コメディ・ライト小説(新)

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だから君に恋がしたい
日時: 2017/11/12 23:40
名前: サクラソウ
参照: 気軽にサクラとお呼びください

「俺さ、好きな人いるんだ。だから、ごめん。お前とは友達でいたい」
放課後、夕暮れで赤く染まった教室に呼び出したのは、初恋の相手。想いを伝えた。告白を、した。
その結果がこれだ。失敗だ。初めての告白は、初めての恋は、失敗に終わった。
涙が止まらなかった。バツが悪そうに教室から初恋の相手が出て行った後でも、それは変わらなかった。
これが恋。どれだけ長い時間をかけて実ろうと、ほんの一瞬でその実はバラバラと崩れてしまう。
こんな事なら、恋なんてしなければ良かった。こんな想いをするくらいなら、好きにならなければ良かった。
どうして恋をしてしまったんだろう。どうして好きになんかなってしまったんだろう。
『泣かないで。せっかくの可愛い顔が台無しだよ』
誰もいないはずの教室で自分以外の声が聞こえた。女の子でも男の子でも通じるような、中性的な声。
思わず警戒してしまった。だけど、声の主は案外可愛い姿をしていた。
目の前でフワフワと浮かぶ羽根を伸ばした小さな女の子。それが声の主だった。
「あなたは……?」
『私は恋の妖精。悲しむあなたを助ける為に現れたの』
ああ、ついに幻覚でも見ているのか。
どれだけ自分が悲しみ、傷ついているのかがよく分かる。今なら神様が現れてもおかしくないだろう。
それにしても、恋の妖精とはなかなか可愛い生き物が現れた。とても愛くるしい姿をした、女の子なら一度は憧れる妖精。彼女の周りだけ、世界が違っているように見えた。
『今、あなたは悲しんでる。告白して、フラれて、悲しんでる。そうだね?』
恋の妖精にはなんでもお見通しなのか。お見事だ。
「そうだよ、私はフラれたの。ずっと前から好きだった人に。もしかしたら付き合えるかも、なんて思ってた自分が馬鹿みたいだよ……」
ああ、また涙が止まらなくなってしまった。
悲しい。悔しい。心が痛む。
どうして、こんな気持ちになるのかな?
『それは、人を好きになるからだよ』
空中をフワフワ舞いながら、恋の妖精は答えた。
すごいな、恋の妖精は心の中まで見透かすんだ。そんな力が私にもあったら、こんな事にはならなかったのかな。
『だから、私はあなたに魔法をかけてあげる。二度と傷つかない、永遠の魔法を』
こんな気持ちにもうならないなら、魔法でもなんでもかけてほしい気分だ。
もう二度と、こんな思いはしたくない。
『もう二度とそんな思いはさせないからね。じゃあ、かけてあげるよ。魔法を』
そう言って恋の妖精は、私の胸辺りに飛び込んでいった。
体の中に暖かさが広がっていった。悲しみや苦しみが、全部体の外へ出て行くような、そんな気さえした。
それと同時に、心の中で何かが消えていった。
忘れてはいけない、なにか大事なものが。
『これで魔法は完了。さあ、出来上がり』
姿は見えなくなった恋の妖精が、体内から直接語りかけてきた。
可愛らしい声で、はっきりと私に告げた。


『恋心を封じた、二度と恋をしない女の子の完成だよ』


〜だから君に恋がしたい 始まり〜

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第一章 ( No.1 )
日時: 2017/11/13 23:03
名前: サクラソウ

恋の妖精は、恋に悩む少年少女の前にだけ現れる不思議な生き物。
恋に関する悩みを、恋の魔法で解決してくれる優しい生き物。
しかし、時には人格すら変えてしまう怖さも持ち合わせた生き物。
そんな恋の妖精に、ある日少女は出会った。
少女は失恋していた。その悩みを解決する為に、妖精は魔法をかけた。


