コメディ・ライト小説(新)

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転生と言う「拉致」
日時: 2020/02/16 23:52
名前: 赤坂

――――「異世界」を知っているか。


‥‥現代の日本では年間五千人の若い男女が、何らかの事故事件、又は他殺に限らず自殺する等して「異世界」とやらに「転生――否「拉致」されている。
勿論、皆が知る転生は「拉致」なんかではなくある一種の「運命」だと感じるだろう。
が、年間五千人もの一般市民を、しかも未来ある若者をそう易々を殺され、その身体又は意識を異世界に連れて行かれると大迷惑だ。‥‥しかも少子化の日本で。
最早、少子化の原因はこれなんじゃないかとも言えそうだ。

この「転生」と称した「拉致」はその現象に至るまでに大きな特徴がある。

「転生する過程に絶命する」
これは完全に意図的に起こっていると言えるだろう。何故ならば、この現象は実に計画性を有しているからだ。
もし、「不慮の事故」や「たまたま事件に遭遇」ならば悔やむしかないが、そこの第三者の君!見ているだろ‥‥向こうで説明受けてる所!
その内容も実に、実に恣意的だ。いや、これは向こうの事情かも知れないが、まずは内容の例を見て行こう。

例「実は‥‥君の力がいるんだ!この世界を助けてほしい!‥‥だから君をここに連れて来たッッ!」

はいこれ。完全に「元から君を殺す気満々でした。」と自白しているだろ?尚、「連れて来た」は「殺す・拉致する」と捉えてもらっても構わない。過程が過程だからだ。
よって、計画性は認められ、ついでに理由も自分勝手だったと言うわけだ……



―――――俺もその被害者の一人だ。                     クソが。

――――――――――――――――――――――――

登場人物
(序章)>>1

・津々良 啓二(35)
警視庁刑事部に所属している男性。そして本作の主人公。
いつも何処か抜けているが、いざという時は頼りになる。

・早稲場 國江(25)
津々良の後輩。津々良の事を慕っている女性。
いつも冷静で、津々良の支えとなっている。

・皆 芳香(17)
序章における捜索対象。女子高生。
少し雰囲気が暗く、不思議な女子。津々良に大きく関わる事になる。

(一章)>>2-8

・マルーン・ハンス(21)
一章1節で登場する馬車を操縦する御者。第一異世界民。
ロズポンド王国近衛師団の騎兵隊の馬を操り馬車を走らす。
とても明るく元気な若者だ。

・ミナリア殿下(17)
一章2節で登場するロズポンド王国の殿下。苗字はコンタイン。
性格は気弱いがとても親切な女性だ。
作中で主人公とハンスに大きく関わる。

・セントルファー国王陛下(64)
一章3節で登場するロズポンド王国の第57代国王陛下。
とても温和な性格でジョークを飛ばす。

・セナ・アンジェリカ(22)
セントルファー国王陛下の宮殿で働く召使い。
謙虚な人柄で、可愛らしい。

・グロリア・ルントー(24)
同じく宮殿で働く召使い。
津々良に対し冷たいが、作中では面倒を見る事になる。

・フローレス・フォンタイン(72)
宮殿で働く召使いの中では最年長。
常に冷静で、役職はメイド長。眼鏡を掛けている。

・エリカ・フォンタイン(13)
フォンタインの孫。宮殿で最年少の召使いとして働く。
作中には書かれないかも知れないが、両親を戦災で亡くしている。

(二章)

・コリウヌ・ファラヌイス(??)
異世界の五大賢者の一人。訳あってか堕賢者なるものに変わった。
作中では強力な腐敗魔法を見せつける。

・ウィスタネル・レオナード(76)
ロズポンド王国の首相。もうすっかりお爺さんだが頭はキレる方。
作中ではソビエティアに対し、髪の無い頭を抱える事になる。蒼白顔。

・フォステン・コンティ(72)
ロズポンド王国の外務大臣。高身長に眼鏡を掛けた男。
首相の元に働く補佐役も務める。実はフローレスを幼馴染。

・司書さん(??)
セントルファー邸の地下図書館の管理人。
少し痩せこけた顔で不思議チックなお爺さんだ。魔法が使える。

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Re: 転生と言う「拉致」 ( No.11 )
日時: 2020/02/01 21:56
名前: 赤坂

二章3 堕賢者フォーレンセージの猛攻


同時に車外に出た二人は、周囲を見渡し、人混みの通りを進んだ。
俺は取り合えずグロリアの後ろを歩き、少しずつ離れる事にした。

「ここら一帯は全部人混みよ。離れないようにしなさい!」

「おう、分かった!」

とか言っときながら後で逃げるんだが。
しばらく歩いていると、例の分岐点に着いた。

「ツツラ!!いる?!」

「ああ!いるよ!」

その分岐では軍のトラックや、兵士が集まっており非常にうるさい。
チャンスだ。近くの近衛兵に紛れるとしよう。
俺は黒っぽい汚れた軍服の男集団に紛れた。もうグロリアの目にはつかないぜ‥‥

「この先か‥‥」

雑木林の入り口には検問所が設置されており、入れなくなっている。
こうなったら汚れ覚悟で林の中に入るほかない。

検問所から離れた所から入るとするか。
検問を避け、木々に沿いながら入れそうな場所を探す。

「えーい仕方ないッッ!突撃だ!」

突貫するとしよう。
枝のチクチクする木々に走りこむ。とても厚い木々で最早森林か。
走り抜けて施設が見えて来た時、

‥‥男たちの声と、沢山の銃声が鳴り響いた。
どうやら近衛兵が突入したようだ。

「隙を見てトラックを探し出さなくては‥‥」

大勢の敵兵が、味方との交戦に夢中になっている。このがら空きになるときがチャンスだ。
確かトラックのあった古民家は少し豪華な見た目だったな。
俺は家々の壁に沿いながら、周囲を警戒し進んだ。
足元の砂の音に耳を澄ませ、足を進めないといけない。

