コメディ・ライト小説(新)

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喫茶Anjouにお任せ下さい
日時: 2019/05/18 21:16
名前: 青い海

海岸沿いの道に、白い壁のなかなかお洒落な外見をした喫茶店がある。
18歳の少女が経営している『Anjou』という名前のそのお店は、老若男女問わず人気だ。

なんでも、看板メニューである『ふわとろパンケーキ』が高校生が作ったと思わないくらいに本格的で美味しいらしく、ついつい何回も来てしまうんだとか。

しかし
そんな人気店の『Anjou』にも秘密があった。


それは、
知る人ぞ知る『探偵事務所』だということ。


***


あたしが引き受けるんだ。そこらの探偵よりはいいと思うぞ?」
少し男気がある探偵事務所所長兼喫茶店オーナー
楠木杏樹くすのきあんじゅ

「おい!杏!何でお前はそう後先考えず依頼を引き受けちまうんだよ」
少し俺様気質な杏樹の幼馴染み
須藤拓磨すとうたくま

「まあまあ、2人とも喧嘩しないの。仲直りして。ね?」
物腰柔らかな謎多き従業員
歌野琉生うたのるい

「はあーっ、何でこんなにここの店は可愛くないの!?」
女顔負けの可愛さをもつ女装男子
七瀬遥ななせはるか


暴力上等、危険不可避、波瀾の連続

普通の高校生とはちょっと違う
彼らの日常を少し覗いてみませんか?

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Re: 喫茶Anjouにお任せ下さい ( No.5 )
日時: 2019/05/12 18:51
名前: 青い海


「私は楠木杏樹です。探偵事務所所長兼喫茶店オーナーを務めています」
「僕は四奈川コーポレーションの副社長をしています、河野健こうのたけるです」

ここは、喫茶店の隣の部屋にある、探偵事務所として使っている部屋。
そこで、机を挟んで向かい合っている私達。
河野さんはキョロキョロと辺りを見回しながら、私がさっき淹れた珈琲を飲んでいた。

「...あの、谷本さんとは、どういうご関係だったんですか?」
「僕のこっ婚約者なんです...。来月、結婚しようという話もしていて...」

チラッと私を見て話す河野。
...何だろう。谷本さんの男の趣味を疑うわ。てゆーか副社長?...あり得ないだろ。もっとマシな奴沢山いただろーに。

「で?谷本さんがいなくなったのは何時いつなんですか?」
「はっ、はい。確か、一昨日からだと思います。湖子が友達と遊びに行くって言って家を出たんですけど、今日まで全く連絡がなくて...。心配になって僕から何回もかけたんですけど返事はなくて。いつも出掛けたときはメールでもなんでもすぐしてくれるのでおかしいな、って...」
「成る程。では、その話を警察には?」
私が問うと、河野は首を横に振った。
「...しようとは思ったんですが、相手にしてくれないだろうと」
それで、探偵あたしを頼ったというわけか。

「分かりました。えーと、ちなみに谷本さんはお友達とどちらへ行くと仰ってたんですか?」
「温泉に入りに行くって言ってましたけど...。確か羽月はづき旅館に一泊すると」

...羽月旅館ねぇー。
この人、羽月旅館のこと知ってんのかな。

「分かりました。谷本さんを探しましょう。お支払いは後で結構です。あ、あとコレ。ここの番号です。用がある時にかけてきて下さい。基本、私からはかけないので」
「は、はあ...」

探偵事務所ここの番号が書かれた紙切れを持って唖然としている河野。
私はそんな河野を放って、部屋を出た。

Re: 喫茶Anjouにお任せ下さい ( No.6 )
日時: 2019/05/15 19:02
名前: 青い海

バタン

後ろ手に扉を閉めた私は、そのままずるずると滑り落ちて、床にへたりこむ。

「どーしたの?」
「杏樹ちゃん?」
「杏っ?大丈夫か?」

そんな私を心配してか、パンケーキやらホットサンドやらの下準備をしていたであろう3人が厨房から出てきた。それと同時に向こうで事務所のほうの扉から出て行った音が聞こえる。
実は、Anjouには事務所用の扉と喫茶店用の扉がある。
まあ、事務所用は喫茶店用とは違って、裏の方にあるから気付かれないんだけどね。
だから、事務所用のほうの扉は依頼してきた人が帰る時に使ってもらうようにしている。
じゃないと、扉をわざわざ2つに分けた意味無いしね。

