コメディ・ライト小説(新)

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ある日曜日、目覚めると
日時: 2018/02/04 21:41
名前: 佐々木祐樹

ある土曜日の朝、家のダイニングキッチンにて

母「祐樹、パン乗せるお皿を並べてちょうだい。」
僕「はーい。」
 僕は食器棚から皿を5枚取り出しテーブルに並べた。
母「なんで5枚も並べてるの?
   祐樹、二人分食べるつもり?」
僕「もちろん一人分だけど、・・・
  あっ4枚で良かったんだ。」
母「まだ寝ぼけてるの?
  徹夜で勉強もいいけど、ほどほどにね。」
僕「ハハハ、、、」
 なんで間違ったんだろう?
 家族の人数を間違うなんて普通ありえない。
 でも、当たり前のように5人分の皿を出してしまった。
 むしろ1枚戻す時、一人分少ない感じがした。
 本当に今朝の僕はおかしい。
 母さんの言うように勉強のし過ぎなのかな?
 ともあれ、もう12月。
 受験勉強も大詰めだ。
 目指せ国立大学理学部!
 この土日も頑張るぞ。
僕は深夜まで脳みそが茹で上がるほど勉強した。

翌日曜の朝
「お兄ちゃん、いつまで寝ているの? 起きてよ!」
「ううん...」
「起きた? 今日は朝から私に勉強教えてくれる約束でしょう?」
「えっ!?
 えっ!? ・・・
 佐々木彩音さん?」
「どうしたの? 気持ち悪いわねー。
 フルネームにさん付けで呼ぶなんて!?」
僕は佐々木彩音さんの顔を驚いて見つめていた。
「もうー! なんで驚いた顔して私の顔見てるのよー!?」
「ちょっと待って・・・・?」
「いつまでも寝ぼけてないで、早く着替えて降りて来てね。」
佐々木彩音さんはそう言って階段を降りて行った。

佐々木彩音さんはブラスバンド部の1年下の後輩なんだけど、
なぜか、今朝、僕の家に居たのだった。
それも妹(?)として...
ちなみに僕の姓も佐々木なので、彼女のことは以前からフルネームで呼んでいた。

これ夢だよね...
まだ、僕は寝ていて夢を見ているんだよね...
夢なら夢でいいや。
この夢を楽しもう。
でも、あまりにもリアルすぎる夢なんだけど...

僕は着替えて1階のダイニングに降りて行った。
両親と大学生の兄と、そして彩音さんが既に朝食を摂っていた。

母「祐樹、昨日も言ったけど、生活のリズムって大切よ。
  徹夜で勉強もほどほどにね。」
兄「そうだぞ。お前はもう十分合格できる実力あるんだから、
  あとは体調を整えることが大切だよ。」
彩音「で、今日は私の勉強見てくれるんでしょう?
   もう直ぐ模擬試験なのに数学は分からないところだらけなのよ。」
兄「オレ文系だから数学は祐樹に頼るしかないよなー。」
僕「う、うん。もちろん勉強みてあげるよ。」
父「彩音、祐樹によく教えて貰って、お前も国立大学目指してくれよー。」
母「そうよ、うちの経済状況では私立は厳しいからね。」
彩音「分かってるわよ。」

両親も兄も、彩音さんを完全に家族として扱っている。
「いったいどうなってるんだー!?」と叫びたくなった。
しかし、この和やかな雰囲気を壊す勇気は僕にはなかった。

この不思議な出来事の原因について考える暇もなく、
彩音さんは僕を自分の部屋に引っ張って行った。
机にはすでに数学の参考書とノートが広げてあった。
僕は解き方のヒントだけ教えて
「ここからは自分で考えてみて」と言った。
そして、彩音さんが問題に向かっている姿を眺めながら、
この状況について頭を整理してみた。

僕が秘かに恋心を抱いていたブラバンの後輩佐々木彩音さんが妹(?)として、
いま目の前で健気に数学の問題を解いている。
昨日まで空き部屋だったこの部屋がなぜか「妹」の部屋になっている。
一体全体どういうことなんだ?

僕はトロンボーン、彼女はフルートということもあり、
あまり親しく話したことはなかった。
部活を引退した今では、会話する機会もなかった。
臆病な僕は当然ながら告白も出来ないでいた。
昨日までの僕だったら、彩音さんと二人っきりになったら相当舞い上がっていたと思う。
でもなぜか不思議なことに、妹(?)としての彼女に、今の僕は馴染んでいる感覚があった。

3つの可能性がありそうだ。

1つ目は、いま僕はきわめてリアルな夢を見ているということ。
でも、リアル過ぎて、とても夢とは思えないのだけれど...

2つ目は、これが本当の現実で、僕の方がおかしくなってしまったという可能性。
僕の記憶では、両親と兄の4人家族で、彩音さんは部活の後輩なんだけど、
なぜか僕の記憶が書き換わってしまったってことはないだろうか?

3つ目は、いわゆるパラレルワールドに迷い込んでしまった可能性。
昨日、皿を1枚多く用意したのはその予兆だったとも思えるし...
でもそうだとしたら、元々こちらの世界の僕は今どこに居るのか?
僕と入れ替わったのか?
それとも、僕の精神だけが、この世界の僕の体に乗り移ったのか?
だとすれば、こちらの世界の僕は、この体の中で眠った状態になっているのか?
次から次へと疑問が沸きあがって来た。

それにしても、いま目の前で健気に数学の問題を解いている彩音さんはとても可愛らしかった。
しかし、その可愛らしさは、昨日までの恋心とは違う、妹に対する想いだった。

「お兄ちゃん、分かったわ! 
 連立方程式が立てられたわ。」
「うん、それでいいよ。
 あとはこの方程式を解くだけ。
 計算間違いしないように慎重にね。」

これから僕はどうすればいいのだろうか?
彩音さん以外にも、元の世界と違う点があるかもしれないし...