村中に銃声とうめき声が広がる。
目的地へ向かう途中に見た兵士は皆、死体だった。

小走りで家の間を走ろうとしたその時、足元から声がした。

「‥‥お前は‥味方か‥」

「ッ!?衛兵か!」

黒い軍服の男が寝そべっていた。肩と腹部から血を流している。
俺はその老兵を見、どうにか助けようとした。

「俺の事は良い‥それよりも気をつけろ‥‥敵兵の中に‥賢者が、いる‥」

「ま、待て!話は後で聞くから。まだ傷は浅いんだ。必ず助けるからな!」

「す、すまん‥‥」

「おう!‥‥すぐ隣の家に逃げ込むか。」

俺は中に敵がいるかも知れないと思い、銃を構えながら慎重にドアを開けた。
中に入ってみると、数人の兵士が腐り死んでいた。

「臭ッ‥いが仕方ない。」

その衛兵の脇に腕を通し、扉へ引っ張って行った。
床に寝かせると、大量の血が溢れてくる。

「今から止血してやるからな!」

「あ、ありがとう‥‥!」

ハンカチを患部に当て、必死に試みる。
直ぐにハンカチは赤く染まり、尚も溢れてくる。

「と、止まらない!‥‥」

「も、もう良いんだ。それよりも‥聞け!‥最期だ‥」

「くッ‥分かった。言ってくれよ」

「‥敵に‥堕賢者フォーレンセージがいる。」

堕賢者フォーレンセージ‥‥どんな奴なんだ。
荒い息遣いで彼は続けた。

「そして‥その姿は――――――



‥‥言いかけたその時、家の外で大きな爆発が起こった。
一瞬で火の海になり、俺たちの居場所も火を被った。


「―――ダメだ!‥ここもすぐ焼ける!」


俺は肩を貸し、ドアへ歩き出した。
恐らく、あのトラックの爆弾が爆発したか‥
外に出てみると焼け死んだ敵味方の兵士が倒れている。
まさに地獄絵図。
焼死体の山の奥には一人の男が立っている。
その姿は黒く、そして血に染まった軍服は吐き気を感じさせるほどだ。
だが、一目で分かる姿だ。あの衛兵が言わんとする者だ。
賢者だ。堕賢者フォーレンセージだ‥‥

「‥お前‥逃げろ!‥俺を‥‥この老いぼれを置いていけ!!‥」

俺の肩に掛かるその男はもがいた。
だが俺は助ける‥。俺に関わった人は死なせたくない。

「ダメだ。一緒に逃げ出すぞ。」

逃げ出そうとした瞬間、隣にいた男は腐っていた。
顔は老け、黒く染まり、一部白骨化していく。

「お、おい爺さん!‥‥あいつが‥あいつがやったのか?」

堕賢者フォーレンセージはこちらをまじまじと見つめ、やがて口角を上げた。
もう見つかっていた‥‥。俺も、俺もああなるのか?!

「抗ってやる。抗ってやる‥」

俺は腐ってしまった衛兵の体を置き、まだ残っている瞼を閉じた。
そして振り向き、拳銃を奴に向けた。

「賢者だが何だが知らないが。人殺しは警官として見過ごせねぇんだよ!今すぐ投降しろ!!」

その男は走り出し、助走をつけては跳ね、俺の目の前に着地した。
何て跳躍力だ?!

「ヒヒヒヒ‥‥」

顔を見上げ、俺の顔を見る。
その顔はまるでゾンビの様だ。あの衛兵と同じように。

「君ぃ‥。僕の死魔法が効かないのかねぇ?‥」

「何なんだお前!撃ち殺されてぇのか?!」

「へへへへぇ‥そうか。君、五大賢者の一人に守られてるねぇ。神の御加護って奴さぁ?」

「し、知らねぇよ!俺の家は仏教だ!神様なんて信じちゃいねぇ!!」


――――津々良!貴方はミナリアの加護を受けているのよ!

そうなのか?

――――奴の魔法は通用しない!だから早く逃げて!

この状況で!?


俺は銃口を奴の脳天に突き付けた。
だがその男は、怯えることもなく続けた。

「ッヒヒヒ‥。そんなおもちゃが通用するとでも?」

「神様の迷信より、科学技術が勝るんだよ!」

そう言い、俺は引き金を引いた。
確実に脳天を貫いた。だが‥

「痛くも痒くも無いんだなぁ」

脳天からは血が止まらないのに、奴は健在だ。
どういう事だ?賢者でも人間じゃないのか?!


皆!!やり直しは出来ないのか!?

――――無理!一定以上離れていると対象には使えないの!


「君‥その賢者はミナリアかねぇ?」

「ッ?!」

「図星かな?」

「知らん。てか名乗らない人間に何を聞かれても答えんぞ。」

そいつは「おっとこれは失敬」と少し驚いた顔で返した。

「では名乗ろうかぁ。‥私は世界第三賢者、腐敗を司る者!‥堕賢者<コリウヌ・ファラヌイス>であーる!!」

「‥じゃ!」

名前だけ聞いて、俺は全力疾走した。
死に物狂いで発狂しながら。
目先には近衛師団の衛兵キャンプがあり、そこに装甲車が停車している。

「よぉぉぉぉぉぉぉし!!!」

だが後ろからは奴が追いかけていると思うとちびりそうだ。
30代のおっさんが走るのだ。足はパンパンになりながら味方に向かって走る。

「さぁさぁ何処まで逃げられるかなぁ?」

コリウヌは先程に見せた跳躍力で俺を追いかける。
気を抜くとすぐに捕まりそうだ。

「おぉぉぉぉぉいぃぃぃぃ!!!」

「なんだなんだ?」

数人の衛兵がこちらを見る。
そして俺の奥にいる堕賢者に気づき、急いで銃を構えた。

つつゥゥッ!!、構えーーーーッッ!!」

「構えーーーーッッ!!」

「‥撃てェェェェッッ!!!」

数発のライフルの射撃音が聞こえてくる。
その内の一発が頬をかすめた。

「うおッッ!?危ねぇなあ!?」

残りの弾は全てコリウヌに当たったんだろうが、恐らく効かないだろう。
衛兵達は弾の装填を始めた。

「射撃用ーーーー意!!!」

「まぁぁぁぁぁてぇぇぇぇぇ!!!」

もうすぐで彼らの元だ。
足を止めるな、足を止めるな!