「はー...。お前ら、仕事だ。行方不明の谷本湖子さんっつー奴を探しに、羽月旅館に行くぞ」
「「「は?」」」
おー。見事に揃ったな。
心のなかで拍手している私。そんなふざけている私とは反対に、何やら難しい顔をして私の方を見てくる3人。
まあ、そりゃそうだわな。だって“あの”羽月旅館だし。
「は...づき?ってあれか?恋人同士しか入れないってゆー噂の」
「で?そこに何でその行方不明者がいんのよ?」
「実はさ...」

不思議がる3人に、私はさっき河野から聞いたことをそのまま話した。
そして、話終えて3人の方を見上げれば、さっきよりもすごい顔になっていた。

「え?じゃーその谷本って子、浮気してんじゃないの?だってあの羽月よ?友達同士で行くとこじゃないわ」
「てゆーか谷本が行方不明なのかも怪しいな。相手の男とラブラブしてて、河野に連絡しなかっただけとかじゃねーのか?」
「だろうね。そうしか考えられない。僕らが動く必要ないんじゃないの?だって河野さんも警察じゃ相手にされないと思ったからここに来たわけだし。十分浮気されてる可能性考えてるんじゃないかな?」

と、口々に言い出してしまう始末。
わー。なんか皆“The探偵”って感じだな。さっきの私の話でもう推理してらっしゃる。

感激だよ。私もそう思ったよ。

でもな?

「そのただの浮気なのか、本当に行方不明になってんのか確かめるのが私達の仕事だろ?まだ決めつけんな。行動する前に勝手に決めつけんじゃねえ。それに。警察よりも探偵あたしを頼ってくれたんだ。嬉しいじゃん?な?」

ゆっくりと腰を上げながら、3人を見つめる。
そう。私達は探偵。推理をするのはいいけれど、私達が調査するのかしないのかは私が決めるし、第一、本当に推理通りなのか、調べてみないと分からない。

だから、結論をだすのは調査をしてからだ。

「...わかった。俺は杏の言う通りにするよ。で?俺は何をすればいい?」
肩を竦めて、困ったような顔をしながらそう言ってきた拓磨。

「何するって?決まってんだろ?調査だよ」
そんな拓磨に、にやっと口角を上げてあくどい笑みを浮かべた。

Re: 喫茶Anjouにお任せ下さい ( No.7 )
日時: 2019/05/13 21:56
名前: 青い海

「......あー。なんか急に帰りたくなってきた」
「おい、我慢しろよ?俺だって今吐きそうなんだから」

目の前にある建物を見ながら、私はぶつぶつと拓磨と言い合う。
あれから15時間。
私は拓磨と一緒に羽月旅館の前に来ていた。

昭和初期の建築で木造一部2階建て、外観から見た感じだと、おそらく部屋数は20室あまり。
普通よりは、少ないな。...まー、来る客がカップルだけなんだから、そりゃそんなに大きくなくてもいいとは思うけど。

私達が立っている駐車場から少しだけ見えるお庭も立派なもので、よく手入れされている。
そう。普通の旅館なのだ。

...壁一面がピンク色で、ハートの模様が描かれていなければ。

「あ"ー...気持ち悪い。拓磨ぁぁー」
「知らねーよっ!おわっ、ちょっ!くっつくなっよ!杏っ!!」

旅館とは思えない外観に、私は拓磨と共に旅館を視界にいれないように反対の方を向いた。

「きゃーっ!可愛いっ!なにこれ?これがあの羽月なのっ?」

......。
...ん?

