ダーク・ファンタジー小説

そうだ、つまらない話をしてあげよう
日時: 2017/10/19 09:44
名前: 雪姫

そう公園で一人優雅にお昼ご飯を食べていた私に話かけてきたのはホームレスのお爺さんでした。
「どうかな? つまらなさそうな顔をしているお嬢さん」
お嬢さん誰のことかしら。公園にはまばらに人がいるわ。
でもベンチ座った私を真っ直ぐに見つめて話かけるお爺さんは一人しかいないわ。
一メートル先で地面に新聞紙を引いては座禅を組んで酒缶を片手にニタニタと話かけるお爺さんは一人しかいないわ。
「もしかして私に話しかけているのかしら」
「そうだよ。つまらなそうな顔をしたお嬢さん。君以外に誰がいるのかな?」
変な問いね。そう思いながら辺りを見渡してみたけどお爺さんの言う、つまらなそうな顔をしたお嬢さんとやらはいなかったわ。
いるのは公園で楽しくピクニックをしている小さい子供連れの家族とジョギングを楽しむ若い男性とその他通行人と私とお爺さん。
「確かにそうね。それで? つまらない話というのは貴方のそのだらしなく伸ばした髭の話かしら」
語尾を少々強めに蔑むような目で言ってあげるわ、ホームレスのお爺さん。
着ている衣服は当然ボロボロ。継ぎはぎだらけであっちこっち破れているわ。伸ばした白髪の頭もボサボサ、長い自慢のお髭も自然に任せて伸ばしたせいでボサボサ。
あぁ……なんてみすぼらしくてつまらないお爺さんなのかしら。
「面白い事を言うねお爺さん」
このお爺さんには皮肉というものがないのかしら。
「残念だけどわたしの髭の話ではないよ」
「そう。それは残念ね。じゃあお話はこれで終わりかしら、つまらないお爺さん」
お爺さんとのつまらない会話を終了させて、また一人優雅に昼飯を食べようとしたのだけど、
「まあまあ、そんなに慌てなさんな。つまらなそうな顔のお嬢さん」
お爺さんがまた話しかけてきたわ。
「一つだけでいい、つまらない休日の数分だけでいい、爺の戯れだと思って付き合ってくれないかな」
チラッと公園に備え付けられている大きな時計の針をみると丁度正午、十二の所で長針と短針が重なり合っていたわ。
迎えが来るまでにはまだ数時間と猶予があるわね。
「……確かにつまらない長い休日のほんの数分、つまらないお爺さんのつまらないお話に付き合ってあげるのもいいかもしれないわね」
お年寄りは大事にするものだと、お母様も言ってらしたからね。
そう私が言うとお爺さんはパァァアと満開の花が咲いたような満面の笑みを浮かべ、腕を大きく広げて公園にいる誰もに聞こえる大きな声で、
「じゃあ最高につまらない話をしてあげよう! これはとある男の話なんだけどね――」
つまらないお爺さんの口から最高につまらない話が始まったわ。
聞いている観客たちは私だけ。喋っているのはお爺さんだけ。私とお爺さんの二人だけの舞台が今――完成したわ。

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レールの上に立つ男の話 ( No.4 )
日時: 2017/11/01 09:31
名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro

これはわたしがまだ若かった頃の話だよ。そうだね――今の君と同じくらいの歳ことだったかな? 自分探しの旅と言ってあてもなく家を飛び出し世界中を飛び回った……いやあ若いっていうのは素晴らしいね。何も恐れる者がなくてただひたすらに前へと進んで行ける。
その時のわたしも前へ進んでいたのさ、まっすぐと置かれたレールの上を走っていたんだ、二輪車を飛ばしてね。
そのレールはおそらくもう使われていないのだろね。「草はボーボー、レールも錆びてとてもじゃないが使い物にならなそうだ。よしこれなら列車と正面衝突なんて気にせず走れるぞ」なんて思ってかっ飛ばしていたのさ。
でもね。もう使われていないと思われたレールだったのだけど、

「やあ、旅人さん」

レールの上で一人のお爺さんに出会ったんだ。歳はそう、今のわたしくらいの痩せて骨と皮膚しかないような長身のお爺さんだったなあ。わたしのような立派な髭を生やしていなかったのが、今として実に残念だ。