「ヒヒヒ‥腐敗化コラプションッ‥‥」

あと少しで味方に合流できるその時、彼らの体は腐り始めた。
しかも鉄は酸化し、車両も動かなそうだ。

「ッハァァァァ!?」

「ヒヒヒヒ‥諦めた方がいい‥」

戦うしかない‥
ホルスターから銃を取り出し、弾の限りに撃ち放した。

「オラァァァァッッッ!!」

「‥‥で、どうしたのかね?そんな物は効かぬと言ったろう」

完全に腰が抜けてしまった。
もう立てない。

「あ、あはは‥‥そうか‥」

「じゃあそろそろお遊戯もお仕舞にしようかね。さぁ‥」

ダメだ。今度ばかりは死ぬッッ‥
コリウヌはその軍服から拳銃を抜き、俺に構える。

「貴様に魔法を使う価値はあらぬ。死ね」

そう告げた刹那―――――


「―――――硬直波リジッドウェーブッッ!!」


「ッ!?誰だ!」

後ろから若い女の声が聞こえた。
その声の主は‥‥

「お前‥‥ミナリア!?」

「っさぁ!早く逃げて!」

何とミナリア殿下と、大勢の衛兵が駆けつけて来たのだ。
だがコリウヌに殺されてしまう‥‥

「こ、コリウヌは!?」

コリウヌはその体が硬直している。
どうやらしばらくは動かなそうだ。

「ほら早くっ、立ってよ!!」

「こ、腰が抜けた‥。引っ張ってくれ‥」

そう言い、ミナリアに手を差し出した。
その手を取ってもらい、何とか走り出した。

「この先に車があるわ!‥さぁ早く乗って!」

ミナリアにせかされ、車に乗ると早速怒号が聞こえて来た。
車が走り出すと、

「何でグロリアから離れたのッ!?ダメって言ったじゃない!あと少し遅れていたら死んでいたかもしれないんだよ!?」

「‥ぐうの音も出ません。」

と、問い詰められた。
ミナリアの目はこちらをじっと見つめる。

「あの時言ったよね?絶対グロリアから離れちゃダメって!!とっっても心配したんだから!!」

「そ、そうだよなぁ‥‥」

「とにかく!‥生きていたからよかったけど、もうこんな無茶したら行けません!」

「そ、それにしてもあの堕賢者は‥」

「それについてはもう大丈夫よ。衛兵部隊と共に結界を張ったの。もう出られないわ。」

俺は大きくため息を吐き、「良かった‥‥」と声を漏らした。
全身から力が抜け、座席に寄り掛かる。

「でーもー!!後でみっちりお説教です!!」

「あ、‥‥へぇ~‥」

ミナリアのお叱りも余所に、俺は車内で爆睡した‥‥。

Re: 転生と言う「拉致」 ( No.12 )
日時: 2020/02/06 23:47
名前: 赤坂


二章4 エリカとお勉強と。


――――――そろそろ起きないかなぁ

‥‥誰かの猫撫で声が聞こえる。
日曜のダラダラしたくなる朝の様な感覚‥‥

――――――早く起きないかなぁ‥

もう少し寝たい‥
まだ起きないぞ俺は。

――――――早く起きてッッッ!!!

と言う声と同時に体中が揺れる感覚がする!
も、もう起きるしかないッ!!

「‥はぁぁぁあああいッッ!!!起きますッ!」

「もう、やっと起きた‥」

横には少し怒りっぽいのミナリアがいた。
ここは寝室か。どうやってここに‥‥

「ここにはグロリアが肩を貸して、連れてきてくれたの。感謝しないとね~」

「はははぁ‥。そりゃありがたいことだ。」

「しかも宮殿に戻ってくる度、医者に掛かってる!今回は肩の銃弾の取り出し。」

「かなり酷かったんだよ?右肩の内出血。」

朝からグロテスクな事聞かされたな。

「そうか。かなり無理をしたな。すまんかった。」

「うん。かなり無理をしたね。」

その後、ドアから国王陛下と皆、グロリアが入って来た。
国王陛下は相変わらずおおらかで、だが、グロリアはご機嫌が悪い様子だ。

「やぁツツラ君、やっと起きたかい?昨晩は車の中でおねんねだったねぇ?」

「本当にそうよ。全く呑気ね!」

「すまなかったなぁ。」

皆はゆっくりこちらに歩いて来た。
そして‥

「バッッッッッッカじゃないの!?」

と勢いよく頬をぶった。
痛ぇなコノヤロ。

「あいた―‥ひでぇわ芳香さん、病人をぶつなんて~」

「ホントはもっとぶってやりたい!!‥何であんな無茶したの!!」

「そりゃあ‥ねぇ?俺の座右の銘があるんだよこれが。」

国王陛下の興味に触ったようだ。

「ほう、それはどんな?」

「昔の偉人の言葉から持ってきた考えだ。俺の祖国の考えで、<かくすれば かくなるものと 知りながら やむにやまれぬ 大和魂>ってのがある。」

「それは誰の言葉で、やまと‥だましい?とは何だね?」

「この言葉は<吉田松陰>と言う偉人の言葉。そんで<大和魂>ってのはだな‥あ~。言うなれば我ら日本人の心って奴だ。」

それを聞き、グロリアが問いかけた。
「二ホン人って何よ?」そういや、この世界線では世界地図イベントはやってないのか。

「日本人。恐らくここでは<ニッポニア>の事だろう。俺達はニッポニアの事を<日本>と言うんだ。」

「ふーん。そうなのね。」

「で、この言葉にはどういった意味があるんだい?」

「この言葉には、<こうすればこうなるって分かっているが、それでもせざるを得ないのが日本人の心だ>と言う意味になる。」

周囲には全く意味が分からない‥‥みたいな空気が流れている。
独特の日本の感性は、流石に難しかったか‥

「ま、まぁ何か分かるんだなツツラ君!! さぁ、朝ご飯にしようか!」

「その優しさが心に刺さるッッ‥‥!」

俺はいつの間にか着ていた寝巻きから、右肩の銃傷が縫われたスーツに着替えた。
その後、国王陛下、ミナリア、皆と一緒に一階の食堂に向かった。
既に配膳された料理に口をつける。

「美味い美味い‥‥。国王陛下、そういや聞きたい事があるんだ。」

「ん?何だい?」

「あの時、確か<コリウヌ・なんとかかんとか>って奴が‥」

下の名前が出てこない為、取り合えずなんとかかんとかで‥
国王陛下は苦笑交じりで答えた。

「<なんとかかんとか>って言う人物はいないねぇ‥。けど<コリウヌ・ファラヌイス>なら知っているよ。」

「そう、それ。そいつがえ~っと、<世界第三賢者>とか<五大賢者>とか‥」

俺の言葉を聞いたミナリアが反応した。

「五大賢者、何で知ってるの?‥まさか‥」

「そいつ、ミナリア殿下の事も知ってて、何か<神の御加護>とか何んとか」

国王陛下が俺に話し出した。

「そうだよ。ミナリアは五大賢者の一人で、世界第五賢者‥」

「生を司る者、よ。私は彼と違って、生物の傷、精神を癒す能力を持っているの。」

「俺の傷もそれでか。」

「そうよ。」

だが、そう何者も賢者になれる物なのか?
それにコリウヌは明らかに人を攻撃できる魔法を‥

「因みに、この国では習得できる魔法が非殺傷な物だけなんだ。だから娘も命に関わる魔法は使えないんだよ。」

「そうなのか。だけどコリウヌは使ってた?」

「あの男はソビエティア軍の従軍賢者さ。これは賢者の御主人マスター―――<神>との契約に違反する。」

「どういう事だ?」

「世界には五大賢者と言われるように五人の賢者がいる。生まれながら特異な能力を持った人間がそうさ。娘も生まれながらの能力者セージ‥」

生まれつき‥‥先天性な能力なのか。
赤ん坊の頃から魔法が?