「出来た! この答で合ってる?」
「うん正解。良く出来たね。
 次はどの問題やる?」
「この確率の問題が全く分からないのよ。」

こんな感じで、途中昼食を挟んで夕方まで勉強は続いた。

「お兄ちゃん、ありがとう。
 これまで、もやもやしていた所が良く理解できたわ。」
「よく頑張ったね。」

夕食後、僕は自分の部屋で一人になった。
今日の出来事をもう一度よく考えようと思った。
しかし、猛烈な睡魔に襲われ、そのまま寝入ってしまった。

翌朝、目覚まし時計のベルで僕は目を覚ました。
直ぐに襖を開け、廊下を挟んで向かいにある「妹」の部屋を見た。
半開きの襖から見えた部屋の中は二日前の状態だった。つまり空き部屋だった。
元の世界に戻ったのか!
ほっとしたと同時に、がっかりする気持ちもあった。

朝食は家族4人だった。
いつもどおりなのに、なんだか寂しかった。

高校でも変わりはなかった。
クラスメイト達はみんな受験勉強で眠たそうな顔をしていた。
これも先週と同じ光景だった。

退屈な授業を終え、校門を出て駅に向かって歩いていると
後ろから声がした。
「祐樹せんぱーい。」
振り返ると彩音さんだった。
「なんか、お久しぶりって感じですね。
 先輩が2年の終わりで部活引退してからもう8ヶ月ですもんね。」
「ああ、そうだね。」
僕は跳び上がるほどの嬉しさを抑え、平静を装って言った。
「部活引退して受験勉強一筋で来たけど、
 やっぱり部活なしの高校生活って味気ないよ。
 ところで、3月の定期演奏会の練習はうまく行ってる?」
「ええ、順調です。今日は用事があるので部活休みましたけど、
 私も先輩と同じように、2年で部活引退するつもりですから、
 悔いがないように頑張ってます。」
「彩音さんも、3年生になったら受験勉強に専念するってこと?」
「うちって経済的に国公立しか無理なので、頑張らないといけないんです。」
「僕もそうだよ。」
「先輩もそうでしたか...
 でも私、数学が苦手なんでセンター試験で合格ライン通過できるか不安なんです。
 先輩は数学トップですもんねー、凄いですねー。」
僕は照れ笑いした。
そして、ひと呼吸してから言った。
「あのー、もし良かったら、分からないところとか何でも僕に聞いてよ。
 数学ってコツさえ掴めればどうにかなると思うんだ。
 でも、学校の授業では、そういう教え方してないよね。
 あれじゃ、苦手な人はますます苦手になると思うんだ。
 僕、自慢じゃないけど、分かり易く教えられる自信あるよ。」
「えっ本当ですかー? 
 数学トップの祐樹先輩に教えて貰えたら鬼に金棒ですよ。
 是非、お願いします。」
「じゃあ、早速だけど、今度の日曜に僕の家で勉強しない?
 あっ、日曜は両親居るから安心してね。」
「いえいえ、先輩は紳士ですからそんな心配しませんよー。
 でも、本当にいいんですかー?」
「もちろんだよ。」
「では、お言葉に甘えさせて頂きます。
 祐樹先輩ってこんなに包容力のある頼もしい人だったんですねー。」
「いやいや、そんなことないけど...」
 昨日一日、「妹」の彩音と過ごしたことで、兄みたいになれたのだと思った。

楽しく会話していたら駅までの10分があっという間に過ぎた。
彩音さんは僕と方向が違った。
電車のドアの窓越しに嬉しそうに手を振る彩音さんに
僕も笑顔で手を振った。

次の日曜、約束どおり彩音さんは我が家にやって来た。
そして、これまで抱えていた分からないままの問題を沢山質問してきた。
ちょうど先週、「妹」の彩音に教えたのと同じ問題ばかりだったので驚いた。
それが幸いして、かなり分かり易く教えることができたと思う。
「先輩に教えてもらったら、全く分からなかった問題が鎖が解けるように
 わかるようになりました。ほんと、先輩のおかげですけど、一日で分かる
 ようになるなんて凄いですね。
 それに、先輩自身、受験勉強で忙しい時期に、私なんかの勉強を見て下さって、
 本当にありがとうございました。」
「いやー気にしないで。僕自身も教えることで勉強になっているんだから。」
「また、分からないことがあったらメールとか電話で聞いても良いですか?」
「もちろんだよ。それに、また家に来てもいいし。」

何なんだろう、以前の僕だったら、こんなにもフランクに彩音さんに「数学教えてあげるよ」
なんて言えなかったと思う。ちょっと数学が得意だからっていい気になって女の子に近づこう
としている下心ありありのいやらしい先輩って思われたくないからだ。
でも、今は、家族に対してのようにごく自然に言えるのだった。
だからこそ、彩音さんも素直に僕のおせっかいに従ってくれるのだと思った。
いずれにせよ、あの不思議な一日の出来事のおかげだと思う。

その後、彩音さんとメールや電話でやり取りしたり、家にも3回ほど来てくれた。
彩音さんは受験直前の僕に対して恐縮がっていたけど、僕の想いも伝わっていたようで、
甘えてくれたのだった。

彩音さんとの楽しい日々のおかげで受験勉強もリラックスして励むことができた。
その甲斐もあって、僕は第一志望の国立大学理学部に合格できた。
そして迎えた卒業式の日、僕は彩音さんに告白した。
彩音さんは照れた笑顔で
「私も祐樹先輩のことが大好きです。
 これからも宜しくお願いします。」
と言ってくれた。

おわり

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