コメディ・ライト小説(新)

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君に捧げた初恋(処女作)
日時: 2018/08/16 20:02
名前: 華憐

▽プロローグ


「懐かしいな。俺、初日、ちょっと遅れてきたんだよな。」

「そうだっけ?覚えてないや」

「そうだよ。入った瞬間、みーんな座っててさ、オタクみたいな奴らばっかりで、もう終わったなって思ったよ」



結城がクスクスと笑うのにつられて、私も笑う。

そうだった。私もあの日、この教室で、同じようなことを思ったんだった。



「でも、あの日来た教室が、この教室じゃなかったら、俺たち出会ってすらなかったかもしれないんだよな」

結城が、私と繋いだ手にギュッと力を込める。



「出会えてよかった」

結城は、まっすぐ私の目を見て言う。
私の頬に、涙が伝った。


「ちゅーしていい?」

いたずらっぽく結城が笑う。いつものトーンなはずなのに、少し声が震えている気がする。


目を閉じる。2人の小さな隙間を、暖かい風が吹き抜けた。
走馬燈の様に、今までの出来事が頭の中で駆け抜ける。



4階の、1番隅の教室。
私たちは2年前、ここで出会ったんだった。


そして、私たちは今、同じ場所で
卒業の時を迎えていた。



--------------------------------------

▽目次

*プロローグ >>00
*第1話 出会い >>01 >>03 >>04 >>05
*第2話 事件
*第3話 縮まる距離 

Page:1



Re: 君に捧げた初恋(処女作) ( No.1 )
日時: 2018/08/10 08:14
名前: 華憐


▽第1話 出会い




ー ハズレだ。


私は、開け放したドアの前に立ち尽くしたまま、心の中で呟いた。


教室のもやっとした空気は5限という時間帯のせいだろうか。
それとも…



「うわぁ…メガネばっかり」


突然、後ろからひょっこり顔を出して、ためらいもなく呟いたのは、
少し前に顔見知りになった、有紗だった。



「なんか空気悪くない?
あれかな、やっぱりメンバー的な問題?」



教室に、まばらに着席してる人たちの目線が、
自分に集中してるのも気にかけず、
有紗は、大きな独り言のようにそう言うと、
「ここ座ろ」と、端っこの席に私を手招きした。


「初音ちゃんだよね?何げに、はじめましてなんだよね、なんか初対面な感じしないけどさ!」

ケラケラと笑うと、有紗は

「あー、初音ちゃんいてよかった。このメンバーは終わってるわ。お先真っ暗。」

と、今度は私にだけ聞こえるように、小声で呟いた。



私は小さくそれに頷いて応えると、さりげなく周りを見回した。



メガネにチェックシャツ、まるで絵に描いたような男たちが数名。


そして、どこを見ているのかわからないような、
というより、うつむいてるようにも見える、
物静かそうな女の子が数名。


そして更に、横には、
「私、ゼミ長やりたいの。このメンバーなら、挙手したら一発でなれそうだよね。」
と、まくし立てる、有紗。


ほっと小さくため息をつく。


お先真っ暗、と有紗が言うほどに、
私はこの場所になんの思い入れもなかった。



大学生活も3年目。

これまでの2年の大学生活は、
なんとなく授業に出席し、空き時間はバイトに勤しみ、
そのお金で遊ぶだけの、なんの変哲もない毎日を過ごしてきた。



一緒にご飯を食べるためだけ、テスト前に情報共有するためだけの友達とは、
ようやく腹を割るような話ができるようになったくらいで、
特段何か感情的なものは感じない。



中高一貫の女子校で、人生最大の青春を味わってきた私にとって、
大学生活はあまりにも味気なく、面白くなかった。



今日からはじまる週1のゼミだってそうだ。


SNSを通じて知り合った有紗は、その投稿内容からも、
かなりゼミに意気込んでいる様子だったが、
私にとっては、出席するだけで単位がもらえる
というメリット以外、必要性すらなかった。



と、いうものの、さすがに、この顔揃いだけは予想外だった。


先輩の話だと、ゼミの活動とは、旅行や、校外学習などを通じて、
今までとはまた違った横のつながりを、構築するものらしい。

この面々を見る限り、90分間お行儀よく授業を受ける他なさそうだった。



やれやれ、とiPhoneの画面の時計に目をやった瞬間、前後のドアが同時にガラッと空いた。



前のドアからゆったり教授が入ってくるのを少し遠くから遮るように、
ひとりの男の子が、後ろのドアから素早く入る。



「わ、やっとまともな感じの人だ!」


有紗が手を叩いてはしゃぐ。
有紗のリアクションにも、今度は素直に頷けた。

確かに彼は、他の男たちとは、違う風格をしていた。



がっしりとした体つきに、真っ白な白シャツが映える。
短めの黒髪も爽やかにセットしてあって、どことなく清潔感がある。
アイドルのような所謂イケメンといった顔つきではないが、
賢そうで、それでいて人懐っこい雰囲気を醸し出している。



