ダーク・ファンタジー小説

ショタくんの反撃!【完結】
日時: 2019/01/05 23:01
名前: 立花 ◆FaxflHSkao




 可愛くて、可愛すぎて、あの頃天使だったショタくんは、
 成長した姿で言うのです。「もう、俺は子供じゃない!」と。










「 お客様 」


 すーぱーうるとらすぺしゃるさんくす!!!!!!!!!!!!!!(意味不明)
 コメントありがとうございます。励みになります。
 読んでくださる皆様もありがとうございます。もしよろしければ、もう暫くお付き合いくださいませ。

■電波 様
□小夜 鳴子 様






藍色の宝石 【中編集】/5作品目

(1作品目)優しい蝉が死んだ夏 >>003
(2作品目) 深青ちゃんは憂鬱だ。 >>029

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4-1 ( No.12 )
日時: 2017/08/21 20:11
名前: 立花 ◆FaxflHSkao
参照: 御門雪無の後悔


「そんなにいい子で疲れない?」

 上から降って着た声の主は、黒いパーカーに短パンの小柄な少年だった。笑っていたはずの口角が引きつったまま動かない。睨みつけるようなその少年の視線に自分が愚かだと気付かされた。

「理想の息子を演じるのって絶対疲れるよ。早く諦めた方がいい」

 塀の上に上ったその少年は、勢いをつけてこちらに飛び降りてきた。
 小学生だろうか。汚れたスニーカーに鋭い瞳。記憶に残るには十分すぎるほど綺麗な顔。

「なんで君にそんなこと言われなきゃいけねーんだよ」
「あ。ごめん、関係ない人間が余計なこと言った。気にしなくていいよ、ちょっと同情しただけ」

 少年の言葉が一つ一つ、俺の胸に刺さる。

「君、名前は?」

 あとで知ったのだけれど、その子は施設児童だった。親がいない子供だそうだ。

「わたし? わたしはマキ」

 またあとで知ったのだけど、その子は少年ではなく、少女、だった。





「あの時のマキは本当に男みたいだった」

 そう言うとマキは頬をリスみたいにぷっくり膨らませて眉をあげた。

「いつの話をしてるの。めっちゃ昔じゃん、会ったばっかの時はわたし、中学一年生だよ?」
「中一の割には、態度デカかったなーマキ」
「うるさい。同い年なんだから態度でかかろうが関係ないじゃん」

 スカートをはいたあの時の少年が、俺のすねを勢いよく蹴る。高校が同じになってから、マキの機嫌がすこぶる悪い。多分、俺がこの前に告白したからだろう。

「マキ、なんで怒ってんの?」
「御門がわたしに好きとか変なこと言うから」

 変なことじゃないじゃん。心の中で反抗するものの、声には出さない。きっとマキに言ったら、もっと機嫌が悪くなるから。
 窓から外を見つめるマキは、俺の方なんか全然見ずに適当に相槌を打つ。俺の恋愛感情を偽物だと勝手に否定する。

「好きだよ。マキ」
「そんなの嘘だ。勘違いだ」

 風で彼女の髪がふわりと靡いた。あの時の男の短い髪がここまで伸びたかと思うと、それだけ年月が経ったんだなと思いしらされる。



『ふーん。でも、御門は御門でしょ。お兄さんと同じになる必要はないと思うけど』



 あの時、自分の中で一番葛藤していた感情を、いともあっさり壊された。
 マキは俺の悩んでることは馬鹿らしいほどちっぽけなことだと教えてくれた。
 俺を救ってくれたマキに、ただ純粋に恋をした。

「好きなんだ。マキ」

 高一の春、君に好きと伝えた。出会いから、三年。一度も君は自分のことを語ってくれない。


4-2 ( No.13 )
日時: 2017/08/21 20:15
名前: 立花 ◆FaxflHSkao


 小学三年生の時、七つ年上の兄さんが死んだ。交通事故であっけなく、俺たち家族が見守る中、永眠した。家族はみんな泣いてて、俺もすごく悲しくて泣いた。
 兄さんは有名な進学校に通う、将来も嘱望されている若者だった。母さんも父さんもみんな兄さんを可愛がっていて、死んだことをなかなか受け入れられなかったのだろう。

「雪無、あなたは圭一のようになるのよ。圭一みたいに、勉強もスポーツも頑張って、みんなから愛される存在になるの。わかったわね」

 兄さんが死んでから、俺は兄さんのようになるように育てられた。猫をかぶるのは当然だったし、愛想笑いも得意になった。
でも、何でかすごく辛かった。自分を自分と認めてもらえない歯がゆさが、苦しかった。

