだ、桜!今日の午後1時から、軽音部のライブあるからぜってぇ見にこいよ」
「うん、見に行く。志穂も行くっしょ?」
「おう!智也の晴れ舞台見に行くか~」
「なんだよ、それ。じゃあ、約束だからな」


そう言い残して。
智也はわたしたちの元から離れていった。
智也の後ろ姿を眺めながら。

わたしは…そろそろ自分の気持ちをはっきりさせなくちゃいけない―――。
そう思った。


「―――桜、さ。…智也となんかあったでしょ」
「ひぇっ!??」


突然の志穂のそんな発言に。
わたしは、すっとんきょうな声をあげた。
そんなわたしの反応を見て、志穂は苦笑しながら言葉を続ける。

「あたしが気づいてないとでも思った?…まぁ大方、智也に告られて桜は答えを迷っているってところだろうけどさ」

鋭すぎるよ、志穂。
てか、間違ってないし正解に近いし。

わたしは、何も言わずに頷いた。
志穂はやっぱりかーなんて言いながら、笑っていた。
志穂にはほんと、嘘つけないな。


「―――付き合うの?智也と」


わたしの気持ちを確かめるように。
志穂は聞いてきた。

―――きっと…志穂は見抜いている。
わたしが、 智也を恋愛対象として見ていないことも。今まで、智也の想いに気づいてなかったことも。


わたしは、 志穂の質問に。
窓の外に広がるすみわたる青空を眺めながら、答えた。




「―――正直に言うと…迷ってる。答えを早く出さなきゃって思ってるけど…どうしたらいいのか分かんなくて」


そう言うと。
志穂は優しい顔でそっかとひとこと、言って。
それから遠くの方をみつめながら言葉を紡ぐ。



「―――あたしは、桜がどんな答えを出しても桜の味方だから。…でも、後悔しない道を選びなよ」

志穂の言葉にはどこか、重みがあって。
なんとなく、心にすっと入ってきた。



「うん、ありがと。志穂」


頷いて、お礼を言う。
それからさっきの志穂の言った言葉の意味を…探す。

―――後悔しない道、 か。



瞳を閉じて。
頭に思い浮かぶのは…自分が想いを寄せる人と、自分を想ってくれる人の姿―――。




わたしは、 どっちの道を…選ぶべきなんだろう―――。
文化祭の喧騒のなか。
わたしは、自分の気持ちにそっと向き合っていた―――。

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.29 )
日時: 2017/12/15 00:42
名前: Aika

Episode22:聞きたかった二文字。





午前の自分のシフトが終わって、やっと自由時間。
志穂は急に具合の悪くなった女の子がいて、その子の代わりにお店に出ることになり、まだ働いている。
ほんとは、わたしが出ようと思ったんだけど――――。


『これから、智也のライブ見に行くんでしょ?アイツは桜に見てもらいたいはずだからここはあたしに任せて!』

そんなことがあり、わたしは志穂の好意に甘えて今に至る。
でも、一人でライブに行くのもなんだか寂しいしなー…なんて、考えながら裏庭を歩いているときだった。

「―――相田ちゃん!一緒にまわろうよ~」
「待ってよ、先生!」

黄色い女子の声が聞こえて振り返ると。
集団の女子から逃げている裕樹さんの姿が見えた。

全力疾走でこちらに駆け寄る裕樹さんをわたしは避けることができず。

―――ドンっ…。

勢いよくぶつかってしまった。


「―――わりぃ!って…桜?」
「たた…」
「ごめんな、立てるか?」

手を差しのべた裕樹さんの手を取ろうとしたとき。

「せんせー!どこー?」

―――女子の声にビクッとした瞬間。
裕樹さんが勢いよくわたしの手を引いて。

「こっち!」
「え!?ちょっと!」

草むらの所に隠れるように、二人でしゃがみこんだ。

「あれー?どこ行っちゃったんだろ?」
「たしかにこっちの方に来たよね?」
「せんせー、逃げ足はや!」

そんな声が飛び交い、徐々に足音が遠ざかっていった。
そんな様子に裕樹さんはホッとした顔をしていた。
なんというか…モテる人はつらいんだな。

「なんで、わたしまで先生と一緒に隠れないといけないんですか?」
「いいだろ、別に。無意識に引き寄せちゃったんだから」

無意識にって―――。

何気ない言葉なのになぜだか、ドキッとした。

「それに一瞬とはいえ、お前と手を繋いでるところとか誰かに見られたら大変だしこれで良かっただろ?結果オーライじゃん?」
「なにそれ…」

わたしが、笑うと。
先生も優しく微笑んだ。

なんだか…久しぶりだな。こんなやりとり。
最近は、気まずくてお互いにあまり話すことなんかなかったからかな。
ちょっと嬉しいかも―――。

「そういや、桜は今自由時間だったよな?どこまわるんだ?」
「えーっと…智也から軽音部のライブに絶対見に来いって言われてるからそこ行こうかなって」

そう言った瞬間。
先生の顔が一瞬だけ曇って…それから。
わたしの瞳を真っ直ぐに見つめて。
口を開いた。

「桜ってさ…アイツと…長谷部とやっぱり付き合ってんの?」
「え…?」

わたしが唖然とした顔で聞き返すと。
捲し立てるように裕樹さんが付け足すように言う。

「いやっ…その…最近、すげー仲が良いからそーなのかなって思っただけで!その…やっぱり桜は俺の大切な幼馴染みで妹みたいなもんだから気になって、さ」

――妹、か。

その言葉にちょっとだけチクリと胸が傷んだ。
分かってたのに。
先生は…裕樹さんはわたしなんか、恋愛対象として見てないことなんか。

それなのに。



すごく、苦しかった―――。



「―――智也には…好きだって告白されたけど…まだ付き合ってない」

精一杯の作り笑いでそう答えた。
少しの間の後、裕樹さんが口を開いた。

「―――桜は…アイツが好きなのか?」




風がそっと吹いて。
サラサラの裕樹さんの髪が静かに揺れていた。

わたしは、自分の手をぎゅっと握って――。
裕樹さんの問いに答えた。



「―――智也とは一緒にいて楽しいとは思うし…好きか嫌いかで言えば勿論好き。でも…これが恋じゃないってことは知ってる」
「じゃあ…長谷部とは付き合わないのか?」
「それは…まだ分かんない。…付き合って好きになるってこともあるって聞いたから試しに付き合おうかなとか考えたりもしてるけど―――」
「―――駄目」




予想外の先生の言葉にわたしは、ビックリして俯きながら話していた顔を勢いよく上げた。

そこには、 切なげにこちらを見つめる先生がいて。不覚にもまた、鼓動が高鳴ってうるさかった。


その顔は、ずるい―――。




「―――好きじゃないなら…長谷部と付き合うなよ」
「―――なんで?先生には関係な」

関係ないと、いいかけた瞬間。

「あるよ」

そう遮られた。






それから、 先生はゆっくりと近づいてわたしの耳元で小さく呟いた。







「―――俺は…ずっとガキの頃からお前が好きだから」







ずっと…わたしが聞きたかった『好き』の二文字を。


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