コメディ・ライト小説(新)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

木漏れ日とダンスを
日時: 2019/01/05 23:17
名前: 御笠

こんにちはー

短編をふっと書き始めます...良かったらお付き合いください。

書きながらたまに「童話感...」とか「森林保護組合の回し者...?」とか自分で突っ込んだりしていますが、決してそういうわけではない、はず(˘ω˘)

Page:1



Re: 木漏れ日とダンスを ( No.1 )
日時: 2019/01/05 23:19
名前: 御笠

''森''はいつものように木の葉を踊らせて暇を潰していた。
何百年も前に、ヒトの足跡は残らず消えてしまった。地面には、茶色くなった葉が幾重にも重なり、時たまに''森''のため息で冷たい空気の中を低く舞う。
この森の中に入ってしまえば、もう視界に入るのは木と、花と、それから時々キノコだけ。
ほかの''森''からのお便りは、数十年前から途絶えていた。あの頃は楽しかった。隣町の''森''からは、毎年小鳥の配達員さんでドングリが贈られてきた。そのまた隣の''森''からは、暖かくなると花粉が届いて春を知らせてくれた。
この前、花の種を隣町の''森''に贈ったけれど、返事がこない。いつもなら、お礼に育って咲いた綺麗な花のブーケを、すぐにリスさんが届けてくれたのに。

''森''はいつものように目覚め、木の葉を揺らした。
「チチチ、森さん。誰かくる。」
小鳥が''森''の腕にとまって言った。
『誰か?』
「チチチ、ヒトだ。ヒトが歩いてる。」
小鳥は小さく羽音をたてて飛び立った。
乾いた落ち葉が、パリパリと音をたてた。それはまるで時計の秒針のようにリズムを刻みながら、此方へ近づいてくる。
「今日...天気は晴れ時々くも......、星が....」
ザザ、という音が随所に紛れる、変な喋り方をするやつだ。
ヒトには長らく会っていないが、こんな喋り方していたっけ。''森''は、ボロボロの服を着たヒトが歩いているのをじっとみた。真っ直ぐにも歩けておらず、今にも倒れそうだった。
そこで、''森''は、木のコップにハチミツ入の紅茶をいれてやった。
それは、ひょろっとしたヒトの青年であった。
ヒトは、そのそばかす顔をとろけさせるように微笑んだ。
「ありがとう。」
ぞわ。
「街の人が思ってるより、君はずっとずっと優しいね。」
ぞわわ。
『...まちのひと?』
''森''が聞くと、ヒトは一瞬バツの悪そうな顔をした。
「あ...いや、なんでもないよ。」
そばかす顔のヒトは、さっき聞いたのとは違う喋り方だった。その代わり、ヒトが腰からぶら下げている小さな箱からその声は聞こえていた。
「...には...かい日が続.....気温が....」
ヒトではない何かを、あの中に閉じ込めているのだろうか。ひどいやつだ。
ヒトは、ふーっと息を吐いた。
「君の名前を聞いていい?」
ヒトの緑色の瞳が、''森''を見つめた。
『...。』
''森''が黙っていると、ヒトは目を泳がせた。
「ごめん、突然。」
『名前はない、ただ、''森''、だ。』
「僕はヨルク。ありがとう、''森''さん。お礼をしたいんだ。」
ヨルクは少し考え、自信なさげに口を開いた。
「何か欲しい物とか...ない?」
『...ヨルクは何故こんな所にいるんだ?』
ヨルクはへへ、と力なく笑った。
「森にいる植物を調べてるんだ。皆は僕にちゃんとした仕事をしろって言うんだけどね。」
『そうか。』
「....次に....です.....う....市長...」
箱の中の「何か」は、ずっと喋り続けていた。ヨルクはそれとは会話はしていないらしい。少し可哀想だ。
「僕は植物の研究のために世界中を旅するんだ。まだまだこれからだけどね。」
ヨルクは空を見上げた。赤く染まった空が、葉の合間から覗いている。
「それで、今日この森の植物を調べてたら、夢中になりすぎて...道に迷っちゃった。」
恥ずかしそうに鼻の頭をかいた。
「途中で荷物なくしちゃったし...まあ替えは一応あるからいいんだけどね。」
それで服がボロボロなのか。''森''は、ヨルクのことが少し知れて、少し嬉しくなった。
『...ヨルク、お礼と言ったな?』
「ああ。」
『わたしは...友達が欲しい。沢山友達が欲しい。』
ヨルクは面食らったような顔をした。無理なお願いなのだろうか。ちょっと申し訳なくなった。
「ごめん...今すぐにはあげられないや。言い出しっぺなのに。」
ヨルクは頭をかいた。赤毛のくせっ毛が更にボサボサになった。
『...それじゃあ、それが欲しい。』
「どれ?」
''森''は、箱の上に葉っぱを落とした。
「ああ、ラジオか。いいよ、ボロだけど...。」
らじお。初めて聞いた。不思議な名前の生き物だ。
ヨルクはラジオを''森''の腕に掛けた。
「そ...しいで.....ねー...もうち.....」
ザザーっと鳴き声をあげながら、らじおが喋った。
「本当にありがとう。」
''森''を優しく撫で、ヨルクは背を向けた。
その細い背に、葉っぱがざわざわいった。止めようと思っても、なかなか止まらなかった。

