コメディ・ライト小説(新)

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なっちゃえ
日時: 2019/01/09 22:42
名前: 闘神自殺

大学での単位との戦いも無事に終わり、陽気につられ、ひさしぶりに街で休日を満喫してたときだった。
「こんにちわ。わたしモモリー! 未来から来たの!」
「あん?」
 不意に、妙なちびっ子に話しかけられた。
 俺の目の前でどーだいといった様子で胸を反らしている、モモリーと名乗ったちびっ子は、手に『威力棒(任天堂Willのデザインをパチッた中国製粗悪品。ちょっとした冗談で親戚の子供に与えると、狂喜した後に口を利いてくれなくなる可能性が高いので注意が必要である)』のような物体を握り、最近巷で流行ってる魔法少女のようなコケティッシュで可愛らしい格好をしている。不可解な発言もあったので正直、関わりたくないと思った。
「アナタはタクロー! わたしのお父さん!」
「はあ……そうですか」
 いきなり名前を言い当てられてドキッとしたが、ちょっと考えて……大学仲間の誰かが手の込んだイタズラを企んだのだと納得する。
 まあ、そんなに悪意あるイタズラじゃなさそうだし、子供相手にどうこうするのも大人気ない。どうせ大した予定もなくブラついてただけだし、暇潰しにちょっとだけ付き合ってやろうかな。
「お父さんは三十年後の今日、わたしを遊園地に連れてってくれる約束してたのに、急なお仕事があるって言って破ったの!」
「そうか……それは俺がヒドイな。なんかごめんな」
 モモリーが道端でムキーと地団駄を踏むので、俺は通行人の邪魔にならないようモモリーを抱き上げ、ガードレールの上に座らせてから優しく頭を撫でてやる。
「う~ん……」
 サラリとした短い髪を掻き分けて耳元の辺りを撫でると、モモリーはくすぐったそうに肩を竦めた。
(うんうん、カワイイもんだ)
 俺に子供が出来たら、こんな風に平和な休日を過ごすのかなあと、冗談と解っていてもほのぼのしてしまう。
 だがその次の瞬間だ。
 モモリーは胸元で握り締めていた威力棒をいっぱいに振りかぶり――いきなり俺に襲いかかって来た。
「死ぬがいいの!!」
「うおっ!?」
 まるで暴風のような、絶頂時の松井級のスイングが俺の顔面の真横を振り抜いた。一瞬早いタイミングで殺気を感じ、ギリギリのとこでなんとか避けられたが、モモリーが何故こんなことをしたのか、俺にはさっぱり理解出来ない。
「な、何をするんだ!?」
「腹いせなの! 約束破るお父さんは悪い子なの! わたしに頭蓋骨粉砕されて、後悔しながら黄泉路を踏むの!」
「黄泉路!? お、俺はキミのパパだろう!? さっきの設定からすると、俺を殺すとキミも大変ヤバイんじゃないのか!? 俺が死んだらキミは未来で産まれないんだぞっ!!」
 メジャー一線級のフルスイングで鼻先かすめられたもんだから俺は恥も外聞もなく取り乱し、自分の半分にも満たない幼女に対し必死で命乞いをする。
「わたしが存在している時点で、わたしが存在する世界は既に確定しているの。過去に戻るとその時点で過去は、わたしが来た未来と連続しないべつの世界に分岐するの。ようするに、未来から過去に対する干渉はオールOK! なにをしてもわたしの未来には影響が起きないの!」
「だからって、殺すこたぁないだろ!?」
 だが俺の制止も聞かず、モモリーは『威力棒(もう名前が固定している)』をブォンブォン振り回しながら果敢に俺を殺(と)りに来る。
「くっ!?」
 とてつもなく速いが、なんとかそれを避ける。未来うんぬんは信じてないが、それを別にしても死の危険が迫っているのは間違いなさそうだ。
 
 ドコッ!

 振り回していたモモリーの威力棒がポプラ並木に直撃した瞬間、すさまじい轟音と眩い閃光が疾り――その直後に発生した爆風が俺の身体を吹き飛ばした。
「うあああああ!?」
 俺はなす術もなく転がり、ビルの壁に激しく打ち付けられた。
「うぐう……!?」
 後頭部の鈍痛にうめきながらも必死に立ち上がろうとすると、メキメキ音を立てて倒れる黒コゲのポプラを目の当たりにする。
 あ……あれがまともに当たったら。
 想像するだけでゾッとした。
「往生するの!」
 モモリーは威力棒をビシッと俺に突きつけてから、ガードレール、電話ボックスの上へと、体操選手のように身軽に跳び回り、爆発に逃げ惑うサラリーマンの背中に跳び移ると、ポシェットから取り出した紫色の粗縄を手早く首に巻き付け、何やら呪文のようなものを唱え始めた。
「ゲコマコマヤコン、ゲコマコマヤコン」
「ウギョギョギョ!!」
 耳元で呪文を囁かれた途端、サラリーマンがカッと目を剥き、首筋をひっ掻いて苦しみだした。恐怖のあまり声も出ない俺は、その異様な様子を呆然と眺めることしか出来ない。
「死者転生の魔法ー!! おまえ、『くま』になっちゃえ!!」
 苦しみ悶えていたサラリーマンの背広が突如、アケビのようにパックリ割れ、モモリーはそこから素早く跳び退く。
 サラリーマンの背中の割れ目がミカンの皮を剥いたようにめくれ上がり、内側のドロドログチョグチョした紫色の脈打つ内臓が裏返ると、その全身を饅頭のようにスッポリ包み込んだ。
 