彼も、数分前の私たちと同じことを思ったのだろう。
こちらから見ていても、深いため息をついたのが見て取れた。



「はじめましょうか」

教授のもったりとした声で、前に向き直った。







その日の授業は、簡単な自己紹介と、
今後のスケジュール確認で終了した。


「ねえねえ、吉野くん飲み会行くよね??」



授業が終わるなり、有紗は、
さっきの自己紹介で、はきはきと「吉野結城です」と、
言っていた、白シャツの彼の元にかけていった。



「行くよ。野間さんも行くよね?」

「行く行く!一緒に行こうよ!」



ははーんと、私はひとりで納得した。


有紗の思惑は、笑えるほど分かりやすかった。
確かにこの顔ぶれだと無理もないが、
彼女の行動力の早さに、私は舌を巻くばかりだった。



「初音は?」



どうせ行かないよね、バイトって言ってたもんね、
という声にならない言葉が受け取れた私は、
首を横に振ると、足早に教室をでた。



「吉野くんってお酒強いの??あ、LINEもってる??」



廊下まで聞こえる有紗のはじけるような声を背に、
私は待ち合わせをしている茉結の元へ向かった

Re: 君に捧げた初恋(処女作) ( No.2 )
日時: 2018/08/10 08:20
名前: 華憐

【作者より】

はじめまして。
もしかしたらお久しぶりの方もいるかな…??


数年前に前板でこの小説を書き始め、半ばで終わってしまっていたので、復刻してみました。
前板で復刻しかけてたんですが、どうせなら1人でも多くの人に見てもらえたら、と、こちらでリメイクすることにしました!


処女作ゆえ、至らない点も沢山あるかと思いますが、よろしくお願いします!



華憐

Re: 君に捧げた初恋(処女作) ( No.3 )
日時: 2018/08/11 13:48
名前: 華憐



「お待たせしましたー」

「あ、初音、お疲れ様。初日からきっちり90分授業か。
さすがトップクラスのゼミは違いますね-」


食堂で待っていた茉結は、おどけたようにそう言うと、
端っこの席に荷物を移して、私に席を譲った。


「で、初日はどうでした」

「最悪だよ。オタクのサークルの集まりに間違えてきちゃった感じ。」

私は、席に座りながら、深くため息をつく。


「なんだそれ。じゃあ飲み会も、やっぱり行かないの?」

「今からだもん、飲み会。行くわけないじゃん。
私だって黙って延々と飲むほど、お酒好きじゃないし。」



茉結は、私のがっくりした様子に、ふっと笑うと、

「あ、あの子は?Twitterの子!」

と思い出したように言った。


「あー、有紗?悪い子じゃないけど、すごい張り切ってて
なーんかついていけなかったなぁ。THE・温度差。」

「あーいるいる。新しいコミュニティで、必死なタイプか。
で、その子は当然、飲み会も行ったわけだ?」

「そうだよ。男の子と2人で。すごいガッツだわ、あれは。」

「男??オタク??」

「あ、違うの。ひとりだけ、まともそうなのがいたんだよ。
でも、別にイケメンってこともないし、まじめそうだし
見た目普通のガリ勉なんじゃないの。」

「初音さん、きついですねえー。さすがお目が高い」


「きつくないし!」


いつもの調子で、わいわい騒いでいるうちに、
さっきの陰気な空気も、身体から抜けていくような気がした。


一緒にご飯を食べるだけの、とは言ったものの、
いつも一緒にいる3人の中でも、茉結とはかなり何でも話せる仲になっていたし、
実際、彼女といると、素の自分でいれる心地よさがあった。