Re: 木漏れ日とダンスを ( No.2 )
日時: 2019/01/20 20:09
名前: 御笠

次の日、ヨルクは灰色のコートを着て来た。
「あれ?これ...」
''森''の根元には、すっかり茶色くなってしまった、白のトートバックが置かれている。
『たまたまな。わたしの仲間が落ちてるのを見つけて拾ってきた。』
ヨルクの見えないところで、''森''の頭に桃色の小さなツボミが生えてくる。
森の仲間たちに懸命に頼み込んだことは内緒だ。
「ありがとう!本当に優しいね 。」
ぞわわわ。
もう少しで花が咲くところだった。
『それは...仕事道具か?』
ヨルクは嬉しそうに''森''を見あげた。
「そうだよ。見るかい?」
''森''はYesの意味で腕を揺らした。
昨日見つけて、抜けがけで見てやろうとしたが、やっぱりヨルクと一緒に見たかったのだ。
「これは昔、旅行で南の島に行った時の絵だよ。」
水が滲んだような、優しい色使いで、様々な緑が描かれている。
ヨルクの顔よりも大きい葉っぱを持った木。燃えるような赤い実をつけた木。雪のように白い幹をした木。
どれも''森''が見たことのないものざった。
「どうかな...気に入ってくれた?」
''森''は、次々にめくられるスケッチブックに描かれた絵に釘付けになった。自分の知らない世界。なんて楽しいんだろう。
「あ!''森''さんに花が咲いてる!気づかなかったー...。」
しまった。咲いてしまった。
『こっこれはあのっ...あの...昨日から咲いてた、ぞ...。』
「とっても綺麗だね。描いていいかな?...あれ?!また増えた?!」
『あっこっれは...その...!』
ヨルクは小さな子供のような顔で、夢中になって筆を走らせた。
『...出来上がったら見せてくれ。』
「今日中には難しいかもしれないけど、完成したらまた持ってくるよ。」
また会える。花がまた咲いた。

