コメディ・ライト小説(新)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

お嬢様と執事。
日時: 2017/08/17 21:25
名前: 氷菓子

痛い、熱い、痛い。ここはどこ?
黒煙をたっぷりと吸った肺は重く、私の意識を奪ってゆく。
火事だ!逃げろ!と、どこからか声が聞こえてくる。けれど足が動かない。床に這いつくばった惨めな格好で私はその声をただ聞いていた。
広い広い屋敷の最上階にある私の部屋にすら火がまわっているのだ、もう逃げ場はないに決まっている。
人間は死ぬ間際になると冷静になるのだろうか、ああ、私はもうだめなんだ、なんとなくそんなことを考えていた。
二十畳ほどある私の部屋。外国から取り寄せた何百万円もする立派な箪笥もお母様が買ってきてくれたお人形も革張りのソファも、炎にとっては燃料にしかならない。
壁にかけてあるお母様とお父様の写真が燃える。お母様とお父様は無事に逃げたのだろうか、それだけが気がかりだ。
体中の力が抜けて、頭の中でぶつんと音がし、目の前が薄暗くなった。
火事による死因は焼死でなくて一酸化炭素中毒による死亡が多いとどこかで聞いたことがある。

私の人生、ここで終わり?

猛烈な恐怖が襲ってきた。いやだ、もっと生きたい!まだ何もしてない!だって、私まだ15歳だよ?もっと、もっと、もっと楽しいことあってもいいはずじゃんか!死にたくない、死にたくない!
誰か私を助けて!

「助けてやろうか?」

最初は幻聴かと思った。最後の力を振り絞り、目を開けて上を見る。
悪魔がたっていた。いや、正確には悪魔のような男だった。
燃え盛る炎の中、黒い燕尾服に身を包み、ぎらぎらと光る赤い目でこちらを見つめる。普通の人間と形相はあまり変わらないが、かもし出す雰囲気というものが、人とは違っていた。
「助けてやろうか?」
男がもう一度、そう言った。
もう迷いはなかった。
「私を、助けて・・・!」
男はにやりと笑い、私の頭をそっと撫でた。お母様に昔撫でてもらったのをふと思い出した。あれ、気持ちよかったなあ・・・。

意識はそこで途絶えた。

Page:1 2 3 4



Re: お嬢様と執事。 ( No.13 )
日時: 2017/08/27 23:16
名前: 氷菓子

デモーネが助けに来た。それは私にとって十分に衝撃的な事実だった。目を見開き、これは夢じゃないかと何度も頭で確認した。
「・・・誰だお前」
ゆらりとクライヴ様が立ち上がり、デモーネに近寄る。デモーネは相変わらず笑みを崩さないままだった。
「そこの無様に転がっているお方の執事ですねえ・・・」
しかも指をさしながら軽口を叩いている。そんなデモーネとは対照的に、クライヴ様は顔を真っ赤にしながら怒りをあらわにしていた。
「・・・邪魔をするな!」
デモーネに駆け寄り、殴りかかるがデモーネはあっさりとそれをかわした。クライヴ様は勢い余ってつまづき、バラの垣根に激突し、無様な姿を晒した。
「・・・もうすぐここに、イヴァン夫人とそのご友人たちがいらっしゃいます。ここでお嬢様を襲うのは、少々荒唐無稽かと・・・」
デモーネがクライヴ様を見下ろしながらそう言う。クライヴ様の負けだった。
「・・・覚えてろよ」
悔しそうな顔をしながら、いまどき俳優でも言わないような捨て台詞を吐いてクライヴ様は温室から出て行った。