「で、そういう茉結はどうだったの?」

「あたし?あたしもねー、最悪だった。
ほら、2年の時に小クラスで一緒だった、キザな男いたじゃん?
あれとゼミまで一緒だったの。信じられない」


茉結は、そう言って頬をふくらますと、「でもね」と続けた。


「イケメンもいたの。ほら、なんだっけ、名前忘れたけど、
ジュノンボーイとかになってた俳優に似てる人とかさ。
だからまだ、望みはあるかも。」


茉結が嬉しそうに話すのを見て、はっと思いだした。


そういえば、「今年こそは新しい出会いを見つけよう」
なんで、ゼミ選択の時に話していたんだった。


入学してから、ずっと私たちは女4人組で、行動を共にしてきた。
ケンカはただの一度もした事がなく、それでいて、
不必要にお互いに干渉しない距離感が、ちょうどよかった。


しかし、そうやって2年間、女でなれ合ってきたのがだめだったのか、
色恋沙汰の話になることは、ほとんどなかった。


全員フリー。彼氏いない歴2年以上。


そして今年、大学生活の折り返しを迎えた私たちは
ゼミという新しい活動の幕開けを、いい機会にしようと
意気込んでいたのだった。

Re: 君に捧げた初恋(処女作) ( No.4 )
日時: 2018/08/14 21:51
名前: 華憐

翌週のゼミの授業は、ゼミ内の役割決めと、
次から始まるプレゼンテーションの割り振りからスタートした。


絶対にゼミ長になる、と、宣言していた有紗は、
その思惑通り、見事このゼミ開講以来、初の女性ゼミ長となった。


「ね、副ゼミ長やってくれない?」


ゼミのメンバーの名簿にふりがなをつけながら、
有紗は私にそう言った。



「わたし?いいけど…」

「ほんと?ありがと!頑張ろーね!」



有紗は、はじけた笑顔で、

「せんせーい、副ゼミ長決まりましたー!」

と教壇にかけていった。




ゼミ長や副ゼミ長と言っても、
せいぜい連絡事項をメールで流すくらいしか仕事がないのは、
有紗も私も知っていた。



とりあえずの、肩書き作り、といったところだろうか。
もっとも、有紗は私と違って、かなり張り切っていたのだが。



「はい、じゃあ次はプレゼンの割り振りしまーす。
私は最後でいいから、とりあえずみんな希望のところに名前書いてー!」


さっそく教壇で、せっせとしきり始める有紗の声に、みんながのそのそと動く。
2回目の顔合わせだが、お互いほとんど会話を交わすことはなかった。



私は黒板にプリントの文字を写しながら、また小さくため息をついた。



揉め事がめんどくさいのか、割り振りは誰ひとり被ることなく上手くいった。
有紗が順番に名前を読み上げる。



「・・・・・6番は、吉野くんと川合さん。」



唯一の男女ペアだった。
教室の隅で、大人しそうな女の子が、呼ばれた名前に、静かに頷く。



反対側の端に座る吉野くんも、同じように首を振った。


「7番は、森くんと西桶くんで…」



有紗は続けて名前を読み上げた。
私はその目がさっきから、端の2人に向けられていることに、気づいていた。







授業終わり、案の定、有紗は吉野くん達の元へ行った。
半ば強引に引っ張られるようにして、私もその輪に入った。



「ちょっとちょっとー、いきなりカップル登場の予感ー?」

「そんなんじゃねーよ」



有紗の言葉に、手を振る吉野くん。
その雰囲気からすると、前回の飲み会で、かなり親交を深めたらしい。



「そういえば、この間、初音ちゃん来なかったよね?どしたの?」


吉野くんが急に私に向き直って言った。


「あ、ごめん、バイトだったんだよね」


「そっかー。超盛り上がったのに、な?」



吉野くんは、有紗に同意を求めるように言うと

「そうだ、グループLINE、ゼミの。副ゼミ長なら入らないと」

と、携帯の画面を差し出した。



「ID入れてよ」


携帯を受け取りながら、ちらっと有紗を見ると、
この場の主役を取られたのが気に入らないのか、
心なしか、膨れているように見えた。



「有紗、また飲み会企画してよ、ね?」


気を使って話を振ると、


「そうだ!っていうか、もういっそこの4人でご飯行こう!」


と、有紗は明るく返した。

どうやら有紗は、川合さんも仲間うちに入れたいらしい。



「美乃里ちゃん?だよね!」

「うん!有紗ちゃんに、初音ちゃんだよね、よろしく!」



声をかけられた美乃里は、ぱっと笑顔になって、そう言った。
さっき、大人しげに首を振っていた雰囲気とは、少し違う気がした。



