ダーク・ファンタジー小説

ただ、日常を綴る。
日時: 2019/03/14 22:03
名前: 立花 ◆FaxflHSkao



 可愛くて、可愛すぎて、あの頃天使だったショタくんは、
 成長した姿で言うのです。「もう、俺は子供じゃない!」と。










「 お客様 」


 すーぱーうるとらすぺしゃるさんくす!!!!!!!!!!!!!!(意味不明)
 コメントありがとうございます。励みになります。
 読んでくださる皆様もありがとうございます。もしよろしければ、もう暫くお付き合いくださいませ。

■電波 様
□小夜 鳴子 様






藍色の宝石 【中編集】/5作品目

(1作品目)優しい蝉が死んだ夏 >>003
(2作品目) 深青ちゃんは憂鬱だ。 >>029

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Re: ショタくんの反撃!「その3」 ( No.63 )
日時: 2018/09/04 23:12
名前: はるた ◆OCYCrZW7pg
参照: 名前間違えました。ごめんなさい立花です。

「あ、そういえばショタくんってモデルさんだったんだね。今日さあ会社の同僚に教えてもらって」

 ショタくんが当たり前のように私の家に帰ってくるようになって、洗濯物をたたみながらショタくんとこんな話をするようになった現状に何の違和感も抱かなくなった。慣れって怖い。

「え、待って。お姉ちゃん知らなかったの」
「ああ、結構人気なんだよって今日教えてもらった。私リアル関係にはちょっと疎くて」
「お姉ちゃんってあれだよね、なんていうか、オタクっていうか」
「あ、馬鹿にした!!!??? 私はショタが好きな普通のオフィスレディですぅ!」

 それを普通とは言わないよ、とショタくんから的確なツッコミを受け、私ははあとため息をつく。
 可愛いものが好きだ。尊くなるような、しんどくなるような、心を抉るほどの沼に落ちたジャンルが「ショタ」である。初めてショタくんに会ったとき、彼はまだ小学生で、いっつも私と一緒に学校に行くってランドセル背負ってパタパタと可愛い音を立てて駆けてくる。あの可愛さを、私は恋のようなものと錯覚してしまった。手に入れられない可愛いものを愛したくなった。私のショタ好きのきっかけはショタくんであり、ショタであったショタくんをいくら愛せても、大人になった彼を愛す自信は私には……。

「ねえ、私のことが好きって、ほんと?」
「ああ、ってかそれ何回言ったらわかってくれるの? 俺の気持ちは嘘偽りないよ」
「でもさ、私とショタくん何歳歳離れてるか知ってる?」
「歳の差とか今更関係ないじゃん。俺らもう大人だろ。なあ、いい加減俺のこと「男」としてみてよ」

 私の前髪をかきあげて、ゆっくりとショタくんが顔を近づける。まるでチューする距離まで顔が近づいて私は怖くなって目をつぶった。五秒経っても何も起こらなくて、私がゆっくり目を開けると、ショタくんは私の前にちょこんと座って悲しそうな顔をしていた。

「俺のこと、好きじゃない?」

 まるで子犬みたいな、あの幼き頃のショタくんを思い出させるようなその瞳に私の心臓はバクバクと脈打つ。

「す、好きじゃないことは、ない、けど」
「じゃあ、チューくらいさせてよ」

 むっと口をとがらせるショタくんは、二十歳の大人の男とか自分で言ってたくせにほんと子供みたいだ。ショタくんの大きな右手の手のひらが私の髪に優しく触れる。

「好きなんだよ、お姉ちゃん」

 どきどきする。こんなカッコいいショタくんに口説かれたら普通の女の子なら即落ちで、喜んで付き合ったりするんだろう。だけど、私はそうはなれない。私は推しの夢女子にはなれないから。

「ご、ごめんね。ショタくん」

 簡単に恋に落ちることができたら、きっと私もこんな罪悪感を抱かなくて済むのに。ショタくんの真剣な表情から目を逸らしたくて、私は部屋を出た。あの頃の可愛いショタくんなら、きっとひたすらに可愛いって愛せたのに。私は臆病者だ。恋愛ができない、弱虫だ。ショタくんの気持ちに応えることができないのに、きっとショタくんが別の誰かを好きになったら悲しくなるんだろう。ほんと、嫌な奴だ。

藍色の宝石 ( No.64 )
日時: 2018/09/04 23:26
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

 こんばんは、立花です。
 今回の小説大会で副管理人賞をいただきました。ありがとうございます。前回は次点という結果をいただき、今回は入賞することができました。読んでくださる皆様に最大限の感謝を。ありがとうございます。大好きです。

 それと、大変申し訳ないのですが更新の頻度が見てわかるように低くなっております。八月中にショタくんの反撃!を完結させることができず、まだ序盤の三話なので九月中にも厳しくなる感じです。
 今回のお話はちょっと長くなりそうなので、完結の見込みは十二月に変更させていただきたいと思います。ごめんなさい。自分のペースで完結に向けて頑張ります! 読んでくださった皆様ほんとうにありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願い致します。

Re: ショタくんの反撃!「その4」 ( No.65 )
日時: 2018/09/26 21:09
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

