ダーク・ファンタジー小説

悪で成り立つセカイ
日時: 2015/05/16 17:20
名前: 林飯



 The world which supported with evil




――――――――――正義? 

そんなもん、世の中に一つあったら分かんないじゃん。

「悪」という存在があって初めて識別されるんだろう。


言ってみれば、「悪」がなきゃ世の中とのパワーバランスなんて取れないんだよ。







――――登場人物――――

紫藤塔子
転校生。透明感がある、冷静沈着。

矢沢里歩
「危険人物」に認定されている。

坂崎鵬介
「要注意人物」に認定されている。

仙堂孝文
「精神異常者」に認定されている。

安田涼子
不良女子。

藤尾三波
いじめられ女子。

Page:1



Re: 悪で成り立つセカイ ( No.1 )
日時: 2015/05/17 19:21
名前: 林飯


第1話

僕らの学校生活は薄っぺらい。


「まじだりィ学校なくなれホント」

「ねえ聞いた!?松本の彼氏浮気してんだってッ!」
「えー松本ってアンタのダチじゃん〜ショックだね」
「まぁ、親友ってワケでもないし、そこまで同情しないけど」

「ぶっ殺したいんだけど親」
「思うわ」

「てか転校生くるらしーじゃん」
「マジかよ。ブスだったら最悪」

会話も、人物も、なにもかも薄っぺらい。


そこへ大きな笑い声をあげながら、チャラチャラした女子軍団が教室へ入ってくる。
それを見た複数の生徒(だいたい女子)が慌ただしく立ち上がって、

「や、安田〜おっは〜」

作り笑顔を浮かべて、同じようなテンションであいさつする。

「ういーっす」

センター分けのウェーブのかかったロングヘア女子が軽々と応答する。
ジャラジャラしたカバンを机にポイッと投げると、スルリと床へ落ちる。

「安田へったくそぉ」
「るっせーなぁ。おい、藤尾!」

そういって、一番前の窓側に座っているいかにも根暗そうなメガネ女子に声をかける。

「プッ出た藤尾」
「安田の余興はじまる〜」

近くの女子たちも雰囲気に便乗する。

藤尾とよばれた女子が、おそるおそる後ろを振り返り安田を見る。

「アタシのカバン。 拾え  」
「・・・・・・・ はぃ・・・」

そういって立ち上がる藤尾。

「安田ぁ、自分のもんは自分で拾いなよ?」
「わざわざ藤尾ちゃん使わないのー!はは」

安田のバックにいつもいる吉岡と前田が笑う。

藤尾はチマチマと歩き、そして床にしゃがんで安田のカバンに触れようとした。
すると、安田がうしろから藤尾の背中を蹴りつける。

「!!!」

藤尾が顔色をかえる。

「なにアタシのカバン触ろうとしてんの。 きめぇ」

「きゃははは。警戒しろよ藤尾〜。いつもされてんのに!」

そういって、吉岡と前田が藤尾の両サイドから彼女の肩を持ち上げる。


「んじゃ、ちょっと藤尾ついてきてよ」
「言われなくても分かってるよね?」
「いつもの、場ー所」

藤尾の顔がこわばる。しかし、そんなの完全無視で安田グループは藤尾とともに教室から去っていく。

その瞬間、一気にクラスの中が安堵に包まれたのが分かった。


「でさー、うちの親がね〜」

気を紛らわすように、生徒たちがそれぞれにしゃべり始める。






「桜田先生、安田の素行の悪さどうにかなりませんか!?」

職員室で、煙草をくわえた40代ぐらいの男性教諭がクルッと椅子をまわして、話しかけてきた人物を見る。

「俺に言われましても…ね」
「担任じゃないですか」
「手はほどこしてきましたよ、ちゃんと。でも、あのモンスターたちに比べたらマシでしょ?糸田先生?」
「ッ…。そいつらと比べたら駄目ですよ」

顔を曇らせるその教諭を見ながらフッと嘲笑い、桜田はデスクのほうへ体を向けた。

「にしても、矢沢と坂崎と仙堂…来なくなって2か月か。今も平和ってワケじゃねえけど以前よりはずっとマシだな」
「3人がいなくなって、株の上がった生徒がたくさんいますけどね」
「それこそ安田だな。ま、盛者必衰って言うだろ?すぐに潰れるよ」
「そうですかねぇ……我が校にも5年ぶりに転校生が来るっていうのに、大丈夫ですかね」
「それなんだよなぁ」

