コメディ・ライト小説(新)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

罪恋***好きでいてもいいですか?***
日時: 2019/09/09 23:04
名前: Aika
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12215

+:*;.・。prologue。・.;*:+



最初は見ているだけで幸せだった。

結ばれなくてもいい。
遠くから貴方の笑顔を見られるだけで充分だった。
それ以上は何も望まなかった。


なのに。



いつからだろう。
こんなにも、 あふれ出すぐらい。
抑えきれないぐらいに。
貴方を好きだと思い始めたのは――――。



罪恋***好きでいてもいいですか?***

更新start→2017.4.2


***目次***

登場人物紹介>>1>>39

*特別企画*
参照600突破記念!雑談会>>41

*.・1章・.*
第1話>>2第2話>>5第3話>>6第4話>>7
第5話>>10第6話>>11第7話>>12第8話>>13
第9話>>14第10話>>15第11話>>16第12話>>17
第13話>>18

*.・2章・.*
第14話>>19第15話>>20第16話>>21第17話>>24
第18話>>25第19話>>26第20話>>27第21話>>28
第22話>>29第23話>>30第24話>>31

*.・裕樹side 回想編・.*
第25話>>32第26話>>33第27話>>36第28話>>37
第29話>>38第30話>>40

*.・3章・.*
第31話>>42第32話>>43第33話>>44第34話>>45
第35話>>46第36話>>47第37話>>50第38話>>51
第39話>>52第40話>>53

*.・4章・.*
第41話>>54第42話>>55第43話>>56第44話>>57
第45話>>58第46話>>59第47話>>60第48話>>61







Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13



Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.17 )
日時: 2017/06/12 01:35
名前: Aika

Episode12:期待。




言葉にしなければ
心の奥底にある気持ちなんて
相手には何一つ伝わらない―――。



ねぇ、 教えてください。



貴方はわたしのこと、 本当はどう想っていますか―――?



