ダーク・ファンタジー小説

そうだ、つまらない話をしてあげよう【完結】
日時: 2018/01/06 16:31
名前: 雪姫

そう公園で一人優雅にお昼ご飯を食べていた私に話かけてきたのはホームレスのお爺さんでした。
「どうかな? つまらなさそうな顔をしているお嬢さん」
お嬢さん誰のことかしら。公園にはまばらに人がいるわ。
でもベンチ座った私を真っ直ぐに見つめて話かけるお爺さんは一人しかいないわ。
一メートル先で地面に新聞紙を引いては座禅を組んで酒缶を片手にニタニタと話かけるお爺さんは一人しかいないわ。
「もしかして私に話しかけているのかしら」
「そうだよ。つまらなそうな顔をしたお嬢さん。君以外に誰がいるのかな?」
変な問いね。そう思いながら辺りを見渡してみたけどお爺さんの言う、つまらなそうな顔をしたお嬢さんとやらはいなかったわ。
いるのは公園で楽しくピクニックをしている小さい子供連れの家族とジョギングを楽しむ若い男性とその他通行人と私とお爺さん。
「確かにそうね。それで? つまらない話というのは貴方のそのだらしなく伸ばした髭の話かしら」
語尾を少々強めに蔑むような目で言ってあげるわ、ホームレスのお爺さん。
着ている衣服は当然ボロボロ。継ぎはぎだらけであっちこっち破れているわ。伸ばした白髪の頭もボサボサ、長い自慢のお髭も自然に任せて伸ばしたせいでボサボサ。
あぁ……なんてみすぼらしくてつまらないお爺さんなのかしら。
「面白い事を言うねお爺さん」
このお爺さんには皮肉というものがないのかしら。
「残念だけどわたしの髭の話ではないよ」
「そう。それは残念ね。じゃあお話はこれで終わりかしら、つまらないお爺さん」
お爺さんとのつまらない会話を終了させて、また一人優雅に昼飯を食べようとしたのだけど、
「まあまあ、そんなに慌てなさんな。つまらなそうな顔のお嬢さん」
お爺さんがまた話しかけてきたわ。
「一つだけでいい、つまらない休日の数分だけでいい、爺の戯れだと思って付き合ってくれないかな」
チラッと公園に備え付けられている大きな時計の針をみると丁度正午、十二の所で長針と短針が重なり合っていたわ。
迎えが来るまでにはまだ数時間と猶予があるわね。
「……確かにつまらない長い休日のほんの数分、つまらないお爺さんのつまらないお話に付き合ってあげるのもいいかもしれないわね」
お年寄りは大事にするものだと、お母様も言ってらしたからね。
そう私が言うとお爺さんはパァァアと満開の花が咲いたような満面の笑みを浮かべ、腕を大きく広げて公園にいる誰もに聞こえる大きな声で、
「じゃあ最高につまらない話をしてあげよう! これはとある男の話なんだけどね――」
つまらないお爺さんの口から最高につまらない話が始まったわ。
聞いている観客たちは私だけ。喋っているのはお爺さんだけ。私とお爺さんの二人だけの舞台が今――完成したわ。

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とある辺境の城に住むお姫様 ( No.9 )
日時: 2017/11/28 11:03
名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro

昔々のお話さ。

辺境の古城に とても美しいと評判のお姫様が住んでいたそうなんだ。
その評判を聞きつけて毎日にたくさんの男達が美しいお姫様目当てに、求婚しに訪れたのだけどね。

城は囲むは堅固な城壁。
誰も城内へと足を踏み入れることができなかった。

男達は次々と城壁を超えに挑み、そして敗れ去っていった。

でも不可能であればあるほど恋は燃え上がるもの。そうだろう?
城に訪れた男達もそうだった。訪れる者の数は一向に減るどころか増える一方で。

『この苦戦を越えた者が 絶世の美女と結ばれる』

そんな噂まで広がる程、この城は大人気スポットとなってしまってね。
我こそは美女を射止めんという、男達が後を絶たなかったそうだよ。

さて……。
たくさんの挑戦者でにぎわう城壁の内側ではね、とうのお姫様が頭を抱えているようでね?