「すまないが旅人さん。このリアカーはそう簡単にはどかせられないんだ。悪いがモトラドさんをレールから一度出してくれんかの?」

お爺さんはわたしの方を一切振り向かず、一心に錆びたレールをブラシで磨きピカピカに磨いていた。
真っ直ぐに伸びたレールには一本の草も生えてなくてね、太陽の光を反射してピカピカに光っていてそれはそれは見事なものだったよ。わたしはその光景に見惚れつつも「あ、はいっそうします」と二輪車から降りてレールから一度出てお爺さんに「あなたが全部草を取ってレールを磨いて全部一人でやったんですか?」と聞いてみたのさ、するとお爺さんは顔を上げずに平然と「ええ。仕事じゃからの」と答えたんだ。
いくら仕事といえどこんな地味な事をずっとやっているのは凄い「どれくらいからですか」と聞くとお爺さんはレールを磨く手をいったん止め地面にお城を付けて「五十年程じゃ」と休憩のつまみにと教えてくれたのさ。

「正確にはわからんけど、たぶんそれくらいじゃ。わしは冬だけ数えたからの」

もしかしたらわたしはとてもいい出会いをしたのかもしれない、と当時のわたしはお爺さんと一緒に休憩することにしたのさ。仕事も旅も休憩は必要だからね。
休憩のつまみにとお爺さんは先程の話のつづきをしてくれたよ。

「わしは十八の時に鉄道会社に入ってな、その時に今は使っていないレールがあるけど、そのうち使うかもしれないから出来るだけ綺麗に磨くように言われたんじゃ。
 まだ止めろと言われてなんでな、こうして続けとる」

「お国には一度も戻ってないんですか?」

「ええ。わしにはその頃すでに妻と子供がいてな、あいつらをなんとしてでも食わしていかにゃならんかったんじゃ。
 ……今はどうしているかのお。わしの給料は出ているはずじゃ、暮らしには困っておらんと思うが」

その後。しばらくの間わたしとお爺さんはつまらない世間話をしてひと時の休憩を共にしたのさ。
そして別れの時わたしは別れのあいさつ代わりに一つお爺さんに質問をしてみたのさ「いつまでこの仕事を続けるつもりですか」ってね。お爺さんの返答はこうさ「会社の誰かに止めろと言われるか、それともこの線路がなくなるまでじゃな」そう言ってお爺さんはまたレール磨きに取り掛かりそして去り際にもう一度わたしの方を向いてこう尋ねるのさ

「ああ、旅人さん」

「……?」

「旅人さんは何処へ行かれるのかな」

二輪車を飛ばしピカピカに磨かれたレールの上を走って行くのさ――何処か遠く 此処ではない何処かへ向かってね。











                             レールの上に立つ男の話*fan*

分かってくれたかな? ( No.5 )
日時: 2017/11/01 10:26
名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro

