コメディ・ライト小説(新)

Re: 初恋は夕陽色。 ( No.22 )
日時: 2017/10/21 10:44
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c

※翔side。

第9話:去年のこと。



 俺が1年の時、つまり去年――。
 秋にあった文化祭の時だ。部活ごとに店を開いて一般客も招待し、一番多く儲けた部活が何か賞を貰えるという、部活対抗戦のようなものだ。
 今年からなのでよく分からないのだが、毎年恒例でそれをやっているらしい。

 ちなみに「女子バスケ部」と「男子バスケ部」は別の部活とみなして違う店を開く。バレー部なども同じ。

 俺たち男子バスケ部は焼きそば、女子バスケ部はクレープだった。普通で行けば焼きそばの方が人気、だと思っていたのだが…。

「いらっしゃいませ!少々お待ちください!」

 その時に1年ながら仕切っていたのは吉沢さんだった。接客をしながらクレープも作るという神業を披露していた。
 それにそのクレープが学生が作ったとは思えないほどの綺麗さで、常に大行列……女子バスケ部は殆ど他の店をまわれなかったと後で愚痴っていた。
 そして吉沢さんのおかげで、クレープはその大行列を見事に捌いて儲けもそれはそれは凄かった。他の部活とは比べものにならないほど……。

 部活が同じだっただけで、隣のコートで活躍する姿は見ていたけれど。1年ながらそこまで正義感の強い彼女に、一目惚れしたわけだ。



○*


「あ、バスケ部で同じの……皆川、だよね。よろしくー」

 2年生に同じクラスになったとき、本当に嬉しかった。しかも出席番号順で割と席が近かったから、あまり彼女とは接点がなかったが話すことも多くなった。……彼女のコミュ力のおかげかもしれないが。
 それから2週間後、俺は彼女に手紙を書き呼び出して告白した。
 ……それほど接点のない俺とまさか付き合ってくれるなんて思いもしなくて、「いいよ」と言ってくれたときはあまりの嬉しさに叫び出しそうになったけれど…。


 まだ付き合い始めて2、3日しか経っていないのにすごく時間が経った気分だ。修学旅行の班もまあ仕組んだんだけど一緒になれたから話す機会もまた増えると思う。
 今までにないほど楽しみで、すごく――嬉しい。

Re: 初恋は夕陽色。 ( No.23 )
日時: 2017/10/22 11:52
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c

※琉香side。

第10話:これからの気持ちは…。



「………そんな感じなわけで…」

 皆川がそう言って曖昧な感じで話を終える。もうその時、私の顔は告白されたとき以上に熱くなっていた。気になってはいたけれど、まさかここまで熱弁してくれるなんて予想外。
 しかも照れながら話すのが何だか可愛いし。

「……琉香、真っ赤」
「仕方ないだろ……もう、ここまで話してくれるって思わなかったし!」
「皆川くん、一つ教えてあげるけど琉香が男の子っぽい口調になるのは照れたときだけなんだよ」
「………えっ」
「ちょ!それ癖なんだから言うなって……!」

 私が恵里に行っても後の祭り。恵里の言葉を聞いて、それまでどこか真剣に話してくれていた彼の頬が一気に緩み、顔が真っ赤になっていった。
 
「………」
「………」

 2人して顔が真っ赤になり、第三者から見たらかなりの変人の集まりのように見えるんだろうな。それに恵里はなんの戸惑いもなく言っているのだから尚更変人の集まりに見える気がする。
 ……まぁ、それに関してはもう良いだろう。

「私は道こっちだから、帰るね。2人ともまた明日」
「……ばいばい……」

 今この状況で2人きりにさせる恵里は、本当に何を考えているのか分からない。普通落ち着くまで待ってくれるものじゃないのかな…色々ひっくるめてそれが恵里なんだけど。


「――吉沢さんはさ、正直俺のことどう思ってる……んですか?」

 突然皆川が敬語で喋りかけてきた。……それ、今聞く?
 この子、心は本当一途なところがあるのになんで突然鈍感になったり空気の読めない発言をして利するのかが謎だ。鈍感で言えばかなが圧倒的なんだけど、彼もかなりの鈍感だと思う。
 私は一呼吸置いて落ち着きを取り戻してから言う。