「で、お前はショタくんから逃げてきたわけ、だと」

 ジトっとした視線で上はTシャツ、下はジャージ姿の潮見がため息をつく。
 さすがに夜の十一時に同僚の家に行くのはアウトらしい。眠たそうな表情を隠すことなく、鬱陶しがりながら欠伸をひとつ。潮見の住んでいるアパートの一室の座敷に惹かれた座布団に私は腰を下ろし、淹れてもらったお茶を一口飲んだ。


「でもさ、私は悪くないんだ」
「また、お前は。この前も合コンで仲良くなった男に告白されて泣いてたのは誰だよ」
「あ、あれはさっ」
「告白されたくないならそもそも合コン行くなよ」
「あれはあ、だってえ」
「きもい」

 私のことを一喝する潮見は、間違ったことを言わない。だから好きだ。友達として大好きだ。

「私はこうやって潮見とずっと楽しく喋ってたら、一生幸せなのに」
「なにそれ、プロポーズ?」
「やだよ、潮見とえっちなことするより、エッチな本を一緒に見てるほうが楽しい」

 潮見はまた大きなため息をついて、私の表情を窺う。

「好きってわかんない。男の好きはえっちなことをしたい好きなんでしょ」
「まあ、間違いじゃないんじゃね。女だって性欲込みの愛だの恋だのそんなもんに囚われてるだろ」
「私はそういうの興味ない」
「お前が希少種なんだよ」

 グダグダ話しているうちに十二時を回っていた。明日が今日になって、きっとどんどん時間は過ぎていく。いつの間にかショタくんが大人になったように。時間は一瞬で過ぎて、今は泡のように消える。
 潮見が眠たそうに目をこすって、私も眠気が少しずつ増していく。

「ショタは恋愛に絡まないんだよ。だから尊いの」
「お前がショタ受け否定派なだけだろ、それ」
「ショタは犯されないし、犯さない。女の人と恋に落ちても、えっちなことはしないから。可愛いって思われて、結局恋愛対象にはならないの。だから好きなの」

 床に散乱したBL本には絶対にショタはいなかった。ショタは存在が尊いだけだから、私たちにとってショタはそれ以上になることも、それ以下になることもなかった。
 
「ショタは永遠に私たちの夢なんだよ。物語に出てきて動いても結末を壊す存在にはなっちゃだめなの」

 それはお前の持論だろ、と潮見が唾を吐く。すたすたと潮見が歩いていって、奥にあった引き出しから何冊か本を持ち出して机の上に置いた。それは今まで見たことのない


「え、ちょ、待って……こ、これ、ショタ受け」
「オレはショタ受けウェルカム民だから」
「ちょまって、待って無理無理無理無理やだああああああ。潮見嘘だよね、嘘って言ってよ。やだ、ショタ成長後攻めのほうが萌えない????????」
「可愛いから俺の中ではショタは攻めにはならない」
「嘘だああああああああああ」



 潮見とカップリング戦争で口を利かなくなるまであと、数分。

Re: ショタくんの反撃!「その5」 ( No.66 )
日時: 2018/09/27 20:05
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

「つらい、まじつらみ。しんどい、もう無理。ありえない、しんどい」
「お姉ちゃん、語彙力どこに捨ててきたわけ?」

 部屋に戻ると、まだショタくんは起きていて、ヘロヘロになって帰ってきた私にお茶を淹れてくれた。お茶を飲みつつも、さっきの潮見との会話を思い出して涙が出そうだった。口から出る言葉は文字にしかならなくて、心配したショタくんが私の顔を覗いてくる。

「あ、あのね、潮見が意地悪言ったの」
「……待って、潮見って誰? おとこ?」
「会社の同僚。男だけど、私の友達」
「じゃあ、今の今までこんな夜遅くにお姉ちゃんはその潮見って男の家に行ってたってこと?」

 ショタくんの声音が少し低くなる。睨むような目つきになったショタくんの瞳が私の瞳と重なって、すぐに視線を逸らすことができなかった。そういえば、ショタくんは私のことが好きなんてそんな馬鹿なことを言っていたなとようやく思い出して、悩みこむのも嫌だったからまたお茶をごくごくと飲んだ。氷の入った麦茶がゆっくり体内に流れ込んでいって、乾いていた喉が潤う。機嫌の悪いショタくんが拗ねたようにぷっくり頬を膨らませて頬杖をついた。

「そんな無防備だと、お姉ちゃんはあっという間に襲われちゃうんじゃないの、そのオオカミに」
「それはない。どっちかというと、襲われるのはショタく」
「……え?」
「いえ、なんでもございません。ショタくんは美味しいです」

 意味不明な言動になりながら、私はそっとショタくんから目を逸らす。
 子供時代のショタくんは守りたい天使、マイスイートエンジェルで、でも成長した今のショタくんは全然違う。あの頃のショタくんの面影が、私にはよくわからなくて。