「大丈夫ですか、お嬢様」
デモーネに助け起こされ、肩を借りてベンチに座る。久しぶりに見るデモーネの顔に、なんだか少し涙が出そうになった。
「どうしてここがわかったの?」
「舞踏会、クライヴ様に何か吹き込まれていたでしょう。私が気付かないとでも?それに、愛の告白にしては戻ってくる時間が遅かったですしねえ・・・」
私の手に刺さっていたバラの棘を一本一本抜きながらデモーネはそう言う。このくらい自分でできると手を引っ込めようとしたのに、デモーネはそれを許さないかのように手を強く抑えた。
「・・・私はデモーネが考えていることがわからないわ」
「私の考えが人間ごときにわかると思いますか?お嬢様はやっぱりポンコツですねえ・・・」
くすり、とバカにするようにデモーネが笑う。こいつ、ちょっと優しいと思ったけどやっぱり悪魔だった。
「急に優しくなったり悪魔みたいなったり、変なの」
言い返すかのようにぼそりとそう呟いた。しかし、デモーネから帰ってきたのは予想外の返事だった。
「・・・お嬢様をあのような男と婚約させるのが、すこし癪だっただけです」
ぼんやりしていたら聞き逃すようなそんな音量で、デモーネがそう呟いた。
「なにかとても嬉しいこと言われたような気がするんだけど気のせいかしら」
もう顔のにやつきを隠そうともせず私はそう言った。こんな単純なことで喜んでしまうなんて、やっぱり私はバカな女なのかもしれない。
「・・・置いていきますね。さようなら」
そんな私の気持ちを読み取ったかのように、デモーネの表情から優しさが消えた。スタスタと早歩きで温室を出て行ってしまう。
「ま、待ってよ!バカ!!」
口ではそんなことを言うが、私の顔からにやつきは消えないのだった。

Re: お嬢様と執事。 ( No.14 )
日時: 2017/08/28 00:16
名前: 氷菓子

憂鬱だった舞踏会も無事に(?)終わり、季節は夏。夏といえばそう・・・。
「あっつい!どうにかならないの!?この暑さ!」
今年の夏、この国では連日の猛暑が猛威を振るっていた。ぎらぎらと照りつける太陽の光で体は干からび、心なしか庭の植物たちもげんなりしている気がする。こう暑いんじゃ、勉強にも集中できない。
「プール!そうプールよ!プール作りましょうプール!」
暑さでとうとう我慢できず、そんなことを言った私に飛んできたのは変わらずの参考書。
「今プールなんて作るお金はうちにはありません。勉強に集中してください」
このアホみたいに暑い中、涼しい顔して燕尾服を着こなす男、デモーネである。痛む頭を抑え、デモーネを睨む。
「ベロニカちゃんの家は作ったって言ってたもん!」
「ブリッジ家は最近砂糖貿易で一山当てただけでしょう・・・。うちはうち、よそはよそですよ。そんなこと言ってないで勉強してくださいよ」
デモーネに小突かれ、参考書に顔を向ける。しかし暑さで三秒ほどしかもたなかった。
「暑いよ・・・暑くて死んじゃう・・・」
暑さにうだる私を見て呆れたのか、デモーネがため息をつく。そしてちらりと私の顔を見た後、こう言った。
「・・・そんなに暑いのなら、魔法で何か出して差し上げましょうか?」
「えっ!?デモーネ魔法つかえるの!?」
衝撃の事実だった。少し話を聞くと、どうやらデモーネは自分の体の大きさを超えないものならなんでも魔法で出すことができるらしい。せっかくのデモーネの優しさだ。受け取って損は無い、と素直に頷いた。
「はい、では出しますよ」
そう言って何か呟いた後、デモーネは私の背中をなぞった。その瞬間だった。
ピチピチピチィ!!
背中に、なにかが現れた。確かに冷たいが・・・、あれ?なんか動いてるし湿ってるし生臭い・・・?
「は!?!?鮮魚!?!?」
状況を理解するのにたっぷり十秒はかかった。なんせ鮮魚を背中に入れられたのだ。
「どうです?涼しいでしょう」
にっこりと笑いながらそう言うデモーネ。いや涼しいとか涼しくないとかそう言う問題じゃなくて・・・!
「なんで鮮魚チョイス!?!?もっとなんかあるんじゃないの!?!?バカ!?!?もしかしてバカだった!?!?」
確かに鮮魚は冷たい。背中に入れたらすこしは涼しくなった。でもそう言う問題じゃないよね・・・?だって鮮魚だよ・・・?生きてる魚背中に入れる・・・?
「いやてか取って!鮮魚取ってえええ!!」
屋敷中に、私の絶叫が響くのであった。