***************************************************************



「はぁ…補習、 やだなー」


―――放課後。
現代文で赤点を取ってしまったわたしは、補習対象者になってしまったため重い足取りで国語準備室へと向かっている。

本当に最悪だ―――。

何が最悪かと言うとクラスで現代文に関して赤点を取ったのはわたしだけだったらしく。
1人で補習を受けるという状況が尚更嫌だった。

しかも。

補習を担当するのは…相田先生。
つまりは、裕樹さんということになる。

それが、 耐えられそうにない。

だって、 今…まともに口聞いてないし。
向こうがなんか、わたしのこと避けてるし。
それなのに。

「2人っきりで…補習とか…マジで勘弁してくれー」

そう呟いて。
今日の1日で何回出たかも分からないぐらい、わたしはため息を大きく吐いた。

――そして。

気がつけば、国語準備室の前―――。

「うだうだしてても仕方ないし。ちゃっちゃとやって、さっさと帰ろ」

やけになって、勢いよく準備室の扉を開けると。

そこにいたのは―――。

「先生―――?」

椅子に座って眠っている裕樹さんの姿―――。

窓は少しだけ開いていて…5月の少しだけ涼しい風が優しく吹いている。
そして、 裕樹さんの黒髪をわずかに揺らしていた。

わたしは、不覚にも。

初めて見る裕樹さんの寝顔に。
少しだけ…ときめいてしまった。

いつもは、眼鏡をかけているのに。
外しているところとか。
読みかけの本を手に持ったまま眠りこけているところとか。

わたしの知らない、違った表情を見つける度に鼓動が高鳴って…ドキドキが止まらない―――。

「疲れ…溜まってたのかな」

わたしには、裕樹さんの仕事内容まではよくわからないけど。テスト明けだし採点の作業で疲れてたのかもしれないなーと、ぼんやりと考えていた。



しばらくの間。



傍によって…気持ち良さそうに眠りこけている裕樹さんを眺めていたら。

―――触れたい。



素直にそう感じてしまった。




「少しぐらいなら…大丈夫、だよね」




わたしは、そっと。
手を伸ばして。
裕樹さんのサラサラの髪に触れて、 優しく撫でた。

―――すると。


バサリッ…。

裕樹さんが手に持っていた本が勢いよく床に落ちたと思ったら。
勢いよく、 腕を捕まれた。


捕まれた腕の方に目をやると―――。



「なに、 してんの?」



そう言って。
裕樹さんは、 寝起きの顔をわたしに向けていた。

眼鏡がないから。
見慣れないその表情に。
また、 心臓がバクバクしてうるさい。


わたしは、 とっさに言い訳をした。


「えっと…その…髪にゴミがついてたから取ろうと思っただけ!」


苦しいかな…と、思いつつもわたしがそう言いきると。
裕樹さんは。


「ふーん…ま、いいや」


1言。そう言ってからわたしの手を離して。
眼鏡をかけて。
机の引き出しから補習プリントを取り出してわたしに手渡した。
それから、対して気にした様子でもなく。

「じゃ、そのプリント全部終わらせたら帰っていいから。分からなかったら聞いて」

淡々とした風にそう言って。
わたしの横に座った。

―――なんだろう。
別に怒ってないのかな―――。

わたしは、シャーペンを走らせて。
渡されたプリントを無言で解き続けた。

だけど。
心の中の奥底では。
裕樹さんが何を考えているのか全く理解できなくって―――。
モヤモヤとした感情が渦巻いていた。

「あのさ―――」

―――不意に。

裕樹さんから、口を開いた。

わたしは、シャーペンを走らせながら。

「ん?なにー?」

耳だけを裕樹さんの方へ傾けた。
すると。
裕樹さんは頬をポリポリとかきながら。
わたしの方へは視線を向けず、こんな質問を投げかけた。

「―――長谷部に…賭けの内容、なんて言われたんだよ?」

途端。
シャーペンを走らせていた手がピタッと止まる。

まぁ、現代文のわたしの点数からきっと賭けに勝ったのは智也だって裕樹さんも薄々感じたんだと思う。
だけど。

なんで。
賭けの内容を裕樹さんが気にするのか。
それがわたしには、分からなかった。

―――わたしがプリントの問題から遠ざけて。顔を上げて裕樹さんの方へ目をやると。

裕樹さんは、目線を合わせてくれず。
うつむいていて、表情はよく見えなかった。

わたしは、正直に打ち明けた。




「―――今度の日曜…デートしたいって言われた」




しばらくの沈黙のあと。
裕樹さんは、か細い声で聞く。




「行くの?…長谷部と」






わたしは、小さく頷いた。






「そりゃあ、約束だし。破るわけにはいかないっしょ」







本音を言えば。
裕樹さんが好きなのに。
他の人とデートに行くのは…気が引けた。

裕樹さんが引き留めてくれたらな―――。

なんていう、夢物語を心のなかで感じていると。







「―――行くなよ」










空耳かと思った。










「え?」









ビックリして。
呆けた顔でそう言うと。







目の前には、 今までに見たことがない
裕樹さんの真剣な顔があった。









「―――なーんて、な。冗談。…デート、楽しんでこいよ」






嬉しい…そう思ったのも束の間で。
すぐさま、裕樹さんはそう付け足したかのように言った。それからいつもみたいにわたしの頭を優しく撫でた。

―――やっぱり、 子供扱いだ。







一瞬だけ。








『行くなよ』








そう言った言葉が。
本音かと思ったのに―――。
もしかしたら、 両思いかもってほんのちょっとだけ期待したのに。







裏切られたみたいで。
わたしにとっては、すごくショックだった―――。
















Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.18 )
日時: 2017/06/23 18:39
名前: Aika

Episode13:嘘と本音。





「――――――よしっ。プリントは大方合ってたしこの位なら合格だな。帰っていいぞ」

1時間ぐらい、解くのにかかった何枚ものプリントを机の上で整えながら
裕樹さんはニコッと笑ってそう言った。

わたしはペンケースや教科書を鞄にしまいながら、さっきの言葉を思い出していた。

『―――行くなよ』

裕樹さんは冗談だって笑いながら言った。
だけど、 やっぱりわたしは心の中で納得がいっていなくって。

だって…
あんなに、 切ない瞳をしてたのに?
あれは、 本当に冗談だったって…裕樹さんは言い切れるの??

今すぐにでも貴方の口から聞きたかった、 けど。

聞いてしまえば。








今の関係が壊れるんじゃないかって…思う。









それが
すごくこわい――――。








「―――桜??うつむいて、どうしたんだよ」







気づけば。
すぐ近くに、 わたしをのぞきこむ裕樹さんの心配そうな顔があった。

「具合でも悪いのか??」

わたしは…そっとうつむいていた顔を上げて。
裕樹さんのシャツの裾を軽くつかんで。
すがりつくように、聞いた。
頭では聞くべきじゃないことだって分かってる。
だけど。