「じゃ、来週のゼミ終わりはご飯!ってことで!おつかれ!」



有紗の一声で、あっさり解散した。
私は、有紗が吉野くんの元に、何か言いに行くのを横目に、そっと教室を出た。


iPhoneの画面には、彼からグループLINEの招待がきたことを示す
通知が明るく浮かんでいた。

Re: 君に捧げた初恋(処女作) ( No.5 )
日時: 2018/08/16 20:02
名前: 華憐

招待されたグループの、参加ボタンをタップする。
すでに、そこそこのメンバーが揃ってはいたが、
有紗たち以外の人の名前と顔が一致しない。


来週からプレゼンテーションがはじまる。
このゼミは、私が所属する法学部の中でも、専門性が高く、
難しいゼミとして知られている。


初日にはさすがに度肝を抜かれたが、
今思えば、ゼミ生の大半がメガネ集団でも、
おかしくないのかもしれない、と私は思った。



ブー。
ポケットの中でiPhoneが小さく揺れる。

[ LINE 有紗 : やっほー!初音!
グループLINEから登録した!来週…]

通知だけ確認して、再びiPhoneをポケットに戻そうとしたとき、
ブーと、再びバイブが鳴った。

[LINE 有紗 : てか、吉野と美乃里ちゃん、2人で城崎神社 行くらしい!]
[LINE 有紗 : 仲良くなるペース早くない? 来週、事情聴取しなきゃだ…]


ふう、と声にならない息を吐く。


ありがとう!来週楽しみにしてる!
お店…どうしようか?
まじで??初耳!
もう、吉野呼びなんだね。笑
ていうか、それ、どうやって聞き出したの?
美乃里ちゃんってどんな子?


返す言葉はいくらでもあるのに、なぜか気が進まず、
戻しかけていた iPhoneを無理やりポケットに押し込んだ。


なるほどな、と思った。

私が、茉結たちと意気投合した以上に、有紗は気合いが入っていたのか。
唯一、有紗に言わせれば「まともそうな」吉野くんが、お目当てなのか。
美乃里ちゃんと、どう近づきたいのか。


わからないことは、たくさんある。
ただ、すべてがすとんと腑に落ちたのは、有紗は、そういう子だということと、
私は、これから距離感の取り方を、また考えなければいけないということだ。


私は少し早足で、ひとつ下の階の教室に駆け込んだ。


今日は、来月からはじまる、資格講座のオリエンテーションがある。
すでに、教室には、何人かの生徒が、ぞろぞろと集まりだしていた。


「あ!初音やん!」

流れのままに、プリント配布の列に並んでいると、肩をぱしっと叩かれた。
声の主は、語学の授業で仲良くしていた、涼子だった。


「涼子ちゃん!涼子ちゃんも講座とるの?」

「親が手に職つけろってうるさくて、一応な。
うち、他に知り合いおらんくて、一緒に受けてもいい?」


涼子は、大阪から上京して3年目になった今も、
コテコテの関西弁を喋りこなす。

サバサバとした性格は、剣道部の主将だからなのか、
関西出身のなにわ魂なのか、とにかく授業中も、一緒にいて楽だった。


涼子の言葉に私は笑顔で頷くと、プリントを2人分受け取って、
1番後ろの席に着席した。

「あーただでさえ法学部の勉強ついていかれへんのに、
資格の勉強とか無理やわ」

「私もだよ。すっかり遊びグセつい…」

「お、なんだ初音ちゃんいたんだ。」

私の言葉を遮る声の方を向くと、後ろの扉から、吉野くんが入ってきたところだった。

「わ、吉野くん。」

「人多いな。んじゃ、また」

吉野くんは、私と隣にいた涼子にも軽く会釈すると、
特にそれ以上の言葉を交わすわけでもなく、さっさと前の方に行ってしまった。


「知り合いなん?」

「あ、うん、ゼミの人」

私は涼子に言いながら、ぼんやりと、吉野くんの後ろ姿を見つめていた。




ふとiPhoneを開く。


[LINE 有紗 : てか、吉野と美乃里ちゃん、2人で城崎神社 行くらしい!]


なぜか、ふふっと笑みがこぼれた。


彼が、美乃里ちゃんを誘ったのか。
美乃里ちゃんは、すんなりOKしたのだろうか。


どちらにせよ、あの陰気な空気だけが流れていると思っていた場所にも、口元が緩むような話も咲くというわけだ。



まるで後輩の恋愛事情を漏れ聞いてしまったあとのように、
恥ずかしいような、微笑ましいような気持ちになるのを、私は感じていた。


有紗には-もし有紗が本気だとしたら、の話だが-申し訳ない。


でも、私は、彼の後ろ姿を眺めながら、
少し彼のこの先を楽しみにしていたのだった。


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