「その能力は<神>に与えられたと言うのが教えなんだよ。与えられる代わりに幾つかの契約がかかる。これは世界的な法として扱われる。」

「つまり国際法か。」

「そうだ。その法律は神との契約で、これを破った賢者を堕天使フォーレンエンジェルならぬ、堕賢者フォーレンセージなんだよ。」

「大まかな内容はえー‥‥」

国王陛下は思い出そうとしている時、痺れを切らしたミナリアが間に入って説明した。

「一つ、公共の福祉の為に使う事。二つ、能力を使い、傲慢に振舞わない事。三つ、如何なる組織、団体の隷下れいかとなり能力を使わぬ事。四つ、不要な殺傷に能力を使わない事。五つ、能力を権力としない事。」

「その五つか。で、奴は三つ目と四つ目に反したのか。」

「そう。他にも色々してそうだけどね。」

益々興味がわいてくる。世界観、魔法、五大賢者―――――
元居た世界とは常識も違う。

「もっと知りたくなってきた。さっさと飯を終えて調べたいことがある。資料館みたいな所、無いか?」

「あるとも。但し、仕事を終えてからだね。この数日は執事の仕事したかな?」

「あ、あはははは‥」

やっべぇ‥ここに来て、ここでした仕事ってなにもねぇ‥!!

――――バーカ。これからはここで働くんだよ?

お前は働かねぇじゃないか。

――――そうだよ?でも津々良のそばにいなきゃダメだから楽じゃないし~


「でもケイジ、基本は私の側にいるだけでしょ?」

「おう。」

「じゃあご飯食べた後に私、勉強ついでに宮殿内の資料図書館に行くからそこで見ましょ。」

「よし、行こう。」

ミナリアはせっせと食べ終わり、一緒に食器を厨房に持って行った。
内心ウキウキしながら、ミナリアと行動を共にした。

「さ、行きましょ。」

「おし。てか、何処に資料図書館なんてあるんだよ?」

「地下にあるの。ついて来て」

ミナリアの言う通りについていくと、玄関前の大階段の後ろに地下階段があった。
秘密基地かな?

石造りの、まるで中世の城のような階段を下ると大きな扉が見えて来た。
今までこんな、無駄に、豪勢な扉の資料室があったか‥

「‥あら?もう開いてる‥?」

「何だよ。いつもは閉まってるのか?」

「ええ、そうよ。シェルターも兼ねているしね。施錠はするの」

そのまま入ってみると中には司書と思しき爺さんと、高い所の本を取ろうとしているエリカがいた。
爺さんはそこらの古めな本屋にいるような司書の格好だ。

「ほう。殿下様。本日はどのような本をお探しで?」

「ええ、私は非殺傷魔導書。横にいる専属執事に世界史の本を。」

「ちょ、ちょっと待ってくれ。俺は字が読めないんだ。」

「あちゃー‥そうだったわ。」

本を探しに来たが、字が読めないのに本とは意味が無い。
いちいち翻訳してもらうのはちょっと‥

「取り合えず、世界史やその他歴史の類の本はエリカさんのいる所に配列しております。」

「あ、ありがとう‥えーと‥‥」

「私の事は<司書>とお呼びください。執事様。」

「は、はぁ。ありがとう司書さん。」

俺は未だ奮闘しているエリカの所に行き、目当ての本を探した。

「うーんっ!!うーん!!」

「‥おうエリカちゃん。どうしたんだ?」

「あ、ツツラさん!実はあそこにある本を‥」

と指を指されたが棚が高く、指した先が全く分からない。
だが必死に伝えようとしている所は眼福眼福‥

「そ、そうか。ちょっと分からないから持ち上げてやろう。」

「ッ!お願いします!!」

俺はエリカの脇を抱え、本人に取ってもらう事にした。

「ちょ、ちょっとこしょばいです//」

「ならはやくとれー」

とのろけたやり取りを交わし、エリカは何かを取った。
その後、降ろすように言った。

「取ったか?」

「はい!取れました!」

降ろした後、どんな本を取ったのか聞いてみた。
エリカは喜んで見せて来た。

「‥?すまん、読めねぇ」

「そそそ、そうなんですか!?」

「そんな驚くなよ‥。俺、日本人なんだぞ?」

「ニッポニアから来たんでしたね。これは魔導史の本です!」

「まどう?魔術師になりたいのか?」

「いえ、ミナリア様見たいになりたいなぁって‥」

いや、結局は魔術使いたいんじゃねぇか。

「それはまぁ良いんだが。大まかな世界史の解説書とか無いか?」

「あ、あります!取ってきますねっ!」

そう言い、少し離れた本棚に向かい、数冊の本を持ってきた。
小走りで戻ってくる。

「ツツラさん!幾つか持ってきました!‥あそこの読書スペースで読みましょう!」

と、長いテーブルと沢山の椅子が並べられている場所を指した。
俺達は適当な椅子に座り、その取って来た本を見てみた。

「全部で、三冊取ってきました。では、お読みしますね!!」

「はい、お願いします。」

「はい、一冊目はこの赤い本!<魔法と世界の歴史>って言う本です。」

エリカは適当なページを開き、俺の代わりに字を読んでくれた。
そのページには年表見たいな物が書かれていた。

「近代史の大きな出来事を、簡単に要約して読み上げますね! 1875年、賢者独立戦争からリギリオ連合帝国から自由都市合衆国が独立‥」

と、キリがないので興味がある奴だけを聞いた。

「そうですね。どんな事に興味があるんですか?」

「ああ、世界の賢者とかかなぁ。」

「世界の賢者ですね!それだったら‥このページですね!」

そのページには見開きの世界地図と、各地の賢者に関するであろう情報が記載されていた。
エリカはその内容を読み上げた。

「世界には<五大賢者>と呼ばれる、魔法を扱う者の中で突飛とっぴした能力を持つ者が五人存在する。合衆国文化圏に第一賢者<デトロ家>。砂漠ディエザート文化圏に第二賢者<アルベ家>。凍土文化圏に第三賢者<ファラヌイス家>。極東文化圏に第四賢者<イザナ家>。王侯文化圏に第五賢者<コンタイン家>。‥がありますね。」

世界地図にはその<文化圏>が記されていた。
合衆国文化圏は現実世界の南北米大陸のような地域に。砂漠ディエザート文化圏はアフリカ大陸。凍土文化圏はシベリアと類似した地域。極東文化圏はニッポニアから東南アジアみたいな地域に。そして王侯文化圏はここ。

「そうなのか。各々の能力の特徴ってあるのか?」

「少しお持ちを‥‥。<デトロ家>は近代工業及び蒸気魔法を扱い、合衆国文化圏の市民の生活を支えている。<アルベ家>は主に自然魔法を扱う。それにより砂漠文化圏の安定を図っている。<ファラヌイス家>は攻撃魔法や腐敗魔法を扱う。凍土圏に於ける動物の生息に関与している。<イザナ家>はその地域の人間の極楽を司る。その為、精神魔法や環境魔法も扱う。<コンタイン家>は人間の生を操り、その能力は医療の役割を持つ。」