「・・・まったく、お嬢様は何がいいんですか?」
デモーネがさっきまで私の背中に入っていた鮮魚を手に持ちながら言う。さすが鮮魚。まだピチピチと跳ねている。ってそうじゃなくて!
「せ、せめて生き物じゃないのがいいなあ・・・」
げんなりしながらそう言う。ドレスはもう既に生臭い。
「ふむ、生き物じゃない、と・・・」
デモーネは何かぶつぶつと呟き、その後ひらめいたような顔をして、また私の背中をなぞった。
こんどは背中がすーっと冷たくなった。そうそう!これだよ私が求めてたのは!背中がすーっと冷たくなって、生き物じゃなくて、トマトの匂いがして・・・って、ん?トマト?ドレスの裾を見ると、赤い液体がぽたぽたと零れ落ちていた。・・・これって。
「今日の朝食の冷製トマトスープじゃん!!バカなの!?」
「朝食が少し余っていましたので再利用しようかと・・・」
「なんでそこで節約執事発揮しちゃうかなあ!?!?なんで再利用しちゃうかな!?!?!?余ってたからお嬢様の背中に入れちゃいました!てへ!ってどんなサイコパスだよ!?」
ひとしきりデモーネに突っ込んだ後、タオルを取りに洗面所に向かおうとした瞬間。
「あっお嬢様そちらは・・・!」
「えっ?」
どうやら床が磨きたてだったらしく、滑って転んで水を入れておいたバケツに頭から突っ込んでしまった。
「・・・涼しく、なったね」
「はい」
くすくすと笑うデモーネを見て、もうデモーネの魔法に頼るのはやめよう、そう思った瞬間だった。

