ダーク・ファンタジー小説

日時: 2015/07/27 01:29
名前: MAD 水鉄砲

どうも皆さまこんにちわ水鉄砲です。
本当に拙い文章ではありますがどうぞ楽しんで行ってください。
ありがたいアドバイス、感想をお待ちしてます。

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Re: 息 ( No.1 )
日時: 2015/07/27 01:20
名前: 水鉄砲

「…」
まだ口の中に血の味がする。
「顔にアザは…無いか。ははっ、上手いもんだよな」
公園の水道で鏡を確認してから、口をゆすいだ。
ゆすいでもゆすいでも、中々赤は薄くならない。
口の中がズタボロになってしまっているらしい。
服にはかなりの数の運動靴の跡がついてしまっていたから、とりあえず雑に洗って濡れたままのそれを着て帰った。

ギィィ…
古いアパートの白い扉はいつも嫌な音を立てる。
電気は…付いてないか。
「ただいま、母さん」
いつも通り、返事は無い。
代わりに、絞まりの悪い台所の蛇口からポタポタと水が落ちる音がした。
奥の襖をこっそり空けると、やはりそこで母さんは倒れるようにして寝ていた。
僕の家族は母さんだけだ。
だから母さんは生活費を稼ぐため雑巾のように働き積めている。
その結果が、こうだ。
貧乏というだけで、差別の対象となる。
貧乏ゆえに勉強を頑張ってみたが、目障り以外の何でもないといったところなんだろう。
アザは増えていった。
「ふぅ」
自分の部屋にしている物置部屋に入った僕は、鞄からカッターを取り出して一息ついた。
最近の僕の日課であり目標は、自分を殺すこと。
自分の置かれた状況や母さんのことを考えると、僕が死ぬよりいいことなんてないんだと最近気づいた。
だから僕は自分を殺そうと思った。
「…くそっ」
カッターを手首につけるところまではいつもしているのに、いつもここから手を動かせない。
「何でだよ…くそっ…くそ…」
弱い自分に腹が立つ。
「死ねよ…死ねって…あぁ…」
「お前なんか…いなくなったって誰一人悲しんだりなんかしねぇんだよ…支障なんてねぇんだよ…いても…いなくて…も……」
嘘だ。
きっと僕が死ねば悲しんでくれる人は沢山いる。
こんな僕でも、好きでいてくれてる人はいるんだ。
だからこそ、僕は、願った。
「死ねよ…僕のこと好きなやつなんか…必要とするやつなんか…みんな…いっそ死んでくれよ…」
出したくもない涙がこぼれてカッターを落としてしまった。
もう今日は、続きをしたくもなかった。
母さんを起こさないように服を洗濯にかけて、風呂に入ってから、台所に置いてあった賞味期限切れのコンビニ弁当を食べて寝た。

「ほらっ、朝だよ起きて!」
母さんの声で目が覚めた。
「ん…ありがと。仕事いってらっしゃい。」
「おう!行ってきます!」
いつも母さんは朝だけは起こしてくれて仕事に向かう。
さすがに朝ごはんをつくる力は無いみたいで、基本僕は朝は食べずに行く。
「あれ…」
でも、今日はなぜか朝ごはんが準備してあった。
ご飯に、味噌汁に焼き魚が机の上に並んでいる。
でも、昨日のことを思い出してしまいとても食べる気分にはなれなかったので、ラップをして冷蔵庫にしまってから学校に行った。