Re: 悪で成り立つセカイ ( No.2 )
日時: 2015/05/18 18:56
名前: 林飯


 第2話


ハゲ頭で低身長の教諭が息切れしながら職員室の扉を開ける。
何事かとほぼすべての教師が注目した。


「き、きてます・・・」


額縁メガネの中にある瞳がビクビクしている。
桜田が「何がです?」と問いただすと、その教諭が口を開く。


「…あの3人が、登校してきてるんです………っ!」


桜田が、持っていたタバコをポトッと落とした。


「よりによって、この日かよ・・・」



――――――


女子トイレでは女子の戦争が起きていた。
3対1という不公平な攻撃で、藤尾は確実にダメージを負っている。

いわゆるいじめというものが、起きていた――――。


「藤尾は何で学校きてんの?友達いねーし喋らねえし運動もできねえ勉強もできねえ。いる意味あんの」

言いながら安田が彼女の腹を思いっきり蹴り飛ばす。


「……うッ…」

悲痛な表情を浮かべ、味方のいない状況に絶望していた。

「うわぁ超いまコイツの顔やばいんですけどーッ」

前田が吉岡と一緒に爆笑する。


何も言わず、立ち上がろうとする藤尾―――しかし、それを阻止するように安田が手を振り上げる。
平手打ちがきそうだった―――

そのとき、


「くくくく」


奇妙な笑い声が後ろから聞こえる。その声に明らかに聞き覚えのある3人がバッと後ろを振り向く。

誰よりも先に安田が口を開いた。



「   や………矢沢―――――……」


続く言葉が出てこなかった。さっきまで強気でいた彼女が一瞬で凍りついたのだ。
ベストから出る長袖シャツを腕まくりし、しっかり鞄を肩にかけ、今登校してきたばかりという雰囲気を醸し出している人物。
ピョコンと短く一つ結びをしていた。


口元が嫌な感じに笑っている。


矢沢里歩。この学校において「危険人物」として扱われる女子生徒だ。


「ぷはっ。安田ぁ、アンタらまだこーんなくっだらないことやってんだぁ…」

スカートのポケットに手をつっこんで、愉快そうに3人を眺める。

「矢沢…何であんた学校に来てんの」
「えー?アタシが来ちゃダメとかあんの?そんなん自由っしょ?」
「……っ」

安田グループは誰一人として、彼女と目を合わさない。
というよりも、恐れていた。

「んお?そこにいんの誰ー?おーい、いじめらてた女子のひとーっ」

場違いな矢沢がそう問いかけると、藤尾は弱々しい声で「藤尾…三波です」と答えた。


「へー。あたしーぃ、矢沢里歩っつーんだけど、ご存じつかまつりますー?」

ふざけたような口調。

「は、はい…知ってます。とても……有名な方で……」
「うはッ!有名とか〜〜〜!照れるってぇ!やーめーて!」

一人で盛り上がるも、安田たちは何の言葉も発していない。
安田は緊張と警戒を表情に出していた。

「つーか安田さぁ…アタシがいない間にだいぶえらくなってんじゃん?」

グサッと棘のようなものでえぐられた感覚を味わう。
安田自身、触れられるのを恐れていた内容だ。

「ま、まあね…」
「その二人は?舎弟的な?」
「まあ……そんなもん……」
「ふーーーん」

顎をあけて、上から目線に3人を見回す矢沢。安田の足ががくがく震えだす。

「もうすぐHRあんじゃない?うちらさき行くね……」

ゾロゾロと安田達3人は矢沢の横を通り過ぎる。


矢沢は彼女たちの後ろ姿をニヤッとしながら見送る。


残された藤尾が、ゆっくり立ち上がる。
なんだかんだ、場の状況を助けてくれたのだ。感謝をしなければ。

「あ、あの、ありが……」
「そーいえば今思い出したんだけど、藤尾ってずーっと前からいじめられてなかったぁ?」

一気に藤尾の体が冷たくなった。

「え……」
「学校とかそんなもん期待しちゃ駄目だよー?藤尾に残された道とかないってえ!」

ケラケラとおかしそうに言う矢沢。
そんな無邪気な笑顔が藤尾にとって恐ろしく感じた。


「あ、もう時間じゃーん。あたしも行くわー!―――あ、あとさ藤尾ー」
「……?」

「あたしさぁ、アンタみたいな感じのヤツ見ると無性に殺気立つからあんま視界に入んないでね?あはっ」


最後まで無邪気に笑いながら、軽快な足取りで矢沢は消えていく。



呆然と立ち尽くす藤尾。その目には、冷え切った現実が映されていた。

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