「どうやら<イザナ家>の地域は多神教で、その賢者となる人の出身地域で考えは変わるようですよ。」

「多神教は日本と一緒か‥。その家名って元からなのか?だとすればセントルファーもコンタイン?」

「いえ、賢者としての才能が発覚した後、神からの<神名>として授かります。だから、国王陛下は苗字が異なります。」

や、ややこしいな‥‥
いずれ字の勉強もしなくてはならない。
やる事は山積みだ。

「色々あるんだな。俺からすればややこしい事だなぁ。」

「そうですね~。そういえばツツラさんは、この国の字が読めないんですよね?‥でしたら私が毎晩お付き添いしましょうか?」

「字が読めればエリカちゃんに迷惑は掛からないしなぁ。是非頼みたいぞ。」

「分かりました!お任せください!!」

という事で、これからはロズポンドの言語をエリカに教えてもらうか。
こうなると色々な事があって楽しみだな。流石、第二の人生か。

Re: 転生と言う「拉致」 ( No.13 )
日時: 2020/02/14 23:04
名前: 赤坂

二章5 戦争の行く末


王都 中央区 首相官邸

凍えるような深夜。
津々良や皆が宮殿での日常を送っている中、ソビエティアとロズポンドの戦争は続いている。‥‥いや、戦争と言えど睨み合いが続いている状態だ。
そんな中、ウィスタネル首相率いる内閣は、水面下の外交を続けていた。
今日こんにちも首相官邸の執務室では、葉巻を吹かし眉間にしわを寄せている首相と、共に葉巻でなく煙草を吸って黒電話を見つめるフォステン外務大臣がいた。
何んとも重い空気だ。

「‥首相。最早、相手方はこちらの人質戦術には乗りませんな‥」

「ああ、完全に遊ばれておる。その上、こちらから手を出させようとも考えている。」

「ええ。恐らく、我が国の国際社会からの批判を狙っているのでしょう。その手には乗らぬように気を付けてくださいよ。」

「ええい、そんなの分かっとるわい‥」

昨日の交渉の対応はガサツな物だった。
電話は国家指導者たる書記長ではなく、ただの一人の外交官。
講和交渉の条件はスタインフォッド森林の完全な領有の認可。

20世紀 春 某日

「‥‥それだけは無理だ‥」

<ですが首相、書記長並びに連合政府はそれを最低条件としております。この割譲の要求が呑めないのであれば、交渉期限日には行動を再開いたします。>

「‥だがな君、こちらには貴国の従軍賢者<コリウヌ・ファラヌイス>が捕虜として確保されている。この人質を解放し、そちらに送還するには条件が重い。」

<‥少々お待ちを。‥‥ええ。連合政府としての結論としましては構いません。>

ふざけるな‥、とウィスタネルは下唇を噛んだ。とんだ舐め腐った対応だ。
ここでの譲歩は許されないが、かたくなに反発しているとその反動が恐れられる。

「(‥難しい所だ。)‥貴官の言う事はよーく分かった。今日はもう遅い、また明日に交渉を取ろうじゃないか。」

<‥分かりました。では失礼します。>

と言い、通話は切れた。
半ば勢いで立ち上がったウィスタネルは、自分の椅子に脱力したように腰掛け、数の少ない葉巻に火を灯した。

―――――――――――――――――

フォステンは、もう髪の無い頭を掻き、悩み続けた。
その時、一つの考えが浮かんだ。
ハッとした表情で

「‥多方面に交渉を取りましょう。我が国、我が一政府のみが扱う問題ではないのですよ。」

「どういう事だ、フォステン。」

「彼の国の恐怖・圧力は王侯文化圏のみならず極東文化圏にまで及んでおります。そこで極東諸国に連絡をし、対ソ包囲網を形成すると言うのは妙案でございましょう?」

ウィスタネルの表情は見る見るうちに精気に満ち、これしかないと確信した。
この無根拠ともとれる確信は、彼の経験から来たものだろう。

「な、ならば‥」

「ニッポニアに同盟を求めましょう。」

「今すぐにでも行こう。航空機は?」

「いえ、ここは海路で行きましょう。我が国周辺の制空権はどっこいどっこいであります。」

「すぐに王立海軍に連絡を取れ!そして宮殿への車も手配しろ!‥」


王都 東区 セントルファー邸

早朝。
宮殿では毎日のように、ミナリアはお勉強、従者達は日常の庶務をこなしながら一日を送っていた。
もちろん、俺は専属執事として勉強中のミナリアの隣にいた。

「‥勉強熱心なこった。」

「ええ、勉強は大事。こういう経験は豊かな生活の証拠よ?」

「勉強が豊かな生活の象徴なんて、俺の国じゃあ考えられないな。」

「ニッポニアは豊かな国なのね。」

「‥おう。そういや最近、皆を見ないけど‥」

「ヨシカちゃんの事?」

「そうだよ。あいつ遊び歩てんじゃねぇか?」

「ふ~ん」と、ミナリアはペンを指で回しながら本を眺めていた。
その時、突然部屋のドアがノックされた。

「ん?入れていいのか?」

「良いよ。どうぞ~!」

と開いた扉の先から、フローレスが入って来た。

「失礼します。ミナリア様。」

「どうしたの、フローレス?」

フローレスは、「首相のウィスタネル様からでございます。」と言い、要件を話し出した。

「実はウィスタネル首相が来られておりまして、セントルファー陛下に謁見しております。是非、ご出席を。」

「俺も行くのか?」

「‥ミナリア様の要望でございましたら。」

俺はミナリアの方を向き、その返答を確認した。
ミナリアは少々不安そうにしたが、軽く頷いた。

「‥殿下の仰せのままに。」

そしてミナリアには「ぜっっっっったい変なコトしないように!!」と小声で釘を刺された。
部屋に出る際、フローレスに執事服の襟を直された後に歩き出した。

「どんな奴なんだ?‥」

「う~ん、就任式で見た所、お爺さん。」

「‥‥」

フローレスの後を歩いていると、謁見室と思しき部屋のドアについた。
ドアの両隣には小銃を持った軍服‥‥って、あの軍服は陸軍の物か。
全く気分が悪い。

「着きました。 ミナリア様とその専属執事です。お開けなさい。」

「はッ!」

片方の兵士がノックした後、扉が開けられた。
豪華な内装の部屋には、セントルファー国王陛下とウィスタネル首相と考えられる男が椅子に腰かけている。

「‥ああ首相。これが私の娘だよ。ミナリア、ミナリア・コンタイン。」

「そうでありますか、はぁ。全くお美しい方でありますなぁ。」

ミナリアは少し戸惑いつつも、軽くお辞儀をし答えた。
‥この首相は見覚えがあるな。

「(‥‥アッ!!前の世界でリムジンに乗っていた政府高官か!)」

――――よく覚えてるねぇ~

お前‥‥何で聞こえて。
じゃなくてどこ行ったんだよ?

