ダーク・ファンタジー小説

君の香り、鎖の手、嘘ひとつ
日時: 2016/04/12 20:00
名前: 梢 kozue

君はズルい人だ。

今でも、そう思う。

それでも、どうしようもなく君に恋をしていたんだと思う。

面白みのない日々の中で、少しだけ特別だった、小さなことひとつひとつ。

いたずらっぽい目をして、いつも君は、同じように笑った。

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Re: 君の香り、鎖の手、嘘ひとつ ( No.15 )
日時: 2014/12/08 23:15
名前: 梢 kozue

「互いに気にし合ってるでしょ?」

「は?」

耳を疑う。

互いに気にし合ってる?

まさか。そんなはずはない。

俺のほうは・・認めよう、俺はあいつを気にしてる。

けど、あいつはどうだ?

俺を利用してるようにしか見えない。

それが、俺を気にしてる?

「あれ?まさか気付いてないの?鈍感??」

止めろ。

そんなこと言うな。

あれ?

何故だ?

「前橋って本当に天然なのかな??」

言うな。

何故?

言うな。

どうして言って欲しくない?

言うな。

いや、分かってる。

言うな。

言ってほしくないのは―――

「夕霞は君が気になって仕方ないみたいだよ?」

―――期待してしまうからだ。

Re: 君の香り、鎖の手、嘘ひとつ ( No.16 )
日時: 2015/03/18 22:35
名前: 梢 kozue

どくん、と心臓が鳴った。

にこりと笑う松野の笑顔が怖い。

「前橋はさぁ、好きなんでしょ、夕霞がさ」

「・・・。」

「隠してるつもりなのかもしれないけどさ、分かりやす過ぎだよ。」

黒い瞳が全てを見透かすようにみつめてくる。

「君も」

もう、後戻りはできなかった。

「夕霞も、ね。」

気づいてしまった。

「ねぇ、前橋」

『ねぇ、前橋君』

声が重なる。

俺は、琴原 夕霞に恋にをしていた。

Re: 君の香り、鎖の手、嘘ひとつ ( No.17 )
日時: 2015/07/17 03:32
名前: 梢 kozue


「・・・夕霞。」

呼ぶ声に振り返ると、忍がいた。

いつもの胡散臭い笑顔は、浮かんでいない。

「また、したんだね。」

真剣ともそれる静かな顔をした、親友は表情と同じく静かな声で言った。

放課後の空き教室。

部活で使われることもない忘れられた場所で、私は乱れた制服を直していた。

「軽蔑する?」

今私はとても醜い笑顔を浮かべているだろう。

「しないよ。」

けれど忍はそれを笑いも嫌がりもしない。

「忍はいつもそう言ってくれるね。なんで?」

「軽蔑する必要がないでしょ。別に夕霞が男とっかえひっかえしててもあたしに害はないし、それは夕霞の問題でしょ?」

表情を変えずに忍は言う。

こういうとき、彼女の表情はいつも変わらない。

「辛い?夕霞。」

風が吹く。

幸い長い髪が私の表情を隠してくれる。

忍は知っている。

今の私の気持ちも、なんでこうなったかの理由も。

きっと私より知っている。

「夕霞、泣いとくなら泣いときな。溜めこむとろくなことにならない。」

「・・・うん。」

なんで私が泣いているんだろう。

ホントはわかってる。

男とっかえひっかえして、体の関係の人もいっぱいいて。

それを望んだは、私だ。

泣く資格なんてない。

けれど、忍がそれを許してしまうから。

「・・・っく・・・っ・・・!!」

涙が頬を滑っていく。

忍がゆっくりと近づいてきて、私を抱きしめた。

「別に止めないからさ。とにかく壊れないようにね。」

冷たいようにも聞こえる台詞は、薄っぺらい励ましの言葉よりも、ずっと私の心に染み込む。

何度も何度も縋って、泣いて。

それを許してくれたのは、この親友だけだった。

そして―――

頭によぎったのは、最近関係を持った人。

彼はきっと覚えてないけれど。

彼なら許してくれるんじゃないか。

私はそう思ってしまうのだ。

Re: 君の香り、鎖の手、嘘ひとつ ( No.18 )
日時: 2015/07/17 03:45
名前: 梢 kozue

「はぁ・・・・」

「んー?どしたよ、前原ー。」

箸を片手に今日何度めかの溜息をついた俺に、こっちに椅子だけ向けて弁当をつついていた、香坂が首をかしげながら箸をこちらへ伸ばしてきた。

その手を掴んで弁当を守りつつ、俺はもう一度溜息をつく。

「はぁ・・・。」

「だからどうしたって、ケチンボの前原君。」

「いやー。」

考えていたのは、昨日の松野との会話のことだ。

しかし、こいつにそんなこと話そうとは思わない。

テキトーに返すと、香坂は口をとがらせた。

こいつがやるとこんなに可愛くない仕草になるのかと思いながら、ボイルされたブッロコリーを口に入れる。

「むー、さては、前原、お前好きな子ができたな?どうだ?恋愛相談ならきいてやるぞ?」

迷惑なことに変なところが鋭いようだ。

「うるさい。んなわけないだろ、気持ち悪い。」

「いや、そこまでいわんでも。お前も思春期だろ・・・。」

「うっせー。」

普通に話してるぶんには面白いのだが、少々めんどくさい、というのがこいつに対する周りの主な評価だが、確かにそうだと思う。

顔が悪くないはずなのだがいまいちモテないのはそこが原因なのだろう。

Re: 君の香り、鎖の手、嘘ひとつ ( No.19 )
日時: 2015/08/13 12:24
名前: 梢 kozue

「なー前橋」

「なんだ?」

「お前、琴原と付き合ってるってマジ?」

「っはぁ⁉︎」

突然の問いに思わず吹き出しそうになる。

「いやさ、ちょっと噂にきいてさー」

「んなわけないだろ・・・一体どこからんな噂・・・」

付き合っているわけじゃない。

たとえ、関係をもっていたとしても。

「んーならいいんだけどさ。琴原には、あんま関わんないほうがいいぜー」

「は?なんで?」

「何でってまぁ、普通に話す分にはいいんだけどさー。付き合うとなるとなー。俺は嫌だね、男とっかえひっかえしてる女なんてさー」

知っていていたことなのに、心がずきりと痛む。

「前はあんな感じじゃなかったのになー」

「前?」

「あ?行ってなかったか?中学は違うけど、小学校は同じなんだよ、琴原と」

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