そうニヤリだらしなく口元を緩めているお爺さんに言ってあげるわ。ハッキリとね。
「で?」だから何とね。
だってそうでしょう? こんなつまらない話を聞かされたからといってどう理解すればいいと、いうのかしら。素直に話の内容を受け取ると「お爺さん貴方はこのつまらない趣味を五十年も前からそこに座って行っていたとでもいうのかしら?」顎を上げて蔑むような瞳で言ってあげるわ。お爺さん、何度でも言ってあげるわ。
でもこのお爺さんにはどんな皮肉も蔑みの言葉も通じないみたい。カッカッと笑い飛ばして
「いやあ、実に面白いお嬢さんだ。さすがのわたしも五十年はやっていないよ。
 この趣味はつい数十分前に思いついた、わたしの新しい趣味だからね」
「つい数十分前ですって? それは私に話しかけた時じゃない。それじゃあお爺さん、貴方が私よりも先に座っていた証拠になんてならないわ」
「おや、これはうっかり」
と、舌を出してつまらないお爺さんは大笑いをしているわ。
……なにが楽しいのか私には全く分からないわ。だってちっとも楽しくなんてないもの。
「――時につまらなそうな顔をしたお嬢さん、君の弱点はなにかな?」
このお爺さんは急になにを言いだすのかしら。弱点なんて教えるわけないじゃない。家族にだって教えないわ。親族、友人にだって教えてなんてあげないわ。まして今日会ったばかりの赤の他人ならなおさらのことね。
「おっとすまない。話が急すぎたね」とお爺さんはコホンッと咳払い。
「人間誰しも多かれ少なかれ弱点は持っているものだよね」
「それはそうでしょうね。心臓を一突きにされれば誰だってそこでこと切れるわ」
「はっはっ、君は独創的な発想の持ち主なんだね。わたしにはそんな発想はなかったよ」
そう。見た目同様頭の中も満開のお花畑なのね。
「次の話はね、とある敏腕刑事の話さ」
「まだ続けるのかしら、この不毛でくだらないつまらない話を。私としてはもう終わらせてもいいのだけど?」
フッと鼻で笑い語尾を強めに言うのがコツよ。つまらないお爺さんはこのつまらない会話が新しく出来た趣味だと言っていたわ。ならこの趣味そのものを否定してあげればきっと、いい感じに精神ダメージを与えることが出来るはずだわ。
そして私は今度こそ平穏で静かな昼食のひと時を取り戻せるのよ――と思ったのだけど、このお爺さん思っている以上に手ごわかったわ。
「はっはっは、これは一本取られた。
 わたしの弱点はこの新しい趣味を取られる事だったようだ。
 はっはっ、新しい自分の弱点に気づかせてくれてありがとう、つまらなそうな顔をしたお嬢さん。
 気づかせてくれたお礼と言ってはなんだけど、一つとある狂人の殺人鬼の話を聞かせてあげようじゃないか」
話が元に戻ってしまったわ。これはループというものかしら? いいえ、少し待って、可笑しいわ。
最初にお爺さんは『敏腕の刑事の話』をすると言っていたわ。
でもさっきは『とある殺人鬼の話』を聞かせてあげようと言っていたわ。
刑事と殺人鬼、似て非なるもの話――どんな話なのか気になっているのはきっと気のせいよね。それかお爺さんにマインドコントロールをされているのだわ。話の最後には高額な代金を請求してくるのだわ。そうはいかない、どうせならわたしが受け取ってあげようかしら?
睨み付ける私を楽しそうにニヤニヤ緩んだ顔のお爺さんが次に話し始めたのは、敏腕の刑事の話でも狂人の殺人鬼の話でもなく――とある親子の話でした。

とある親子の話 ( No.6 )
日時: 2017/11/14 14:37
名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro

つまらなそうな顔をしているお嬢さん。
ところで君はちゃんと新聞を読んでいるかな? 昨今の若者の活字離れは深刻だと、どこかの偉い人が言っていたそうだよ。
わたしは読んでいないから知らないけどね。わっはっは。
これはね、今朝の新聞のトップを飾った記事の話さ。

日本の警察は優秀だと言うけどこの町にいる刑事も優秀だったのさ。

「現行犯逮捕!」

狙った獲物は逃さない。犯罪者は全員逮捕! だって言っていた凄腕狩人のような凄い刑事が居たそうでね。
まだ若いのに出世コースに乗った警察のエースだよ。羨ましい限りだね。
いや若いからこそ出来ることなのかもしれない。

「おかえりなさい、あなた」

「パパー」

もしくは守るべき家族がいるからかもしれない。
彼には幼馴染の美しい妻と可愛い息子の三人家族。
極悪犯罪者との対決で疲れて帰って来た彼を温かく出迎えてくれる家族の笑顔、これに勝る幸せはないだろう。
だから彼はこの幸せのひと時に執着し、何を犠牲にしても守りたいと思ったんだ。

「ただいまー」

今日もいつもと変わらないごく普通の日常の一コマのはずだった。
極悪犯罪者たちと戦い疲れて帰って来た勇者は自宅でHPを回復しようと自宅に帰宅するんだ。

「……?」

でも今日は何かが可笑しかった。
だっていつもならついている部屋の明かりが消えていてさ、玄関のドアを開ければずぐに出迎えてくれるはずの愛する妻と息子の笑顔がないんだ。
参百六十五日、一日たりとも出迎えに来なかったことなんてなかったのにのね――可笑しいよね?

