コメディ・ライト小説(新)

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君に捧げた初恋(処女作)
日時: 2018/08/22 17:51
名前: 華憐

▽プロローグ


「懐かしいな。俺、初日、ちょっと遅れてきたんだよな。」

「そうだっけ?覚えてないや」

「そうだよ。入った瞬間、みーんな座っててさ、オタクみたいな奴らばっかりで、もう終わったなって思ったよ」



結城がクスクスと笑うのにつられて、私も笑う。

そうだった。私もあの日、この教室で、同じようなことを思ったんだった。



「でも、あの日来た教室が、この教室じゃなかったら、俺たち出会ってすらなかったかもしれないんだよな」

結城が、私と繋いだ手にギュッと力を込める。



「出会えてよかった」

結城は、まっすぐ私の目を見て言う。
私の頬に、涙が伝った。


「ちゅーしていい?」

いたずらっぽく結城が笑う。いつものトーンなはずなのに、少し声が震えている気がする。


目を閉じる。2人の小さな隙間を、暖かい風が吹き抜けた。
走馬燈の様に、今までの出来事が頭の中で駆け抜ける。



4階の、1番隅の教室。
私たちは2年前、ここで出会ったんだった。


そして、私たちは今、同じ場所で
卒業の時を迎えていた。



--------------------------------------

▽目次

*プロローグ >>00
*第1話 出会い >>01 >>03 >>04 >>05 >>06 >>07
*第2話 事件 >>08
*第3話 縮まる距離 

Page:1 2



Re: 君に捧げた初恋(処女作) ( No.6 )
日時: 2018/08/18 12:31
名前: 華憐

「じゃ、とりあえず乾杯ー!」

有紗がグラスを高らかにあげる。
私と美乃里と吉野くんも、それにならった。


「有紗は呑む方なの?」

「うーん、まあまあかな。」


たこわさびを軽快につまみながら、有紗が私に応える。


「でもね、吉野がすーごいの。
この間もさ、ひとりでずーっと水みたいに黒ビール呑んでるんだもん。
さすがにびびった。」

「俺、田舎者ですからね。」

おどけて吉野くんがそれに応えると、
有紗はさらに思い出したかのように


「そういえばさ、2人でデートするんでしょ?」

と、吉野くんと隣の美乃里を交互に見つめてはしゃいだ。


「いや、それは誤解だから。プレゼン準備で仲良くなって、
まあ、いろいろ助けてもらったから、お礼も兼ねて、
どっか行こうってなっただけだよ。」


吉野くんの弁解に、美乃里もこくんと頷く。

「そんなこと言ったら川合さん困っちゃうじゃん。ねえ、初音ちゃん。」


突然話をふられて、私も慌てて頷くしかなかった。
吉野くんはその様子がおかしかったのか、ふふっと笑うと


「有紗と初音ちゃんはいつから知り合いなの?」

とさりげなく話題を変えた。



「有紗がね、Twitterで私のこと見つけてくれたの。」

「周りに全然同じゼミの子いなくてさ、検索したの。
そしたら初音がいて。まーじ焦ったよ、知った人いないの。
まあ、あのメンバーだもんね。」


有紗は一気にビールを飲み干すと、ふうーっと息を吐いた。


「どうするの、これから。ゼミ旅行とかさ、企画、目白押しだよ。
あのメンバーで、やっていけんのかな。」


私の言葉に、みんなが、やれやれと肩を落とす。


実際、今日の授業も、挙手を求めても全く手が上がらなかったり、
意見を言う声がまるで聞き取れなかったり、散々だった。


「まあ、うちらは仲良くやって行こう。
とりあえず、私は美乃里と吉野を見守るのに徹するわ」

「だから、そんなんじゃないから」


有紗と吉野くんが言い合うのを聞きながら、
私は美乃里ちゃんの方に席を寄せた。


「美乃里ちゃんはどうしてこのゼミに入ったの?」

「美乃里でいいよ」


そう言って、美乃里は微笑むと


「うーん、なんでかなあ」と首をかしげた。


「私ね、賢い人が好きなの。弁護士とか医者とか、そんなのになる人。だからかもしれない。」