「ああ なぜこんなことに……」

ピンク一色の白いフリルや動物のぬいぐるみが可愛いらしいまさに女の子の部屋で、可愛いらしい紫色の髪と瞳をしたお姫様が可愛い顔を手のひらで覆い隠して泣いていたよ。

なぜかって? それはね。
誰かの些細ないたずらと思って放置してうわさが独り歩きしてしまって、気づけは膨らみに膨らんで、彼女の評判は現実の彼女とはかけ離れたものへとなってしまった、と大粒の涙を流がしているんだよ。

「そりゃ確かに……このうわさをきっかけに殿方との出会いがあって……
 男性への苦手意識を 克服できればなんて思いもしらけれど……
 絶世の美女なんて 実際のわたしと違いすぎるよぉ……」

絶世の美女だのなんだの言われているお姫様だったけど、その正体は内気で恥ずかしがりやな普通の女の子だったんだ。






                         





そう言い終えるとお爺さんはそっと開いた分厚い本を閉じたわ。
「……それで?」
この話にまったく興味なんてなかったはずなのにどうしてなのか、私はお爺さんに聞いてしまったわ。この話の続きはないのかと――これで物語は終わりなのかしら、と。
案の定お爺さんはニヤリと嬉しそうな笑みを浮かべて
「やっぱり君はもうわたしの話すつまらない話の虜となってしまっているようだね?」
と、返してきたその言葉に私は何も言い返すことが出来なかった。
だってこのお姫様がどうなったのか、気にならなくもないから。
だってこんな中途半端なところで終わられたら気持ちが悪くてしょうがないわ。
と、お爺さんに訴えてみたのだけど
「残念だけど、娘の書いたお話はここまでさ」
そう言いながらお爺さんは分厚い本をパラパラとめくり中を見せた、文字が書かれているのは少しだけ、後の紙は全部真っ白。
「つまらない」
自然とそう呟いた。
「親子揃ってつまらないのね、貴方達は。三日坊主では片付けられない程の手抜きね」
睨み付けると
「まあまあ、そう不機嫌になりなさんさ。つまらなそうな顔をしたお嬢さん」
本当にイラつく程の楽天的な考え方ね。つまらないお爺さん。
「娘の話はここまでだけど、ここからはわたしの話をしよう」
「あら、娘の尻拭いをやるって言うのかしら」
「そうだとも」
えっへんと胸を張って言うお爺さん。
まあ別に誰の話でもいいわ。ちゃんときっちりオチを付けて終わってくれるのなら。



                        


幾月かの時が流れ、ついに城壁を乗り越える者が現れたそうだよ。
姫は慌てふためいた。まさかあの城壁を乗り越えるような強者は現れるとは思ってもみなかったからね。

このまま真実の自分を知られたら皆の落胆はどれほどのものだろう。
なんとしても秘密を守らないければならない。
たとえこの身を城壁としてでも……。

姫は武器庫に向かい、一番上等の仮面で素顔を隠しそれとセットになった頑丈な鎧に身を包むと城壁を超えた男の前に立ちはだかった。

「ていっ!」

そして男を一撃のもとにぶちどめし城壁の外へと追い返した。
彼女は祖父のより受け継いだ数々の魔術を長い引きこもり生活の間に極めていてね……その強さは波の剣士騎士などでは歯が立たないレベルだったんだ。

その後、美女の顔を見ようツアーは腕試しの場としても有名になってね……さらに多くの挑戦者で賑わうことになったのだけど、彼女の戦歴は生涯を通して不敗であったらしい。

人々は畏敬の念を込めて、姫をこう呼んだ。

『難攻不落の城塞姫』とね。





                            とある辺境の城に住むお姫様*fan*
                              

お姫様はどんな気持ちだったのだろうね ( No.10 )
日時: 2017/12/05 10:24
名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro

 まるで愛しい恋人を撫でるようにお爺さんは持っている分厚い本の表紙を愛おしそうな瞳で眺め撫でているわ。……正直言っていいかしら? 
凄く気持ちが悪いわ。吐いてもいいと言われれば、簡単に吐けるレベルね。これは。
「おや失礼な視線を感じるよ?」
 顔を上げてお爺さんはニヤリと私を見たわ。
「何が可笑しいのかしら? 顔がニヤけているわよ」
「別に可笑しいわけではないのだけど……そうだなあ」
 今度は自慢のお髭をさすっているわ。とことんナデナデするのが好きなお爺さんなのね。
女好きのナデナデ好き。ただの変態にしか見えてこないから不思議だわ。……いえこれは必然と言った方が良かったかしら?
「君はこのお話を聞いてどう思った?」
 最初に聞いてきた質問はもういいのかしら。とゆうより解決しているのかしら、貴方の質問は。
まあ、そんなこと興味ないから。どうでもいいことだから、答えられる内容で答えられる範囲で答えてあげる。私は心の広い女だから。ちょっとやそっとの事では怒って帰ったりしないの。
 ちらりと見た時計台の針にはまだ余裕があるみたいだから。
「そうね……。貴方の娘が書いたという前半部分は言わずもがな、評価するにも値しないわ」
「それは酷いね。彼女も頑張って書いていたのに」
「頑張れば良いというものではないわ。面白い面白くない関係なく、最後まで書ききらず、途中で投げると言うのが気に食わないのよ。
 なにかしらその軟弱精神は。そんな精神力で物語なんて書かないで欲しいわ」
 そうきっぱりとはっきりと切り捨ててあげると、お爺さんはあはは……と苦笑い。
まあ、そうでしょうね。自慢の娘が書いた作品を此処までけちょんけちょんにされたら流石に鉄の精神を持つお爺さんでも凹むわよね? ええそうよね、凹んで立ち直れないはずよね?
 これは私の勝利という事でいいのかしら。いえ、そもそもなんの勝負をしていたのかしら。私とお爺さんは。
「君は独りで悶々と考え込む悪い癖があるようだね」
 見透かしたように言うお爺さんに苛立ちを覚えたわ。なんで会って数十分のホームレスのお爺さんなんかに私の事を見透かれなくてはいけないのかしら。
「次は貴方の考えた話だったわね。これも問題外よ」
「どうしてだい? 興味津々といった感じで目を輝かせて聞いていたようにわたしは記憶しているのだけどなあ」
 貴方の目は節穴なのだから、脳みそだって腐ってスカスカに決まっているでしょ。
そんなあやふや記憶力を頼りにしているなんて馬鹿げてる。阿呆らしい……。
「私があんなつまらない話なんかに興味が惹かれた訳がないわ。
 まず一つ目、なんでお姫様なのに強いのよ」
「女性はみんな強いじゃないか」
 カッカッと笑い飛ばすお爺さん。……もしかして過去に浮気とかで奥さんに殴られた経験があるのかしら?
「強かったら嫁ぎに来た婿をぶっ飛ばしてもいいのかしら?」
「…………」
大きなお口がやっと閉じてくれたわ。ああ、うるさかった。
「お姫様は生涯独身で性を全うするとこなんかは君好みだと思ったんだけどなあ……」
 髭をさすりながら独り言のように呟くお爺さん。
ウケを狙いにいった時点でその話はもう終わりだわ。確かに私は笑って泣ける喜劇より、誰も救われない後味の悪い悲劇の方が好きよ?
 でもだからと言って、それを狙った話の何が面白いと言うのかしら。物語と言うのは自分が書きたいもの話として紡ぎ書いていけばいいのよ。読者なんて後からついてくるものなんだから。好みなんて人それぞれ。それに合わせ作られたお話なんて糞喰らえって奴よ。
「そうね……」
「んや? どうしたんだい? 急に黙り込んだりして、お腹でも痛いのかい?」
「貴方の顔を見ていたら頭痛や腹痛に一つや二つ起こりそうだけど今のところは大丈夫よ」
 それは良かった、と笑うお爺さん。今のところはって言っているじゃない。これから起きないとは言っていないわ。
「じゃあどうして難しい顔して黙り込んだりしていたんだい?」
ああ……なんだ、そのことね。と、呟き大きく深呼吸をした後
「貴方のつまらない話にはもう飽きたわ。
 ……しょうがないから、お手本に一つ私が考えた御伽噺をしてあげる」
「本当かいっ!? いやあ。まさか君からそんな話を持ち掛けられるなんて思ってもみなかった。嬉しいなあ」
 とろんと、頬っぺたを落っことしたお爺さん。……実際にはまだ落としていないけど、これから聞かせてあげる私の話でその頬っぺ落っことしてあげる。
「それで? 君の考えた話とはどんな話なんだい?」
「さっきの話よ」
「ん、さっきの話? お姫様の話かい?」
「ええ、そうよ。貴方達親子二代に渡って駄作としてしまったお姫様が可哀想だから、私が最高の話に生まれ変わらせてあげるのよ」
 容姿の特徴が私と似ている部分も何だか他人事のように思えないもの。
「……あの子もきっと喜ぶよ」
「ハイ?」
 急にお爺さんの声のトーンが可笑しかった。あんなに馬鹿みたいに笑っていたのに、急に物静かなまるで幽霊みたいな声なんて出すから素っ頓狂な声が出てしまったじゃない。
と、睨み付けたらいつもの満開の花が咲いた笑顔のつまらないお爺さんが目の前に居たわ。……なんだったのかしら、あれは。