「別に、嫌いじゃないけど。突然何?」
「俺が自分の感情だけを押しつけたみたいで、もし俺のことが嫌いだったら――って……」

 よくこんなに鈍感と一途を切り替えられるものだ。どこかにスイッチでもあるのだろうか、さっきまでと凄い変わりようで。私は思わず笑ってしまった。

「まぁ私も告白は二つ返事で了承したんだからね、そう思うのも無理ないかなぁ?」

 少し挑発的に言う。なんか自己中みたいな言い方になったのを後から後悔した。

「少なくとも私は君のこと嫌いとか思ってないし、心配しなくても良いよー。まぁこれからの感情は君次第ってことで」

 私がにやりと笑うと、彼は何に対してなんだか知らないけれど頷いた。 

Re: 君からの手紙『コメント募集中です(*´Д`)』 ( No.24 )
日時: 2017/10/23 11:13
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c

第11話:浮足立つ。



「ねぇ…かなはさ、いい加減彼氏作らないの?」

 昼食後の休み時間。私の机にかなを呼んで話していた。
 ちょうど今は他の皆も大きな声で騒いでいるから私たちの声は遠くには響かないし、聞くにしてはとても良いタイミング……だと思う。

「えっ?別に、好きな人とかいないし」

 普通こんなことを聞かれたら少しばかりでも動揺したり照れたりするものではないだろうか。さすが鈍感のかな、普通の人とは反応が違う。さも当然のことのように当たり前に言ってのけた。

「告白されたことはあるんでしょ?」
「あるけど、時々思うんだよね……『好き』って何なのかなぁって」
「急に哲学的なこと言いだしたな…」
「だってさぁ、そんな一時の感情で告白して、周りの人間を巻き込むんだよ?他人が勝手にやってくれるのはいいんだけど、私は恋とかはしたくないなぁ」

 彼女はどこか、光のない目でそう言った。かなのこんな――何の感情も読み取れない、そんな顔を見るのは初めてだった。
 いつも明るくて周りを楽しませる、そんな人間だから――何か抱えるものもあるのかもしれない。

「かな……?」
「ごめん、何でもないよ~。でも琉香ちゃん、彼氏できたからって浮かれてるんじゃないのー?」
「……はぁ?んなわけねぇし」
「ほら、男の子っぽい口調。琉香ちゃんって照れると男の子っぽい口調になるよね~」
「……恵里にも言われたわ」

 どうやらかなにも見抜かれていたらしい。自分の中の癖というだけで周りに公表しているわけではもちろんないし、なるべく出さないようにもしているのに。案外、私って分かりやすい性格なのかな。



○*


「あ、啓太くん!」
「……何?」
「学級委員にお仕事~。修学旅行の班とかを1冊ノートにまとめて提出なんだってー」

 放課後。かなの明るい声は教室によく響く。そんな声を瀬戸が聞き逃すわけが無く……

「………」

 無言でイラッときているのが顔を見れば分かる。かなは特に何とも思っていないような雰囲気だが、おそらく曉は何となく……かなのことを気になっている気がする。勘だけど。
 何だか、皆川と付き合い始めてから周りの恋愛事情に気を配るようになった。

「めんどくさ……涼宮、やっといてよ」
「え~、こういうのは2人でやった方が速いって言うでしょ?」

 かなの鈍感さは本当に呆れるほどだけれど、ただ嫉妬深く曉を見ているだけの瀬戸にも問題はあると思うのだが。いっそのこと告白……と言ってもかなのことだから断られるだろうし、告白したこと無い私にはそんな偉そうなことは言えない。

 それにしても、かなが今日のお昼休みに『恋とかはしたくないなぁ』と言っていた彼女の真意はなんなのだろうか。正直あんな言葉、思春期の私たちからは中々出ない言葉とも言える。
 ……なにか、経験でもあったのだろうか。