さらっと美乃里は言い切ると、大皿に一つ残った春巻きをほおばった。
なかなかすごいことを言っているようなのに、
美乃里がいうと嫌味がない気がした。


「初音ちゃんは?」

「あ、私も、初音でいいよ。
んー、私は単純に、ほかに行きたいところが特になかったからかも」


ゼミすらめんどくさかったんだけどね、本当は、という言葉は、
ビールと一緒に飲み込んだ。



美乃里は、ふーんと相槌を打つと、

「有紗ちゃんって元気だよね。ゼミ長って感じ。」と、笑った。

「吉野くんとは、どうなの?本当に有紗が言うみたいな感じなの?」

「ないない!本当にお友達って感じ!なーんにもないよ!」


美乃里が笑顔で首を振るのを見ていると、とてもそれが嘘には見えなかった。


「でも、これからどうなるかわかんないしね。
私も密かに2人のこと楽しみにしてるんだよね」

「ちょっと、初音!」


いつのまにか、美乃里にラフに接している自分に気づきながら、
私は有紗と吉野くん、美乃里を順番に見つめた。


有紗はおそらく吉野くん狙いだ。
美乃里は特にそうでもない、が、
吉野くんは、どうなのかわからない。


さっきまでの会話を、頭の中で反芻する。
そして最後には、私は、三角形上のどこにもいない自分自身を、少しさみしい目で見つめていたのだった。

Re: 君に捧げた初恋(処女作) ( No.7 )
日時: 2018/08/21 14:25
名前: 華憐

「初音はさ、好きな人とかいないの?」

ガタッ…!

不意をつかれて、目の前の美乃里がプッと吹き出すほどに、
わかりやすく動揺した。


「いない!てか、美乃里からそんなことストレートに聞かれるとか
思わなかったんだけど!」



美乃里はよっぽど私のリアクションが面白かったのか、ケラケラと笑う。


その向こうで、吉野くんがトイレにたったタイミングで、
有紗もこちら側に寄ってきた。



「なになに、恋のお話ですか?」

「今ね、初音に好きな人いないの?って聞いてたの。
そしたらいないっていうからさ~。」

「今から見つけたらいいじゃん。ゼミも始まったことだし!」


有紗が意地悪く笑うのに、

「いや、ゼミはさすがにないわ!」

と切り返しながら、私は箸に手をつけた。



「でもさー、吉野くん、いい感じじゃない?
野球部でばんばんスポーツできたらしいし、顔もそこそこだしさ」



有紗の言葉に、私の箸が止まった。


予感的中。


私の心中を察したのか

「やっぱり、有紗は吉野くん狙いなの?」

と、美乃里が代わりに聞いた。



「いや、そんなんじゃないよ!さっき見守るって言ったじゃん!」

有紗は慌てて両手を振りながら、

「とりあえず、美乃里と吉野の後ろをつけることから始めるね」

と、美乃里に、笑顔を向けた。



ぼんやりとしていた線が
少しくっきりとしてきた三角関係。

私はそこに交わることなく、
ただ3人を見つめているだけだった。



交われない、と思った。


現に、私は吉野くんとは、挨拶を交わす程度。お互いのことを何も知らないのだ。

それに、私には、有紗のような積極性もなければ、
有紗についていこうとも、なかなか思えない。

そして美乃里のような、男性に対する理想もない。


どうして私はここにいるんだろう。
いっそメガネ達の中でおとなしくしていた方が
ましだったのじゃないか、とすら思った。



もちろん、その後に、
とんでもない展開が待ち受けているとはこの時は知らなかったのだが。

Re: 君に捧げた初恋(処女作) ( No.8 )
日時: 2018/08/22 17:48
名前: 華憐

▽ 第2話 事件




5月になり、慌ただしかった新学期も
少し落ち着きを見せ始めていた。
新入生達で、ごった返していたキャンパスの中も
どこかそれなりにまとまってきた雰囲気がある。


一方、私はというと放課後の資格講座も始まり、
なかなかハードな毎日を送っていた。


ゼミは相変わらず、何事もなく、
静かに淡々と授業が進められるだけだった。
私は資格講座、有紗はサークル活動が本格化してきたこともあって、
以前のように4人で集まることもなくなっていた。