Re: お嬢様と執事。 ( No.15 )
日時: 2017/08/28 09:19
名前: 氷菓子

背中に鮮魚などを入れられるなどいろいろあったが、何とか勉強を終えて後は夕飯まで自由時間だ。固まった背筋を伸ばし、リラックスする。デモーネは勉強の途中で仕事がある、と部屋から出て行ってしまったため、今私を見張るものはいない。
「・・・久しぶりに洗濯場にでもいこうかしら」
そう独り言をいい、部屋を出る。今日は洗濯物を増やしてしまった負い目もある。ただでさえドレスの洗濯は大変なのだ。それも鮮魚だのトマトスープだのをいれられたドレスを洗うなんて・・・。
いつもは通らない一階の西側、一番奥の部屋に洗濯室はある。扉を開けると、石鹸のいい香りが鼻腔をくすぐる。
「あら!お嬢様!珍しいですね!」
洗濯物が入ったかごをかかえながらにっこりと笑い、私に話しかけたのはアビー。すこし日焼けしていて、背が高く、がっちりとした容姿をしている。
「・・・どうしてこんなところにいらっしゃったのですか?」
アビーから少しはなれたところで、桶の中のドレスをもみ洗いしているのは最年少のリジー。アビーと似たがっちりとした体格だが、色は白い。
「リジー!だめでしょ!お嬢様にそんな口のききかた!」
洗濯物にのり付けしながらリジーをたしなめるのは最年長のマリー。重労働のランドリーメイドだというのに、体は三人の中で一番小さく、もしかしたら年下の私より体の発育が遅れているかもしれない。
「いやあ、今日はドレスを汚しちゃって・・・。申し訳なかったし、それにまたみんなと昔みたいに話したくなって」
椅子に座り、少し照れながらそう言う。私が小さい頃は内緒でよくここに来て、マリーたちと話したものだった。
「お、お嬢様!!私!感激ですー!!」
そういいながら洗濯物を置いていきなり抱きついてきたのはアビー。私よりも十センチほど背が高く、力も強いため少し苦しい。
「・・・別に私はどうでもいいけど」
髪の毛をくるくると指で回しながら洗濯を続けるリジー。この癖は嘘をつくときに出るものだった。
「リジーったら素直じゃないわね・・・。お嬢様、こんなところでよければどうぞゆっくりしていってくださいね」
にっこりと笑いながらのり付けを続けるマリー。
よかった。私を取り巻く世界は、すべて変わってはいなかった。まだここに、昔のままの人たちがいた。
すこし安心して椅子に座ると、三人とも洗濯を中断して私のそばに円を描くように座った。・・・女が四人集まって、出る話といえば一つしかない。
「・・・で、お嬢様は今、好きな男の人とかいるんですか?」
ニヤニヤしながらそう聞くのはアビー。ほかの二人も興味津々にこちらを見ている。
「私は今、気になる人はいないかなあ・・・。みんなはいるの?」
三人を見ながらそう言う。するとマリーとアビーは顔を見合わせて、そりゃあ、ねえ・・・なんて言い合ってる。リジーはずっと無言だ。
「・・・まあ、かっこいいと思う人ならいますけど・・・」
突然リジーが口を開いた。普段、物静かで自分の感情をあまり見せないリジーが、そんなことを言うなんて意外だった。さすがに、誰かとまではわからないだろうが・・・。なんて私の考えはすぐに覆された。
「デモーネ様でしょ!」
マリーがいきなりそう言った。すると、リジーの顔が真っ赤になって顔をふせてしまった。
「べっ、べつにデモーネ様をお慕いしているとかそんなんじゃなくてただ個人的に勝手に尊敬しているとかそういう・・・」
しかも早口で何か言っている。これはもう図星だ。
「隠さなくていいんだよー、リジーがデモーネ様のこと好きなのは私たちだけじゃなくてメイドのアニーにまで伝わってるんだからさあ」
ニヤニヤしながらリジーの背中を叩くアビー。メイドの噂は知られたらあっという間に屋敷中に伝わる。少し、リジーが気の毒だった。
「で、でもデモーネはやめたほうが・・・。あいつ、意地悪だし・・・」
苦笑いをしながら軽い気持ちで私はそう言った・・・のだが、
「デモーネ様は意地悪なんかじゃありません!エレガントで、いつも物腰が柔らかくて、それにその・・・容姿もかっこいいですし・・・」
顔を赤らめながら、それでもすごい剣幕でリジーがそう言う。なんだあいつ、多分私とメイドで対応が違うな・・・?
「たしかに、デモーネ様はお優しいわよねえ・・・。この間も、ランドリーメイドの私の荷物を持ってくださったし」
「あー!私も!女性が重いものを持っちゃいけませんよって!まさにジェントルマン、ってやつだよねえ!」
私の確信を裏切らないかのように、マリーとアビーが続けてそう言う。どうやら、私に見せない顔をメイドたちには見せているらしい。
「私はよく、参考書で叩かれたりするけど・・・」
ぼそりとそう呟くと、三人の否定の嵐が返ってきた。
「まっさかあ!お嬢様、それってほかの執事じゃありませんか?」
「アビーの言うとおりですよ!デモーネ様は天使のようにお優しいのにそんなことするわけないじゃないですか」
「・・・デモーネ様が、そんな野蛮な行為するわけないです」
アビー、マリー、リジー、とどうやら三人のデモーネのイメージは天使のように優しい執事らしい。信じられなかった。

洗濯室を出た後、廊下でデモーネと顔をあわせたので、少し期待を込めて普段メイドに分け与えている優しさの百分の一でもいいから私にちょうだい、と言ったらその日の夕食は私の嫌いな辛いものだらけになった。やっぱりあいつは天使なんかじゃなくて悪魔だ。

Re: お嬢様と執事。 ( No.16 )
日時: 2017/08/29 20:40
名前: 氷菓子

ある晴れた夏のある日、私は少し玄関でそわそわしていた。今日は少し、いつもとは違う特別な日なのだ。
「そんなに待っても、時間は早まりませんよ」
玄関で落ち着かない様子の私に、いつの間にか後ろに立っていたデモーネがたしなめるようにそう言った。
「・・・びっくりした。わかってるわよ、そんなこと」
すこし棘のある口調でデモーネにそう言う。そう、今日は新しい使用人がくるのだ。つい最近始めた新しい事業が当たり少し家計に余裕ができ、ここ最近人手不足に悩まされていたフットマンを雇う、とデモーネからは聞いている。
「・・・どんなひとがくるのかしら」
「さあ、経験はあると聞いていますが」
カチコチ、と時計のなる音が響く。どうして人を待つ時間はこんなにも長ったらしく感じるのだろうか。

