ダーク・ファンタジー小説

ただ、日常を綴る。
日時: 2019/03/14 22:03
名前: 立花 ◆FaxflHSkao



 可愛くて、可愛すぎて、あの頃天使だったショタくんは、
 成長した姿で言うのです。「もう、俺は子供じゃない!」と。










「 お客様 」


 すーぱーうるとらすぺしゃるさんくす!!!!!!!!!!!!!!(意味不明)
 コメントありがとうございます。励みになります。
 読んでくださる皆様もありがとうございます。もしよろしければ、もう暫くお付き合いくださいませ。

■電波 様
□小夜 鳴子 様






藍色の宝石 【中編集】/5作品目

(1作品目)優しい蝉が死んだ夏 >>003
(2作品目) 深青ちゃんは憂鬱だ。 >>029

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8-3 ( No.23 )
日時: 2017/08/22 21:08
名前: 立花 ◆FaxflHSkao


「風子の子供を殺したことを後悔することは絶対にない。当然のことをした、と思ってる。
 御門にはきっとわからない感情の一つだと思うけど、それでもわたしは風子を憎んでいたし、傷ついてほしいと思ってた。
 最低な姉だったと思います」


 紅茶に薬を混ぜました。それも結構効くやつ。
 マキは淡々とその真実を告げた。手紙の文字は、あの優しかったマキとは別人だと思うほど、残虐な事実だけを残した。

「ずっと昔に蝉を殺したことがある。そりゃ誰だってあると思うんだ、一回くらい。でもそんな幼い頃に無残に殺した話じゃなくて。わたしはその蝉を明確な殺意を持って殺した。その蝉が嫌いだったわけでもない、その蝉を憎んでいたわけでもない。それでも、殺したいって思った。……今思えば酷いことしたなって」

 三枚目になって突然内容がガラッと変わった。
 読んでいてもよく意味は分からなかった。
 だけどこれは、マキが最後の最後で書いた手紙。マキが絶対に言葉にしなかった本音が、これを読めばわかるのだと思うと、文字を追う目は止まらなかった。

「あの夏、殺した蝉が風子に化けて出てきたと思ったんだ。わたしの唯一のトラウマが、風子に会ったときにフラッシュバックした。だからあの時泣いちゃったんだ。笑えるでしょう、高校生にもなってそんなバカなことを考えてた」

 手紙を読む手が止まった。これ以上、読んではいけないと思った。
 マキの告白は真実と嘘が入り混じっている。きっと俺以外の誰にも分からない、積み重ねた嘘がいま形になった。

「風子はわたしにとっての、あの時殺した蝉だった。だから必死に可愛がって、ご機嫌をとった。殺してごめんっていつも思ってた。
風子が飛び降り自殺をしようとした時、黒板には「死ね」って書かれてあった。それを誰にも気づかれないように消した。風子のその悲鳴はお母さんに向けてのものだっただろうし、わたしにじゃないことも十二分に理解してた。だけど、あの時の蝉を思い出して吐き気がした」


 風子になって、わたしに「死ね」と言いにきたんだと思った。



 明日はマキの葬式だ。きっと風子ちゃんも彼女たちの母親の美夜子さんも来るだろう。
 俺がマキと結婚したと伝えたらどんな顔をされるだろう。どうでもいいか、そんなの。
 暑くなってエアコンの電源を入れた。二十四度まで下げて、手紙を机の上に置いてベッドに寝転ぶ。



「マキは誰も殺せなかったんだね」


 読んでわかった彼女の唯一の嘘。
 風子ちゃんには絶対に言わないでおこう。最後まで、俺は、俺だけは気づかないふりを続けなければならない。
 マキが望む未来を、叶えようと思った。