Re: 君からの手紙『コメント募集中です(*´Д`)』 ( No.25 )
日時: 2017/11/03 11:21
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c

第12話:修学旅行、始まり。




 それから時は流れ――今日から修学旅行。
 今からバスに乗って空港まで行く。現在時刻、5時。春とはいえまだまだ寒く、コートを着ないと寒さで凍え死にそうだった。5月、なめていたら駄目、絶対。

「琉香ちゃんー!バス隣座ろうよ!」
「うん」

 この学校の修学旅行は私服。割と奇抜な格好も許されているし、短パンでもスカートでも割と何でも良い。季節にあっているならば。
 
 私は今横に並んでいるかなの私服を見る。かなは割と小柄な方で、服装は自分で言うのもなんだが私より子どもっぽい服を着ているのだが――でもまあ、かなはそれを着ても大丈夫な童顔なわけで。結論から言うと似合いすぎていて怖い。
 ちなみに私は今日はモノトーン系なので、隣に並んでいたら目立つのは間違いなくかなだ。

 そういえば、と私は少し遠くで曉や瀬戸とつるんでいる皆川の方を見る。暗くてよく見えないが、とにかく何らかのパーカーを着ていることは分かった。……上に何も着ていない。暑がりなんだろうか。

「……琉香ちゃん、別に嫌いじゃないよーとか言ってはぐらかしてるけど本当は翔くんのこと大大大好きなんじゃないの?」
「……は!?な、べ、別にそういうのじゃねぇし…!」
「典型的なツンデレ?ピュアだね~。少しくらいは気持ちに答えてあげなよ」

 また照れたときに出る癖が出てしまった。これが出たら今の一言で完全に照れたことが丸わかりだから、いい加減直したいのに。

「まぁいっか。バス乗ろ~」
「……うん」

 何となく受け流してくれたかなに感謝すると共に、やっぱりこういう話を好む彼女になぜか分からないが敗北感を感じる。
 
 バスはかなり大きく、私は割と酔いやすい体質なので3列目の窓側に乗った。かなは酔いには強いため、私が窓側がよいと言ってもすんなり良いよと言ってくれた。
 
「ついにだね~。修学旅行!楽しみだなあ」
「そうね……」

 朝からいじられたため何となく疲労感を感じていた。バスが出発して20分、私は空港に到着するまで無意識のうちに目を閉じて寝息を立てていた――。

Re: 君からの手紙『コメント募集中です(*´Д`)』 ( No.26 )
日時: 2017/11/05 09:39
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c

※かなside。

第13話:バスでの波乱。


 私の最近の日課は多分、彼女――琉香ちゃんをいじることだと思う。琉香ちゃんは普段から少し冷めた所がある。喧嘩にも強くて少し男の子っぽい性格の子だ。
 けれど最近彼氏ができた。そのことについていじったら照れていることが丸わかりで、いつもと違う琉香ちゃんは面白いと思う。

 バスが揺れ動き始めて数十分。私の隣からは琉香ちゃんの寝息が聞こえてきた。疲れているのだろうか、かなりぐっすりと寝ている。……いじられ疲れた?

 ……あ、でも。これは翔くんをいじるチャンスなのではないだろうか。

「翔くん」

 思い立ったが吉日。早速声をかける。
 後ろを振り返ってみてわかったが、席は真後ろだった。多分これは琉香ちゃんの近くに居たいという独占欲なのかなぁとか考えてはにやけてしまう。

「なに?」
「……琉香ちゃん、寝てるよ?」
「っえ!?」

 わかりやすい動揺だ。

「寝顔……見たい?」
「………」

 無言ながら照れている。あ、見たいんだな……。
 そんな翔くんの様子を横目で見ている啓太くんは「ヘタレ」とぶっきらぼうに言っていた。

「ヘタレっつーか……これは勇気いるでしょ!」
「寝顔見たいとか変態かよ」
「あんまりはっきり言わないでくれます!?」

 翔くんが身を乗り出してきたところで、私は琉香ちゃんに小さく声をかけた。起きて、と言う。その方が後々面白くなりそうだから。
 翔くんはかなりゆっくり出てきているから、ちょうど起きるくらいだろう。