窓が開いているのかな。
身も凍るような冷気が何処からか吹いて来て勇者の身も心も冷やしていくのさ。

彼は刑事だ。
こんな緊迫した空気なんて何度も経験したことあるのさ。まさかそれが自宅で起こるとは思ってもみなかったようだけどね。
息子といつか野球で遊ぼうと買った金属バットを持って慎重に足音を立てないように廊下を歩き、家族の憩いの場所リビングを目指すのさ。

――そして見てしまうのさ

「おかえりパパ」

いつも通りの可愛らしい笑顔で出迎えてくれる息子に

「…………」

馬乗りにされ、ぐちゃぐちゃにかき回されて遊ばれているサーモンピンク色をしたアジの開きのようになっている――

開け放たれ寒い冬の冷気がふぶく窓にかけられている赤い液体が飛び散った緑のカーテン。

赤い液体の水たまりが出来ている床。

赤黒い液体がベットリと着いた台所にあるはずの包丁。

――色白肌が美しかった 妻の変わり果てた醜い姿をさ。

「お前が殺したんだよな」

勇者は刑事。敏腕の刑事。
平然を装い冷静に淡々とした口調で目の前でなおも犯行を続ける"犯人”に訊ねるのさ。

「……そうだけど?」

それがどうしたのっと息子は無邪気に首を傾げるのさ。だってまだ善悪も測れない五歳の子供なのだから。

「ママに何か恨みでもあったのか?」

刑事の言葉に息子は大きく首を横に振った。

「恨みがなかったら殺したらダメなの?」

何も知らない無垢な子供だからこその質問。

「一体どんな理由があったら殺してもいいの?」

この質問に刑事は答えられなかった。目の前にいる、狂人の殺人鬼の質問に何も答える事が出来なかったのさ。
彼が出来るのは

「……お前は俺が守る。だから安心しろ」

「……?」

もはや見る影も無くなったただの肉塊と化した妻の死体を山奥に埋め隠す事。

「俺は腐っても刑事だ」

刑事だという事を利用して警察内部の情報を操作し息子が犯した事件をこの世から抹消し法の魔の手から息子を守る事。

誰が五歳の子供が自分の母親を殺してみせると思う?
そんなこと誰にもバレっこない。いや実際バレなかったかのだからね。

――最後の事件が起こったあの日までは……ね。

彼の息子は生まれ持っての殺人鬼。狂いに狂った狂人の殺人鬼なんだ。
一回の殺人で満足するわけないのさ。
その後も何人も、何人も、殺していったのさ。ただそこにいたからってね。
最初に母親を殺したのだって、幼い彼の傍に一番近くにいる存在だったからだたそれだけの理由。

ならさ、賢い君ならもうわかるだろう?

「何故だ! どうして俺を」

この町で一番優秀な刑事だと言われた男はいなくなった。
世界で一番守りたかった者にの手によってね。

守りたかった者だって守ってくれる存在がいなくなりそこでお終いなのさ――

















                                  とある親子の話*fan*

ちゃんと新聞を読んでいるのかな? ( No.7 )
日時: 2017/11/14 14:59
名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro

お爺さんから私への質問。答えはイエスよ。もちろん毎朝ちゃんと読んでいるに決まっているでしょう。
今朝の朝刊では、
【連続殺人犯遂に捕まる! 犯人は未成年の少年! 最後の殺人はまさかの実の父親!?】
なんてキャチコピーが書かれていたかしら。興味がなくてすぐに忘れてしまったけど。
「……でもそうね。事件の背後にそんな話があったなんて驚いたわね」
「おや。君にも驚くとい感情があったのだね」
本当に失礼なお爺さんね。
「刑事にとっては息子が。息子にとっては刑事が弱点だったということだね」
うんうんと頷いているお爺さん。
「そう。なら殺された妻はどうなのかしら」
「どうゆう意味かな?」
「最初に殺された妻の弱点って何だったのかしらってことよ。つまらないお爺さん」
お爺さんはこれ見よがしにんーとわざとらしく首を傾げているわ。
「そうだね……じゃあ、そのことについて語り合うために次は美しいお姫様の話でもしようか」
ああ……逃げたわねお爺さん。
話が思い浮かばなかったからって別の話に逃げるなんて情けない。それに。
「貴方の頭の中では女性はみんな美しいのね」
本当おめでたい人。
「それはそうさ。この世界に美しくない女性なんているはずもないさ。不満そうな顔をしているお嬢さん?」
カッカと笑うお爺さん。もしかして……。
「それは私に対して皮肉を言っているつもりなのかしら?」
「それはどうかな? どう感じ捉えるかは人ぞれぞれだからね」
だらしなく伸ばした髭をさすりながらお爺さんは答えたわ。
「そうね。じゃあ私は貴方に皮肉を言われたと捉えることにするわ」
あとで弁護士事務所にでも行って訴える準備でもしようかしら?
「本当に君は面白いお嬢さんだね」
「本当に貴方はつまらないお爺さんね」
わっはっはと楽しそうに笑うお爺さんにクスリと失笑する私。
さあ――次はどんなつまらない話をするつもりなのかしら? つまらないお爺さん。