見間違え、だよね。この旅館の外観を『可愛い』って言ってハシャいでる人がいるんだけど。
しかも、今店番しているはずの奴が。

「あー、コラコラ。ハシャいじゃダメだって。目の前に拓磨と杏樹ちゃんがいるんだから。静かにしないと僕らが来てることバレちゃうよ?」

いや。
見間違えなんかじゃなかった。

「...あいつら...。さっき羽月行くっつった時俺に押し付けやがったくせに...」
わいてくる怒りを堪えるように拳を握り締めながらいつもより数段低い声でそう言った拓磨。
...あぁ、どうしよう。拓磨が珍しく怒ってる。

「たっ、拓磨。落ち着け、な?えーと。仕事しよーぜ。ほら、行くぞ」
ぐいっ、と拓磨の腕を強引に引っ張ってド派手な旅館に入っていく。

「っは?杏っ?」
私の後ろで拓磨の慌てた声が聞こえる。
でもそんなのも全部無視。
ずんずんと突き進んでいく。

拓磨が怒ったら怖い。

それは、10年以上ずっと一緒に過ごした私が知っている。
それはもう、何かが吹っ切れたように。
荒れに荒れまくって、もう誰にも止められないのだ。


拓磨を怒らせる前に、さっさと調査を始めなきゃ。


私はもっと歩くスピードを上げて、受付へと向かった。

Re: 喫茶Anjouにお任せ下さい ( No.8 )
日時: 2019/05/14 19:43
名前: 青い海

「うぉー、スゲー。中は普通にまともだな」
「いや、外観がインパクトありすぎなんだろ」

中に入って辺りを見回すと、壁一面が窓ガラスになっていた。だからなのか、陽の光が全面に入っていてとても明るい。

...何だろう。
外観が刺激的すぎて、内装が地味に見える...。

落ち着いた色の家具やら絨毯やらを見ながら、受付を目指して左手に歩いていく。
すると、突然拓磨が振り返って私を見た。

「あ。俺が行くから、お前はそこら辺座っとけ」
「へ?行くってどこに?」
「受付だよ、バーカ。お前歩き疲れただろ?谷本のこともさりげなく聞いとくから安心しろ」

驚きすぎて返事をする間もなく、拓磨は私の荷物を強引に持って、そのままスタスタと受付の方に歩いていく。

...あらら。本気で行ったし。

もう受付まで行った拓磨を見ながら、私は言われた通りに自分の近くにあった椅子に腰掛ける。

いやー、まさか拓磨が人のことを気遣える人間になっているとは...


周りがカップルだらけになり、いちゃつき始めるなか、私は椅子に座ってそんなことを考えていた。

Re: 喫茶Anjouにお任せ下さい ( No.9 )
日時: 2019/05/18 21:15
名前: 青い海

「やだぁー、お兄さん彼女いたのぉ?...あーあ。ワタシ、失恋しちゃったなぁ...」
「ははっ、キミも彼女いるだろ?すげーイケメンの。俺よりあっちの方が何倍も良いって」
「...お兄さんみたいに優しくないもん...。顔もお兄さんの方がワタシ好みだなぁ?」

......。


期待を持たせた甘い台詞。
聞いていると、私の神経を逆撫でしてくるような猫撫で声。


「...はぁ...」
分かってた。旅館の前にいるのを見たときから分かってた。
分かってた、

けど

「お前らなあ、...っむぐ!!」

ガタッと椅子から乱暴立ち上がり、遥と琉生がいるであろう方向を向いて、文句を言おうとした時。

背後から何者かに口元を押さえられ、話せなくなる。


「~~~~っ!!!!」

誰だっ!
顔を見ようと後ろを振り返ろうとしても、私の口を押さえてない方の手で、体をがっちり固定されていて、動けなくなる。


「はいはい。杏樹ちゃん、静かにねー?今、遥が四奈川さん口説き落としてる最中だから」

...この声...琉生、か?

「むふふ(琉生か)?」
確認しようとして、話そうと試みるも、やはり口元を押さえられていたら話すことは難しい。
自分でも何を言っているのか分からなかった。


「そうそう。琉生だよー?だから安心して黙っててね?」
「......」

琉生の表情を見なくても分かる。
...こいつの笑顔、今絶対悪魔みたいだ。

何か企んでんのか?

琉生に口を塞がれながら、何で琉生と遥がこんなことをしているのか考える。

「...?」

でも、普段謎に包まれている2人だからか、考えていることが全く分からない。
もしかして、仕事の手伝いをしてくれているのかも、とか一瞬考えてしまったが、面倒臭がり屋のコイツらが自ら仕事をするなんて事有り得ない。

「まーまー。そんな怖い顔しないの。大丈夫大丈夫。遥が上手くやってくれるから」
「ふ(はぁ)?」

ふふっ、と笑いをこぼす琉生がいつも以上に気味悪く思った。


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