 語ってあげる。私の物語――鳥籠のお姫様のお話をね。

鳥籠のお姫様 ( No.11 )
日時: 2017/12/19 10:26
名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro

 昔――昔々のお話。まだ私達なんて生まれてきてない遥か昔の事。
辺境の古城にとても美しい姫が住んでいると、辺りに住む町民たちの間で噂になっていたのよ。
その美病はクレオパトラも嫉妬する程とかなんとか言われていたようだけどね……。

「はあ……今日も退屈な日が終わったわね」

 そんな噂話、当の本人にはとても興味の無い話だったわ。すっごくどうでもいい話だったの。

 とゆうよりも、

「またこんな沢山、求婚を迫る手紙が……」

 机の上に山積みとなった手紙の束を見るたびにうんざりだわと、大きな溜息を吐く毎日。

 鉄格子が取り付けられた窓の外から見える、入口に我先に行かんと鬼気迫った表情で群がって来る男共見るたびに、大きな溜息が出る毎日だわ。

「ねえ――そうでしょう? ムジル?」

 窓の傍にいる彼に話しかければいつもと同じ返事が返ってくるわ。

「ピヨッピヨピヨッ」

 錆びた金色の鳥籠で暮らしているのは、幸せの青い鳥のような綺麗な羽根を持つムジルリツグミのムジル。
数年前からずっと一緒にお友達。何も無い退屈な牢獄に囚われた者同士。

「貴方は鳥籠の中にずっと居て楽しい?」

 そう聞いてもいつもムジルは同じ反応をするばかり。首を傾げるだけなの。まるで言葉の意味がわかっているみたいに答えをはぐらかすんだから、困った鳥さんよね。

――私は楽しくなんてなかったわ。

 生まれてからずっとこの部屋の中で暮らしているの。注射針の穴だらけの身体には沢山のチューブが繋がれているし、顔には沢山のメスで切られ縫われた跡が沢山残っているの。

「"これ"の何処がクレオパトラを超える絶世の美女だと言うの?
 どう考えたってこんな顔面兵器、怪獣映画に出て来る化け物そのものじゃない……」

 そう、自嘲するお姫様。眉間に悔しそうにしわを寄せ、細い紫色の眉をハの字に曲げ、猫のようにつりあがった紫色の瞳からは大粒の雫が滴り落ちたわ。

 雫は彼女が着ていた紫色のふりるが可愛らしいドレスに染み込み、薄いピンク色の唇は噛みしめている所為ね、切れて血がぽたぽた……と、ドレスを真っ赤に汚しているの。

「姫様ー!! 見合いのお時間ですよー!!」

 ドアを力いっぱいノックする年老いた魔女のような濁声が聞こえるわ。
本当に五月蠅いお婆さんね。もう八十は超えているのに未だ現役で、お姫様のお世話係をしているのよ? ……うざいの他に何が残るのかしら。

 うざいという感想しか出て来ないのだけど、一応準備しなければいけないわね。……だってお婿さんになるかもしれない殿方と今から合わなければならないのだから。

 全身をうつす鏡でお姫様は今の自分の姿を確認してみたわ。涙と血でぐしゃぐしゃになった顔、染み込んだ跡と血の跡で少し汚れてしまったドレス……ええ、特に問題はないようね。

「……どんなに着飾ったって元が化け物であることは関係ないのだから」

 ぽつりと吐いた独り言は自分でも驚く程に暗く冷たいものだったわ……。

 ムジルに行って来るわ。と、伝えて彼の綺麗なさえずりを聞きながら部屋を後にした。婆やには服装の事で色々文句を言われたけど、そんんな事一々気にしないわ。だって婆やとの喧嘩なんて、顔を合わせればいつもやっていることなのですもの。

