コメディ・ライト小説(新)

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Banka
日時: 2019/08/18 15:16
名前: をうさま ◆qEUaErayeY
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel2a/index.cgi?mode=view&no=3918

>>1-3 >>6-22 >>26-33
2018冬大会 銅賞

君の声を思い出してから夏は始まる。

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Re: Banka ( No.24 )
日時: 2019/07/15 12:54
名前: をうさま ◆qEUaErayeY

コメントありがとうございます!
以前シリアスダークで書いてたときからそんな風に言ってくれる人って貴重だったので本当に嬉しいです!!
あー、銅賞って>>0に書いたほうがいいですね……、重ねてありがとうございます

将棋を知らない人でも分かるように書いてるつもりなので、そう言ってもらえてよかったです
今年の夏には結構時間がとれて、更新の頻度も高くなると思うのでよかったらまた是非おねがいします!

参照1000突破おめでとうございます!! ( No.25 )
日時: 2019/07/16 18:42
名前: 友桃 ◆NsLg9LxcnY


参照1000突破おめでとうございます(*^▽^*)‼︎

ちょうど1000の瞬間見ちゃいました嬉しいですねテンション上がりますね!(数分後にはキリ番じゃなくなってましたが笑)

これからも頑張ってください!
応援しております(^^)

Re: Banka ( No.26 )
日時: 2019/07/23 21:22
名前: をうさま ◆qEUaErayeY
参照: 友桃さんコメントありがとうございます!

「先輩、ありがとうございます……」
 僕は部室の鍵を内側から閉め、大きくため息をつく。茅野はいつも僕が座っている窓際の椅子に座っていて、僕のほうはその辺の適当なパイプ椅子に腰掛ける。
「あの人達、怖くなかったんですか」
「なめんなよ」
 デスク越しに座る彼女はこちらを向いたまま固まる。そしてしばらく目が合った後、あちらから目を逸らす。
 こんな言葉がいきなり口から出てきたことに一瞬自分で驚くが、流石にそれは僕を舐めすぎである。かつて僕がいた場所には、あんな奴らより一癖も二癖もあるような大人達で溢れていて、そんな集団の中で揉まれてきた僕が、たかだかこんな学校の一年生の女子に恐れるなんて、どう考えてもあり得なかった。
「いじめられてるのか?」
 カーテンが風で揺れる。練習中の野球部の声が遠くで聞こえてくる。
 直接的すぎたかもしれないが、今はそんな小さいことを気にしている状況ではない。
「いや、そういう訳ではないんですけど……、なんか教室にいにくいっていうか」
 僕は歯を食いしばっていた。
 教室にいにくい。そんなことは今まで想像すらしていなかった。僕は今まで放課後に何回、何十回と二人で会ってきたくせに、どうやら彼女の言動でそれを一ミリも察することができなかったらしい。そう考えると、自分が恥ずかしくなってくる。

「ごめん。気づけなかった」
 頭を下げると、彼女はすぐに席を立った。
「そんなこと……! 先輩が謝るような問題じゃないです」
 彼女は何かを強く訴える様子ではあるが、きっと悲しさとか苦しさとか恥ずかしさとか色々な感情が渦巻いていて、その気持ちを未だに整理できないといった感じだろう。
 確かに、彼女からしてみれば、僕なんかにあんな光景を見られたくはなかったはずだ。プライドなども勿論あるだろうし、教室に居づらいなんてことを誰かに打ち明けることが難しいことぐらい、僕にだって分かる。
 こんな状況、もちろん僕だって初めてに決まっている。とりあえず逃げるために部室まで来てみたものの、この先僕達はどうすればいいのだろう。僕はどうなってもいいが、とりあえず彼女がこれから順調に学校生活を送れるために、今何をするのが正解なのか、ずっと考えていた。

「どうしました?」
 茅野に言われ、目を逸らす。ふと彼女のほうをじっと見つめていたようだった。
 一カ所だけ開いた窓から入ってきた涼しい風が僕と彼女との間を直通する。そういえば、彼女と会ってから衝撃的なことばかり起きている気がする。それは周りの出来事もそうだし、彼女自身にもである。彼女には裏切られるようなことばかりだ。
 衝撃的すぎて、彼女と初めて出会ったときのことはまるで昨日のことのように思い出せる。一人でいつものように部室に籠もっていたある日、彼女が突如僕の目の前に姿を現した瞬間は、まるで部室に天使でも来たのかと本気で思っていた。が、彼女の第一声にてあっさりとそれを粉々に打ち砕かれたのだった。あのコメディはいつ思い出しても笑える。
 僕が初めて会った茅野都美という女子は、間違いなくそういう人間だったはずだ。それが、今に至るまで意外な一面ばかり見せられて、一体どれが彼女の本性なのか分からなくなってしまっている。
「部室、出ようか。コンビニにでも行こう」
 一応今、僕達は部室にいるのだが、部活っぽいことなど一つもしていない。顧問は例によって剣道部のほうへ行っているので、別に誰もとやかく言ってこない。
「……はい」
 窓を閉めに行くと、笑ってしまうほどいい天気の空が見える。振り返ると、彼女はこちらを見てなどいなかった。建設中の新校舎のほうを見ていた。

