ダーク・ファンタジー小説

不思議な雨、降れ降れ
日時: 2017/10/12 01:46
名前: 濡濡

 雨が降る。「シルベル」という雨が降る。
いつ降るか、何時間降るか、どのくらいの激しさなのか。様々な技術が進化してもわからないとか。
「シルベル」に当たりすぎると今の自分が抱える悪い感情を放出するらしい。
──そんな雨がポツ、ポツリと降ったようだ。「シルベル」は透明でなく闇のオーラで淀んでいる。
 そうだ、傘をさそう。君も傘をさしなよ。



 「え、傘、ささないの? 」



 僕がそういうと君は体全身から闇のオーラを放出させて目の前にいる僕に襲いかかろうとしている。
 あぁ、困ったものだ。雨からも、そして君からも逃げないと、だ。









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 どうも、スレ主の濡濡です。この板での長編となります。
テーマは「雨」。打たれ過ぎると負の感情を放出する「シルベル」という雨が降る世界です。
 雨によって隠していた感情を露にする人間たち。そうしたところで何になるのか……。



 のんびり見ていただけたら幸いです。








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Re: 不思議な雨、降れ降れ ( No.1 )
日時: 2017/11/13 11:32
名前: 濡濡
参照: 千文字から二千文字しか

 雨が降る。その雨はいつ降るか、どの位降るのかが一切分からん不思議な雨、「シルベル」



 「雨がポツポツ、これは……シルベル」



 思わず、そう呟いた。意味もなく放心状態になってしまっている僕。
傘の中から不穏なオーラ漂うシルベルをただ、見るだけ。歩かず、ただ空を見上げるだけ。
瞬きも忘れて見ていたから目には涙が溜まり、そして流れて落ちていく。
が、少し目が乾燥して痛くなって瞬きをする。すると、溜まっていた涙がまた落ちていく。
 すると、前方からコツコツ、とブーツやらハイヒールやらの歩く音がする。
その方を見るとOLらしき若めで綺麗な女性が黒く長い髪を揺らして傘を指して歩いてくる。
そして通り過ぎる。しばらくすると、言葉と思えぬ叫び声が後ろから聞こえてきた。
後ろを向くと女性は傘を投げて雨に当たっていた。黒い髪は雨に濡れ、ぺたっとなってしまっている。
服も濡れていくが彼女はそんなこと気にせず、訳の分からぬことを叫んで笑っていた。



 「シルベル、人間の闇を引き出す不思議な雨。この世が嫌になったら当たる……」



 シルベルの基本情報をうわ言のように言う。誰かに宛てた訳でもなく、単なる独り言。
傘を指して歩いていくと、雨に当たる人間をちらほら見掛ける。
彼らは皆、何かを叫んでいたがそんなの分かりっこなかった。
 僕自身、今の人生に不満もなく満足もしていない。どうでも良い。そう、思っている。
感情が完全に欠落した訳ではないが、欠けているのかもしれない。
訳もなく涙を流したくなる、訳もなく何かを切りたくなる、訳もなく誰かを殴りたくなる。
 ただ、ずっと一人でいたから誰かに優しくする必要もないし自分らしく生きれば良いのに。
どうしてもそれが出来ない。どうしても人の目が気になってしまう。
だからこんな雨の日でも晴れの日でもマスクをする。少しでも自分を隠せる、という安心感。
 なのに僕はどうして外に出ているのだろう。仕事は家でも出来る職だからその必要はない。
日用品、食料は買ってある。服には興味ない。適当に選んで着ているだけだ。
きっと外に出たい理由があったのだろうが、記憶がすぐに無くなってしまう僕には分からない。
考えて、覚えようとしてもすぐに忘れてしまう。だからメモ用紙とペンは必須なのだが。
どうやら書き忘れてしまったのかな。ただ、日常的な行動はちゃんと出来るし不自由しない。
こんな雨の中で自分が何したいかなんて分かんないから別に良いやと思った。
 そんな道中にも彼らは雨に当たり、負の感情を言葉にして叫びにして喚き散らす。
そんな彼らが、自分に正直な彼らが羨ましいと思った。
でも「シルベル」の力を借りて感情を出すなんて少し負けたような気がする。
だから今日も傘を指してシルベルが降る中、歩いている。

Re: 不思議な雨、降れ降れ ( No.2 )
日時: 2017/11/21 01:22
名前: 濡濡
参照: 希望なんて何処かにあるのか




 今日は晴れ。雲一つない晴れだから快晴と言うのか。でもそんなことはどうでも良かった。
どちらにせよ僕は仕事がある故に家に引きこもらなければならない。
 一般的に仕事をするというのは会社やスタジオなどに行くなどの行程も含む。
だが、僕にはその必要がなかった。仕事をする場所がない訳じゃない。ニートでもない。
僕の仕事場は家、僕の住み処である。仕事内容は大したこともないがある程度の収入を稼いでいる。
冬で乾燥しているが、僕はそんな外に出ることなくエアコンによって暖められた部屋で仕事。
なんという、幸せなのだろう。



 「でもそれは違うのだろう……」



 自分で考えていたことを引き継ぐように僕はそれを呟いていた。
そうだ、別に寒さなんて気にしてない。外に出るのが苦手なのは人がいるからだ。
かと言いつつ、僕自身はいじめられたり暴力を振るわれた云々なんて経験したことはない。
ただ、周りはいつもそれらばかり。しかし不思議なことに僕だけはその対象にはならなかった。
 今さら考えても無駄だろうと思っていたが思うことはあった。
それは彼らが僕を避けていた、こと。それなら、弱々しい僕を暴力せず、いじめようともしないだろう。
大人になった今でも僕は周りからはよく女の子扱いされる。もちろん、嬉しくないが。
そんな僕でも脅されたり痴漢されたりその他諸諸されたことは一度もなかった、人生において。
 そう言えば僕を育ててくれたあの人達もそうだった。何処か僕には他人行儀だった。
年上の人、年下の人が兄弟にいたが彼らには優しくするし親のように接しているのに。
僕だけ、何か違う。他人行儀というか、恐れていたのか?
 


 「はぁー、考えてもきりがないのに何も考えているのだろう、僕は」



 エアコンが温風を出しながら唸る室内でカタカタ、パソコンを鳴らしていく。
朝から昼になると人や車が騒ぎ始めた。その声が微かに聞こえてきた。
室内で垂れ流していた曲に乗せられ、そしてその騒ぎ声はいずれ消えた。
 そんな音に耳を傾けながらカタカタ。そうすると、気付けば烏が恒例行事と言わんばかりに鳴く。
どうやら彼らも退屈なのだろうか。それなら僕と同じだ。
 晩飯を食べながらテレビを観ていてもそこまで楽しめなかった。
過去に僕は“ずっと一人で生きてきた“のようなことを書いたか、思っていただろう。
 あれは嘘ではないし本当でもないと思う。周りから見れば嘘で、僕から見たら本当。
でもそんなこと、どうでもいいのかもしれない。所詮、そんなこと。
 晩飯は何だっただろうか、少し辛い。噛んだ。キムチか?
メモには「キムチ鍋」。どうやら大当たりだったようだが何故それを考えたのだろう?
 そんなことは流してしまおう。手短に風呂に入ってまた仕事を再開した。
そうしていれば、もう日付が変わる頃だ。意味はないがそうなれば仕事を切り上げ、寝る。
 それがどうやら僕の唯一の習慣であったようだ。そして気付けば烏が鳴き、他も鳴き始める。
それだけを毎日繰り返す、そう思うととても退屈だと感じた。

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