 優しい蝉はどこにもいない。
 ただ、音もなく殺されたのだ。


◇槙野つくも 20歳、御門雪無 21歳
 遠野風子 19歳

Re: 優しい蝉が死んだ夏 ( No.24 )
日時: 2017/08/23 21:55
名前: 立花 ◆FaxflHSkao




◆小夜 鳴子 さん

 初めまして、初めまして。と言いつつ、いつもお世話になっております。
 すごく綺麗なフレーズですね。ぴったりすぎて感動しました。蝉のなくという漢字が「鳴く」より「泣く」を使うところ、わたしの好みにドンピシャです。ありがとうございます。

 プロローグを気に入っていただけて嬉しいです。そこだけ異常に力を入れました(笑
 ビンゴですビンゴ。無名のわたしに気づいてくださるとは、やはり鳴子さんは強者。あぁ、やっぱり癖ってありますよね。けれど自分では分からないという……。

 いやいや、嬉しいです。実は「マキ」が下の名前であるような錯覚ができればと思い、苗字を槙野にしたのです。ああ、すごい嬉しい^ ^
 御門はいい子のように見えるように、ただそれだけを思って書きました。イケメンです、何の文句もつけられない優男ですムカつく。マキへの愛情が強い部分がキモいなと作者の罵りを受けながらも懸命に生きてます((殴
 風子はイラっとするキャラですよね。ちなみにわたしも風子とは絶対に友達になれないです。バンジージャンプとか言って飛び降りる子と仲良くなれる気がしない(汗
 好きになると鬱陶しいくらい一途なんです。悪い子じゃないんですけどね。御門に愛されない悲しみでどんどんねじれていきました。

 全く無関係の二人が姉妹という関係を成立させている。その異常さが、この作品の売りだと思っています。血も繋がってないし、直接的な関係なんて御門を通しての恋愛絡みのものだけ。それでもこれだけお互い依存しあっているって素晴らしく気持ち悪いなと思ってます。
 湊かなえさんの作品は映像化されたものしか見たことがないので、一度は本を読んで見たいなと思ってます^ ^
 うおおおお、大人向けですか。昔書いてた作品も対象年齢もうちょい上でもいいんじゃないかと言われたのですがアレです。わたしの文章はどちらかというと「柔らかい」っていうか、難しい言葉があまりにも少ないので(語彙力の欠如)、複ファの素晴らしい小説と一緒に並べると恥ずかしいのです(〃ω〃)
 優しい蝉が一体どういう意味になるのかは、もう本当ね読んでほしいのです。人によって捉え方はそれぞれになるのですが、鳴子さんがどう解釈するか楽しみにしてまする。そして突然やってくるラップ!マキがやらかしたことについての真実もこれからありますので、是非読んでいただけたらと思います。

 今日も玄関の前で蝉の死骸を見つけました。それくらい私たちにとって蝉って身近なものだし、死に最初に触れる生き物のような気もします。踏み潰すことも無きにしも非ずですよね。こればかりは仕方がないです(汗
 そうなんですよ。死人はよくて思い出にしかなれないんです。だんだん忘れられるし、永遠に記憶に残ることはないんじゃないかとも思います。どれだけ悲惨な事件が起きても一ヶ月もすれば人々の記憶からは忘れられますし。所詮、そんなものっていうのがわたしも考え方です。
 やもおって漢字で書けないですよね。未亡人がやもめって言いますし、そんな感じかな。

 そう言っていただけて光栄です。これからも頑張っていこうと思えます。
 そうですよね、わたしも最初違和感だった風子三人称事件(笑) でも、風子のわがままな性格を表すために「あたし」とかではなく「風子」っていう自分の名前がを人称にしたかったんです。気になりつつ、どうしても譲れなかった部分ですお恥ずかしい()
 初めてスマホでぽちぽち打って完成させた小説ですので、わたしも「うわ、またやってる!」ってくらい誤字が多い作品です。見つけ次第直してるのですがきりがなくて、ほえええ申し訳ないです。早く修正せねば。

 あと三話ほどで完結ですので、もうちょっとだけお付き合いくださいませ。
 本当に読み込んでくれていることがわかる感想で、感動しました。ありがとうございます!
 はい、これからもどうぞよろしくお願いします。

