コメディ・ライト小説(新)

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薔薇の中に媚薬。【完結】
日時: 2018/01/09 11:58
名前: 立花 ◆FaxflHSkao










 優しくなったら、過去のことを許せるんじゃないかって、そう思ったんです。







※ 人を選ぶ作品です。苦手だと思った方はブラウザバックお願いします。

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20 ( No.23 )
日時: 2017/12/06 16:13
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

 さて、質問です。かつての恋敵にプロポーズをされました、あなたならどう答える?





 悠ちゃんの遺影の前に座って、私は大きなため息をついた。
 線香の煙が上にのぼっていき、私はそれを見ながらぼーっとしていた。悠ちゃんのお母さんが私の様子を見て、何かあったの、と聞いてきた。私はロボットのように何も、と答えるだけで精いっぱいだった。

「それにしても、本当にいいんですか。わたし……」
「気にしないで。これが私のできる唯一の償いだから」
「償いって、悠ちゃんのお母さんは何にも悪くないじゃないですか。そんなこと言わないでくださいよ」

 悠ちゃんのお母さんが私を引き取ってくれるという話が出たのはつい最近のことだった。退院日の数日前、悠ちゃんのお母さんが来て私に一つの道をくれた。
 嬉しかったし、私はその言葉に救われた。だけど、その反対に罪悪感を感じた。すべての元凶は汚い行為をした私だから。結局悪いのは私だった。
 それなのに、私はこれからも悠ちゃんのお母さんを苦しめ続ける。その現実に私は喉元を小さな針で刺されたような感覚に陥る。チクチクと最初は小さな痛みだったはずなのに、それはゆっくりと私の喉に穴をあける。ヒューヒューと息をする音が聞こえて、それはいつの間にか吐き気に変わっていた。

 私が彼と「寝た」事実も、知っているくせに何も言わない。
 それを責めることもしない。どうせなら、もっと罵って、私の骨の髄までぶっ壊してほしかった。悠ちゃんのお母さんになら、殺されても本望だったのに。


 悠ちゃんのお母さんは私の理想の「お母さん」だった。
 こんな人のもとに生まれてきたら、どれだけ幸せだっただろうと何度も考えてしまう。正しいことを正しいといえる、強い人。私の憧れであり、私が尊敬する人。

 私は悠ちゃんのお母さんを見るたびに痛感させられるんだ、きっと。
 お前は弱い、って。


「悠樹はね、ほのかちゃんのことが本当に大好きだったのよ」
「……」
「あなたを幸せにしたいって、いつも言ってたの」
「……」
「あなたが苦しみから解放されるまで、私があなたを守ってあげる」



 悠ちゃんの遺影は笑っている。
 いつも朝弱くて慶ちゃんに起こされていた悠ちゃん。体育が苦手でいつもボールから逃げてた悠ちゃん。放課後にゲームセンターに行きたがった悠ちゃん。慶ちゃんのことが大好きだった悠ちゃん。
 私の幸せを願ってくれていた悠ちゃんに、私はやっぱり泣いてしまう。


「あなたのために頑張った一人の男の子のこと、ちゃんと覚えててあげてね」


 こんなにも好きだと気付いたのに。こんなにもあなたがいないと苦しいって気付いたのに。
 それなのにもう遅いだなんて、そんなの……ずるいよ。


21 ( No.24 )
日時: 2017/12/09 20:41
名前: 立花 ◆FaxflHSkao


 「俺がほのかに抱いている感情は、恋じゃない。それでも彼女が大事だし、守りたいし、幸せにしたいと思う。矛盾しているんじゃないかって周りから言われても、それでも構わない。彼女が笑ってくれていれば、それが俺の幸せだった。
 きっと、ほのか自身もそう思ってくれてたんだよな。お前も俺が幸せでいてさえくれれば、それでいい。自分の気持ちなんか気づかなくてもいい、ってそう思ってたんだろう。
 俺、気づいてたんだよ。お前が俺のこと好きだったの。それでもお前が気づいてほしくないって表情してたから、何にも言わなかった。間違ってないよな、って何度も自分に言い聞かせて、きっとほのかの心を抉ってた。
 地面に浸り落ちる赤い液に俺はいつも怯えてた。空想だと、俺の想像だと分かっていながら、それでもお前が泣いてるのを気づかないふりしてた自分が、酷く残酷な人間に思えた。