 人を簡単に好きになれたらもっと楽に生きられるのにね、と昔仲の良かった友達と語り合ったことがある。深夜のカラオケで、人気声優が歌うアニメのオープニングを吠えるように歌いながら、人生に疲れたなんてまだ学生の癖にそんなことを愚痴った。まだ子供だった。あのまま、ただ純粋に恋に否定できる性格のままだったら、きっと今すぐショタくんにちゃんと返事ができる。答えはノーだ。私には「恋愛」という感情が欠けている。私は欠陥品なんだ。


「お姉ちゃんは、その人のこと好きじゃないの?」
「好きになれたらきっと楽だよね。だって、すごく気が合う同士なんだもん」
「ふーん」

 ハッピーエンドに巡り合って、そのまま一緒に心中できたらこれ以上に幸せなことなんかないのに。
 ショタくんが大きな欠伸をした。気づけばもう深夜二時を回っている。早く寝ようと、私はショタくんに言って布団を敷いた。お客さん用のお布団に横になったショタくんは一分も経たないうちに深い眠りについて、なんだか寝顔はあの時の子供っぽい可愛さを少しだけ感じ取れた。
 ふいにショタくんのおでこに手が触れて、ショタくんのあったかい熱がじんわりこちらまで伝わってきた。可愛い。私のことを好きなショタくんはとっても可愛い。愛おしい。
 大切なものはずっと宝箱に詰め込んで、誰からも見られないように隠していたい。ショタくんを誰にも渡したくなかったあの頃と今は何が違うのかわからなくて、私は少しだけ泣きそうになった。

 

Re: ショタくんの反撃!「その6」 ( No.67 )
日時: 2018/10/04 23:23
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

「高校の文化祭?」

 休憩室でコーヒーを飲みながら、潮見が私の言葉を繰り返し呟いた。

「そう、ショタくんがねえ仕事でイベントするんだって。で、私に来てほしいんだって」
「ふうん。じゃあ、行ってやればいいじゃん」
「潮見はそう思うんだ」
「なに、俺に止めてほしかったの、おまえ?」

 潮見が紙コップに入ったコーヒーを一気に飲み干して、ごみ箱に緩い曲線を描いて放り捨てた。どや顔をして見せた潮見に少しだけイラっとして、私はごほんと大きな咳ばらいを一つしてみせた。

「そうじゃなくて、潮見についてきてほしかったんですぅ」
「それって、そのショタくんが出るっていう文化祭のイベントの話?」
「そう。潮見が私の彼氏役で、もうショタくんには可能性がないって、ちゃんと教えてあげないと」
「ショタくんにはお前が俺のこと好きじゃないって言ってるんだろ。なら矛盾するんじゃねえの」
「それでも、どうしようもないじゃん。私はきっと、早くショタくんの記憶から消えないといけない」


 泣きそうになる私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた潮見は、少し切なそうな表情で「わかった」と呟いた。潮見は全部知ってるから、きっと私の味方でいてくれるのだ。だから、私はそれに甘えてしまう。甘えちゃいけないって分かってるのに、それなのに。

「可愛い可愛いショタくんなら、純菜は愛せただろうにな」


 潮見はスマートフォンを少しだけいじって、ポケットにしまうとすぐに休憩室から出て行った。きっと煙草でも吸いに行ったのだろう。私もコーヒーを飲み終えると席を立って、オフィスのほうに戻った。パソコンの前に戻ると、なぜか心が落ち着く。仕事をしている時だけ忘れられるこの感情を、ショタくんが来るまでは私は胸の奥深くに隠していた。でも、もうどうしようもない。ショタくんがゆっくり開けてしまう。無理やりこじ開けられていくこの感情の正体を私は知っていた。思い出したくなかったのに。

「そうだよ、私は可愛いショタくんなら愛せたんだよ」





 ■


「どうしよう、潮見、このジャンル沼だったよ」
「お前、擬人化系すぐに沼落ちするよな」
「やっばい、このキャラめちゃんこ可愛くない? これ天使だよ」
「ああ、でも可愛いな。うん、アリかも」
「これはメイトいかなきゃだよ、メディア系でドラマCD発売中だって、買うからちょっと帰りATM寄っていい?」
「ご利用は計画的に、な」


 はーい、と右手を大きく上げて、会社を出た。近くのコンビニによってキャッシュカードで数万円を下ろす。このお金がたった一日で泡となって消えていくのは、オタクならば仕方がないことだ。これが私たちの平和。私たちの推しへの貢ぎが世界を救うのだ。

「そうだ、来週の日曜日の待ち合わせって、お前んちまで迎えに行っていいの?」
「え、もしかして潮見が車で送ってくれる感じ?」
「そのつもりだった」
「まじかよ神じゃん。潮見君大好き」
「嘘つけ。お前が好きなのは――」

 潮見が開いた口を私が勢いよく掌でふさいだ。何も言わないでほしい、何も思い出させないでほしい、きっと私の気持ちが伝わったのだろう。潮見はごめん、と短く呟いて私の前をスタスタと歩いて行った。

 メイトで二人で合計○万円使ったことは、きっと二人でお酒を飲んでるころにはもうすっかり忘れているのだろう。うん、仕方がない。そして二人して新ジャンルの沼に浸かって、挙句次の日にはそのジャンルの話しかしなくなってることは、もう最初の段階で分かり切っていたことだった。

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