Re: Banka ( No.27 )
日時: 2019/07/31 12:57
名前: をうさま ◆qEUaErayeY

「……先輩」
 ん? と返すと、彼女は紙パックのミルクティーを一口飲んだ。
 辺りには誰もいない。僕達は今、公園にいて、近くのコンビニで買ってきた物を飲み食いしていた。
「この件と先輩は無関係なんで、無理に関わろうとしなくていいですよ」
 紙パックを片手に持つ彼女はブランコを座り漕ぎしている。閑散とした公園では、呟くような声量でも少し離れた僕のほうまで届く。
「そんなこと言うなよ。あんな光景見ておいてそんなもん無理だ」
「それじゃ私が無理なんですよ。第一、私と先輩ってそんなに親しい間柄って訳でもないし、そんな大きなこと頼れないです。先輩はいじめられてるって思ってるかもしれませんけど、そこまでの酷いことはまだされてないので、このまま三月まで私が我慢してれば済む話ですし大丈夫です」
 キコキコ、と彼女のブランコの音が響く。僕はベンチを立っていて、彼女の側まで歩み寄る。ん、と彼女が声を漏らすと同時に、今まで揺れ続けていたブランコの動きが止まる。
 彼女の言うことはその通りだった。これは非常にデリケートな問題で、赤の他人の僕なんかがわざわざ関わるべきではないことぐらい、分かりきっている。

「茅野、……いや、都美」
「えっ、ちょっと、せんぱ」
 僕は彼女の両肩の上に手を置いていた。
「僕はただの君の所属する部の部長というだけで、教師ではないし、君の親でもない。だからこの問題の根本的な解決策を出してやることはできない。だけど放課後部室に集まって将棋を指したり、そうじゃなくても部室で駄弁ったりぐらいはできる。他人に色々と踏み込まれたくない気持ちは分かるからこれ以上は僕も関わらないけど、少なくともここにいる杉本という人間は君の味方だってことだけは覚えておいてほしい」
 言い終わってから、肩から手を離す。みやび、という呼び方は言い慣れなかった。頭の中で何度も反響する。
 彼女は絶句していた。僕は自分のこの対応が必ずしも正しいとは到底思わない。僕がもっと率先してあれこれ動くほうがきっとお互いのためになるし、事態が解決するのも早いだろう。が、それでも、これでいいと思った。
「先輩……」
 彼女の隣のブランコに座ってみる。ギー、と鎖から途轍もなく乾いた音が鳴る。ブランコの座高が低すぎて足が簡単に地面に付いてしまうので、足を伸ばすようにしてゆっくり漕いでみる。……なんだかめちゃくちゃ久しぶりに乗るブランコは、どこか新鮮だった。
 夕刻の公園は未だ人の気配すらない。隣の彼女は座ったまま動かない。高校の制服姿という、なんとなくこの公園とは不似合いな格好に思えるが、不思議と絵になっていた。
「ありがとうございます、助かります、凄く」
 彼女はまたミルクティーを口にしていた。ズズズ、と音がしていて、間もなくそれを飲み干したのだと分かった。
「教室にはいにくいかもしれないけど、部室にはいやすいでしょ? ずっと鍵開けとくからさ、何かあったときに逃げ込める所ぐらいに思ってもらえばいいよ。あんな辺境の地、誰も来ないだろうし」
「そうですね……」

「仕方ないですねー。じゃあ部室で童貞メガネの先輩の相手でもしてあげますか」
「はあ?」まだそのキャラ保ってたのか、と向くと、いつの間にか彼女はブランコから降りていて伸びをしていた。未だ座ったままの僕を見下ろす格好の彼女は、両手を真上に高く挙げている。向こうの空に見えた日差しは、彼女の体で遮られ、僕の座るブランコにちょうど影を作っていた。
「もう、夏ですね」
 彼女は伸びを終えた後、気持ちよさそうにまたブランコに座る。梅雨はもう過ぎたみたいだった。
「夏好きそうだね」
「私、夏大好きですよ! 冬の間だけ冬眠しちゃいたいくらい」
 彼女はそう言うが、その気持ちは僕にも分かる気がした。梅雨の間は本当に苦痛で、外に出るのも億劫だったのだが、やっとこれから清々しい夏空が毎日見られると思うと、自然と何かに前向きになれる気が僕にもした。
 ふと、この先夏が来ることに、しだいに血が騒いでいる自分がいた。澄んだ空はまだまだ日が落ちそうにない。もしかしたら、この夏なら何かが起こるのではと、漠然と思えた。今まで怠惰に生きてきた自分を変えてくれる何かが。