時計の針がちょうど八時ぴったりになったとき、玄関の扉がノックされた。やっと時間になったか、と扉を開ける。
天使のような男の人だった。身長は175cmほどで、デモーネよりは少し小さい。ふわふわとしたくせ毛の金髪に、透き通るような青く丸い目。童顔で体は細く、何も知らない無垢な少年を思わせるようだった。さすがは美少年。後ろから差し込む日差しが後光のようにも思え、少し見惚れてしまった。
「今日からここでお世話になるフィ」
「帰ってください」
挨拶を全てし終える前に、なぜかデモーネは物凄い勢いで扉を閉めてしまった。一瞬沈黙が訪れた後、ドンドンドンドン!と激しいノック音が聞こえ始めた。
「えっちょっと待ってなんか気に食わないことでもあったの?」
デモーネにそう聞く。しかしデモーネは黙ったままだ。このままでは埒が明かない、と扉を開けようとするがデモーネに手を掴まれ遮られる。
「開けてくださいよ!僕仕事に困ってるんですよ!!なんで閉めちゃうんですかあ!!」
ドアの外で必死にそう言う声の主。今にも泣き出しそうな声音だった。
「ねえデモーネ!話だけでも聞いてあげようよ!」
デモーネの服の裾を掴みながらそう言う。きっと本当に困っていて、デモーネが出した恐ろしいまでの薄給+休日の無さという条件が載った求人広告でも食いついてきたんだ。ここで話も聞かずに突っ返すのは酷なのではないだろうか。
「あいつは仕事になど困っておりません。あれは全て嘘です」
「あいつって、デモーネ知ってるの?」
「ええ、あいつは・・・」
デモーネが何か言おうとした瞬間、扉がバンッと音をたてて開き、どうだ、と言う顔でその音をたてた主は笑っていた。しっかりと施錠したはずなのに、と私が驚いていると、
「カメリア様!僕はあなたを助けに来ました!」
にっこりと笑いながら、彼はそう言った。デモーネが頭を抱え、忌々しそうに彼を見つめる。
「百年ぶりくらいですか、フィニ」
普段は見せないような、不快感をあらわにした表情でデモーネはそう言う。えっ百年ぶりってまさか、こいつも人間じゃない!?
驚きを隠せない顔でフィニ、と呼ばれた青年のほうを見る。青年はデモーネを一瞬ちらりと見た後何も言わず、私に近づき手を握った。
「カメリア様、あなたは騙されているのです」
ぎゅっと手を握りながら、青い目がこちらをじっと見る。騙されている?何の話だろう、と聞こうかと思ったが、その前に青年のマシンガントークが始まった。
「カメリア様、あなたはいったいどのような契約をなさったのですか?地位?名誉?金?美貌?それらは全て自分の力で叶えなくてはならないのですよ!今ならまだ大丈夫です!さああの忌まわしい存在を一緒に倒し、契約を無効にしましょう!」
デモーネに指を刺しながら青年はそう言った。・・・待って、何の話だかよくわからない。私が呆然としているのを見て、話が飲み込めていないことを察したのか青年はしまった!という顔をして自己紹介を始めた。
「あっ!自己紹介がまだでしたよね!僕は天使のフィニです!カメリア様の横にいるそいつを退治しに来ました!」
そう言った後、男は恭しくお辞儀をした。・・・デモーネの大きな大きなため息が聞こえる。