学校に着くと、下駄箱に入っている画鋲をどけて上履きを履き教室へ向かった。
いつも教室のドアを開けると数人の生徒からはゴミを見るような目で見られる。挨拶なんてもっての他で、朝から殴られることもある。
そんな中でも、僕には付き合っている人がいる。
結は中学校からの同級生で、付き合い始めたのはつい最近のことだ。
もちろん、学校にそのことを知る人は少ない。
知られたら、結まで嫌がらせにあうことは目に見えているから、僕が隠すように頼んでいる。
だから僕と結のことを知るのは、結の親友の明美と、僕の幼なじみで唯一の親友の光太だけだ。
二人とも僕らのことを応援してくれている。
正直、それも僕には死ぬことを躊躇ってしまう理由の一つになってしまうのだけど。
ガラガラ
教室を開けると、明らかにいつもとみんなの様子が違った。
みんなコソコソと何かを話している。
いつもの目線も、そこには無かった。
「彰!」
明美が駆け寄って来た。
「どうしたんだよ…これ…」
そう言って明美の顔を見ると、明美の目の周りには明らかに泣き腫れた跡がある。
「結と…光太が…死んじゃったよぅ…」
耳を疑った。
「え…。」
チャイムが鳴り、自分の席に着いた後も、とてもその言葉を信じることは出来なかった。
そこから、担任が入ってきて、深刻な顔で言った。
「みんな知っている人もいるとは思うが、昨日このクラスの生徒が二人亡くなった。死因は、心臓麻痺だそうだ。」
そう言ってクラス全員に黙祷を促した。
黙祷の途中クスクスと笑う声が聞こえて、生まれて初めて自分以外の人を殺してやりたいと思った。
そこからのことは、あまり覚えていない。
放課後になった。
今日はさすがに、僕を呼び出そうという奴等もいなかった。
ギィィ
嫌な音だ。
母さんは、まだ帰っていないらしい。
物置部屋に入ると早速僕はカッターを手に取った。
頭はひどく冷めていた。
僕の願いは、叶ってしまった。
さっき携帯に、祖母と祖父が亡くなったというメールが叔母から届いた。死因は心臓麻痺らしい。
祖父と祖母は僕が赤ちゃんのときからとても可愛いがってくれた。
僕と母さんにだって、毎月いくらかの仕送りをしてくれていた。
今日、僕を認めてくれる人は、皆死んだことになる。
改めて、最早自分が死なない理由のほうが無いように思えてしまった。
カッターの刃をキリキリと出して、手首に当てた。
「彰ー、ご飯よー!」
いつの間に帰ったんだろう。
「久々に頑張ったんだからちゃんと食べなよー!」
母さんの手料理なんて、いつぶりだろう。
「死ぬ前に…食べときたいな…」
今死のうとしていた人間ではあるけれど、別に急ぐことじゃない。
これが最期になるんだから、母さんの笑顔が見たいと思い、敢えて学校であったことや祖母と祖父のことは伝えなかった。
僕が死んだ後に一人で知るというのも辛いだろうけど、こんなお荷物の僕をずっと育てるよりは母さんのためになるだろう。
最期の手料理は、僕の好物ばかりだった。
でもなんとなく、最期に子供っぽいことをしてみたくて、母さんが見ていない間に小さな頃苦手だったピーマンを母さんの皿に乗せた。
なんとなく面白くなってクスクス笑っていると母さんに
「何?ずっとニヤニヤして〜。食べないの?」
なんて言われてしまった。
「いや、母さんと一緒に食べたくてさ」
変な子。と笑われたけど、涙をこらえるので必死だった。
「よしっ、食べよう?」
いつの間にか母さんが正面に座っていて、僕は顔を焦って背けた。
「う、うん!…いただきます」
母さん。
本当に今までありがとう。
泣きそうになりながら大好きな母さんの味噌汁に口を付けようとした瞬間。
母さんが泡を吹いて倒れた。
驚いて母さんの側まで寄ったが、すでに母さんは白目を剥いて息をしていなかった。
母さんの皿を見ると僕が乗せたピーマンが消えていた。
その時、僕はほとんど無意識のうちに呟いた。
「なんで母さんが今日を生きていたんだ」
言ってすぐ、僕は飲みかけていた味噌汁を飲んだ。
すごく、懐かしい味がした。
そして地面が近づいた。

僕が、終わった。











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