――――まぁまぁ


「‥‥ぇねぇ!ケイジ?」

「――あぅ?どうしたんだ。」

「どうしたもこうしたもボーっとしてたじゃない。大丈夫?」

目の前には国王陛下の隣に座るミナリアと、起立して俺に握手を求めようと手を差し出している首相がいた。

「ッあ!‥どうも。」

「どうもどうも。専属執事兼護衛官の方であるとお聞きしております。どうやらミナリア様の命の恩人だと?」

「え、ええ。そうだ‥です。この腰の拳銃で暴漢を一名‥」

ウィスタネルは頷き、自分の椅子に戻った。
俺はミナリアの隣に立ち、その話を聞く事にした。

「‥では陛下、話を戻しましょう。‥現在、我々内閣は陛下の議会にて、挙国一致の体制を構築する旨を陛下の議会に提案するつもりです。」

「挙国一致の体制?‥」

「ええ。現在の我が国は遺憾ながら、彼のソビエティアに支配されかねません。この状態においては与野党などとは言っておられません。今こそ国内代表の知識を集結させる時であります。」

「もっと具体的な案は無いのかい?」

国王陛下は少し顔をしかめ、聞き返した。

「あります。本日の午前に考えた話なのですがね。‥極東諸国に当てがあります。」

「極東文化圏か‥?」

「ええ。大ニッポニア帝國であります。‥そちらの護衛官の方のお国でしょう?」

厳密に言うと違うだろうが、「ええ、まぁ。」
愛想笑いをしていった。

「だったら帰国ですな。んん?」

「そうですね。」

「‥そこで陛下、ニッポニア国に同盟を求め、ソビエティアへの両方面からの圧力で交渉に臨むのです。」

「‥確かにニッポニアは現在、極東文化圏唯一の列強諸国であるからな‥‥良いだろう。それで我々は?」

「是非、我々と共に外交へ‥」

マジでッ!?俺も行けるのかな!?
正直、一度行ってみたかった。俺のいた日本とは何が違う‥って言うか時代が違うだろうが楽しみだぁ。

「娘も一緒にかい?」

「ミナリア様の共に来て頂きたい‥」

「私は行ってみたいです。‥執事は‥」

俺の行きたい気持ちが伝わったのだろうか。
どうやら俺も連れて行くよう、説得するようだ。

「ミナリア様が連れて行きたいのであれば。」

「よっしゃァァァ!!‥‥‥」

つい声に出してしまった。
やっべクソ恥ずかしい。

「も、もう!!ケイジッ!!」

そんな一騒ぎが過ぎ去った後、首相のすぐにでもと言う事で極東へ向かう事に。
どうやらすでに宮殿には、軍の車両が停止しているらしい。
首相と俺達は玄関に向かった。

「現在、制空権は敵方に占拠されている恐れがあります。ですので海軍艦艇で向かいます。」

「分かった。港へ?」

「ええ。東区イースタンの果ての補給港です。」

俺達の後ろにはグロリアとセナが立っていた。
国王陛下は二人に、この屋敷の管理を頼んだ。

「分かりました!!」

セナは元気よく返し、俺達を見送った。

「行ってらっしゃいませ、国王陛下。」

グロリアは淡々と言葉を発し、頭を下げた。
ロータリーには陸軍の物だろう。沢山の車両・トラックが停車している。

国王陛下とミナリアは黒塗りの公用車に、俺は軍の自動車に誘導された。
内装を見てみると‥

「いつ見ても古くせぇなぁ。」

車の後部座席に腰を下ろすと、隣の兵士から声を掛けられた。

「やぁ津々良!久しぶり!!」

「‥何で名前‥」

――――忘れるなんてひどいなぁ

「‥!?皆!」

「そうだよ。何してたんだよ~」

「それはこっちのセリフだ!突然姿を消して何を‥」

「これを見て。」

手を差し出してきた。
その手の中には、銃弾が装填されたベレッタのマガジンが。

「ッ、何でお前が?」

「いやいや、あの時の戦いから消耗してたでしょ?」

「で、でもどうやって‥?」

「陸軍のおじさん達に<イロイロ>して作ってもらった。」

「色々って‥お前まだ子供だろうが。」

俺の叱責を余所に窓からの景色を眺めている。
やがて車列は進み出し、俺のいる車も前へ。
そのまま街へ降りると、市民の目線が向けられた。物々しい雰囲気だ。

走る事、約二時間‥
段々と海が見えて来た。昼に射す陽が波に反射し、キラキラと輝いている。

「わぁ~。ツツラ!!海だよ!」

「おぉ~ってそんなもん横浜で見れるだろうが。」

海上には数隻の船や軍艦が走っている。
その光景は中々見られない物だろう。

「(‥こんな呑気なことやってても戦時下なんだよなぁ‥。この前、エリカが言っていたようにソビエティアは強い国なんだろうか‥)」

「そろそろ着きますよツツラさん。」

車のドライバーに声を掛けられたすぐ後、見慣れない場所に到着した。
周辺は壁に囲まれており、ゲートの前には二人の兵士が小銃を持ち立っている。
険しい顔だ。

「ささ、降りましょう。」

「‥‥ここは基地か?」

ドアを開け、外に出る。
ミナリアのいる車両に向かい、彼女を待つ。
少し経って出て来た。

「おうミナリア。お疲れさん。」

「ああケイジ、車酔いとかしなかった?大丈夫?」

「大丈夫だ、大丈夫。‥‥てかここ何処なんだよ。」

「ここは東区第十二補給基地よ。民間船舶から海軍のお船までがここで補給するの。」

はぁ~。デカい基地だ。海自の横須賀基地並みじゃねぇか??
ゲートから内部に入ると、目の前には大きな海。直ぐ近くに波止場がある。
波止場には灰色の駆逐艦と思われる中型艦艇や、白い塗装がなされている戦艦までもが停泊している。

「海自の護衛艦見たいな奴とは全然違うなぁ。」

「何をボーっとしてるの。行くよ~」

ミナリアに怒られ、そのまま歩き出した。
俺達は何処に行くのか?

「さぁさぁ陛下。早速海軍の艦艇で向かいますぞ。長期遠征用の準備は出来ております故。」

「にしてもデカい船だねぇ首相。これに乗るのかい?」

国王陛下たちが見ているのは先程の白い戦艦。
まさか‥これに乗れるのか!?

