ダーク・ファンタジー小説

ショタくんの反撃!【完結】
日時: 2019/01/05 23:01
名前: 立花 ◆FaxflHSkao




 可愛くて、可愛すぎて、あの頃天使だったショタくんは、
 成長した姿で言うのです。「もう、俺は子供じゃない!」と。










「 お客様 」


 すーぱーうるとらすぺしゃるさんくす!!!!!!!!!!!!!!(意味不明)
 コメントありがとうございます。励みになります。
 読んでくださる皆様もありがとうございます。もしよろしければ、もう暫くお付き合いくださいませ。

■電波 様
□小夜 鳴子 様






藍色の宝石 【中編集】/5作品目

(1作品目)優しい蝉が死んだ夏 >>003
(2作品目) 深青ちゃんは憂鬱だ。 >>029

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ショタくんの反撃!「その2」 ( No.62 )
日時: 2018/11/10 14:59
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

「で、純菜はどうすんの、それ」
「え、どうするって?」

 お昼休憩中。職場で同僚の潮見とここ最近の非日常の話をしていると、彼は唐突にそう聞いてきた。

「だって、もうそいつはショタじゃないんだろ。じゃあ、もうお前のストライクゾーンからは大きく外れて、ってかむしろ圏外じゃん」
「あー、ほんとそれ、つらみ。まじ、つらみ」
「しかも、その翔太くん? って、あれだろ、なんか最近話題の」
「話題……?」

 休憩室の端っこにある雑誌コーナーから一冊の人気雑誌を彼は持ち出してきた。見て、びっくり。なんとその表紙にはあのショタくんの顔がばっちり映っている。

「ちょ、え、待って、なにこれ。ショタくんじゃんっ」
「ああ、さっき名前聞いたあたりからなんか聞いたことあんなぁって思ってたら、やっぱそうなんだ。ってか、お前もこれくらい知っとけよ。嵯峨翔太っていったら、今話題のモデルじゃん」


 潮見がさらっというものだから、もう私はプチパニック。雑誌をパラパラめくってみると、ショタくんの特集が十ページくらいにわたって続いていた。あの頃のショタくんを匂わせるものなんて一つもない成長してしまった彼の姿に私は心底ショックを受けて、ゆっくりとその雑誌を閉じた。


「しおみいいいい、どうしよう、なんかイケメンと一緒に暮らしてる私やばいよおおおおお」
「おう、ファンに見つかって焼け野原になる前に次の部屋探しとけよ」
「やだよおおお、ショタくんのファンに家燃やされるなんてやだああああああ」

 家に帰ると、きっと今日もショタくんは当然のように私の帰りを待っているのだろう。最近は気軽に「好きだよ」なんて私に触れてくるようになった。ませてる。本当あいつませてる。

「潮見、やっぱさ、ショタは健気で儚くて……」
「可愛いのが鉄則だよな」
「だよね!!!!!ほんと、それ!!!!!」


 私は潮見の手を取ってぶんぶん振った。
 潮見は私の同僚で、親友だ。入社式のあとにあった歓迎飲み会でショタ好きの趣味がお互い発覚し(正しくは酔っぱらったせいでうっかり喋ってしまった)すぐに仲良くなった私たち。いい新刊が手に入るたびに二人飲み会を開き、明け方まで語りつくす。周りは私たちが付き合ってるなんて勘違いをしているけれど、むしろ好都合だ。潮見に彼女なんかできたらこの幸せの時間が終わってしまう。そんなの嫌だ。


「潮見はずっと私のショタ好き仲間だよね!!!!」
「どした、急に」
「なんか、いま潮見に彼女できた時のこと考えちゃった」
「あー、まぁしばらくはできないだろうな、お前とこうやって喋るほうが楽しいし」

 潮見が歯を見せて笑う。私も満面の笑みを浮かべて今日もサイトで発見したショタ小説を潮見に見せる。
 こんなにもショタは素晴らしく、天使なのに。
 いつかは大人になってしまう短いその時間を、私たちは止めることができないからとても歯がゆい。ショタくんがあのまま、ずっと可愛い子供のままだったら、私は彼の好きに全力で応えれたのだろうか。



Re: ショタくんの反撃!「その3」 ( No.63 )
日時: 2018/09/04 23:12
名前: はるた ◆OCYCrZW7pg
参照: 名前間違えました。ごめんなさい立花です。

「あ、そういえばショタくんってモデルさんだったんだね。今日さあ会社の同僚に教えてもらって」

 ショタくんが当たり前のように私の家に帰ってくるようになって、洗濯物をたたみながらショタくんとこんな話をするようになった現状に何の違和感も抱かなくなった。慣れって怖い。

「え、待って。お姉ちゃん知らなかったの」
「ああ、結構人気なんだよって今日教えてもらった。私リアル関係にはちょっと疎くて」
「お姉ちゃんってあれだよね、なんていうか、オタクっていうか」
「あ、馬鹿にした!!!??? 私はショタが好きな普通のオフィスレディですぅ!」