 ドックン ドックン
 
 生きた心臓のように激しく脈打つ肉塊。
 しばらくすると、中から響いていた幽鬼のようなうめき声が止み、遠巻きに窺っている野次馬が騒然とする中……それは生まれた。
「クマー!」
 グロテスクな肉の皮を勢いよく突き破って出たモノは、全身ブルーの毛並をした熊のような生物だった。
 デカイ。白熊並にデカイ。立ち上がって両腕を振り上げた姿は、余裕で大型トラックの車高を越えている。
「クマー! クマー!」
 クマを主張してやまない怪生物は下腹に響くような物凄い咆哮を上げ、獲物を追い求めるよう血に餓えた瞳を見開く。
「なっちゃえ! マイコーになっちゃえ!!」
「ポウッ!」
 俺が大暴れするクマに呆気に取られていると、いつの間にか縄で捕らえられた老人が、モモリーの呪文によって、帽子を目深に被り颯爽と立つマイケル・ジャクソンに変態させられてしまった。
「うおっ!? な、なんてことをしやがるんだ!」
 と言いつつ、内心では「いいぞ、もっとやれ!」と思う自分もいた。
「ぷれすりー! ぷれすりーになっちゃえ!」
「ラブミー♪」
 捕らえられた丸刈りの野球少年が、内蔵に包まれてエルヴィスに変身。ポップ・キングに次いでロック・キングの雄が復活した。
 エルヴィスはしきりに髪型を気にしながら、路肩に停めてあった違法駐車のペスパ盗んで走り出す。
「ポウッ!」
「あ、サインください」
「ポウッ!」
 サインを快諾してくれたマイコーと別れて再び戦場を振り返ると、モモリーは違法駐車の軽自動車を亀甲縛りで捕獲し、化け物へと変えようとしていた。
「車になっちゃえ! トヨタ車になっちゃえ!」
「リコール!!」
 どう考えても内臓の容積を遥かに超えている”例の車”が肉の塊を突き破って飛び出し、そのままモモリーをボンネット上に乗せると、ブレーキパットをキュルキュル鳴らしながら片輪走行で歩道橋の階段を駆け上がった。
「おい、車は無機物だろ!? つーか、トヨタ死んでないよ!?」
「未来じゃ、外資に呑まれて跡形もなくなっていたの」
「縁起でもねえ!?」
「ボンネット開けると内臓がぎっしり詰まってるの」
「こわっ!?」
 モモリーがトヨタ車のボンネットを開くと、ギッシリ詰まった紫色の内臓がウネウネと蠕動していた。俺が吐きそうな顔をしてえづくと、モモリーは腕組みしたまま満足気にうなづき、歩道橋の上から飛び降りて、今度は子供づれの母親の肩にまたがった。  
「なっちゃえ! とばそうじょうになっちゃえ!!」
「鳥羽ー!!」
「ママー!?」
 天喜元年から保延の時代を駆け抜けた日本仏教界屈指の高僧が、握り締めた両の拳を天高く突き上げ現代に甦った。勝手に輪廻転生しないで欲しい。
「とばそうじょうになっちゃえ! なっちゃえ! とばになっちゃえ!!」
「鳥獣人物戯画!!」
 モモリーは鳥羽僧正が気に入ったのか、逃げ惑う人々を投げ縄で拘束し、グロテスクな内臓の素から次々と僧正を量産する。
「とばーっ! とばになっちゃえ!! ごとばになっちゃえー!!」
「ちょっ……鳥羽多すぎ!? どんだけ鳥羽に固執してんだよ!?」
 モモリーの魔法によって、たちまち街は怪物で溢れかえった(主に鳥羽)。
 怪物は人の理性を失ってしまっているようで、次々と人々に襲い掛かり、それを容赦なく喰らっている。そして俺の周りでは、数十の鳥羽と一体の後鳥羽天皇が念仏を唱えながら結集し、その包囲を徐々に狭めて来ている。
「くそ!!」
 鳥羽なぞ元は新興宗教の教祖風情だが、今となっては歴史的偉人。いろいろな意味で迂闊には手は出せないぞ。
 だが、このまま殺られてしまうわけにはいかない。
 なぜなら――明日、ヒットスタジオに戸川純がでるんだ。
 俺はいよいよ覚悟を決めて拳を握った。
 強引に包囲を突破して大元であるモモリーを叩くつもりだ。
 正義を以って大儀を成すのである。
「いくぞ!! うおおおおおおおっ!!!」
「来いなの!」
 戦うことで切り拓ける未来があると信じて!!
 
 おしまい! 

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