 今回のお見合い相手はドバイの貴族様ですって。まあ……玉の輿かしら? なんてつまらない冗談を言うのはやめましょう。

 言ったも通り顔面兵器、身体も手術だらけでボロボロ、もうあまり永くは生きられないと医者から匙が投げられてしまった、可愛そうなお姫様。
彼女の両親は、跡継ぎが産めないのなら有益な組織との癒着するための贄となれ、王族・貴族誰でもいいから政略結婚をしろとのことらしいわ。
血のつながらない育ての親だからこそ言える台詞なのね。きっと。

 辺境の古城に住む、クレオパトラをも嫉妬させるような絶世の美女。
絶世の美女と言われたら誰だって食いつくわ。だって人間という生き物は馬鹿な人ばかりだから。
そんな人この世界の何処を探したっていないのに、いるのは退屈に殺された化け物だけなのに……今日も騙された馬鹿とお見合いをするの。

 でも化け物と結婚してくれって言われて誰が結婚するかしら?

「化け物!!! ひゃああああああああああ!! 助けてくれ! 金はいくらでも払うから、命だけはっ! 僕様の命だけは助けてくれぇえええええ!!」

 結果はいつもわかりきっている事。向かい合い顔を上げた瞬間、鼻たれ貴族のお坊ちゃまは腰を抜かして逃げてしまわれるの。

 そして家には口封じや色々とね、黒いお金が従者を使わして持って来させるのよ。前に見たのはいくらだったかしら。百万が一つの束になったものでピラミッドが建てられていたわ。

――本当につまらない世界。つまらない人達ね。

 本日のお仕事は終了。さあ、醜い化け物は全てが白い何もない牢獄へ閉じ込めてしまいましょう。大丈夫、話し合いてに鳥を入れておけば化け物は何も言い返さない。さあ、入った、入った。
自分の部屋に入る時にいつも流れる音楽。ちょっとした退屈しのぎにはなるのかもしれないわね。

 いつものように罵られ、お見合い相手からお断りされて、大金が持ち寄られ、化け物は牢獄に囚われ、帰って来た化け物を青い鳥が出迎え――

「…………」

 る、はずなのよ。いつもだったらね。

「ひ、姫様! ムジルが、ムジルの姿が何処にもありません!!」
「ああ、そんな大きな声で叫ばないで。がらんとなった鳥籠を見れば誰だってすぐにわかるわよ」

 慌てふためく婆やに蔑むような視線を送る。やっとその視線に気が付いてくれた婆やは、キッと鳥籠を睨み付け

「なんて恩知らずの鳥だろうね!
 怪我して飛べなくなったあんたを介抱して飛べるまでにしてやったのは姫様だってのにっ! なんて恩知らずな罰当たりな鳥なんだろう!」

 ぼそりと最後に「……鳥籠に囚われてんのは姫様も同じだってのに」と、言っていたように聞こえたのは空耳かしら。

 がみがみとまだムジルに悪態つく婆や。高々鳥一匹に何をそんなに怒っているのかしら。もしかして窓を閉め忘れた私への当て付けかしら。
なんてことを思いながら、冷たい北風が入る窓を閉めた。

「ピヨッピヨピヨッ」
「……ぁ」

 窓を閉める一瞬、彼の綺麗な歌声が聞こえたような気がした。
そう、貴方は自由の世界に帰ったのね。……私を置いて。

「ふっ、冗談よ」
「姫様?」

 くすりと笑ったのがそんなに変だったかしら? 婆やは鳩が豆鉄砲を食ったような顔をして固まっているわ。

「そうね、次に飼うのは鳩でもいいかもしれないわね――」









                          *鳥籠のお姫様*fan

 


素晴らしい!! ( No.12 )
日時: 2018/01/06 15:28
名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro

拍手喝采。大きなお口を開げてカッカッと笑うお爺さん。しわしわの大きな手で叩かれた音は大きくて、公園を歩く人たちが不思議疎な顔でこっちを見ているわ。見なくていいからさっさと自分の日常に戻りなさいな。このつまらない舞台には私と、この汚く唾をまき散らすお爺さんだけで十分だわ。
「いやあ。実につまらなくて最高な話だったよ」
大きな声でお爺さんは、ニヤニヤと笑いながら言ったわ。
「私の話がつまらないと感じるなんて、見た目通り感性も貧相でつまらないものなのね」
だから私は突き放すように言ってあげるの。この能天気な大馬鹿者にはこれくらい言ってあげないと理解できないでしょうから。
「そうかな? 君の話は誰が聞いてもつまらないと言うと思うけどなあ。
だってこの話、途中からお姫様の話じゃなくて君主観の話になっていなかったかい?」
「そうかしら?」
「無意識にそうなっていたのかい? それは重傷だ。それではこの話はお姫様の話ではなく、君の話になってしまうよ」
あわあわとこれ見よがしに慌てふためいて見せるお爺さん。愛娘の書いた話が見ず知らずの少女に汚されたからって何をそんなに慌てふためく必要があるのかしら。元から駄作なのだからこれ以上悪くはならないでしょうに……なんていう心配はどうらら危惧だったようね。
「君のようにつまらなそうな顔をしたお嬢さんが、醜い化け物なわけあるわけないじゃないか。こんな美しい顔のお嬢さんを化け物だなんて言う輩が居たら、わたしは叱っているね」
そんな事胸を張って言う貴方を私は譴責させたいわ。何をくだらないことを言っているのよ。私が醜い事はこの場に居る誰もが知っている事であり、毎日鏡で見てる私自身が一番よく知っている事実だわ。
「ふんっ。そう思いたいのなら勝手にそう思えばいいじゃない。綺麗か醜いかなんて私には関係の無い事よ。私は別に誰かに評価されやくて、話をしてあげたわけじゃないんだから」
そう強がりを言ったのは間違いだったかしら。お爺さんはすっごく悲し気な顔をしてご自慢のお髭をさすっているわ。お爺さんを傷つける事に成功したのはいいけど、そんな顔をされたら……癪に障らないわ。

――ごーん。ごーん。ごーん。

「おや……? もうそんな時間か」
「ああ。もうそんな時間なのね」
ちらりと見上げた時計の短針が三のところで止まっていたわ。鳴った鐘の音は三時になった事を知らせるためものあり、このつまらない舞台が終わりを告げる音でもあるの。
そう。もう三時間もつまらないホームレスのお爺さんなんかと、つまらないお喋りをしていたのね。
「なんて有意義な休日だった」
「なんて退屈な休日だったのでしょう」
お爺さんは開いた本を閉じ鞄の中へしまい、私は広げたお弁当箱を風呂敷で包み鞄の中へしまう。
「最高につまらない話をしてくれてありがう、つまらなそうな顔をしたお嬢さん」
「最高につまらない話だったわ。つまらないお爺さん」
私達は同時に鞄を手に持ち立ち上がった。
「お嬢様。時間です」
この世界には空気を読むという文化は無くなってしまったのかしらね。皆の憩いの場所である公園に不釣り合いな全身黒いスーツの集団が私を取り囲むの。彼らは私を迎えに来た使者だから。
「おや豪奢なお迎えだね」
黒の壁の向こう側からお爺さんの声が聞こえたわ。もしかして皮肉を言われているのかしら。良く聞こえなかったわ、残念ね。
「お別れの時間のようだね」
「別れの時が来てしまったようね」
黒服に先導されるまま私は歩き出す。背後からお爺さんの寂しそうな声が聞こえるような気がするけどそれは気のせいね。
「つまらなそうな顔をしたお嬢さん。もしまた何処かで出会えたなら――」
「つまらない人生を送ったお爺さん。もしまた何処かで会えたなら――」
立ち止まり振り返る。見えるのは黒の壁だけだけど、それでも私は誰にも聞こえない小さな声で囁いた。

 「――またつまらない話をしてね」



     




                       

                                         
                   



                       ―To be continued−

つまらない話だったわね。【座談会】 ( No.13 )
日時: 2018/01/06 16:12
名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro

 つまらないホームレスのお爺さん、公園でぼっち飯を食べてたつまらなそうな顔をしたお嬢さんから皆様へ。

 お嬢さん「最後まで読んでくれた読者なんているのかしらね。いたらなんで数ある優れた作品ではなくこんなつまらない話を選び最後まで読破したのか是非訊いてみたいわ」

 お爺さん。「いやいや。そんな事を言うもんじゃないよ、つまらなそうな顔をしたお嬢さん。このつまらない話はね、息抜きには丁度いいのさ」

 お嬢さん「貴方とのくだらない話に付き合ってあげる息抜きに?」

 お爺さん「カッカッ。それは一本取られた! 確かにしがない爺との話よりも、若いお嬢さんとの話の方がいいか」

 お嬢さん「……別にそうゆう意味で言ったわけじゃないわ。ただ貴方の話が"つまらない"それだけよ」

 お爺さん「それはそうだ。だってこの物語はつまらない話をする爺の物語なんだからね」

 お嬢さん「はあ……貴方と話していると頭が痛くなるわ。ねえ、どうして数人いた公園の人たちの中で私を選んだのよ? 私は一人優雅にお昼を楽しんでいたのに」

 お爺さん「一人優雅にとは良く言ったね。わたしには一人で寂しくお昼ご飯を食べている女の子にしか見えなかったよ。だから可哀想な孫に話しかけるお爺さんとしてだね」

 お嬢さん「こんなお爺さんが祖父だったら、私はぐれていたわね」

 お爺さん「そうなのかい!? それは凄く残念なのだよ。裏設定ではそうゆう背景も描かれていたのだけどね……。
     それに元を返せばこの話は、雪姫くんとお爺さんの話が思い出話が元となって生まれた物語なんだけどなあ」

 お嬢さん「ああ。お亡くなりなったお爺さんとあまり思い出がなさ過ぎて葬式で泣けなくて、親に酷い言われようしたあの件ね」

 お爺さん「そんな裏事情まで暴露しなくていいんだよ、お嬢さん。
      一緒に雪だるまを作った思い出だってあるんだから」

 お嬢さん「親戚の人から聞いた、身に覚えのない話ね。でも証拠写真があるから事実なのね、きっと」

 お爺さん「こら。思い出写真を証拠写真だなんて言ってはいけないよ。覚えていなくってもきっと思い出の宝箱に大切にしまわれている……はずなんだから」
 
 お嬢さん「終わりに近づくにつれて語尾が小さくなっているのは気のせいかしら? まあどうでもいいけど。そんなことよりもどうしてこの話こんな変な終わり方をしているの。まるで少年漫画によくあるつまらない終わり方みたいじゃない。私とお爺さんの冒険はこれからも続いてなんて行かないわよ」

 お爺さん「意外と少年漫画なんてものも読むんだね。驚いたよ。ああ、そんな睨まないでおくれ、ちゃんと質問には答えるからさ。
      『終わり』と書かずに『続く』と書いてあるのは勿論わざとだよ。その方が続編を作りやすいとか色々あるけど、一番はみんなが思うわたしたちの最後を教えて(書いて)欲しいな……という気持ちを込めてだね」

 お嬢さん「要は他人任せの怠け者ってことね」

 お爺さん「ナイフのような鋭さだね、君の発言は」

 お嬢さん「まあ確かに感じ方は人ぞれぞれよね。私だったらここに宇宙人を投入して地球侵略するわ」

 お爺さん「いきなりだね!? 急展開過ぎないかい!? 確かに長年続いているSFの映画の新作が公開されたから、そうゆう展開は熱いのかもしれないけどね。わたしと君の話にそれはいささか……わたしは君と入れ替わって第二の青春を」

 お嬢さん「気持ちが悪いから却下よ。貴方の名前なんて興味無いわ」

 お爺さん「……本当。君はわたしの心を抉るのが上手くなったね。君の名をわたしは知りたいよ。
      物語とは書くのも、読むのも、話すのも、聞くのも、実に面白い物だよ、この作品がなければ君とも出会えなかったのだからね」

 お嬢さん「私は別に貴方と出会なくても良かったのだけど……そうね。確かに雪姫がいなければ私は生まれなかった。読者がいなければ物語に存在する意味が生まれなかった。その点は感謝してもいいかもしれないわね」

 お爺さん「ふふ。素直じゃない君は本当に可愛らしいよ」

 お嬢さん「自分の気持ちに素直な貴方は本当に気持ちが悪いわ」


 次になんの才能もないつまらない作者から皆様へ。

「座談含め最後まで『そうだ、つまらない話をしてあげよう』を読んで下さり有難う御座いました!!
 まだまだ修行中身でして荒削りの文法で読みづらい所ばかりですみませぬ。
 これからも皆様が楽しめる作品を生み出せるよう精進してしていきますので、引き続き応援していただければ嬉しいです。
 複雑・ファジー板でファンタジーもの(名前が姫凛となっています)を、コメディ・ライト板では実体験を元にした作品(リメイク。元は別館にあります)を、書いています。拙いものですが良かったら読んでみてくださいな←宣伝w
 それでは、全ての本と、本を愛する人たちに祝福があらんことを」




執筆期間2017/10/19〜2018/1/6.

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