 それを普通とは言わないよ、とショタくんから的確なツッコミを受け、私ははあとため息をつく。
 可愛いものが好きだ。尊くなるような、しんどくなるような、心を抉るほどの沼に落ちたジャンルが「ショタ」である。初めてショタくんに会ったとき、彼はまだ小学生で、いっつも私と一緒に学校に行くってランドセル背負ってパタパタと可愛い音を立てて駆けてくる。あの可愛さを、私は恋のようなものと錯覚してしまった。手に入れられない可愛いものを愛したくなった。私のショタ好きのきっかけはショタくんであり、ショタであったショタくんをいくら愛せても、大人になった彼を愛す自信は私には……。

「ねえ、私のことが好きって、ほんと?」
「ああ、ってかそれ何回言ったらわかってくれるの? 俺の気持ちは嘘偽りないよ」
「でもさ、私とショタくん何歳歳離れてるか知ってる?」
「歳の差とか今更関係ないじゃん。俺らもう大人だろ。なあ、いい加減俺のこと「男」としてみてよ」

 私の前髪をかきあげて、ゆっくりとショタくんが顔を近づける。まるでチューする距離まで顔が近づいて私は怖くなって目をつぶった。五秒経っても何も起こらなくて、私がゆっくり目を開けると、ショタくんは私の前にちょこんと座って悲しそうな顔をしていた。

「俺のこと、好きじゃない?」

 まるで子犬みたいな、あの幼き頃のショタくんを思い出させるようなその瞳に私の心臓はバクバクと脈打つ。

「す、好きじゃないことは、ない、けど」
「じゃあ、チューくらいさせてよ」

 むっと口をとがらせるショタくんは、二十歳の大人の男とか自分で言ってたくせにほんと子供みたいだ。ショタくんの大きな右手の手のひらが私の髪に優しく触れる。

「好きなんだよ、お姉ちゃん」

 どきどきする。こんなカッコいいショタくんに口説かれたら普通の女の子なら即落ちで、喜んで付き合ったりするんだろう。だけど、私はそうはなれない。私は推しの夢女子にはなれないから。

「ご、ごめんね。ショタくん」

 簡単に恋に落ちることができたら、きっと私もこんな罪悪感を抱かなくて済むのに。ショタくんの真剣な表情から目を逸らしたくて、私は部屋を出た。あの頃の可愛いショタくんなら、きっとひたすらに可愛いって愛せたのに。私は臆病者だ。恋愛ができない、弱虫だ。ショタくんの気持ちに応えることができないのに、きっとショタくんが別の誰かを好きになったら悲しくなるんだろう。ほんと、嫌な奴だ。

藍色の宝石 ( No.64 )
日時: 2018/09/04 23:26
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

 こんばんは、立花です。
 今回の小説大会で副管理人賞をいただきました。ありがとうございます。前回は次点という結果をいただき、今回は入賞することができました。読んでくださる皆様に最大限の感謝を。ありがとうございます。大好きです。

 それと、大変申し訳ないのですが更新の頻度が見てわかるように低くなっております。八月中にショタくんの反撃!を完結させることができず、まだ序盤の三話なので九月中にも厳しくなる感じです。
 今回のお話はちょっと長くなりそうなので、完結の見込みは十二月に変更させていただきたいと思います。ごめんなさい。自分のペースで完結に向けて頑張ります! 読んでくださった皆様ほんとうにありがとうございます。これからもどうぞよろしくお願い致します。

Re: ショタくんの反撃!「その4」 ( No.65 )
日時: 2018/09/26 21:09
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

「で、お前はショタくんから逃げてきたわけ、だと」

 ジトっとした視線で上はTシャツ、下はジャージ姿の潮見がため息をつく。
 さすがに夜の十一時に同僚の家に行くのはアウトらしい。眠たそうな表情を隠すことなく、鬱陶しがりながら欠伸をひとつ。潮見の住んでいるアパートの一室の座敷に惹かれた座布団に私は腰を下ろし、淹れてもらったお茶を一口飲んだ。


「でもさ、私は悪くないんだ」
「また、お前は。この前も合コンで仲良くなった男に告白されて泣いてたのは誰だよ」
「あ、あれはさっ」
「告白されたくないならそもそも合コン行くなよ」
「あれはあ、だってえ」
「きもい」

 私のことを一喝する潮見は、間違ったことを言わない。だから好きだ。友達として大好きだ。

「私はこうやって潮見とずっと楽しく喋ってたら、一生幸せなのに」
「なにそれ、プロポーズ?」
「やだよ、潮見とえっちなことするより、エッチな本を一緒に見てるほうが楽しい」

 潮見はまた大きなため息をついて、私の表情を窺う。

「好きってわかんない。男の好きはえっちなことをしたい好きなんでしょ」
「まあ、間違いじゃないんじゃね。女だって性欲込みの愛だの恋だのそんなもんに囚われてるだろ」
「私はそういうの興味ない」
「お前が希少種なんだよ」

