コメディ・ライト小説(新)

Re: 罪恋***好きでいてもいいですか?*** ( No.38 )
日時: 2018/03/30 00:40
名前: Aika

Episode29:自分が好きな人と自分を好きな人。





―――「あの……ゆう、 き?」




玲奈の戸惑う声にはっと、我にかえる。
そして、 抱き締めていた両手をさっと離して
玲奈から距離をとる。


「悪い…何してんだろな、俺は。今のは忘れて」


頬をかきながら、 そう言った。
ほんと…玲奈の気持ちに答えられないと言いながら
なんで抱き締めてるんだろ、 俺―――。


「別にいいよ。 無意識だったんでしょ、今の」


察しのいい玲奈は涼しい顔でそう言う。
俺は黙ってその言葉にうなずいた。
すると、 玲奈は優しい顔で微笑みながら言う。


「―――そんなに、好きになれる人がいるなら…さっさと告白すればいいのに」


そう言った表情は泣いてはいないが、切なげに見えた。
俺は、 下を向きながら言葉を返す。


「―――言えるわけねぇよ。俺の好きなやつ…教え子だし」


その言葉に。
玲奈は目を見開く。


「えっ…それって、裕樹が勤めてる高校の生徒に恋したってこと、 だよね?」
「まっ…そうなるわな」


やっぱり…引くよな。

生徒に本気で恋してる、 なんて。
自分でも教師失格じゃね?って思うし。



なんて、 自分で失笑してると。




「―――そっか、 それは辛い、よね」




横を向くと。
哀しそうな表情の玲奈がいた。


俺は、 顔を背けながら玲奈に向けて言う。



「―――なんで、お前がそんな哀しそうな顔してるわけ?」
「え?そんな顔、してた?あたし」
「まぁ…」
「よく見てるね、裕樹」

茶化すようにそう言ってくる玲奈を適当にあしらう。

「別にたまたま、視界に入っただけだし」
「まっ。いいけど」



玲奈の綺麗な黒髪が風でそっと揺れる。
髪を耳にかける玲奈の姿が綺麗で。
俺は、思わず見とれてしまった。



「―――哀しそうに見えたのはさ」



「え?」



「たぶん、 好きな人に想いを伝えることができない裕樹の気持ちに…共感したからかもしれない」




そう言って、 俺の瞳を真っ直ぐに見つめる玲奈。
俺は、そっと口を開いた。




「―――お前も…そういう恋愛、 したことあるわけ?」
「―――昔、 ね」




なんだか、含みのある玲奈の言い方に俺は少しだけ悶々とした。
一体…どんな恋愛をしてきたんだか俺には検討もつかないや。



「―――裕樹」
「ん?」




夜桜がそっと揺れて。




そのなかで、 玲奈はもう一度口にした。







「―――好きだよ」







その言葉に頷きたい、 そう思う心と。








桜をまだ、 忘れられない想いが交差していて―――。



俺は、 ぎゅっと自分の手を握りしめた。







「―――裕樹…あたしを、 好きになってよ」








俺の服の裾をつかんで。
すがり付くようにそう言ってくる玲奈を。





俺は、 強く抱き寄せた。







そして。








「―――じゃあ、 付き合う?」








無意識でそんな言葉を並べてしまった。






「―――うんっ!」






その言葉に答えるように。







玲奈も俺の背中に手を回して、 抱き締めた。







報われない想いを抱く人よりも。








いま、 目の前にいる…俺を好きだって言ってくれる人を大切にしよう―――。







その時の俺は、 そんなことを考えていた―――。