その次の日、ヨルクは不思議な模様をした種をくれた。日当たりの良い所に植えたら、太陽のような花が咲くらしい。''森''は、それを森の特等席に植えてやった。
その次の日、ヨルクは''森''の剪定をしてくれた。''森''はヨルクにその枝をプレゼントした。ヨルクはまたとろけるような笑顔を見せてくれた。
その次の日、ヨルクは旅行先で集めた押し花のノートを見せてくれた。ぺったんこになってもなお輝きを失わない色とりどりの花は、少し可笑しかったし、不思議だった。
その次の日、ヨルクは街でヒトが歌っている歌を教えてくれた。ヨルクの優しい声に、森の動物たちはうっとり聴き入った。
ヨルクはそれから毎日来てくれた。
でも、仕事が忙しくなったのだろうか、それは2日に1回、3日に1回、そして1週間に1回となっていった。
「チチチ、森さん、ざわざわいってぼくら夜も眠れない。」
小鳥が''森''の腕に止まって少し怒ったようにぼやいた。
『!』
''森''の頭についたツボミがぽんと弾けて、桃色の花びらが顔をだした。
『ご...ごめん...。』
「ヨル」
3つほど加えて花が開いた。
『違う!ヨルクは関係ない!』
「チチチ、誰もヨルクなんて言っててないもんね。チチチ。」
小鳥が嬉しそうにぴょんぴょん跳ねた。
「チチチ、ヨルク、ヨルク。」
『違うもん!!違う違う!』
身を捩る''森''。今度は濃い桃色の花が立て続けに咲いた。
「ヨルク、あたちたちにお花くれた。優しい。」
茶色い毛並みのウサギが、足元に寄ってきた。
「おいら達を絵のモデルにしてくれたんだぜ。あいつ、良い奴!」
キノコがカサを揺らした。
『うん...優しくて、良い奴。』
「チチチ、でもヨルク、あれから来ないね。」
心なしか''森''の花の元気がなくなる。
ヨルクからもらったらじおは、喋っている時よりもザザーっと鳴いている時間の方が長くなっていった。最近では、喋ったと思っても「さ」と「し」と「す」と「せ」と「そ」しか聞こえない。
『なあ、らじお?』
「...す.........せ.......さ....」
『お前はヨルクとどこで出会ったんだ?』
ザー、ザザー。
『秘密か。恥ずかしがり屋め。』
「チチチ、''森''さんもらじおのこと言えないぜ。」
『うっうるさいよ。』
空からの日差しは、日に日に強くなっていった。木々の緑は一層濃く、動物達は一層賑やかになっていく。
ヨルクのくれた種からは、黄緑色の芽が出てきた。でも、当のヨルクは来てくれない。
「チチチ!森さん、誰か来る!」
『え!』
''森''は小鳥の飛んでいく方を見た。
2人いる。1人は、忍び足のように静かに歩いてくる。ヨルクだ。
もう1人は、地面の落ち葉を乱暴に蹴散らすように歩いてくる。花がもう幾つも踏まれた。
「チチチ、あいつ誰だ?」
「''森''さーん、久しぶり。ごめんね遅くなって...。」
ヨルクは眉を八の字にして''森''を見上げた。
「なんだヨルク、ただの木じゃないか。なんでそんなもんに話しかけてるんだ?」
ヨルクじゃない方のヒトは、小太りのちょび髭だ。ヨルクと同じ赤毛だが、なんだか意地悪そうな顔をしている。
「まあこの森の中では1番の大木だが...それにしても''森''って安直すぎやしないか?っというかおい、''森''ってあの''森''か?!」
ちょび髭は、''森''の枝を乱暴に折った。
『いだぁ?!』
「やめてよ兄さん!痛がってるよ!」
ヨルクはちょび髭の腕を掴んだ。
「チチチ、兄さん?」
小鳥は''森''の上の方の腕にとまった。
「紹介するね、僕の兄のギーナ。」
『...』
「おっ、ウサギもいるじゃねえか!肉にすっか?」
ギーナは寄ってきたウサギの耳をむんずと掴み、顔の前に持ち上げた。
「兄さん!駄目だって!離してやって!」
「へへへ、おいあれはなんだ?」
ギーナはウサギを落とした。
「兄さんってば!...あれは薬草の一種だね。かなり貴重で、薬屋にも滅多に並んでない。」
「へぇ...。」
ギーナはおもむろに薬草を引きちぎった。
「薬屋に売ってやろう。」
ポケットに押し込まれた薬草は、茎が折れた。
ヨルクは真剣な表情になり、ギーナの袖口を引いた。
「兄さん、植物は」
「商売の道具じゃない、だろ。分かってるよヨルク。でもお前がまともな仕事にもつかずに毎日3食食えてるのは誰のお陰だ?俺が汗水垂らして働いてるからだろ。」
ちょび髭を手で撫でながらヨルクを見下ろす。黄ばんだ前歯が黒い唇の隙間から覗いた。
「...自分はデスクでふんぞり返ってるだけのくせに...。」
ヨルクは小声でぼやいた。
「何か言ったか?」
「いや何も。」
ギーナは、それから暇に任せて食べもしないキノコのカサをむしり、いたずらに大声を出して動物を驚かせた。
「ふん、つまらん。森なんて何が楽しいんだ。」
「植物を見れる。不思議だと思わない?指先に乗るくらい小さな種が、土と水と太陽だけでこんなにも大きくなるんだよ。これこそ生命の神秘の」
「あぁあぁわかった分かった。そんなだからお前は街で変人扱いされるのさ。」
ギーナは切り株にどっかと腰掛けた。
「まあ納得だね。こんな腐った葉っぱの匂いがムンムンする所で一日中過ごす奴の気が知れないな。弟が虫ケラと四足歩行の下等動物共と同レベルに成り下がってる兄の気持ちも考えて欲しいなまったく。」
『そんな言い方!』
「そんな言い方ないだろ!」
ヨルクが勢いよく立ち上がり、落ち葉が舞った。
「僕のことをどう言おうがかまわないよ。でも森の動物達をそんな風に...づ動物だって植物だって皆等しく生き物だ!兄さんが貶していい奴らじゃない!!」
''森''は、ヨルクがこんなにも顔を真っ赤にして大声を出すのを初めて見た。びっくりしたけれど、それ以上に嬉しかった。もう何百年も、こんなふうに言ってくれる人はいなかったから。
ギーナは面食らった顔をして、眉をひそめた。
「...ごめん、兄さん。」
ヨルクは足の力が抜けたように座りこむ。地面に顔を向けて、兄の方は見ずに独り言のように呟いた。
「...帰ってくれ。」
ギーナはぶつくさ言いながら街の方へ歩いていった。途中で森の木の根っこに躓かせてやった。ささやかなお返しだ。


Page:1



スレッドをトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


E-Mail


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。