「今日もいるんだ。ここに」

 マキがよくいる公園に自ら足を運んだ。彼女はやっぱり男の子みたいな格好で、暇そうにベンチに座ってる。

「何か用?」

 素っ気なく返されてイラっとしたけれど、俺は別にと言ってマキの隣に座った。沈黙が三分ほど続いて、ようやく口を開いたのはマキだった。

「あんた、本当に何の用? わたしに何を求めてんの?」

 今よりきつい口調で、怒り任せに吐かれた言葉。マキの睨みつけるようなその瞳は、恐ろしかったけどとても綺麗で、見惚れて声が出なかった。
 言い放ってぷいとそっぽを向いたマキは、そのまま立ち上がってスタスタ歩いていった。俺はどうすればいいのかわからずに「待って」と言って追いかけることしかできなかった。

「ねぇ、マキ」
「ああああああうるさい。用がないなら話しかけないで」
「用なんかない!」

 勢いよくマキの腕を引っ張ってこちらに向かせる。

「俺がマキに会いたいって思っただけ」

 言ったあと、マキの顔が女の子になった気がした。ピンクに頬を染めた彼女はやっぱり俺を睨みながら、大きなため息を一つついて手を払いのけた。

「うるさい」

 十二歳のマキは、弱かった。ツンとつついたら砂の塔のように呆気なく壊れそうだった。脆いその心を必死に隠して、彼女は俺のすねを勢いよく蹴った。




4-3 ( No.14 )
日時: 2017/07/30 22:21
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

「どうして?」

 マキは頭にクエスチョンマークを浮かべて、こちらをじっと見た。

「だってみんな兄さんを愛してた。きっと俺は兄さんにならないと、捨てられる。要らないって言われる」

 あの公園のベンチに座りなおして、俺はマキに不安を吐露した。けれど、俺の感情なんかガン無視で、マキは当然のように答える。

「ふーん。でも、御門は御門でしょ。お兄さんと同じになる必要はないと思うけど」

 どれだけその言葉に救われたか、きっとマキは知らないだろう。俺も口下手だから、なかなか上手く言えない。
 マキはバタバタ足をぶらつかせて、その勢いで立ち上がった。そして一回ターンをしてこちらを向いた。

「わたしはニコニコ笑って気持ち悪い御門より、今の御門の方が好きだよ?」

 何気にディスられてることにも気づいていたけど、それよりマキに「好き」と言われたことが嬉しかった。俺と同じ感情ではないことはわかっていたけれど、それでも。
 もう帰ろう、と夕焼けの赤い空を見ながらマキは言った。蝉の鳴き声がしなくなったその場所で、マキの声だけが響く。俺は頷いてゆっくり立ち上がった。マキの隣を歩いていいのは自分だけだと勝手にそう思いこんで、小さな彼女の手のひらを握る。嫌がりながらもその手を握り返す彼女が可愛くて、俺も強く握り返した。この子が俺のものになればいいのに、俺のものだけになればいいのに。伸びた影をじっと見た。自分の今の表情を、マキにも、誰にも、見られたくなかった。






「だからぁ、好きなんだって!」
「うるさいっ。勘違いだって、そんなの」
「勘違いじゃない、だって三年も片想いしてきたんだよ」
「あああああああっ、もううるさいいいい」

 逃げ回るマキに、追いかける俺。かれこれ三十分近くこの鬼ごっこが続いている気がする。
マキはどうして信じてくれないのだろう。あれ、いや、違う。
 マキは信じたくないんだ。自分が愛されようが、いずれ捨てられることを知っているから。

「マキ、じゃあこうしよう」

 たった一つ、逃げ道を準備しないとマキは心を許してくれない。

「いつでも俺のことを捨てていいから。要らなくなったら、いつでも」

 笑った俺を、きっとマキは不快に感じただろう。でも、それがきっと彼女の逃げ道になったのだと思う。差し出した手をゆっくり握った彼女は、あの時の彼女と何も変わらない。

「わたしは、好きになりたくなかったよ」

 いつか要らないと言われるのが、怖かった。一緒だね、俺たち。
 ごめん。困らせてごめん。それでも君を手に入れたいんだ。誰にももう、渡したくない。



◇槙野つくも、御門雪無 高1
 回想 槙野つくも、御門雪無 中1

5-1 ( No.15 )
日時: 2017/08/04 09:41
名前: 立花 ◆FaxflHSkao
参照: 槙野つくもの愛情

「風子のこと、御門はどう思ってるの?」

 ベッドの上で本を読みながら不意に尋ねた。風子に告白されたという話を聞いたのは、ついさっきのことだ。当然のように「マキに言う必要あった?」と答えた御門に、何も言えないわたしは、偶然を装って尋ねる。

「風子ちゃん? そうだね、妹って感じで可愛いよ」
「好きになったりしないの。風子、結構可愛いじゃん」
「んー、それはないかな。俺が好きなのはマキだけだし」

 ぎゅーっと勢いよく抱きしめられて、本が下に落ちた。流れでキスに持ち込まれて、そのまま二人でベッドに入った。

「それより、俺はマキが風子ちゃんのこと好きになるんじゃないかって不安なんだ」
「何それ。わたしがレズになるとでも?」
「でも、マキは風子ちゃんに罪悪感を感じてるだろ。その感情が捻じ曲がったらさ、そうなるかもしれない」