 最低な親友でごめんな。お前だけは、ほのかだけは、どうかしあわせになってほしい。
 でも、やっぱ俺はお前の物にはなってやれない。

 ごめんな、ずっとずっと俺は慶のことだけが好きなんだ」











 悠ちゃんの部屋の机の一番下の引き出し。いつもは鍵がかかっていたその引き出しの中には、悠ちゃんがずっと書き溜めていた日記があった。
 私はそのことを知っていながら、一度もそれを見たことが無かった。きっと、見せてって言えば見せてくれただろうに、私はそれを言えなかった。
 見たら悲しくなると思った。慶ちゃんのことを好きな悠ちゃんを直で見るのが怖かったのだ。応援していながら、私はまだ恋をしていた。報われないと知っていながら、鬱陶しく恋の湖に浸っていた。

 最後のページのその告白に、私はとても動揺した。
 やっぱり、という感情と、そっか、っていう安堵。まさか、とだけは思わなかった。
 気づいてたんだ、私の気持ち。日記に触れた手に少し力が入って、紙がぐしゃっと萎れた。
 慶ちゃんのことが好きなのは知ってた。慶ちゃんのことだけが好きなんて、そんなの分かってた。でも、幸せになってほしいなんて言うなら、せめて傍にいてほしかった。
 日記を閉じて、私は大きく息を吐いた。泣くことだけはなかった。

「大丈夫だよ、私も一緒だから」

 日記を引き出しの中に入れて、鍵を閉めた。もう二度と、この引き出しは開かなくていい。私は鍵を手で包んで勢いよく力を入れた。ぎゅっと、思いっきり握り潰して、粉々になった銀のそれを私はごみ箱に捨てた。
 
「私もずっと、罪悪感と共に生きてきたんだ」





 慶ちゃんと、悠ちゃんと、私。
 ずっと一緒に居られるわけないのに、三人で楽しく過ごしてきた。この関係は永遠だよ、って私が笑って言ったんだ。そんなわけないのに、それだけはありえないのに。
 私だけが不必要な存在だった。私だけが邪魔ものだった。私さえいなければ、もっと二人は好き合えたのだ。




 ごめんね。ごめんね。ごめんね。
 慶ちゃんもいなくなったら、私はこれからどうすればいいんだろう。慶ちゃんの嘘みたいなプロポーズを思い出しながら、私は悠ちゃんの部屋を出た。

参照800お祝い番外編 ( No.25 )
日時: 2018/01/09 11:40
名前: 立花 ◆FaxflHSkao



 お久しぶりです、立花です。
 ホモが出てきたり、ビッチが出てきたり、変なキャラのオンパレードなんですが、読んでくださる皆さま本当にありがとうございます。書き始めた経緯は幸せになりたい子たちが必死に頑張って幸せになる話が書きたいというものだったのですが、結末はTwitterでちょいちょい喋ってますが、残った二人が結ばれます。一番最初のお話に戻ります、はい。
 と、前置きはさておき、久しぶりの更新ですが番外編を投入したいと思います。参照が800を超えてたよ、びっくり、ありがとうございます番外編です。
 ついこの前参照5000でお祝い、いつしようかなーと思っていたら10000超えててパニクってるのが基本たいな私ですので、次はいつ番外編とか書けるだろう笑 
 それでは、番外編です。タイトルは「 誕生日のお話 」です。






 「さて、問題です。十二月二十四日は何の日でしょう!」





 そう、嫁が笑顔で問いかけてくる。間違うことは許さないというその表情に、俺の背筋がぶるっと震えた。
 まず、初めに浮かぶのはクリスマスイブ。だけど、彼女がわざわざそんな大衆的なイベントを俺に答えさせたいとは到底思えない。
 次に、彼女、ほのかの誕生日。毎年祝っているが、結婚して一年目の今年は何か特別なものをプレゼントすべきか、とカタログを見てたが彼女の物欲のなさに心底俺は困っていた。だけど、きっとそんな自分の誕生日を覚えているかなんて彼女はわざわざ聞いてきたりしない。じゃあ、残された選択肢は一つだけだ。