もう、 止められない――――。




「―――さっきの言葉は…本当に冗談??」




裕樹さんは、一瞬固まった。
それから一呼吸置いてから口を開く。




「さっきの…言葉って??」




本当は…何のことか、 分かってるくせに―――――。
とぼけようとする裕樹さんにいらだちを感じながら、わたしはもう一度言う。

「……智也と…デートに行くって言ったら、行くなって言ったじゃん」

少しだけ荒っぽい声になったと自分でも思う。
だけど、 わたしは貴方の本音が聞きたくて。
ただそれだけで、この時はいっぱいだった。

「あれはっ…嘘かって聞いてんの!!」

なぜだか、 わたしの瞳は涙でいっぱいになっていた。
どうして、 涙なんか出してるんだわたしは。
ただ、 わたしは裕樹さんの本音が聞きたいだけなのに。
それ以上なんか何も望んでないはずなのに。
なのに。


どうして、 こんなにも辛くって…胸の奥が苦しいの――――??





「―――桜…あの、さ」
「ごめん、 やっぱりいい」




答えようとする裕樹さんの声を遮った。
それからわたしは涙をぬぐってから先生と向き合う。



「今のは…忘れて」
「おいっ…さく―――」

先生のわたしを呼ぶ声も聴かずにわたしは教室の扉を勢いよく閉めて走り去る。
廊下を駆け抜けながらも、 ぬぐってもぬぐいきれない。
とめどなく流れる涙の雨。

わたし、 最低だ。

自分から聞いたのに。
先生の答えも聞かずに逃げるなんて―――。

一気に階段を駆け下りて、 着いたのは下駄箱。
わたしは下駄箱にもたれかかって。
力なくその場にしゃがみこんだ。

髪をかきむしりながら、一人ポツリとつぶやく。

「何がしたいんだ、わたしは…」






情けなさすぎるよ、 ほんとに。





入り口の扉からは。
夕陽の光が差し込んでいた。



****************************************************************


■裕樹side■






桜が出て行った扉の方を。
俺はその場でただ、 呆然と見つめていた。



「泣いてたな、 アイツ」



まぁ、泣かせてしまったのは…俺、なんだけど。



『桜…あの、さ』


あのとき、 俺は無意識で。
桜に、 伝えてしまいそうになった。

自分の心の内に。
秘めていたもの。


途端に。
顔が熱くなって。
恥ずかしくなる。




「あーっ…桜の奴…何、言わそうとしてんだよ!!つーか、なんでいきなりあんな顔して聞いてくんだよ!!まぁ、冗談とか言って嘘ついた俺が悪いんだけどさ…」

だけど。



―――言えるわけない。



窓に映る夕焼け空を見ながら。
ポツリとうそぶいた。



「―――桜が好きだから…長谷部とデートに行くな、 なんて」







その言葉は。














誰にも届くことなく、 消えてしまった――――。

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.19 )
日時: 2017/07/04 00:29
名前: Aika

Episode14:すれ違う想い。







一方通行な想いに…行き場はあるのですか―――??



□ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □



「桜!!おはよー」
「…おはよ」

翌朝。
昨日のこともあり裕樹さんと顔を合わせるのが気まずくて―――。
正直に言えば学校に来たくなかった、けど。
休むわけにもいかないので、無理矢理に重たい足を引きずってきた。

そんなわたしの様子に違和感を感じたのか志穂がいぶかしげにわたしを見つめてる。
それから、そっと口を開いた。

「なんか、元気なくない?」

付き合いが長いだけあって。わたしが元気がないときはすぐに気づいてくれるのが…いつも志穂だった。
心配してくれてるのが伝わってきて。わたしは、裕樹さんのことを思わず話してしまいそうになった。
けど…話せない―――。

わたしは、笑顔を取り繕って。
何でもない素振りで答える。

「ううん、何でもないよ。フツーに元気だし」
「そっか…なら、いいけど」

さして気にした様子もなく志穂はそう呟いて二人で教室までの廊下をいつも通り歩く。

―――実は、わたしが裕樹さんのことを好きなことは。
親友の志穂でさえも知らないことだったりする。
志穂のことを信用してないわけじゃない。
勝手に人の好きな人を言いふらす子じゃないし。

だけど―――。

言えないでいる。

それは、 きっと。




裕樹さんが…先生であるから―――。




先生に対して本気で恋してるって言うのが…怖いから言えないんだ、わたしは。




―――なんて、 臆病なんだろう。わたしは。





こんなんだから、 いつまでたっても。
諦めたくても諦められなくって。
だからと言って本人に気持ちを伝えるわけでもない。平行線の…曖昧な関係のままなんだ―――。



「桜!!志穂!!オッス」

なんて、ぼんやりと考えてる矢先。
いつの間にか自分のクラスの目の前まで来ていて。
ギターのケースを片手に持った智也の姿があった。
そっか、 智也は軽音部だから朝練終わりか――。

