コメディ・ライト小説(新)

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思い出の写真
日時: 2018/02/07 16:34
名前: 青山祐樹

ITエンジニアと言えば聞こえは良いかもしれないけれど、
三十歳を迎えた僕は心身共にクタクタだった。
納期直前にクライアントから仕様変更が入るのは当たり前で、
そんな時は徹夜続き。
プログラムを最適な形に仕上げるために、
論理的思考を最高に働かせてコードを書き、
「完成した!」と思ったところで、
クライアントの気まぐれで仕様変更。
最初から作り直す時間なんて無いから
元のプログラムにパッチを当て、
どうにか納期に間に合わせる日々。
完璧を目指しつつ、
しかし完璧を求めてはいけない、この仕事に疲弊していた。

自室のパソコンを前にしていた僕は、ふと、本棚から古いアルバムを手に取った。
ページの中ほどを広げると、そこには二十数年後の苦労も知らず
天真爛漫に笑っている小学生の自分が写っていた。
子供の頃から算数が得意だった僕は、
将来は科学者かエンジニアになりたいと思っていた。
僕は写真の中の子供だった自分に語りかけた。
「祐樹、君の夢、叶ったかなー?
 まだだよなー
 もっと頑張んないと、いけないよなー
 でも、これ以上頑張れるかな...」

ページをめくり、もう一枚懐かしい写真に目をやった。
叔父夫婦が経営していたペンションに夏休みに滞在した小学3年生の時の写真だ。
その頃、両親は祖母の看病で大変な時期だったこともあり、僕だけ叔父夫婦に
預けられたのだった。
ペンションの近くに住んでいた同年代の女の子と仲良くなって毎日遊んだ。
それは今でも大切な思い出になっている。
その子の名はミーちゃん。
初恋の子だった。
翌年も会いたかったけれど、
ペンションは経営難でつぶれてしまったため、
その願いは叶わなかった。

内向的で女の子に対してシャイだった僕は、
その後、彼女はできなかった。
社会人になってからは仕事に追われていたから彼女どころか、
男友達とも疎遠になっていった。

そんな僕を心配した両親は見合い話を持ってきてくれた。
今さら恋愛する機会も時間も心のゆとりもなかったので、
お見合いすることに決めた。
何かに救いを求めたかったのだ。

しかし、お見合い写真を見ても、正直何も感じなかった。
わくわくするとか、ときめくとか、そういった情感が全く沸き上がらなかった。
相手の女性は整った顔立ちをしていた。
しかし、それはコンピュータが顔認識で「美しい女性」と判定したかのようだった。

そんな僕でも、実際のお見合いの場面ではそつなく会話をして、
むしろ相手に好印象を与えることができたようだ。
是非交際させてくださいという僕からの申し出を了承してくれたのだった。
日頃のクライアントとの折衝能力が生かされたのかと、心の中で苦笑した。
しかし、見合い相手の女性までもが、クライアントの一人のように感じてしまう
自分に愕然とさせられた。これほどまでに自分の心は壊れていたのかと...

そんな僕だったけれど、彼女は僕に親しく接してくれた。
ひと月ほどして、彼女が願うので、僕は自分の部屋に彼女を招いた。
ディスプレーが3台も置いてあるむさ苦しい部屋だけれども、彼女は
「素敵なお部屋ですね」と言ってくれた。
そしてちょっと甘えた口調で、
「祐樹さん、子供の頃のアルバムとか置いてないんですか?
 あったら見てみたいなー」と言った。
僕は、あの古いアルバムを照れながら渡した。
彼女は最初のページからめくっていった。
「赤ちゃんの祐樹さん、かわいいー。
 これは七五三の時の写真ね。」
さらにページをめくると、彼女は固まった。
開いたページは叔父のペンションで撮ったミーちゃんとの写真だった。
彼女の顔を見ると、なぜか涙をぽろぽろ流していた。
僕は驚いて
「美恵子さん、どうしたんですか!?
この写真がどうかしたんですか?」
「祐樹さん!
 あなた、ユーちゃんだったのね」
「えっ、美恵子さんは、この写真のミーちゃんなの?」
「こんな偶然ってあるのかしら!?」

僕たちは見つめ合ったまま、しばらく言葉が出なかった。
最初に口を開いたのは美恵子さんだった。
「そうだったのねー...
 実は、祐樹さんとお見合いした時、正直言って、
 ちょっとナイーブで近寄り難いかなって思ったんです。
 話をしても、ビジネスライクだったし、
 私には興味ないのかなーって感じたんです。
 でも、なぜか、懐かしいような、
 もうちょっと一緒にいたいような、
 そんな気持ちになったんです。
 それで、交際の申し出を受けさせてもらったんです。
 ・・・・・・
 ユーちゃん、あなたは私の初恋の人だったのよ。」
「僕もミーちゃんは初恋の子だったんだ。」

あたかも時間を遡ってミーちゃんと再会したような気持ちになった。
それと同時に、堅く固まっていた心が弾力を取り戻す感じがした。
僕は涙を流しながら、
ミーちゃんとの再会と美恵子さんとの出会い
その二つの幸せを同時に噛み締めた。
気がついたら僕は彼女を強く抱きしめていた。

おわり























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Re: 思い出の写真 ( No.1 )
日時: 2018/04/06 15:44
名前: あんか

 はじめまして。 
 あんか、と言います。  
 コメントしても、よろしかったでしょうか?

 小説読みました。(*´▽`*) 
 読みやすく、短めの話だったのでスラスラ読めました。
 面白かったです。
 私もこんな風に、読みやすい話が書ければ、と思っています。 

 短いコメントですが、これで。
 失礼します。
 また書いてください。


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