これはわたしの可愛いお姫様が書いた話なんだ。 ( No.8 )
日時: 2017/11/21 12:24
名前: 雪姫 ◆kmgumM9Zro

そう言ってお爺さんは肩から提げるタイプの茶色い鞄のチャックを開けて中を探り始めたわ。
なにを探しているのかしら。もしかして……。
と、私が真っ先に思い浮かべたのはナイフやハンマーといった凶器の類ね。
だって目の前にいるのはみすぼらしいホームレスお爺さんよ。きっと散々つまらない話を聞かせて油断したところ狙い凶器を取り出してこう言うんだわ「金を出せ」と。
まあお金が好きなのはホームレスのお爺さんに限った話ではないけど。
「あった。あった」
嬉しそうな喜びの声を出すお爺さん。なにがそんなに嬉しいのかしら。
笑顔のお爺さんが鞄から取り出したのは古い本のいい香りがする分厚いシミだらけの汚い一冊の本だったわ。
「それは?」
「ん。さっきも言ったはずだよ。これはわたしの可愛いお姫様が書いた話だってね」
ああ。そういえばそんなこと言っていたかしら。
ついに本性を現したお爺さんとどう対決するかを考えていたから全然聞いていなかったわ。と素直にお爺さん言ってあげると
「はっは。わたしがそんな狂暴な爺に見えるのかい? 君の感性は本当に柔軟というか、変わっていて面白いね」
と馬鹿にされたわ。
「ちなみ」
「なにかしら」
「本性を現したわたしとどう戦うつもりだったんだい? 君のような華奢なお嬢さんが武器をもった老い耄れに勝てるとは思えないけどなあ」
もしかして喧嘩を売っているのかしら。
「確かに真正面から武器を持った貴方と戦うことは無理ね。死に急いでいるだけだわ」
「そうだね。それで君はどうするんだい?」
「やることはひとつよ。大きな声で一つ悲鳴を言えばいいのよ。
 だってここは昼下がりの公園。まばらだけど私達以外にも人はいるわ。
 つまり目撃者は沢山いるということ。もし仮に私がお爺さんを返り討ちにしてしまっても、最初に襲ってきたのはお爺さんなのだから正当防衛で防げるわ」
「はっは。そこまで考えているとはいやさすがっ」
カッカッと笑い飛ばすお爺さん。
何度も言っているように思えるけどこのお爺さんには本当に皮肉と言う物が通じないのね。
「ああ。つまらない」
と口にしてハッとした。だってお爺さんが凄く嬉しそうなご満悦の笑みを浮かべているのだもの。
「どうやら君もつまらない話の虜になってしまったよだね?」
「なんのことかしら? 私は貴方とのこの不毛でくだらない時間がつまらないと言ったのよ」
「それはどうだろうね」
カッカッとまたお腹を抱えて笑い飛ばすお爺さん。
「君も待ち焦がれているようだし、そろそろこの本を読んであげようかな」
「待ってなどいないのだけど」
と言う声なんて聞こえていないのよね。貴方には。
お爺さんは嬉々とした表情でシミだらけの分厚い本を手に取ると一ページ目を開き、先生が幼い子供達に絵本の読み聞かせをするかのようにしっとりとした優しい声で物語を語り始めたわ。

――少し前から言っていた。美しいお姫様とやらのお話をね。

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