 グダグダ話しているうちに十二時を回っていた。明日が今日になって、きっとどんどん時間は過ぎていく。いつの間にかショタくんが大人になったように。時間は一瞬で過ぎて、今は泡のように消える。
 潮見が眠たそうに目をこすって、私も眠気が少しずつ増していく。

「ショタは恋愛に絡まないんだよ。だから尊いの」
「お前がショタ受け否定派なだけだろ、それ」
「ショタは犯されないし、犯さない。女の人と恋に落ちても、えっちなことはしないから。可愛いって思われて、結局恋愛対象にはならないの。だから好きなの」

 床に散乱したBL本には絶対にショタはいなかった。ショタは存在が尊いだけだから、私たちにとってショタはそれ以上になることも、それ以下になることもなかった。
 
「ショタは永遠に私たちの夢なんだよ。物語に出てきて動いても結末を壊す存在にはなっちゃだめなの」

 それはお前の持論だろ、と潮見が唾を吐く。すたすたと潮見が歩いていって、奥にあった引き出しから何冊か本を持ち出して机の上に置いた。それは今まで見たことのない


「え、ちょ、待って……こ、これ、ショタ受け」
「オレはショタ受けウェルカム民だから」
「ちょまって、待って無理無理無理無理やだああああああ。潮見嘘だよね、嘘って言ってよ。やだ、ショタ成長後攻めのほうが萌えない????????」
「可愛いから俺の中ではショタは攻めにはならない」
「嘘だああああああああああ」



 潮見とカップリング戦争で口を利かなくなるまであと、数分。

Re: ショタくんの反撃!「その5」 ( No.66 )
日時: 2018/09/27 20:05
名前: 立花 ◆FaxflHSkao

「つらい、まじつらみ。しんどい、もう無理。ありえない、しんどい」
「お姉ちゃん、語彙力どこに捨ててきたわけ?」

 部屋に戻ると、まだショタくんは起きていて、ヘロヘロになって帰ってきた私にお茶を淹れてくれた。お茶を飲みつつも、さっきの潮見との会話を思い出して涙が出そうだった。口から出る言葉は文字にしかならなくて、心配したショタくんが私の顔を覗いてくる。

「あ、あのね、潮見が意地悪言ったの」
「……待って、潮見って誰? おとこ?」
「会社の同僚。男だけど、私の友達」
「じゃあ、今の今までこんな夜遅くにお姉ちゃんはその潮見って男の家に行ってたってこと?」

 ショタくんの声音が少し低くなる。睨むような目つきになったショタくんの瞳が私の瞳と重なって、すぐに視線を逸らすことができなかった。そういえば、ショタくんは私のことが好きなんてそんな馬鹿なことを言っていたなとようやく思い出して、悩みこむのも嫌だったからまたお茶をごくごくと飲んだ。氷の入った麦茶がゆっくり体内に流れ込んでいって、乾いていた喉が潤う。機嫌の悪いショタくんが拗ねたようにぷっくり頬を膨らませて頬杖をついた。

「そんな無防備だと、お姉ちゃんはあっという間に襲われちゃうんじゃないの、そのオオカミに」
「それはない。どっちかというと、襲われるのはショタく」
「……え?」
「いえ、なんでもございません。ショタくんは美味しいです」

 意味不明な言動になりながら、私はそっとショタくんから目を逸らす。
 子供時代のショタくんは守りたい天使、マイスイートエンジェルで、でも成長した今のショタくんは全然違う。あの頃のショタくんの面影が、私にはよくわからなくて。

 人を簡単に好きになれたらもっと楽に生きられるのにね、と昔仲の良かった友達と語り合ったことがある。深夜のカラオケで、人気声優が歌うアニメのオープニングを吠えるように歌いながら、人生に疲れたなんてまだ学生の癖にそんなことを愚痴った。まだ子供だった。あのまま、ただ純粋に恋に否定できる性格のままだったら、きっと今すぐショタくんにちゃんと返事ができる。答えはノーだ。私には「恋愛」という感情が欠けている。私は欠陥品なんだ。


「お姉ちゃんは、その人のこと好きじゃないの?」
「好きになれたらきっと楽だよね。だって、すごく気が合う同士なんだもん」
「ふーん」

 ハッピーエンドに巡り合って、そのまま一緒に心中できたらこれ以上に幸せなことなんかないのに。
 ショタくんが大きな欠伸をした。気づけばもう深夜二時を回っている。早く寝ようと、私はショタくんに言って布団を敷いた。お客さん用のお布団に横になったショタくんは一分も経たないうちに深い眠りについて、なんだか寝顔はあの時の子供っぽい可愛さを少しだけ感じ取れた。
 ふいにショタくんのおでこに手が触れて、ショタくんのあったかい熱がじんわりこちらまで伝わってきた。可愛い。私のことを好きなショタくんはとっても可愛い。愛おしい。
 大切なものはずっと宝箱に詰め込んで、誰からも見られないように隠していたい。ショタくんを誰にも渡したくなかったあの頃と今は何が違うのかわからなくて、私は少しだけ泣きそうになった。

 

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