9 ( No.25 )
日時: 2017/08/24 21:36
名前: 立花 ◆FaxflHSkao
参照: 遠野風子の秘密


 マキが死ぬ前日の日付で、手紙が来た。赤い封筒のその便箋の中には一枚の手紙が入っていた。

「その嘘では風子が幸せになれないと思い、最後に手紙を残します」

 一行目の文字で心打たれた。
この人は風子のついた嘘にいつ気づいたのだろう。
 無性にその手紙をぐしゃぐしゃにして、ゴミ箱に捨てたいと思った。やらないけど。

「御門にはわたしが殺したことにしよう。風子がちゃんと口裏を合わせてくれるなら、どうせ最後だし、全てわたしがやったことにすればいい」

 煙草に火をつけて、続きを読んだ。

「前に風子が病室に来たときにわたしが出した紅茶に薬を入れた。それを飲んで風子のお腹の子供は流産した。ちゃんと御門にはそう言うように」

 短い手紙だった。用件だけ書かれた冷たい手紙。
 いつまでも続かない嘘だった。マキにもどうせ最後にバレる嘘を作ったつもりだった。

 キスもエッチもしなかった。御門くんとしかしたくなかった。風子が好きなのは御門くんだけ、今も昔も変わらない。
 きっと風子はまだ青春に、囚われ続けている。


 だから、妊娠もしていない。ちょっとだけ、ちょっとだけでいいから、御門くんにこっちを向いて欲しかった。マキだけしか見てない御門くん、それでも好きだった。だけど。
 どうしようもない。この醜い感情を風子はどこにも追いやることができなかった。


 マキが言った「おめでとう」は、きっと妊娠のことじゃなかったんだ。


「やっと、解放されたんだねって、ことだったんじゃん」

 バカだ。最低だ。
 風子はマキのことを嫌いながらも、マキが風子を救ってくれることを信じていた。都合が良すぎる願いを、ずっとマキに。
 目の縁に涙がたまる。グッとこらえても今すぐこぼれ落ちそうだ。
 ごめんなさい……。ずっと御門くんが欲しくて欲しくて仕方がなかった。風子が望むものをなんでもくれたマキが唯一くれなかったのが、御門くんだった。それだけ大事だったんだ、御門くんのこと。

 こんなのわがままだって気づいてた。それでも、どれだけ嫌われたっていい。どれだけ憎まれたっていい。
 風子はマキの一番になりたかった。

 なれなかった現実と、なろうと努力できなかった後悔で力が入ったのか手紙はいつの間にか皺がたくさん入り、くちゃくちゃになっていた。

「もしもし、御門くん」

 溢れそうになった涙を引っ込めて、スマホのパスコードを御門くんの誕生日であける。
 二回目のコールで御門くんは電話に出た。

「あのね、赤ちゃん流産しちゃったんだ」


 マキがついた最後の嘘は、誰も気づかないままでいいと思った。風子だけが気づいていればいいと思った。



◇遠野風子 19歳

10-1 ( No.26 )
日時: 2017/09/04 21:36
名前: 立花 ◆FaxflHSkao
参照: 槙野つくもの結末

 ずっと考えてることがある。わたしの人生は不幸だったのか否か。考え始めたのは中三の夏。母親の再婚話を聞いたとき。

「じゃあ、もうわたしはいらない?」

 最後に海に行きたいとお母さんにいうと、無言で彼女は運転し、海に連れていってくれた。潮風の匂いと、波の音。お母さんの顔は笑ってなかった。

「そうよ」

 短く答えたお母さんは、そろそろ行くわよと先に車に戻った。
 わたしは海の前に立ってゆっくり前進した。履いたサンダルが水で濡れる。それでも前に進んでいった。腰のあたりまで水に浸かって、ふと気がついた。