「おー!智也、おはよう!!朝練お疲れさん」

志穂はいつものテンションで智也に駆け寄る。
わたしも志穂と一緒に智也の方に駆け寄って声をかける。

「おはよー。ライブ、近いの??」
「いや、とりあえず文化祭までは何もねぇかな」
「そっかー。そういや、来月は文化祭だね。早いわー」

志穂のそんな呟きにわたしも頷く。
中間テストが終わった途端。うちの学校は文化祭準備で騒ぎ始める。それが毎年の恒例だ。

「そだ!桜、日曜なんだけどさ…映画とかどう??」

智也が突然、思い出したかのように聞いてくる。
そうでした、文化祭以前にわたしの中ではもうひとつBIGな行事があったことを忘れてました。

隣にいる志穂が戸惑っているのが見なくても分かる。

「なに、日曜って??え、何々??」
「おめぇは黙っとけや」

詰め寄る志穂に対して冷たくあしらう智也。
苦笑いになるわたし。

―――これは、後で絶対にわたしが志穂に質問攻めされるパターンだななんて、ぼんやりと思っていた。

それにしても…映画、か。

たしかに丁度見たい映画あったし良いかも。
そう思いわたしは、笑顔で返事を返す。

「映画ね!うん、いいよ」

すると。
智也は優しい瞳でわたしを真っ直ぐに見つめて。
嬉しそうに言う。

「やった!!めっちゃ楽しみ」

―――その笑顔に。

なんだか見とれてしまった。
ジーッと見つめてると。

智也がいぶかしげにわたしを見て。

「なんだよ」

ぶっきらぼうにそう言った。
わたしは、いたずらっぽくクスッと笑ってから答えた。

「いや。…綺麗な顔して笑うんだなーって思っただけ」

そんな何気ない一言に。
智也の顔はみるみると赤くなっていき。
隣にいた志穂にからかわれていた。

「智也、顔真っ赤なんですけど」
「うっせ!!!!桜のせいだし」
「人のせいにしないでよー」

なんて、3人でじゃれていると。

―――不意に重なった視線に鼓動が揺れた。

廊下のざわめく喧騒のなか。
行き交う人混みのなかで。

かすかに見えたのは―――。







「相田ちゃん!!聞いてたー??」
「ああっ…わりぃ、何だっけ??」
「まーた、ボーッとしてた!!」



女子生徒に囲まれてて楽しそうに話してる裕樹さんの姿―――。






―――気のせい、だったのかな。






何となく…裕樹さんと視線が重なった気がしたけど。思い違い、かな―――。





うん、きっとそうだ―――。






だって…裕樹さんがわたしなんかを見るはずがないもの―――。








だから、 期待なんかしちゃいけない。











そう、自分に言い聞かせた―――。






















Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.20 )
日時: 2017/08/02 01:57
名前: Aika

Episode15:友達。





「ええっ!智也とデート!?」

お昼休み。
屋上で志穂と二人でお弁当をつまみながら、この間の話をしていた。
志穂は目を見開いて驚いたような顔でわたしを見つめていた。

「それで…あんた、OKしたんだ」

そんな志穂の言葉に。
わたしは、力なく頷く。
それから、言葉を紡いだ。

「まっ…賭けに負けたし、仕方ないよね」

あっさりした様子でそう言うと。
志穂が不意に真剣な眼差しでわたしを見つめながら聞いてくる。

「ぶっちゃけさ…桜って智也のこと、どう思ってんの?」

予想外の台詞に。
わたしは、飲んでいた苺牛乳を吹き出しそうになる。
それからムキになって志穂に突っかかる。

「なっ…いきなり、なに言ってるの!??」
「いやー…なんとなく?桜の恋バナってあんまり聞かないからさ」

たしかに。
志穂とは、親友だけどこういう話をしたことがないのは事実だ。

わたしは、少しの間をあけたあと。
志穂に向き合って答える。

「智也は…ただの友達だよ。それ以上に思ったことは一度もない」

嘘偽りない思いを。
はっきりと答えると。
志穂は顔色を変えずに言う。

「―――そっか。分かった。まっ…日曜は楽しんできてよね!」

それから志穂はにっこりと笑った。
わたしも笑顔で言葉を返した。

「うん!ありがと」
「それで映画、何みんの?」
「それが、まだ決まってなくてさー」


志穂と会話をしながらも。
このときのわたしは、何となく上の空の状態だった。

――智也を…どう、思っているのか…か。

考えたこともなかったな。今まで――。




そんなことをぼんやりと感じながら。
雲1つない澄みきった青空をぼんやりと眺めていた。



Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.21 )
日時: 2017/08/13 23:46
名前: Aika