「そうですよ陛下。本艦は海軍の最新の艦艇です。名前は‥」

「<ヴォイトーク>であります。」

一人の水兵が答えた。

「<ヴォイトーク>と言えば海軍の初代司令官かね?」

「そうであります。陛下。」

「良い名前だ。‥それでもう乗るのかい?首相」

「そうですな、乗りましょう。」

数人の水兵に案内され、国王陛下達は<ヴォイトーク>に掛かった乗船用ラッタルに登り、俺達も続いた。
白い船体の横を登った先、広い甲板と各地に設置されている機銃や、三連装の巨大な主砲が目に入る。
そのまま中央部へ歩いて行くと、これもまた大きな艦橋と煙突が姿を現した。

「すげぇぇぇ!!こんなん現代じゃ見れないぞ!!」

艦内に入り、タラップを下ると艦内宮殿とも言われる、貴族専用室に案内された。
国王陛下とミナリア、専属執事兼護衛官である俺もここで過ごすらしい。

「では皆様、ここでお過ごしください。では。」

と、その水兵は去って行った。
部屋の中はミナリアの自室と大差なく、過ごしやすいものだろう。

「ねぇケイジ、船酔いするタイプ?」

「‥うーん、分からん。」

三半規管は強い方だ。多分酔わないだろうが‥‥

荷物を整理していると、やがて艦は出港した。
船体の窓から外を覗くと、数隻の曳航船えいこうせんが<ヴォイトーク>を引っ張っている。
じきに岸壁から離され、湾内を抜けて行った。

第二の祖国ニッポニア。どんな国なのだろうか‥

Re: 転生と言う「拉致」 ( No.14 )
日時: 2020/02/14 01:07
名前: 赤坂

二章 番外編 艦内のお勉強


人生いつでも勉強勉強。
特にこの世界では小学校レベルの勉強をしなければならん。
何故なら‥‥字が読めないからだ。

ちょっと前にエリカには、語学の講師を頼んだが仕事の後だと眠くて仕方ない。
出港する前日に取り組んだ字の練習だが、まっっっったく覚えていない。
せめてニッポニアでは日本語であってほしい‥‥

「だがサボると痛い目見るんだよなぁ~」

いつも通り早起きした俺は狭い二段ベッドに横になり、グチグチと愚痴を言っていた。
ミナリアの部屋であることは確かだが、俺達は士官同様二段ベッドと言う事だ‥。

「――――ツツラさーん。お勉強の時間ですよ~」

俺が枕に伏せていると、幼い少女の声が聞こえて来た。
皆と一緒で幻聴か。

「‥‥面倒くさーい。もう眠ーい‥」

「‥幻聴ですよ~。起きて下さ~い。」

「そうかあ~幻聴かぁ~‥‥って、幻聴にしてはハッキリと?」

と思った次の瞬間、背中に激痛が走る。

「ウゴォォォォォッッ!?‥」

宮殿での激務に疲れた中年オヤジの腰は弱いのだ。
そのまま焦って、後ろを振り向くと‥

「ビックリしました? さ、艦内では宮殿ほどに忙しくないですよね?」

「お、おおおお前‥」

背中にまたがる少女はパジャマ姿のエリカ本人だった。
‥あれ?宮殿では大分ヤバいことに?

「‥おいおい、こっそり抜け出してきたのか?」

「‥チガイマスヨ。フローレスメイド長ニイッテマスヨ。」

「絶対違うだろー。って言っても今更帰れねぇか。ここは北海の真ん中‥」

「じゃ、お勉強しましょう!ここに机は?」

周囲をキョロキョロ見渡す。
室内の壁際に置かれている古びた勉強机が見つかったらしく、ベッドから軽く飛び出しその机をたたく。

「ちょっと汚いですねー‥雑巾持ってきますね~!!」

と、室外へ走って行った。

――――相変わらず元気だね~エリカちゃん。

そうだなぁって、見えるのか?
何処だ?

――――貴方の頭上だよ。

でも何で透明に‥?

――――ほらこの前言ったでしょ?マが強いと透明化できない。‥逆も然り。

そんな事も言ってたなぁ‥。ここは弱いのか?

――――そう。だから段々薄くなぁる。


と、ボーッとしていたらエリカが戻って来た。
メイドである以上、家事はテキパキとやっている。

「さ、座ってください!帳面と筆、本もありますので準備万端です。」

「お、おう。んじゃ失礼するか。」

木の椅子に腰かけると、帳面ノートが渡され適当に開いてみる。
余りに乱雑な字だ。夜更かしした中坊が5,6時間目になって、ウトウトしている時に書く字だ。

「こりゃ汚いですね‥」

「机がか?それとも俺の字か?!」

「こ、後者です。」

「だよなー。」

俺は手渡された万年筆を持ち、A,Ą,B,C,Ć,D,E‥‥Z,Ź,Żまで書いていく。
寝起きは脳が冴えるだけあってしっかり書ける。

「じゃ、例文を書いていきますよ~。」


<Tsutsura lubi psy.>


「さぁ読み上げて下さい!」

「(文字は違えど、発音だけは日本語なんだよなぁ)‥つ、つ、ら、は‥犬が好きだ?」

「はいそうですね。これは主格です。」

やべぇ、こんなんキリがねぇ‥
しばらく主格を用いた文を書いていく。

「‥なぁ?今、服装パジャマだけど。何処で寝てるんだ?」

「?下のベッドで寝てますよ?」

「あ、そうなのか。てか着替えないのか?」

「大丈夫です。さぁ続けて下さい。」

俺は口を紡ぎ、再度万年筆を動かした。
しばらくして朝食の時間になり、ミナリアに呼ばれた。

「ケイジ~。朝食のご飯が運ばれたよ~。」

朝食のご飯と言うパワーワードと共に食事を引き取った。
その意外と想像以上に豪勢な食事を口にしている間、エリカは俺の書いた文章を眺めていた。


<Minaria lubi koty.(ミナリアは猫が好きだ。)>

<Lubię Nipponia.(ニッポニアが好きだ。)>


「ふふ、勉強熱心ですねツツラさん。」


<Erica jest mała!(エリカはチビだぁーい!)>


「‥少し腹が立ちますね。」

その文章を横目に、エリカは俺の食事眺めていた。
毒をもってやりたいです。と思った。

「‥どうしたんだ?」

「何でもないです!!」

Re: 転生と言う「拉致」 ( No.15 )
日時: 2020/02/18 23:50
名前: 赤坂

二章6 極東の大帝國ニッポニア


駆逐艦20隻と航空母艦2隻から成る大艦隊の旗艦<ヴォイトーク>。
艦及び艦隊の司令部となる艦橋では、艦長以下数名の下士官で物々しい空気が流れていた。
国の重鎮‥国家元首の命を担っているのだ。

「‥艦長、無線室から通達です。」

「‥ん、何だね。」

艦内無線の受話器を取り、耳に当てた。

「こちら艦長。何があった。」

<‥艦長、定時連絡として王立海軍司令部に掛けているのですが、応答がありません。如何しましょう。>

「応答なしか‥。ここは遠すぎて戦艦一隻如きの無線は弱いのかもしれん。向こうに着いたら再度連絡を取るとしよう。」

<了解。>

現在、艦隊は便宜上現実世界の名称で呼ぶと、大西洋を抜け、東大西洋を経由し、インド洋を航行している。
王国から出港して月日が流れた。もう2ヶ月と15日が経つ。もう少しでニッポニアだ。


甲板では<ヴォイトーク>の日課である甲板掃除をしている。
俺も艦内生活で衰えた体を動かすため、水兵たちと掃除に加わった。
やる事は雑巾で一気に甲板を走るだけの事だったが‥‥

