ダーク・ファンタジー小説

深海のきらめき
日時: 2015/04/17 02:50
名前: つむぎ

つむぎと申します。
よろしくお願いします。

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深海のきらめき ( No.4 )
日時: 2015/04/17 03:27
名前: つむぎ

第3話:深海より愛をこめて

教室に着くと、半分以上のクラスメイトがそこにいた。
課題をしている人、笑いあってる人、寝ている人。
これもいつもの光景。
「よしのー!課題写させて!!今日絶対当てられる〜」
「いいよ、あってるかわからないけど」
ありがとー!と涼夏は私の手からノートを受け取った。その姿に私は思わず笑う。
「お礼に今日の放課後アイスおごるね!本当にありがと!」
「いいよ気にしなくて、もうすぐ先生来ちゃうし早く写したほうがいいんじゃない?」
そう言うと彼女は慌ててノートを写し始める。
扉が開いた音がした。

振り返ったその先はいつもの教室じゃなく、あの夢の場所だった。
頭上に広がる海。広がる草原。音の無い場所。
まるであの夢の中にいるようだった。
後ろから、足音がする。
夢と同じように振り返った。その先にいたのは、今朝見かけた目元に仮面をつけている人。
その人は近づきながら私に言った。

「おかえり、よしの」

夢とは違う一言を発して、私のことを抱きしめた。

深海のきらめき ( No.5 )
日時: 2015/04/17 03:41
名前: つむぎ

第4話:名前を呼んで、愛しい人

優しく抱きしめられた。
この人は誰なのか、なぜ私の名前を知っているのか。どうしてこんな場所にいるのか。
疑問が体の中を渦巻いていたけれど、尋ねたのはそのどれでもなく。

「あなたの名前、なんていうの」
これだった。自分でもどうかしていると思った。

その質問に仮面の人は黙り、少ししてから仮面を外した。
仮面の下には金色の瞳が隠れていた。

「俺の名前はシュヴァルツ。君を迎えに来たんだ、よしの」
「シュヴァルツ…。私を迎えに来た?」
そうだよ。仮面の人、シュヴァルツはそう言って私の手を握った。
「おかえり、愛しいよしの。君の帰りをみんな待ってたよ」
「帰り?私の?…ここはどこなの?」
私の手をとって先を歩くシュヴァルツに尋ねた。

「ここはワンダーランドだよ。忘れてしまったの?」
「ワンダーランド…?」
何故だか聞き覚えのある言葉。しかし思い出せない。
そんな私を見て、シュヴァルツは困ったように笑った。
「…じゃあ今は〈ようこそ〉、と言っておこうかな。無理に思い出さなくていいよ。ここは君にとっての…いや、なんでもない」
シュヴァルツは言い淀んだ。それが気になったが、私は尋ねなかった。

彼が連れて行ってくれる先に、その答えがある気がしたから。

深海のきらめき ( No.6 )
日時: 2015/04/17 03:52
名前: つむぎ

第5話:ごきげんよう

「あら、ノラ猫じゃないの。そちらはお客さん?」
連れて行かれた先に待っていたのは小さな洋服店。
中には笑顔の素敵な女性が立っていた。
「やぁ、マダム。成長してるからわからないかもしれないけど、彼女はマダムの大好きなあの子だよ」
「え?…本当に?」
シュヴァルツがマダムと呼んだ女性が私に近づいてくる。ウェーブのかかった茶色い髪が、目前まで迫る。
「…ご、ごきげんよう……」
マダムの真似をして挨拶をしてみる。すると、彼女の瞳は輝き私を力いっぱい抱きしめた。
「おかえりなさい!!!アリス!!!」

…〈アリス〉?