 自分は決して死にたいわけじゃないのだと。

 捨てられるのが無性に怖かった。いらないって言われるのがただただ怖かった。


「……っあ、……うぅ、あぁ」

 冷たい。気持ち悪い。
 施設に捨てられたときに気づけばよかった。もうお母さんは、わたしのことなんていらないのだと。また一緒に暮らせるなんて期待しなきゃ良かった。どうせ、叶わない願い事だし。
 溢れる涙が止まらずに、声を殺して泣いた。悲しいと言う感情よりは悔しいという感情の方が大きかった気がする。

 わたしがここで死んだらきっと、お母さんの記憶には絶対に残る。永遠に忘れられない記憶となるだろう。
 でも、無駄だ。こんなことしたって無駄なんだ。

「バカだなぁ、わたし」

 カバンに入れてあったタオルで水を拭き、車に戻った。濡れたスカートは別のに替えたけれど、お母さんは一切気がつかない。
 お母さんの好きな九十年代のアイドルの音楽が流れる車内で、タバコの臭いと無言の圧がわたしを苦しめた。





「風子」

 血だらけの風子を見て、わたしは吐き気に襲われた。バンジージャンプとかふざけたことを言って飛び降りたあの子は、黒板に大きく死ねと残し空を飛んだ。

「わたしに死ねって言ってるみたいだよ」

 黒板消しで必死に消した。誰にも気づかれないように。
 救急車で運ばれていった彼女を見て、わたしはあまり何も思わなかった。

 ただ純粋に、死ぬんだな、って思った。


 死ななかった風子を見て少し落胆した自分がいた。多分、心のどこかで死んでほしいと思っていたのだろう。酷い女だ、わたしは。

「死んだら、風子は幸せになれる。きっと解放されるよ」

 お母さんの束縛から解放される方法は、きっと死ぬことしかない。それはわたしも風子も同じなんだ。考えることは一緒。だけど、行動を起こしたのは風子だった。


 羨ましかった。飛び降りた風子が羨ましかった。

10-2(終) ( No.27 )
日時: 2017/08/26 20:18
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

 御門に結婚しようと言われた日、すぐに荷物をまとめて姿をくらませた。同情されたとは思わなかったけれど、御門の人生の汚点にはなりたくなかった。

「風子に会いたいなぁ」

 御門の家から出て一ヶ月経ったある日、無性に風子に会いたくなった。一種の自慢だ。わたしは風子より先に死ねるんだよ、いいでしょうって、そういう自慢。

 風子にとっての死は、お母さんからの解放だけど、わたしは違う。
お母さんの記憶に一生残る、最悪な記憶となって束縛する。そういう死だ。

「久しぶり」

 メロンソーダばっかり飲む彼女は、前に会った時と変わらない。
 変わったのは髪の毛の色と長さ。黒髪のショートカットになった風子は、最初誰かわからなかった。

「結婚するの?」

 風子が泣いたことに少しだけ優越感を感じた。一番大事だと言いながらも、きっとわたしは一番風子のことが嫌いだったのだ。

「するよ」

 御門と結婚するなんて考えてもなかったけれど、その言葉は簡単に出た。






 御門のことは好きだった。大好きで大好きで仕方なかった。唯一、風子にあげられなかったのが御門だ。

 それくらいに愛してた。誰にも渡したくなくて、必死にしがみついてたのはわたしの方だった。

 だから風子の気持ちが痛いくらいにわかった。
 御門を好きな気持ちは一緒だから。

 風子が妊娠してないことはすぐに気がついた。嘘をつく時、いつも風子は耳の後ろをかく。わたしだけが知ってる癖。
 だから、風子のマグカップに「風子の嘘がバレませんように」と魔法をかけて、持っていった。薬も何も入れてない。

 御門だけには気づかれませんように。
 風子の一世一代の決心が鈍りませんように。


 わたしだけが悪者になりますように。



「喉、乾いた」

 御門に飲み物を買わせにいって、ゆっくりと息を吐いた。胸のあたりがすごく痛かった。自分のしたことが間違いだらけだと今になって気づく。
 ゆっくりわたしは目を閉じた。おやすみなさい。誰もいない病室で、一人で呟いた。
 涙は出なかった。








 蝉が死んだ夏。わたしが死んだ夏。

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