Re: Banka ( No.28 )
日時: 2019/08/01 13:56
名前: をうさま ◆qEUaErayeY

「大会、今から楽しみです」
 隣で彼女が言い出したのとほぼ同時ぐらいに、公園に小学生ぐらいの子供達が入ってくる。彼らは一様に走っていて、帽子を被った先頭の子がサッカーボールを蹴っていた。
「楽しみ?」僕はその光景を見ながら、ふと聞き返す。というより、反芻してみる。いつまでもその言葉が引っかかった。
 子供達は次々と公園に入ってきて、最終的には十人以上集まっていた。そんな数の子供達が二チームに分かれてサッカーなんてするものだから、今まで僕らしかいなかったこの空間が急に活気に包まれたようで、何となく少し戸惑う。
 その光景を彼女もやはり見ていた。彼女は、嬉しいような、ちょっとだけ切ないような、微妙な面持ちのまま、目線を下に逸らした。
「先輩みたいな人には楽しみなんて感情湧かないでしょうけど、私なんて運で全国大会に行けたような物なので、優勝なんて狙ってませんし、何というか記念受験みたいな感じです」
 そう言い、また彼女は向こうでサッカーをする子供達へと目線を向けた。僕はとてもそれを本心からの言葉には思えなかったが、わざわざ聞き返すのも無粋だと思った。そして何となく向こうの夕焼けをぼんやり眺めようとしたが、幾つも動き合うあの子供達がどうしても視界に入ってきて鬱陶しくすぐに目線を戻す。彼女のほうはそのまま何秒間もあのくだらないサッカーを見続けていた。

「大会が楽しみなんて言う人初めて見たわ」
 言うと、彼女は笑いながらこちらを向くので、僕と目が合う。そしてそのとき初めて、無意識にずっと彼女を目で追っていたことに気づいた。
「確かに。私的にはお祭りに行くみたいなノリです」
 ははは、と笑う彼女につられ、僕も少し口元が緩む。どこからか吹いてきた風が僕らの間を抜ける。何というか、心地よい。いつまででもここで彼女と話していたい。
 しかし、そんな彼女の笑顔が止まったのは、突然だった。
「危ない」
 それは彼女のほうに向かっていた。僕は一心不乱に手を伸ばす。
 バン、とすぐに音がする。どうやら弾けたようで、反射的に顔の前に手をやっている彼女は無事そうだった。僕のほうは、サッカーボールが指に当たった感触の後に来た、刺すような痛みに違和感を覚えていた。彼女は目を丸くして、僕のほうを見つめる。
「すいません……。だ、大丈夫ですか?」
 指を見つめたままの僕に、彼女は横で心配そうに言う。まだ彼女は何が起きたのかいまいち飲み込めていないようだった。指は、見た目からは判断がつかないが、痛い。我慢できないほどではないが、このままは何となく気持ち悪い。
「すいませーん!」
 何人かの子供達が、ブランコの前の柵まで来ていた。ギリギリ足が届く範囲にボールが転がっていたので蹴ってパスをする。ボール飛んだなら何か叫べよ、と言おうとしたが、やめておいた。この指のことも、例えば体育の授業で怪我したのなら迷わず申し出たのだが、相手が相手なだけに言いづらい。見ると、その子供達はとっくに向こうに戻っていてサッカーの続きを始めていた。

「突き指か何かですか?」
「多分……」
 ダサすぎないか、と自分で突っ込んでみる。突然後輩のところに飛んできたサッカーボールを先輩が格好よく手で弾く! というところまでは良かったのだが、如何せんその弾き方が悪いせいで右の人差し指をユビしてしまっているという状況は、格好悪すぎて正直目も当てられない。
「なんかすいません……、すぐに病院行きましょう!」
「ああ、後で行くわ。多分そんなに急いで治療するほどのものでもないし」
 彼女は僕の怪我した指を大事そうに見たり恐る恐る触ったりしている。気を揉んでいるようなのが意外だった。
 おもむろにブランコを立ち上がった彼女は、歩み寄った近くのくず箱の前でまたミルクティーを一口飲み、捨てる。どうやらまだ持っていたらしい。ブランコに座っているとき、僕と反対側の手に持っていたようで気づかなかった。
 子供達は性懲りもなくまだサッカーをしている。タッチラインやゴールラインなど最低限の線さえ用いていない。簡易ゴールみたいなものはあるが、片方は木と木の間で、もう片方はベンチ自体に何となく当たったらゴール、という、そもそも得点になるシュートの基準が違うという致命的な欠陥を抱えていた。加えて、この公園の半分近くのスペースを占拠している。確かに、遊具のほとんどないだだっ広い公園は球技をするには最適だろう。


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