「おはよーさん」


涼子の声で、半分寝起きだった頭が、シャキッと覚めた気がした。
土曜の朝からの授業は、想像以上に身体が重い。


「えらい眠そうやんか。初音、朝苦手?」

「そういうわけじゃないけど、やっぱり土曜日っていうのがね。
体内時計が起きないっていうか…」

「あー、なるほどな。確かに、人も少ないしなぁ。」


涼子の言葉通り、教室を見回すと、集まってきている生徒は、
普段の放課後の授業よりもグッと少ない。



ウーっと伸びをして、自分の席に向きなおろうとした時、
視界に、教室に駆け込む彼の姿が飛び込んだ。


そういえば、前回の呑み会以来、彼とは話をしていない。
こうして同じ授業にいても、目すら合わせたことがなかった。


有紗から、すでに彼と美乃里は何回かデートしてるとか、
彼は2年付き合った彼女がいて、最近別れたとか、
細かな話は聞いてこそいたが、出会って1ヶ月経った今も、
彼のことはほとんどわからずにいた。



あれから、あの三角形はどのように動いたのだろう。
やはり吉野くんと美乃里は、相当仲がいいのか。
とはいえ、有紗は黙って引き下がる性格でない。
もしかしたら、裏で猛アプローチをかけているかもしれない。


集中集中。私は首をぶるっとふると、
そう唱えるように頭で呟きながら、ノートをめくった。

Re: 君に捧げた初恋(処女作) ( No.9 )
日時: 2018/08/25 11:50
名前: 華憐

ブー。ブー。ブー。


枕元に置いたiPhoneが鳴る。


[LINE 有紗 : 初音ー!元気?]

[LINE 有紗 : 今度ね、吉野に、花火しよって誘われたの]

[LINE 有紗 : 2人で会う約束取り付けて、そのついでなんだ…]


通知の浮かぶ画面をザッと目で追って、そのままiPhoneを放り投げた。


このところ、毎日だ。
有紗から、事細かに報告のLINEがくる。


内容は主に、吉野くんのことだった。
美乃里とどこに行ったとか、自分が吉野くんと何をしたとか、
ふーん、の一言で片付くようなことが、
彼女いわく「重大ニュース」として届く。


こういう時は、よかったね、でいいのだろうか。
どこに行くの?と聞いた方がいいのだろうか。
それとも、とびきりはしゃいだスタンプを送ればいいのだろうか。


彼女のLINEに、頭を使わずに返信することは、難しかった。
気を損ねないように、それでいて、彼女の期待通りのリアクションをするには、
あらゆることを想像しなければならなかったからだ。


目を閉じて、枕に顔をうずめる。明日はゼミの日だ。


吉野くんと美乃里が親密になってきているのは、
誰の目を見ても明らかだった。



ゼミが始まった当初は口数も少なかった美乃里が、
吉野くんに軽口を叩くようになったことや、
どこかで撮ったのだろう写真を送りあっている姿は
1度や2度遊んだだけの関係には見えなかった。



