コメディ・ライト小説(新)

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拝啓、世界で一番嫌いな君へ。
日時: 2017/05/21 01:08
名前: ささくれ


__伝えたいことが、あるのです。






**


はじめまして、ささくれと申します。

コメディ時々シリアスで進行予定です。
亀更新ですが、暖かい目でみていただけると幸いです、よろしくお願いします。




*登場人物

影宮かげみやたかせ

八千草やちぐさ ひかり

古賀こが 翔馬しょうま

Page:1



Re: 拝啓、世界で一番嫌いな君へ。 ( No.1 )
日時: 2018/08/23 16:30
名前: ささくれ

 文武両道、容姿端麗、なんでもできる優しいスーパーマン。
 向川高校の生徒会長、影宮隆世はそんなありとあらゆる褒め言葉を常に身に纏う、生徒の憧れだった。女子からの告白数も異常ではない。それを羨む男子は多数いけれど、妬む者はいなかった。老若男女問わず愛される、そんな少女漫画のヒーローのような男がここにいた。
 
「不良生徒の指導......?」
 
 そんな彼に今日も今日とて『お願い』という名の強制お仕事が舞い込んだ。
 朝、生徒会の仕事のために普通の生徒よりはやめにきた隆世を待っていたのは、にこにこと笑みを絶やさない頭部が少々寂しい生徒指導の教師だった。隆世もその整った顔を完璧な笑顔で形作ってみせた。
 
「うん、一年生の女子なんだけれどねぇ。髪染め遅刻問題行動......何度言っても改善の兆しがなくてねぇ」
 
「......それで、俺に、ですか」
 
「ダメ元でいいから、君からも一言いってくれるとありがたいなぁ」
 
「わかりました。それで、その生徒の名前は?」
 
「一年六組の八千草ひかりさん。金髪で小柄だからすぐわかると思うよぉ。朝は大体遅刻してくるから、昼か放課後に頼むねぇ」
 
 間延びしたやる気のない声を聞きながら、隆世は小さくお辞儀をした。
 
「はい。それでは失礼します」
 
 職員室を出て、引き戸を静かに閉める。
 まだ朝早いせいで人気のない廊下に、控えめな上履きの音が微かに響く。
 隆世は忌々しそうに舌打ちをひとつかました。

 
「......ぁんのクソハゲ、俺をなんだと思ってんだ」
 
 
 ぽつり、と低音で呟かれたそれは、先程までにこにこと笑っていた優等生な生徒会長のものではなく。
 笑顔の仮面をむしり取った、ただの影宮隆世その人のものだった。
 
 さて、ここでもう一度おさらいしよう。
 文武両道、容姿端麗、なんでもできる優しいスーパーマン。その他にも、二次元から飛び出してきた王子様、一度は惚れる男ナンバーワン等々、彼を表す言葉は挙げればきりがない。
 誰も彼もが影宮隆世という人物を羨み尊敬の眼差しを向けた。
 
「不良生徒の指導? んなもん風紀委員に任せろっつーの。つーかどうにもできねえって生徒指導の教師としてどうなんだよ、辞めちまえくそが。生徒の髪指摘する前にてめえの髪をどうにかしろよハゲ」
 
 出るわ出るわの罵詈雑言。ズボンのポケットに手を突っ込み、眉根を寄せ、殺気が篭った目で廊下を闊歩する姿は、まるで彼こそが不良のようだ。地毛ではあるが茶髪というのもあってますますそれらしい。
 彼を優しい生徒会長としてみている生徒や教師がこれをみれば、夢か幻かと己の目を疑うだろう。
 だがしかし、これこそが影宮隆世の本当の姿だった。
 
「おい翔馬!」
 
 スパン! といい音をたてながら、表札に生徒会室と書かれた引き戸を勢いよく開けた。
 
「うわっ! ち、違うんですオレはちゃんと仕事を! ......って会長かい、びっくりしたぁ。どーしたんすか? てか、まさかそんな顔のまま廊下歩いたんです? 誰かにみられたらどうするんすかー」
 
 生徒会室の長机でお菓子をぽりぽりと食べていたのは、一年生で副会長の古賀翔馬だった。
 実は、この学校で唯一彼の本性を知っている人間でもある。
 慌ててお菓子の袋を背に隠しているが、口元がチョコで汚れているのでバレバレだ。指で口を指すと、少し照れた顔をして拭っていた。別に菓子厳禁というわけではないのだが、仕事もせず生徒会室で貪り食うのは少々まずい。
 そんな翔馬にため息をひとつつき、後ろ手で戸を閉めた。
 
「こんな朝っぱらから歩いてるやつなんてそうそういねえよ。お前さ、仕事頼まれてくんない?」
 
「は? 仕事っすか? なんの?」
 
「不良生徒の指導」
 
「不良!? 嫌っすよー!怖いし! 逆にボコボコにされそう!」
 
「女子だから大丈夫だ。俺はめんどくせえからパス。会長命令な」
 
「頼むって言って結局強制!? オレちびだし童顔だしで女子にも舐められるんすよ! 会長行ってくださいよぉ、会長ならイケメンだし背高いし威圧感出せますよー不良に勝てるっすよー」
 
 机に顎をくっつけて文句を垂れる翔馬の姿に、隆世は再びため息をついた。黒いつんつんした髪、本人も言うようにあどけない顔立ち、少々小さい背丈。なるほど、確かに威圧感など出せそうにない。
 
