コメディ・ライト小説(新)

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鈴が鳴る。【OPEN】
日時: 2017/04/18 10:33
名前: はずみ ◆0vnM6Yusvw

いらっしゃいませ。今日のご注文は?

【ご利用の前に】
・開店は不定期です
・雰囲気を壊すような言動はお控えください
・メニューはオーナーの気まぐれです
・くれぐれも、自分の恋を見失わないようにご注意ください

【MENU】




この作品は昔途中まで書いた物のリメイク作品です。
START.4.18

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Re: 鈴が鳴る。【OPEN】 ( No.1 )
日時: 2017/04/25 10:06
名前: はずみ ◆0vnM6Yusvw

〈序章〉

 小高い丘の頂上に建った、自分の店。木に囲まれた景観に溶け込むように、自然な色を使うことを意識した。のけぞって空を見る。うん、いいじゃないか。持ってきた看板を店の前に立てかける。木枠の中にはめ込まれた黒板に、色とりどりのチョーク。チョークアートだ。これは、3ヶ月かけて習得した物。この店は、僕の夢。これまでに頑張った努力の結晶だ。思い出が走馬灯のように駆け巡る。
 よし。繁盛しますように。手を合わせやんわりとお天道様に拝んで、店のドアを開けた。
 
 リリン。

 小さくも凛とした音。これは、恋が始まる合図。我ながらかっこいい事を言ったと思い、頬が緩んだ。
 そう。鈴が鳴る度に、此処では恋が弾ける。それは必然であり、偶然の物ではない。切なく、麗しく、明るく、艶やかに。沢山の恋をお届けする事を、お約束いたしましょう。
 ……さて、最初に来るお客様はどんな方か。老若男女どんな方にも、燃えるような熱い恋を。冷える様な哀しい恋を。
 目を閉じ想像する。店の席が人で埋まり、そのすべてが恋を味わうその姿。何故か鮮明に瞼の裏に移り、けれども遠く果てしない未来のようにも思えた。
 貴方の中に素敵な恋を。まだ見ぬ沢山の客に、溢れるほどの期待を寄せて、おもむろに頭を下げた。

Re: 鈴が鳴る。【OPEN】 ( No.2 )
日時: 2017/04/25 11:11
名前: はずみ ◆0vnM6Yusvw

<一話 記憶100%>

「いらっしゃいませ」
 
 貴方なんて、ただのお客さんですよ。う、うれしくなんかないんだから。ツンデレ的思考で、口角を適切な角度に保つ。へその上に手を当て、頭を下げて、お辞儀。下を向くと、床と一緒に女物のサンダルが見えた。さらに実感がわいて、笑顔のレベルが上がる。

「すごい」

 夏の陽気にふさわしい、涼しげなワンピース。健康的な小麦色の肌に、明るい色の長い髪。鈴の様に凛とした声。今僕の前にいる人こそ、この店のお客様第一号だった。
 店を見まわして、懐かしそうに目を細める。それから彼女は、満面の笑みでこちらに向き直り、呟いた。

しゅう……」
「えっ」

 彼女の言葉をさえぎり、思わず叫んだ。なんで僕の名前を。戸惑う僕の顔が余程
怪訝そうだったのか、あわてて彼女が首を振る。それから、一瞬引きつった顔を元に戻して、悲しそうに言った。
 
「ごめんなさい、ブログを見ていたんです。秀……、藍沢あいざわ 秀さんですよね?」

 ああ、と安堵した。確かにブログには本名を書いてある。この店を作るまでの経緯も詳しく書いていた。気まずくなってしまった空気を取り換えるように、わざと明るく声を出す。

「そうです。でも、一文字足りないですよ。ぼくは秀一しゅういちです」

 あれ、そうだったけ。彼女も気を取り直したように首をかしげた。そうですよ、と笑って雰囲気を盛り上げた。初めてのお客様に、素敵な思い出を。本来の仕事を思い出して、テーブル席を進めた。メニューを渡す。

「あれ、メニューの名前が人名なんですか? 少し変わっていますね」

 メニューを開いて、彼女はきょとん、とした顔をする。唇が少し尖って、それなりに可愛い。目鼻立ちも華やかだし、僕は黒髪のストレートが好みだけど、茶髪も悪くないな。男の性でついつい値踏みしてしまった。我に返り、説明する。

「今日のメニューは、見ての通り2つしかありません。どちらにいたしますか?」

 やはりきょとん、とした顔で上を注文した。お辞儀をして、グラスを取りに行く。豆を中に入れ、水をゆっくりそそいだ。彼女が顔をしかめる。淹れ方がおかしいと思っているのだろう。友人にも同じように反応されたので慣れているが、味にも顔をしかめられないだろうかと少々心配した。緊張しながら、彼女の前にグラスを置く。きょとんとした顔が、完全に不審物を見る顔に変わった。

「いや、いろいろ言いたいのは分かります。でも、まずは飲んでみてください」
「はい……」

 彼女がこくりと頷く。僕は、長年考えてきた台詞を口にする。

「……それでは、恋が途切れないよう、味わってください。ですが、」

 ですが、くれぐれも自分の恋を見失わないようにご注意ください。台詞の続きを、僕は言わなかった。自分にこれを言う資格はあるのだろうか。それもまた、僕はずっと考え続けているのだ。


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