有紗が「付き合えばいいのにー!」と2人を茶化す裏で、
本当はそれが本心でないのもまた明らかなだけに、
最近ではゼミで顔合わせするのも、少し気が重いのだった。





- 翌日

「ねえ、初音にお願いがあるんだけど」

と、突然有紗が切り出したのは、ゼミ終わりの放課後だった。
今日は、たまたま授業終わりの資格講座が休みだったのを、有紗は見計らっていたらしい。


「吉野に、聞いて欲しいことがあるの」


ドキッ…!
まだ何も頼まれていないのに、私はすべてを悟って、胸が鳴るのを抑えた。


そうきたか…。


「吉野、私のことどう思ってるんだろう」


ピンポーン。どこかで予感的中を知らせるベルが鳴った気がした。


「このところね、いろんなところに誘ってくれるのね?
でも、美乃里がいるじゃん、吉野には。
だからなーんかわからなくなっちゃったなーって。」


机に腰かけながら、足をプラプラさせる有紗を、私はなぜか直視できなかった。


「吉野はね、美乃里が好きだと思う。
でも、私には全然美乃里の話してくれないし、
何考えてんのか、わかんないんだよね。
だから、初音にそれとなく聞いて欲しいの」

「聞くって、どうやって…?」


やっとの思いで声を絞り出した。

「LINEとかでさ、どうなの?って。普通に聞いてくれたらいいよ」

有紗が力なく笑う。
私は、改めて、有紗が本気なんだと感じた。


「有紗はどうなの?好きなの?吉野くんのこと」

「んー。付き合ってもいいかな、とは思う。
あ、向こうがもし、って話だけどね」


さらっとそう言いのけた有紗に、思わず「え??」と声を漏らしかけた。


付き合っても…いいかな?



そうか、つまり。
有紗は吉野くんは自分に気があると思ってるし、
もしそうならそれに応えたいということなのか。


めまぐるしく回転する自分の頭を落ち着かせながら、

「機会があれば聞いてみるよ」

と、有紗にそれなりの言葉をかけた。

Re: 君に捧げた初恋(処女作) ( No.10 )
日時: 2018/08/26 12:02
名前: 華憐

「聞くってどうやってよ…」

誰もいない帰り道で、小さく呟いた。


iPhoneの画面には、吉野くんのLINEのトーク画面が映し出されていた。


簡単な業務連絡程度の会話しか交わしていない履歴を、
ぼーっと見つめながら、指は止まったままだった。



てっきり、有紗は彼のことが好きなんだと思っていた。
いや、本当は好きなのを、照れ隠しで、あんな風に言ったのだろうか。


"付き合ってもいい"


有紗の言葉を反芻する。


あの時-みんなでお酒を交わした時、有紗は確かに言ったのだ。
吉野くんと美乃里を応援すると。



でも、もしも自分にチャンスが巡ってきたら…?


付き合ってもいい。


…のか。



iPhoneをポケットにしまう。
めんどくさいな、と思わず声が漏れた。



このことを茉結に話したら、面白がるだろうか。
冴えないゼミの割に盛り上がってんじゃーん!
と笑ってくれるだろうか。


しかし、今は茉結に事の一部始終を話す気にすらなれなかった。


私はポケットに手を伸ばし、
イヤホンから流れる音楽のボリュームを少し上げた。





目を開くと、横に置かれた時計が、まもなく日付が変わるのを示していた。
帰ってきて、直行でベッドに飛び込んだまま、
いつのまにか眠ってしまったらしい。



うつ伏せになったまま、枕元のiPhoneに手を伸ばす。


[LINE 有紗 : 起きてる?]

[LINE 有紗 : もう寝た?]

[LINE 有紗 : 寝たよね]

[LINE 有紗 : 時間できたら電話欲しい]

[LINE 有紗 : 初音にだけ話がある]

[LINE 有紗 : 不在着信]


ぼやけた目でおびただしい数の通知を追った。


有紗に、吉野くんのことを頼まれてから2週間。

結局、私は連絡をできぬまま、
ただ有紗の伝えるニュースだけを聞いて、現状を知っていた。

夜中に連絡が来ることもしょっちゅうで、この手のLINEも慣れてきていた。



頭がひどく痛む。変な時間に寝たからかだろう。
私は力なく、そのまま目を閉じた。






-あの時。

私が、もっとお人好しで、もっとマメで、
もっとおせっかい焼きだったら、
何か変わっていただろうか。


それとも、あの時、二度寝しなければ、
その前に、帰宅してすぐに、ベッドに飛び込まなければ、
私は、何かに気づけたのだろうか。



私は、知らなかった。
これから起こることも、
今、起こっていることも。


何も、知らなかった。


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