抱きしめられたままシュヴァルツの方を見ると、人差し指を立てて唇に当ててこちらを見ていた。
…その疑問は口にするなということらしい。

「やっと帰ってきたのねアリス!!待ちくたびれて針が錆びついてしまうところだったわ!!待ってて、貴方のためにこしらえた服がたくさんあるのよ!!!」
そう言ってマダムはバタバタと店の奥に入ってしまった。
残されたのはシュヴァルツと私だけ。
「…アリス、って私は呼ばれてるの?」
「そうだよ。君はアリス。僕はチェシャ猫。首輪をつけてないからマダムみたいにノラ猫って呼ばれたりもするよ」
「…名前で呼んじゃダメなの?」
「二人きりの時なら。でも、他人がいるところではダメだよ」
そう。と私は答えた。

少しだけ、残念に思った。
彼の名前は二人きりのときにしか呼べないのだ。

深海のきらめき ( No.7 )
日時: 2015/06/24 09:24
名前: つむぎ

第6話:ワンダーランドの住人

「嗚呼、アリス!とっても素敵だわ!!あなたは本当に可愛いから何でもよく似合うわね」

店の奥から大量の洋服を持ってきたマダムは、それらをよしのに着せては脱がせを繰り返す。

「マダム、アリスが困っているよ。マダムの仕立てる洋服はどれも素晴らしいから選びにくいのさ」
「まぁ!ノラ猫がお世辞を言うようになったなんて、少し前では考えられなかったことよ、ねぇ、アリス」
「え、あ…そうね」

マダムが仕立てたであろう洋服たちは、どれも本当に素晴らしいものだった。
よしのの体にぴったりなサイズ。
よしのの好きな色。
まるでよしの「だけ」のための服…。
そんな服の中でもよしのが一際惹かれた服があった。

「あら、アリス。その服がお好みかしら?」
「…うん、この服が一番好きかな…」

よしのが着ているのは白と紺のワンピースだった。
スカートの裾には繊細なレースがたっぷり使われていて、とても可愛らしい服だ。

「ならその服を着て行きなさいな。他の服も何着か見繕って包んであげるわ」
「えっ!いや、あの、私お金持ってないからこんなにいっぱい買えないよ」
「?何を言っているのアリス。私達が貴方からお金を取るわけないでしょう?」
「…えっ……」

待っててちょうだいね〜。マダムはそう言って服を包みにまた店の奥に引っ込んでしまった。
よしのはシュヴァルツとまたもや二人きりになった。

「…マダム、優しいね」
「よしのが愛おしいんだよ。マダムだけじゃなくて、この世界の住人はみんな君に優しいさ」

会いに行こうか。

シュヴァルツは金の瞳を細めて笑った。

深海のきらめき ( No.8 )
日時: 2016/03/04 02:41
名前: つむぎ

第7話:首なしという人

マダムの店を出て、シュヴァルツとよしのは街への道を歩いていた。
しっかりと手をつないで、迷わないように。
しばらくして、思い出したようにシュヴァルツはアリスに言った。

「よしの、君に僕の首をもらって欲しいんだ」
「…は?」

金色の瞳を細めて幸福そうに笑うシュヴァルツに、よしのは慄いた。
首とはどういう意味なのだろうか。

「あぁそうか。よしのはこの世界のことを覚えていないんだったね。
 ならこの話は首都についてからにしよう」

うっかりしていた、そう言ってシュヴァルツはよしのの手を握り直し、歩き出した。

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「おかえりアリス!元気そうでなによりだよ」
「まあアリスじゃない!綺麗になって…」
「おかえりなさいアリス!また一緒にお花を摘みに行こうね!」

首都についてからアリスは住人たちに囲まれていた。
記憶にこそないが、彼らとは昔あったことがあるらしい。
罪悪感を感じながらも会話していると、誰かの声が耳に届いた。

「おやチェシャ猫、首輪はどうしたんだい。昔の君は<首なし>だったはずだが」
「やあムッシュ。諸事情でね、今は首輪をしていないんだ」
「それは良かったじゃないか。首なしになんてなるものではないさ」

そんな会話を聞いて、よしのは不思議に思った。
シュヴァルツは私に首をもらって欲しいと言った。
恐らくそれは<首なし>になるということで間違いないだろう。
でも住人にとって首なしとは<なりたくない存在>らしい。

住人に囲まれながら、うんうん唸っているアリスをシュヴァルツは少し離れていたところで見ていた。

「…僕の首は君のものだよ、よしの」

その瞳は、寂しそうだった。

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