 優しくわたしの髪に触れた御門は、冗談だよと笑って言った。
 でも御門はそんな冗談言わない。きっと本当にそう思ってる。わたしが本当に妹を好きになることはないだろうけど、それでも御門の言葉には胸が騒いだ。

「好きと嫌いと、罪悪感は紙一重だよ」

 わたしより一足先に十七歳になった御門は、歯を見せて笑った。その言葉の真意は分からない。だから、わたしは御門のようには笑えなかった。

「ねぇ、御門。手ぇ握って」

 御門がわたしのことを要らないっていう日が、近づいているようで怖かった。だから甘えるのなんて死んでも嫌だったけど、そうやって御門の気を引いた。
 大きな御門の手を握りながらわたしは思い出す。いつでも捨てていいから、と最後の告白をした御門のことを。

「マキは、そうやって俺に期待させる……」

 本当はずっと好きだった。きっと御門がわたしに恋をするより先に、わたしは御門に恋に落ちていた。
 初めて御門を見た日、可哀想なガキだと思った。親に自分の存在を否定されて、結局自分が何になりたいのか分からなくなっていた御門。無理やり作られた笑顔を振りまくその少年に、最初はただ興味本位で声をかけた。なんとなく自分と似ていると思ったのだ。
 だけど御門はわたしなんかとは全然違う。わたしなんかより、もっともっと強い。
 それが羨ましかった。格好良かった、キラキラして見えた。


 でも言えない。
 わたしも好きなんて絶対に言えない。
 きっとそれは御門もわかってる。わたしは捨てられるのが怖いのだ。大好きな御門のそばにいられなくなるのが、怖くて怖くて仕方がない。だから絶対に言えない。好きだと、言えない。


5-2 ( No.16 )
日時: 2017/08/04 09:43
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

 「好き」と伝えられないのは昔からだった。お母さんにも上手く伝えられずに、だから捨てられた。
 お母さんが再婚をすると言って、私の親権を取り消したとき、彼女は私にこう言った。

「つくもは私のことを嫌いだったんでしょう」

 そうじゃない、そうじゃないんだ。確かにあなたは酷い女だったし、親としては失格だった。それでも大好きだった。たった一人の私のお母さん。
 嫌いじゃないよって言えばよかった。けど、それすらも言えない。

 御門に言えないのも同じだ。
 ただ、好きの伝え方を知らないだけ。






「御門は私のどこが好きなの?」

 デート中に質問すると、御門が驚いたようにこちらをじっと見つめた。そんな変な質問してないはずなのに。

「どしたの、急に」
「どしたって、いや、気になって」
「いつものマキなら「別に御門がわたしのこと好きだろうがどうでもいい」って感じなのに。熱でもあるの、それか変なものでも食べた?」

 御門の手のひらが私のおでこに触れた。熱なんかないのに、対応が酷い。

「どこがって、そんなの」
「かお?」
「え、ちょっと待って。もしかしてマキは顔に自信あった?」
「あ、なにそれめっちゃ失礼!」

 あ、自分で墓穴を掘った。顔に自信があったら、きっと御門がわたしから離れていくなんて考えもしないよ。
 氷だけになったメロンソーダをもう一度飲む。ずずっと嫌な音がしてすぐにストローから口を離した。

「やっぱり、美味しくない」
「ん、なにが」
「メロンソーダ。風子の大好物なんだって、飲み物だけど」

 コップを持って軽く振る。カランコロンと中の氷が音を響かせた。

「それは初耳」
「うん。わたしも最近知った。あの子、意外と子供っぽくて可愛いんだよ」

 風子は未だに御門のことが好きみたいだ。会うたびに「別れないんですか」と連呼してくる彼女にどう反応するのが正しいのかわからなくて、とりあえず「別れない」と笑顔で答えてる。付き合ってると言えば付き合ってるけど、わたしと御門の関係はかりそめだ。ちょんとつつけばあっという間に壊れる。そのわたしたちの関係に触れようとしたのが風子だった。それさえなければ、わたしたちはこのままでいられたのに。

「ねぇ、御門」
「ん。なに」
「結局わたしのどこが好きなの?」

 ポツリと最後に漏らした言葉に、御門は小さく笑って答えた。窓越しでも聞こえる蝉の声。その声とともに、御門は言葉を紡いだ。

「全部。」

 にひひとムカつくぐらいの笑顔で笑ったあと、アイスコーヒーを勢いよく飲み干した。同じくカランコロンと氷の音が響いて、御門はふうと小さく息を吐いた。


◇槙野つくも、御門雪無 高2

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