──永遠に恋をしない魔法を。


『ほらほら、早くしないと遅刻しちゃうよかえで
「ゼリーは黙っててよ、急いでるんだから」
紅葉の葉のように赤い髪をゴムで縛りながら、その近くで浮いている小さな生き物と話している少女。
名前は、胡桃沢くるみざわかえで。今年で高校生になった女の子だ。
まだ幼さが残る可愛らしい顔を汗で湿らせながら楓はいそいそと身支度を済ませていた。時計の針はもうすぐ九時を告げようとしている。学校の開始時刻は九時半。遅刻ギリギリだ。
「制服良し、カバン良し、髪型良し。あとは……」
『もうそろそろ行かないと本当に遅刻するよ?』
「分かってるって!えっと、忘れ物は無いかな……」
こんな事なら前日に準備をしていけば良かったのに、と手のひらサイズの小さな少女は呟いた。
名前は、ゼリー。二年前、失恋していた楓の前に現れた恋の妖精。
魔法をかけてからは、楓と生活を共にしている。こんな姿の生物が街中に現れたら大騒ぎになるが、その辺りはなんとかしている。らしい。
「よし、準備完了。ゼリー、行くよ」
『分かった分かった』
ゼリーは羽根を広げ、楓の胸元をめがけ飛んで行った。
そのままその小さな体は楓の体内に吸い込まれ、姿が消えてしまった。
これも妖精の力の一つだよ、と誇らしげにゼリーが語っていた事を思い出しながら楓は部屋を出た。
住宅街に位置する普通の一軒家。一見何の問題も無いが、楓の場合少しだけ不都合がある。もう慣れてしまったと本人は思っているが。
家に鍵をかけ、学校へ走り出した。
『今日は全速力で走らないとやばそうですなー。こういう時は、角から出てきた男の子とぶつかるイベントが発生するもんなんだけどね』
「私には関係ない話だよ、そんな恋愛イベント。それよりもゼリー、体内にいる時は話しかけないでって言ってるでしょ?頭がキンキンするの」
『ごめんごめん、黙ってるよ』
いつも通りの道を走り、いつも通りの会話を交わした。
何の変哲も無い普通の光景。女子高生が朝走って登校する、ありふれた光景。
ただ一つ、楓から一つだけ──即ち恋心が欠如している事だけが、普通では無かった。
そんな普通では無い事も、楓は今では普通として受け入れている。
恋心と言っても、その定義は曖昧だ。人によって価値観は違うし、なによりこれが恋心だ、と証明できるものがない。そんな感情が一つ無くなろうと関係無い。そう思っているのだ。


この物語は、恋をしなくなった楓が。
再び恋をするようになるまでの物語。
今日は、その序章に過ぎない。
いや、もう物語は始まっている。


ドン、と音を立てて楓はその場で転んでしまった。誰かとぶつかったのだ。
何とか目を開けて前を見ると、同年代くらいの男が同じようにして転んでいた。ゼリーの予言、的中である。
『ほら、言った通りでしょ?』
「ちょっと黙ってて。あの、大丈夫ですか?」
男よりも先に立ち上がり手を差し伸べる楓。
その状況に恥ずかしさが込み上げたのか、男は幼い顔を真っ赤にして勢い良く立ち上がった。
「だ、大丈夫です!僕、一人で立てますから!」
「そう、なら良かった。ぶつかってごめんね。じゃあね」
なにか言いたげな顔をしている男の横を通り、再び楓は走り出した。
『え?もう終わり?』
「どういう意味で言ってるの?別に人とぶつかっただけでしょ。謝ればそれで終わりでしょ?」
『自分から魔法をかけておいてなんだけど、楓乙女じゃないねー。普通男子とぶつかったらドキドキするもんなんだよ、年頃の女の子っていうのは』
「そうさせなくしたのはゼリーでしょ」
『そうだけど、もうちょっとなんか話しても良かったんじゃないの?あまりにもあっさりすぎるよ』
「遅刻するかもしれない時に、人と話してられる?」
『今私と喋ってるじゃん』
「ああそうでした。もう、急ぐよ」
勢いをつけてスピードを上げようとしたその時。
後ろから、先程ぶつかった男が大声で楓を呼び止めた。
「あ、あの、待ってください!」
弱々しい声で、それでもはっきりと聞き取れる声量で男は喋った。
後ろを振り返った楓に、男は頰を掻きながら恥ずかしそうに言った。
「あの、な、名前はなんと言うのでしょうか?」
ぎこちない敬語に、ぎこちない態度。
恥ずかしさで今にも死にそう、と真っ赤にした顔が告げている少年の言葉を理解出来なかったのか、楓は困惑していた。
なにを言えばいいのか迷っていると、俯きながら男は小声で付け加えた。
「あなたの名前を教えていただければ……」
「え、私?どうして?」
やはり意味が分からず頭の上ではてなマークを浮かべる楓。
ここで今の状況を理解したゼリーが、男には聞こえない楓にだけ聞こえる声で話しかけた。
『名前教えてあげるだけで良いんだよ、ほら』
結局意味は分からなかったが、とりあえず楓は自分の名前を教える事にした。
「楓。胡桃沢楓」
その名前を聞いた瞬間、今まで顔を真っ赤にして俯いていた男が急に顔を上げ楓に近付いた。
その顔は今までのようなぎこちなさや恥ずかしさといったものは一切感じられず、むしろ感動や嬉しさといったものが伝わってくるほどの清々しい笑顔だった。
ますます意味が分からない、と顔をしかめる楓に対して。
さらに状況を困惑させる発言を、男は堂々とした。


「僕の名前は結城ゆうき奏真そうま。君の婚約者だよ!久しぶり、楓!」


もう一度、確認しておこう。
この物語は、恋をしなくなった少女、楓が。
再び恋をするようになるまでの物語。のはず。
だとすれば、これで物語は終了なのだろうか。いや、まだ終わらない。というか終わらせるわけにはいかない。
再度言おう。今日は物語の序章に過ぎないが、物語はもう始まっている。
そう。物語はもう始まっている。


〜第一章 相対する過去と現実〜


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