ダーク・ファンタジー小説

ひつじさんたちの、隠し事。
日時: 2017/05/19 16:10
名前: はるた ◆OCYCrZW7pg








 「ユキちゃんとミオが幸せなら、それが私の一番の幸せ」

 傷ついた少女は笑いながらそう言った。
 ――小さな両手を二人の男たちに預けながら。

「燈が大きくなって、本当の親に会いたくなったらそしたら俺はどうすればいいのかなって、いつも不安だ」

 元主人の男はか細い声でそう言った。
 ――小さな手のひらを優しく握り返しながら。

「雪と燈のためなら僕は何でも出来るし、きっと二人がいなかったら僕はいま生きていないよ」

 元使用人の男ははっきりとした口調でそう言った。
 ――震える彼らの弱さを抱きしめながら。
 





 初めまして、またはご無沙汰しております。はるたです。
 今回は偽物の家族ものでございます。完結できるかはまだ分かりませんが、頑張ろうと思ってます。よろしくお願いします。
 いろいろ際どい描写も入るかもしれないので危ないと思ったら自衛ください。

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ひつじさんたちの、隠し事。(0) ( No.1 )
日時: 2017/05/23 10:43
名前: はるた ◆OCYCrZW7pg

 「水瀬の家族って変だよね」


 何気ないその一言に、私は立ち止まる。え、と聞き返すと秋田くんがきょとんとした顔で言った。


 「だって、お父さんもお母さんもいないじゃん。一緒に住んでる人たちだって若い男の人じゃん。うちの母ちゃんも変だって言ってたー」


 周りのランドセルを背負った子供たちも同調するように頷いた。秋田くんは得意げにそう言い放つと、また大きな声で「普通じゃないじゃん」と私の家族のことを否定した。
 泣きそうになるのを堪えながら、私はぎゅっと制服のスカートを掴んだ。ぐしゃっと皺になったスカートが風でなびく。

 
 「あかり、行こう」


 そんな時に、決まって彼は私の手を取ってくれた。
 ヒーローみたいに颯爽と現れて、私のことを連れ去ってくれる。秋田のことなんか気にするな、たった一言、無機質なその声で私を励ましてくれる。

 
 「黒くん、ありがとう……」


  私が弱弱しい声でお礼を言うと、黒くんは少し照れたのか、こっちを全く見てくれなかった。
 小さな手のひらを重ね合わせながら、私たちは一緒に家に帰る。夕日に照らされた道をゆっくり歩きながら、私たちは大好きな家族のいる場所に。
 




 私の家族には隠し事があります。
 誰にも言えない、いくつもの秘密が、存在するのです。
 どうか、その秘密が誰にもばれませんように。誰にも見つかりませんように。
 ずっと私たちが、一緒にいられますように。




   「 ぷろろーぐ 」 ヒーローと、小さな手のひら。

Re: ひつじさんたちの、隠し事。 ( No.2 )
日時: 2017/05/23 11:03
名前: はるた ◆OCYCrZW7pg

 ユキちゃんは今日も眠たそうに欠伸をしながら席についた。いただきます、も欠伸まじりで、正直何を言っているかわからない。
 ユキちゃんは、いつも夜遅くまでお仕事をしているせいか極端に朝が弱い。夜型の生活はあんまり身体によくないと何度言っても、全然聞いてくれない。

「今日のサラダ、トマト入ってる……うわぁ」

 おまけに、ユキちゃんは二十四歳になるのに好き嫌いが激しい。それでも、私には「好き嫌いはダメ」なんて言うからどうしようもない。

「今日のトマトおいしいよ。ミオが家庭菜園したトマトだから、甘くておいしいって」
「でも、トマトじゃん。トマトはまずい」

 ユキちゃんは「うえぇ」と苦い顔しながら、フォークに突き刺した真っ赤なトマトを私に向けた。
 あ、いつもの「あーん作戦」だ。そうやってユキちゃんは私にいつも嫌いな食べ物を食べさせてくる。私はぷいっとそっぽを向いて、拒否をした。うぅぅぅと唸り声をあげるユキちゃんは、やっぱり子供みたいだ。

「こんなこと続けるんだったら、ミオに言うんだからね」

 私が先生に言いつけるから、という風に一人の男の名前を出すと、途端にユキちゃんの顔が不機嫌になった。
 ユキちゃんは「分かった」と投げやりに呟いて真っ赤なトマトを一口で食べた。もぐもぐと咀嚼するユキちゃんの表情は真顔で、正直面白かったけれど、ユキちゃんからしたら全然面白くないのだろう。

「うわ、珍しい。雪がトマト食べてるなんて、明日雪でも降るんじゃないか」
「うるせーな。今は春なのに雪なんか降るかよ、駄洒落言いたいならもっと面白いの考えてこいっつーの」

 デザートの手作りオレンジゼリーを両手に、エプロン姿の男がやってきた。――ミオだ。
 ユキちゃんと口論になりながらも、いつものようにたしなめていく。流石だなと感心しながら、私の視線はいつのまにか美味しそうなゼリーの方に向いていた。
 それに気付いたのか、ミオは私たちの食卓にゼリーを並べて「召し上がれ」とにこりと笑った。

 オレンジゼリーはとても美味しかった。ミオの作ったものは何でも美味しいけれど、やっぱりミオお手製のスイーツは絶品だと思う。
 そうやって、何の繋がりも持たない私たちは「家族」として暮らしている。

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