「‥あッッッ!腰が痛い!!」

「大丈夫かぁ?」

艦橋周辺の雑巾掛けだけで腰を痛めてしまった。
歳を感じる。

――――もうおじさんだねぇー

いや、体力はある方だ!!
こんなとこでギブは出来ん。

「ツツラさん、もうやめます?」

「まだだっ!!俺は続けるぞ!」


‥‥一時間後。
俺は艦内の医務室のベッドでうつ伏せていた。
一通り雑巾掛けが終わったと思って、急に立ち上がると腰がつるように
―――――ぎっくり腰だ。

「専属護衛官殿、完全にやっておりますな。」

「そ、そんなぁ‥‥。」

「取り敢えず湿布薬を塗っておきます~。」

と言い、灰色の粘土?を塗られた。
え、湿布って白い布じゃないのか?
‥背中がねちゃあってする。

「はい、しばらくするとスース―するからねー。じゃ、お大事に。」

「は、はぁ。」

俺は腰に手を当てながら、前かがみで退室した。
医務室を出ると、険しい顔の水兵が立っていた。

「ツツラ殿、急いで自室へお戻りください。」

「‥え?」

「先程、国籍不明の艦船の接近が確認されました。ミナリア様の元へ、さぁ。」

「わ、分かった分かった‥」


俺は水兵に助力されながら部屋に戻った。
戻るとすぐに放送が流れた。



<こちら艦長。つい先程、本艦隊から左前方に1隻の軽巡洋艦、7隻の駆逐艦を確認。周辺国籍であることが確認できない為、厳重に警戒し、本海域を突破せよ。‥対艦警戒。>



「‥大丈夫なのかな?」

ミナリアが国王陛下に心配そうに言う。

「大丈夫さ、我が国の海軍は世界有数のものだからねぇ」

俺は取り合えず自分の机に向かい、椅子に座っている。
すると背中からエリカが話しかけて来た。

「ツツラさ~ん。こんな事になるなら乗らなければよかったです‥‥」

「行けるって。だって戦艦だぞ?そう簡単に沈むわけないだろ。」

船の機関のパワーが上がり、航行速度が速くなる。
室内は大きく揺れ、固定されている机等がミシミシと音を立てる。

「ゆっ揺れるなぁ!」

海に浮かぶ城である戦艦<ヴォイトーク>と、小さな砦である駆逐隊は二手に分かれた。
数隻の駆逐艦と戦艦<ヴォイトーク>はそのまま航行し、駆逐隊は敵と思われる艦に接近する。
殴り合いに特化した戦艦であっても、国王陛下を乗せているとなると尻尾巻いて逃げるしかない。

‥‥艦橋横には双眼鏡を持った見張り員が監視しており、不明艦の動向を探っている。
同伴している航空母艦からはエンジンを鳴らし、観測機が飛び立っていく。

「もしかしたら内湾周辺国の艦隊が出しゃばって来たのかも知れん。もしくは赤軍の七七駐屯軍ソビエティアか?」

「七七駐屯軍‥‥海外領土の駐屯軍ですか‥」

「もうあと数日でニッポニアだ。絶対襲わせるな。」

「はい、艦長。」

味方の駆逐艦の一隻が汽笛を鳴らした。
退去するように警告しているのだ。
そして‥



「――――――不明艦から発砲煙!」



――と、一波乱あったが‥‥

俺、艦長、ミナリアと国王陛下は乗組員の操縦する艦載の内火艇に乗り、その艦に渡っている。
その艦の国籍はニッポニアだ。

―――――またの名を「大扶桑帝國」と言う。

俺達の乗る船は直に艦の左舷に接舷した。
そして上から覗き込む若い白い制服の水兵は‥‥

「どうも、ロズポンド王国国王陛下及びミナリア様。艦長が待っております。今、引き揚げますね。」

まさに日本人だ。
とても見慣れた顔だ。自然と涙が出てくる。

「ああ、ありがとう‥‥」

「勝本であります。」

「ああ、カツモトさん。」

艦に装備されている収容クレーンで引き揚げられた。
甲板には肩に階級章、白い軍帽の姿で、艦長と副長と思しき男性二人が敬礼しながら直立している。

「ようこそ、我が艦<飛揚ひよう>へ。」

先程撃った砲は空砲で、礼砲として射撃したとの事。
戦闘状態は避けられた。

「これはどうも、艦長さんかな?」

「はい。わたくしは<山本 五郎>と申します。こちらは副長の‥‥」

「<新井田 信介>であります!」

国王陛下は二人とも握手し、俺とミナリアは会釈を返した。
<ヴォイトーク>艦長も帽子を脱ぎ、艦長と副長に挨拶を交わした。
それが済むと早速艦内に案内された。そのまま帝國艦隊ニッポニアフリート王国艦隊ロズポンドフリートは合流し、帝國へ向かうとの事。

「‥‥ここ内湾にソビエティア連合加盟国の実効支配が及んでいるのです。そこで本国は極東文化圏の保護を名目に警備活動を。」

勝本艦長と国王陛下は艦内の部屋で会話している。
会話内容からしてニッポニアは強い国のようだ。


‥‥二週間が経った。
艦隊は厳重な警戒態勢で扶桑国の帝都港に入港した。
帝都の名称は「平卿府へいきょうふ」。現実の神奈川県から東京都全域を含めた府県だ。
甲板から下船用のラッタルを下ると、沢山の扶桑国の兵士が整列していた。
国王陛下の後に続いて、別々の専用の公用車に乗車する。

「街の風景は少しふる‥いやモダンだな。」

「ケイジはここの出身なんでしょ?」

「そうそう。懐かしい。」

車は人の賑わう大通りを走って行く。
見える景色はレンガ造りのビル、百貨店や木造の民家が並んでいる。
歩道にはいわゆる「モガ」と「モボ」が歩いている。歴史の授業で言うと日露戦争前の日本だろうか。

到着した先は外交官や来賓が寝泊まりする迎賓館だった。
福仲迎賓処ふくながげいひんしょ」と言うらしい。

「ここか。何か長崎のあれに似てるな。はうす‥」

「では執事様と来賓様は、別の部屋でございますのでどうぞ着いて来てください。」

散切り頭の車の運転手が誘導してくれる。
‥‥てか俺は別室なのか?専属執事兼護衛官なのに?

「じゃ、ケイジ。また後でね。艦内生活で疲れた分、しっかり休んでね?」

「は、はい‥」

館は三階まであり、一階には庶務に。二階からは従業員と言う名の武官や外交官が。
三階には来賓・国賓が寝泊まりする。

「(安全保障上の措置って事か‥)」

「執事様は二階の部屋でございます。どうぞこの部屋に。」

と教えられたのは窓際の部屋。
外の景色がよく見えるが‥窓際部署かぁ‥‥

「ではおくつろぎください。」

久しぶりの広いフッカフカのベッドに飛びついた。
複数人で寝る為なのか、二人以上は寝れる大きさだ。

「いやぁ~‥疲れたぞ‥」

艦内生活の疲れが溜まっているのか、そのままスーツで眠りについてしまった。


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