Re: お嬢様と執事。 ( No.17 )
日時: 2017/09/02 22:38
名前: 氷菓子

「と、いうわけで!死ね!!」
天使の様な顔から一変し、物凄い形相でデモーネに襲い掛かるフィニ。もちろん丸腰と言うわけでなく、ご丁寧に懐から銀のナイフを取り出した。しかしデモーネは涼しい顔でフィニの腕を掴みねじりあげる。そしてひるんだフィニの腹に膝蹴りを食らわせる。フィニが苦しそうにうめいた。
「・・・下級天使ごときが私に襲い掛かるとは」
嗜虐的な笑みを浮かべ、もう一発膝蹴りを食らわせるデモーネ。さすがにここまでやられてしまってはフィニの戦意も完全に消失する。ぐったりとうなだれるフィニを抱え、屋敷から出て行こうとするデモーネ。ちょっと待ってどこへ行く気だ。
「デ、デモーネ。さすがにこれはやりすぎなんじゃ・・・」
死んだように気絶しているフィニを見て少し気の毒になり、デモーネにそう言う。しかしデモーネは嗜虐的な笑みを崩さずに、
「こいつは人間ではありません。粗大ごみです。それに天使はこのくらいじゃ死にませんよ」
などと言う。もうこうなってはとめるすべなど無い。好きにして、と一言言い残し玄関を出るデモーネを見送った。・・・数分後、何か大きなものが水に沈む音がしたが、気のせいだと思うことにした。

それから数時間経って、日が一番高く上る午後二時ごろに私の部屋にノック音が響いた。大体予想が着いたが、扉をあけて確認する。・・・びしょびしょのフィニがいた。
「カメリア様!六時間ぶりですね!いやあ重石をつけられて水に沈められちゃいましたよお」
そんなことを言いながらニコニコと笑うフィニ。重石をつけた状態で水に沈めるデモーネもなかなかに異常だが、その状態から生還したこいつも人外じみている。・・・というかデモーネは私の家の池を殺人現場にしようとしたのか。
「カメリア様!さあ僕と一緒にあの化け物を倒しましょう!」
呆れて乾いた笑みが顔に出ている私の手を握り、そう言うフィニ。その顔は、断るなんて百パーセント無いだろうという自信で満ち溢れていた。
「・・・いや、私別に困ってないし」
手を振り解きそう言う。フィニは一瞬何が起こったかわからない、と言う顔をして、その後すぐに泣きそうな顔をして私に詰め寄ってきた。
「え!?なんで!?だってあなた困ってるんじゃ・・・!?化け物にいいように家を乗っ取られて、金のために危険な目にあって・・・って聞いてるんですけど・・・!?」
「デモーネは私の家のために働いてくれてるわ。・・・まあ、それが乗っ取られてるっていうのかもしれないけど。私が危険な目にあった時は助けてくれたし・・・ってあれ?」
よく考えたら、私はデモーネに助けてもらってばかりだ。勉強もそうだし、舞踏会のときだって・・・。デモーネは悪魔のような男だと思っていたが、案外そうでもないのか?
「でも、あいつは酷いやつだって!神様がそう言ってたんです!だから間違いないんです!僕はあいつを殺さなきゃ・・・」
その後の言葉に詰まるフィニ。殺さないと、何か罰でもあるのだろうか。鼻をすする音が聞こえた。目に涙をいっぱいためてこちらをじっと見るフィニ。私はそんなフィニを突き放せなかった。
「・・・事情はよくわからないけど、帰る場所はあるの?」
ぶんぶんと首を横に振るフィニ。どうやらわけありのようだ。
「じゃあしばらく家にいなさい。フットマンとして、主の私がちゃんと雇ってあげるから」
「本当ですか!」
きらきらとした笑顔が現れる。
「ただし!私がデモーネのこと、本当に悪人だと思うまでは手を下さないこと!」
私が条件を付け加えるとしなびたキャベツのような顔でしばらく黙った後、こくりと頷いた。デモーネのことだ。フィニのような子に襲われたところで死ぬとは思えないが、万が一がある。そのことを思って出した条件だった。頷いてくれてよかった。
「よろしくね、フィニ」
笑顔で握手を差し出す。複雑そうな顔で、フィニは握手を受け取るのだった。


Page:1 2 3 4



スレッドをトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


E-Mail


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。