「悠の誕生日」


 俺の答えに嫁の表情は一気に明るくなる。

「ピンポーン!!! そう、慶ちゃんプレゼントいつ一緒に買いに行ける? 明日? 明後日?」

 彼女は嬉しそうに飛び跳ねながら、俺の腕にぎゅっとしがみついた。彼女にとって自分の誕生日よか、悠の誕生日のほうが大切なことはずっと前から変わらない。
 いつか、彼女が悠のことを忘れて俺のことだけを好きになってほしいけれど、それは絶対に無理な話だった。そんな夢みたいなこと起こらない。彼女はずっと悠に囚われる、それは俺も一緒なのに、それでも俺だけを見てほしかった。


「じゃあ、あさって。仕事終わったら一緒に買い物行こうか」

 そのとき、ついでにほのかの誕生日プレゼントを買いに行けばいいと思った。喜ぶ彼女の左手の薬指に輝くダイヤの指輪は、小さく光り輝いていた。
 俺がついたあの嘘を彼女が受け入れてしまったから、こんな関係が始まってしまった。でも、そうしないと彼女は受け入れてくれなかったとも思う。
 俺たちが幸せになるためには嘘が必要だった。ごめん、悠。



「私ね、嬉しいんだ。悠ちゃんと誕生日が一緒だったらね、ずっと慶ちゃんに私の誕生日覚えててもらえるでしょう?」


 カレンダーに大きく赤丸がついている、十二月の二十四日。世間では恋人たちの聖夜、クリスマスイブ。
 俺がほのかを悠の代わりにした。最低な男になることにした。
 だから、俺が傷つく資格なんてないのに、彼女が笑うと罪悪感で胸がちくっとした。


「一緒にお祝いしようね」

 彼女が俺を好きになることはない。彼女の中でも俺が彼女のことを好きになることはないってそう思われているのだろう。俺がそう仕向けた。だから、悪いのは全部俺だった。
 彼女が嬉しそうに悠の話をする。俺はそれを全部笑顔で受け入れる覚悟ができている。俺たちは夫婦にはなれない。俺たちは好き合うことはできない。


22 ( No.26 )
日時: 2018/01/09 11:39
名前: 立花 ◆FaxflHSkao



 私たちの「好き」はきっと歪だったのだ。
 私の好きは「肯定されたい」。汚い私でも許してくれる誰かがほしかった。そんな私でも誰かに愛されたかった。
 慶ちゃんの好きは「離したくない」。大切な友人が苦しんで自分から遠ざかっていくのが怖かったのだ。
 そして、悠ちゃんの好きは「本物の好き」。どうしようもなく好きだったのだ。私を傷つけているのもわかっていて、それでも止められなかったその感情。私は彼の本音をちゃんと聞いてあげられなかった。ごめんと何度謝っても仕方ない。苦しい。苦しいよ。


「ねぇ、慶ちゃん」


 その日は卒業式だった。悠ちゃんも一緒に卒業するはずだったのに、私の隣には慶ちゃんしかいない。
 それを一番悲しんでいるのはきっと慶ちゃんだ。私じゃない。

「なに」

 降ってくる桜がまるで雪のようで、卒業証書を片手に私は雲一つない空を見上げた。澄み切った空は、今の私の心の中のようだった。

「いつか、慶ちゃんが私のことを好きになってくれたら結婚しよう」








 その日、慶ちゃんがどういう風に返答したかは覚えていない。
 でも、どれくらい私が慶ちゃんのことを大事に思ってたかっていうと、きっと悠ちゃんへの恋に狂っていたあの日々と変わらない、気がした。



 二十二歳になるまで、慶ちゃんとは一切会わなかった。
 メールとかラインとか、年賀状とかは交換していたけれど、お互い「会いたい」とは言わなかった。
 慶ちゃんは卒業後、製造業の小さな会社に、私は短期大学に入学して、保育士の免許をとった。小さな子供の面倒を見るのは思っていたより大変で、お母さんも昔はこんな感じにあわてたのだろうかと考えて一人で笑った。

 慶ちゃんのことを好きだと気付いたのは、もういつのことか忘れてしまった。
 彼の「好き」が永遠に私のものにならなくてもいいと思った。お互いに悠ちゃんのことが好きなままでも幸せになれると思った。
 二番目でもいいから。悠ちゃんの次でもいいから、私のことを想ってほしかった。昔みたいに、三人でいたころみたいに、笑ってほしかった。悲しい表情なんてさせたくなかった。