Episode16:戸惑い。





貴方が向けてくれてた視線に。
わたしは、 何一つ気づいてなんかいなかった―――。


************************************************************




「まだ9時50分かぁ…ちょっと早かったかな」

今日は日曜日。
つまり、 智也と約束していた映画を見に行く日。
―――そうだよ、 単純に友達と遊びにいくだけだし。
深い意味なんかない。
緊張をほぐすためにデート、 という単語は考えずに頭のなかで何度もそう言い返してわたしは、約束した駅前の時計前に向かっている。

「あっ…桜っ!」

時計前の手前までいくと。
智也は既に着いていて待っていたみたいで、 こちらに気づき手を振っていた。

わたしも手を振り替えして小走りで駆け寄る。

「ごめん…待たせちゃったかな?」
「別に。…俺も今来たところだし」

そんな会話をしていてふと、思う。
―――あれ?…これ、カップルの会話っぽくない?
頭をブンブンと横に振って一人で否定する。

いやいや!違う!
普通の友達とでも普通にするよ、こんな会話!多分!

そんなわたしを見て不審そうな顔をしている智也。

「桜ー。どーした?」
「別に!ただ考え事をしていただけだからお構い無く!さぁ、映画館行こう!」
「ああ…。そーだな…行くか」

そう言って。
智也は。



―――自然な流れでわたしの手を握って歩き出す。



わたしは、 そんな予想外の行動にビックリして。
顔を上げて智也を見つめる。


「ちょっ…!なんで、手…!」


言葉にならず、口をパクパクしてると。
智也がぶっきらぼうに言う。


「っ…別にいいだろ。デート、 なんだし?」
「ええっ!!?…そう、だけど」


たしかに。
表向きはデート、 と言うことになってはいるけれど。

でも、 なんていうか。
恥ずかしい。

「賭けに負けたのはお前なんだから、桜は黙って俺の言うこと、聞いてればいいの」

図星を指されて。
それ以上は何も言い返すことができず。
わたしは、 智也の手を握り返した。

心なしか。
智也の頬は…ほんの少しだけ。
赤かった気がした―――。




■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □



「映画の上映時間まで少しだけ時間あるなー。どーするか」

映画のチケットを買ったあと。
智也が腕時計を眺めがらそう口走った。
たしかに上映時間まで30分程度余裕がある。

「そーだなー…志穂と来たときはいつもプリクラ撮ってたけどね」

そんなことを、さらっと言うと。
智也がまた、予想外のことを言い出す。

「じゃあ…俺と撮るか」
「はぁ!??」

思わず裏返った声を出してしまった。

「何だよ、その反応。俺と撮りたくねーのかよ」
「いや…そーいうんじゃないけど!男の子は嫌なんじゃないのかなーって…それに、こういうのは、カップルがすることだと思うし―――」
「あぁ、もう!ごちゃごちゃうるせぇなぁ!ほら、行こうぜ」

わたしの言葉を遮って。
智也がまたわたしの手を握ってゲーセンの方へと足を進めている。
――まぁ、智也が乗り気なら…いっか。

嫌がってるようには見えなかったから。
わたしは、拒まずに着いていくことにした。


■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■ □ ■


「何これ!智也、めっちゃ変な顔!ウケる」
「うっせぇな!桜だってこの写真ひどくね?」
「これは、智也が変なこと言うからでしょーが!」

二人で言い合いながらプリクラの写真に落書きしている。
―――わたし、 最低だ。



先生が好きなのに。




他の男の子と一緒にいて…いま、 楽しいって感じてる。





「おっ!写真、出てきた」

隣で智也が嬉しそうにそう言っていて。
わたしは、何も言わずに写真を取り出してハサミで半分に切る。


「はい、半分は智也の分ね」


笑顔で渡すと。智也も笑い返して。


「うん、 ありがと」


一言。そう言った。
その笑顔に、 不覚にも。






ドキドキしてしまったのは…君には内緒――。






Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13



スレッドをトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


E-Mail


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。