 ちょうど、琉香ちゃんの真上に翔くんの顔が来たところで。私の声が琉香ちゃんに届く。

「………皆川?」
「…え」

 これにはさすがの啓太くんも、そして私も笑いをこらえきれなかった。肩を揺らしてくくっ、と笑う。
 通路を挟んだ一人席に座っていた恵里ちゃんもその様子を見ていたみたいで吹き出しそうになっていた。

「………な、なに!?なにしてんの!?」
「だ、だって涼宮さんが言うから……!」
「いや今のはドン引きするよ!……びっくりしたぁ……」

 琉香ちゃんは今の一瞬で場の状況を理解したのか。びっくりした、と言った後に「ないわー」とでも言いそうな雰囲気だった。そして顔が真っ赤。多分今の一瞬で理解したんだろう。

「ご、ごめん……」
「皆川にも下心ってあるんだな……初めて知ったよー」
「誤解しないでー!ごめんって!忘れて…」
「……ふふ」

 必死な翔くんの謝罪に琉香ちゃんは含み笑いをする。

「そんな必死になんないでよ、もう忘れるって」

 そういった琉香ちゃんは、いかにも「忘れる」という顔はしていなかった。







今回はちょっと変な回でした。ごめんなさい。
日常系はかくの難しいですね……。

今日は英検3級の二次試験です!まぁ、頑張ります。

Re: 君からの手紙『コメント募集中です(*´Д`)』 ( No.27 )
日時: 2017/11/08 23:59
名前: ましゅ ◆um86M6N5/c

※琉香side。

第14話:離陸。



(びっくりした……)

 いつの間にか眠っていたと思いきや、目を開けたら真上に皆川が居るんだから。横でかながにやにやと笑っていたり、曉が肩を揺らして笑っている様子を見て何となく察しが付いた。……皆川にも下心くらいはあるんだな。改めて、要らない確信をする羽目になった。
 けれど……同時に何だか、本当に好きになって貰えて居るんだなぁと思えて少し嬉しかったのは私だけだろうか…。

「かな、さっきのやつって……かなが皆川に声かけてたり?」
「あ、ばれたー?そうなんだよ~、案外簡単に乗ってくれてさ。翔くんの本性を試す良い機会だったでしょ?」
「微塵も悪いとか思ってないのか……」
「カバーするの?結局の所、やったのは翔くんなんだからねー」
「涼宮さん、他人事のように言わないでよ!」

 皆川が後ろから焦ったようにそう叫ぶ。けれどかなの耳には届いていない――実際の所もちろん届いているのだが、あえて無視していた。口笛を吹いて受け流している。

 ――そんなことやったら、瀬戸がやきもち焼くよ。

 まさかそんなことを言えるはずもなく。色々考えて、私は横目で内心ハラハラしながら見守るだけだった。


○*


「空港って広いねー!」
「中3の修学旅行以来だけど……こんなに大きかったかな」

 空港はとにかく待ち時間が長いのだが、今回は本当に幸いだったのか。20分後くらいに飛行機が出発するから急いで――という教師の必死な訴えで私たちはなるべく早く用意をした。


 それから飛行機に乗り込む。とても綺麗で明るくて、眠気が吹っ飛んでしまうようだった。多分これをずっと見ていても飽きないと思う。よほどの飽き性でなければしばらくの時間は見ていられるはずだ。
 行きと同様、私は窓側でかなが通路側。酔いやすいというのももちろんあるが、それ以上に窓から景色を見られるのが嬉しい。
 
 後ろにはバスと同じように皆川と曉が乗っていた。……心配で仕方ない。それにバスでは中々遠かった瀬戸が結構近くに座っているから尚更この三角関係が……。
 私が気にすることではないかもしれないが、一応。

 やっぱりこの修学旅行は波乱があるに違いない――。
 私は大変だろうなぁ、と呟きながら離陸するのを待った。