「ていうか、その不良って何年なんですか?」
 
「一年だ」
 
「あー、やっぱり、八千草ひかり」
 
「なんだ、知ってんのか?」
 
 翔馬はがばりと起き上がり、ありえない! という表情を浮かべた。
 
「知ってるも何も、超有名っすよ! 金髪だしなんかヤンキーみたいな黒いマスクつけてるし、腕とか足とか痣だらけで! あれはきっと毎日喧嘩三昧っすよ......なにより体育の広瀬があれみて怒らなかったんすよ!? あんなに酷いやつみたら、なんだその格好は! さっさと直せ! って鬼みたいに怒鳴るのに! 隣のクラスなんで、詳しくは知らないし喋ったことも ないですけど」
 
「へえ、あの広瀬が? 珍しいな」
 
「......会長、もうちょい他人に興味持ってくださいよ......オレら入ってもう三ヶ月ですけど、ずっと話題だったし。あいつ知らないのはやばいっすよ......」
 
「他人とかどうでもいいしなぁ」
 
「......ほんとに、なんでこの人生徒会長になれたんだろ」
 
 翔馬のぼやきに、ぶ厚い仮面のおかげだなと返して、隆世はふむ、と考え出した。
 ここの高校は特別校則が厳しいというわけではない。制服はセーターやソックスなどは、卒業式や始業式といった特別な時をのぞいて自由だし、化粧やアクセ類もあまり派手なものでなければ咎められない。それなのに指導が入るということは、八千草ひかりという生徒はよほど問題児なのだろう。
 しかし、体育科の広瀬からは何も言われない。
 広瀬といえば、鬼教師として有名な、生徒に怖がられている先生だ。そんな人があからさまな不良をみて怒らないなんて、なにかよほどの理由があるのか、もしくは。
 
「広瀬がびびってるって噂もあるんすよ。八千草、めちゃくちゃ喧嘩強いらしくて」
 
 隆世の思考を引き継ぐかのように、翔馬がそう言った。
 
「ハゲの言ってた問題行動っつーのはそれか。けどなぁ、いくら強くてもさすがに大の大人が、しかも男が女子高生にびびるってのは......」
 
「ないっすよねぇ、あの広瀬だし。やっぱなんかあるんすかね? 」
 
「さあな。......そんなに気になるならやっぱお前行って__」
 
「嫌っすよ! せめて、せめて一緒に!」
 
 隆世はやれやれと大げさに肩を竦めてみせた。
 元々は会長が頼まれた仕事ですよね、なんて言葉は、鳴き始めた蝉の声で聞こえないふりをした。

 

 
 
「八千草ひかりさんって子、いるかな?」
 
 あれから時間は流れ、昼休みがやってきた。
 隆世は翔馬を引き連れて、八千草ひかりのクラスである一年六組へと足を運んだ。さすが生徒会長、一年生にも大人気っすね、とあちこちから上がる黄色い声を聞きながら翔馬は独り言のように呟いた。
 
「や、八千草さんなら、あそこに......」
 
 そう答えた女子生徒の頬はほんのり赤く染まっている。隆世は気にした様子もなく、ありがとうとお得意の完璧スマイルを浮かべた。そのせいでさらに女子生徒の顔が真っ赤になったのだが、隆世はもう見向きもしなかった。
 教えられた場所に視線を滑らせると、いた。窓側の一番後ろ、生徒に大人気の当たり席に、八千草ひかりはいた。
 金髪の髪を顔の横で二つに結び、黒いマスクをつけて、セーターを腰にまいている。周りは隆世の登場で色めき立っているというのに、頬杖をつきながらつまらなそうに窓の外を眺めていた。なるほど、確かにすぐわかる。
 
「八千草さん」
 
 近づいて、話しかける。たったそれだけの動作に、クラス中が注目した。
 
「二年の影宮隆世です。八千草さんとちょっと話がしたいから、生徒会室に来てくれないかな?」

 さすがにここでは話せない。
 なるべく優しく、笑顔でそう問いかけても、八千草ひかりはただ目線だけをこちらによこし、その口を開くことはなかった。
 
「......あの、八千草さん?」
 
「......」
 
「えーっと、もしかして用事あったりしたかな? ごめんね、それだったら都合のいい日教えてもらいたいんだけど__」
 
「行かない。話しかけんな、うざい」
 
「え」
 
 何を言われたのか脳が理解せず、案外可愛い声をしてるんだな、なんて的外れなことを考えているうちに八千草ひかりは席を立ち、クラスメイトの驚愕した眼差しをものともせず教室を出て行った。
 ぽつんと残された隆世は、思わず笑顔の仮面を貼り付けるのをやめ、ぼんやりと誰もいなくなった席をしばらく眺めていた。
 そしてはっと我に返り、心の中で叫び倒した。
 
(............なんだあのクソアマ!)
 
 生徒会室へと向かう道中、遠回しの八つ当たりを翔馬が受けたことは言うまでもない。
 
 
 
 *
 
 
 
「.....めんどくせえ......」
 
 放課後、誰もいなくなった生徒会室で様々な書類をまとめながら隆世は呟いた。
 生徒会の中でも隆世の本性を知っているのは翔馬だけなので、生徒会活動中も笑顔の仮面をつけてひたすら生徒会長を演じる。
 たまに、自分は何をしているのだろうと、何もかも放り投げてしまいたい時がある。大体は、今日の昼のように頭にくることがあった時だが。
 それでも、それでも。
 影宮隆世は、いい人でいなければならない。
 
「あー......くそ、学校滅びろ!」
 
「失礼しまー......す............」
 
 思わず叫んだ瞬間、ノックもなしに突然戸が開いた。
 入ってきた人物は、目を真ん丸にしてこちらを凝視していた。無理もない、あの生徒会長が崩れた言葉遣いで叫んでいたのだから。
 だが、その人物が隆世にとって最悪以外のなにものでもなかった。
 
 
「......や、八千草、さん」
 
 
__ああ、神様。どうか、今すぐこの学校を爆発してください。
 
 影宮隆世が、生まれて初めて神様に祈った瞬間だった。


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