 私は――どうしようもなく、慶ちゃんの隣に自分以外の人間がいることが許せなかったのだ。
 慶ちゃんはきっと私と結婚したら罪悪感で死にたくなるかもしれない。本当に幸せだった未来は、どっちだったのだろうって考えて、考えて、そして自虐的なことを想像して苦しむ。私はそれでもいいから、慶ちゃんの隣にいたかった。


 二十二歳になって、彼から「会えない?」とメールが来たとき、泣きたくなった。
 ようやく彼の中で何か決心できたのだと思った。それが私との決別でもよかったのだ。


 静かに響いた「結婚しようか」の一言に、私はぐっと涙をひっこめた。
 平生を演じようと思った。三人でいたころの、少し馬鹿な女の子に。



「私ね、慶ちゃんのこと大好きなんだ」



 私が少し笑いながらそう言うと、慶ちゃんはにやっと笑いながら「当然だろ」と呟いた。
 どっからそんな自信がわいてくるのかな、と初めて私と慶ちゃんが出会った日のことを思い出した。
 慶ちゃんが私に差し出した指輪を見て、瞬間、やっぱり胸が痛くなった。
 もしかしたら、本当は、この指輪をするのは「悠ちゃん」だったのかもしれない、と。





 私が慶ちゃんの恋愛対象になることはない。結婚をするってことは、私は永遠に悠ちゃんの代わりになることを誓うのだ。
 それでもいい。慶ちゃんがまた笑ってくれるなら。私がどんなに不幸になっても、犠牲になっても、それでも私が慶ちゃんを幸せにしたい。



「好きだよ、悠」


 なんで、今それを言うのかな。
 指輪を渡すときに言ったその言葉は、きっと決別の言葉だったのだと思う。
 私たちは私たちが愛した悠ちゃんがもういないということを十分理解していた。だから苦しかったのだ。


 「おめでとう」そう言いながら、私はあの結婚式がもう一度できると思ったら、少しだけうれしかった。
 「ありがとう」慶ちゃんのその笑顔に、やっぱり一番になりたいなって思ってしまったバカな自分に私は心の中で喝をいれた。







 【 おわり 】

あとがき ( No.27 )
日時: 2018/01/09 20:47
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

 【 あとがき 】


 書き始めて二か月足らずで完結しました。珍しいですね、自己最速記録をマークした気がします笑
 ふいに書きたくなって、書いてみた作品です。幸せになりたい子たちが幸せになるまでのお話で、苦しみながらも過去にとらわれながらも、ただひたすらに前だけ見て進んでいてほしいなと、うん、よくわかんない。
 ほのかさんは取り敢えず幸せになってほしいキャラですが、ただ不幸気質なんです。慶ちゃんが本気で彼女を好きになってもきっとそれは「偽善」だと勘違いしちゃうんでしょう。それの典型が誕生日のお話です。この夫婦はゆっくり幸せになってほしいなと思います。
 慶ちゃんはずるい男です。本気で悠ちゃんのことが好きだったし、だけどその先のビジョンがちゃんと見えてないノンケだし。人間、恋は一回きりなんてそんなわけないじゃん、次は幸せになるんだよ、とほのかを差し上げました。
 悠ちゃんはもう「お前が死ななかったらみんな幸せなんだよクソヤロー」って感じです。ほのかも悠ちゃんさえ生きていればきっとこんなに苦悩しなかったと思いますね。苦しかった恋に終止符を打ってあげなかったのは、全部彼の責任です。二人に幸せになってほしいと思いながらも、やることが全部からまわっていますし。それでも彼に一番幸せになってほしかった、ただそれだけなのです。




 今回の作品は「ただ自分が書きたかったお話」に過ぎなかったので、万人受けする話じゃないし、面白いお話でもありません。読んでて私自身も苦痛な部分がありました。それくらい痛々しいお話であったと思っています。
 書きたい話と書ける話と、読みたい話は違います。面白くない作品ですが、読んでくださった皆様、本当にありがとうございます。あんまり自分の創作に否定的にならないほうがいい、キャラが可哀想と思われる方もいるかもしれませんが、今回の作品は本当に自分の中では肯定できない作品でした。それでも書きたい、と思ったお話が書ききることができて、私はとても幸せです。
 しばらくはコメライで恋愛小説を書く練習をしたいと思っていますので、また私の作品を読む機会がありましたら、よろしくお願いします。



 拙い作品ではありましたが、思い出深い作品となりました。
 読んでくださった皆様、本当にありがとうございました。また、お目にかかれることがあれば幸いです(^^♪




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