シリアス・ダーク小説

機械人形と魂喰い
日時: 2017/12/29 19:31
名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)

記憶


『おはよう。』
『言葉が理解出来ないだろう。無理もない。君は生まれたばかりなのだから。』
『僕が君の親だ。これからよろしくね。まず、君に沢山のことを覚えてもらわなきゃならない。時間が無い。急ごう。』


『こんなはずじゃなかったのに。何故何故、うまくいかない…!』


『ごめんね、親らしいこと一回も出来なくて。一人にさせちゃて。』
『さようなら。』

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機械人形と魂喰い ( No.1 )
日時: 2017/12/29 19:50
名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)

化け物

昔々、あるところに、化け物がおりました。
人里離れた場所で暮らし、人の前に出たことなどなかったのです。
しかし、人間は化け物が我々を襲うのではないかと恐れていました。
そして化け物を殺そうとしたのです。それが災厄を起こすと知らずに。
殺そうとした人間が、人里に戻ってこないのです。
戻ってくるのは、人の脱け殻。
化け物は、魂喰いだったのです。
いつもいつも人が来るのを楽しみにして。
今日も、待っているのです。

機械人形と魂喰い ( No.2 )
日時: 2018/01/04 19:26
名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)

機械人形と化け物

『やっと目覚めたか。介抱してやったのだ。感謝しろ。』
人の様だが、明らかに違う。顔は子供の落書きのよう。体は黒く塗り潰した、御伽噺の怪物の様だ。
「…誰、貴方。博士は、何処。」
『何を言っている。お前は一人で倒れていたのだ。』
大丈夫かと言わんばかりの口調だ。そして、少女は思い出したかのように言葉を吐いた。
「…今、何年。」
『確か、聖永歴134年だったか。』
少女は、唖然とした表情をしている。
「魔金歴じゃないの。」
『…なるほど。魔金歴は3000年前の話だ。つまり、貴様は機械人形か。』
「なんで、わかったの。」
『魂がないからだ。』
咄嗟に、身を引いた。そして化け物の名前を口にした。
「魂喰い(ソウルイーター)…!」
化け物は、呆れた顔をし、
『魂の無い貴様に興味は無い。』
と言った。
『…博士とは、誰だ?貴様の製作者だとは思うが。』
「うん。そう。魔鋼国最高の機械技師、エスカペイド博士。」
少し、誇らしげにいった。
『あぁ、聖国に滅ぼされた国か。』
「…博士は守った。私を。」
何かを思い出したかのように、泣きそうな顔をしている。
「復讐したい。」
少女からその言葉が、呟かれた。
『…何になる。それで満たされるのか。』
少女は悔しそうな顔をしている。だが、それは正論に揉み消されるのだ。正義なのだから。
「それでも…」
しかし、自分が悪になったとしても、まるで諦めが悪い子供のようだった。
化け物がわらった。
『いいぞ。乗った、その話。聖国には、個人的に恨みがあるからな。』
それが、二人の出会い。

機械人形と魂喰い ( No.3 )
日時: 2018/01/07 18:57
名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)

聖国ラエルへ

『そうと決まれば、出発の準備だ。私はこれから足りない物資を人里で買ってくる。お前は荷造りを頼む。』
大丈夫なのか、その姿でと疑問に思う。子供の落書きみたいな姿だ。人に見られたら、騒動になる。
「大丈夫なの、その姿で。」
化け物は何も気にしない様子で、
『フードを被れば問題無い。見られた時は力づくで片付く。』
と言った。少女は心配していたが直ぐに荷造りを始めた。

『これで全てか。』
出発の当日、化け物と少女は家の外に出ていた。
「うん、全部。」
少女は相変わらず、淡々と言葉を吐く。すると化け物は、
『暗黒空間(ブラックホール)』
と呪文の様な言葉を使った。そして、家ごと消えた。黒魔術の空間魔法だ。
「凄い黒魔術。珍しい。博士の時代にも、黒魔術師は珍しかった。」
少女が、饒舌になった。この世界では、火、水、風、光、闇、無、また他に、空間魔法や時空魔法、そして黒魔術と白魔術などが存在する。しかしながら、この魔法は適性者が少ない。黒魔術は闇魔法の特化版、反対に白魔術は光魔法の特化版だ。
『私の様な知能が高い魔物や上級悪魔、そして黒の頂点に立つ魔神は、簡単に使える。まぁ、魔神は黒魔術と言うより暗黒魔術と言うが。』
随分と詳しい、と感心している少女がいる。魔法のことには感心がある様だ。
『さて、行くか。』
化け物が促すと少女が付いて行く。それから馬車へと乗り込む。これは馬車と言うより、魔物車と言った方が正しいが。スレイプニルが馬車を引いている。化け物が鞭で叩くと走り始めた。

真夜中を馬車が駆け抜ける。
「聖国ってどんなとこ。」
少女が質問してきた。化け物はそれに答える。
『聖国ラエル。聖なる神を信仰する国だ。亜人差別が酷く、国民にも階級がある。皇族が頂点、貴族や聖職者が第1階級、神を信仰する国民が第2階級、貧困層や神を信仰しない国民は第3階級となっている。奴隷は数多く存在している。あまり友好的な国は無い。また、獣王国と対立している。』
聖国はかなり酷い政治をしていると少女は感じた様だ。自分が住んでいた国を滅ぼした国。憎悪が感じ取れる。
「魔鋼国を滅ぼした王の子孫が政治をしているのか。」
少女は3000年前にもあった国が長く続いているのに嫌悪している。すると化け物は、事実を述べた。
『お前の予想と現実は少し違う。この国の王はハイエルフだ。つまり亜人。皮肉なことにな。ハイエルフは1万年生きる。つまりはお前の国を滅ぼした王は、まだ生きている。国の政治もしている。どうだ、復讐しやすいだろう。』
少女は目を見開いた。最悪な王だ。亜人を差別しながら、自分が亜人だとは。化け物の言った通り、復讐しやすい。化け物が微笑んだ気がした。
『これから、楽しい旅になりそうだ。』
馬車が草原を駆け抜ける夜。

機械人形と魂喰い ( No.4 )
日時: 2018/01/18 19:50
名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)

闇市場で

薄暗い道。光の届かない、地下街。光源から遠のいていく。酷く殺風景だ。
「何処へ行くの。」
少女の高い声が響く。それ程までに人気が無い。人通りの多い場所から、騒ぐ音が聞こえてくる。
『闇市場で情報交換さ。』
低い声が轟く。本当に誰もいない。いや、正確にはいなくなったのだ。目を凝らすと二人が歩いた道には肉の塊としか言えない何かから赤黒い液体が広がっている。これが刺激臭を放つ。だが、二人には臭いなど分からないだろう。少女と化け物は淡々と進んで行く。

小汚い路地に来た。道端に商売をしている人間が沢山いた。人間の嘆く声、嗚咽、汚らしい声、見たくない光景が広がる。奴隷商売、薬、禁忌の魔術書、地上では違反している商売が多い。
「そこのお嬢さん、可愛いねぇ。この飲み物を飲むと良いよ。」
完全なる睡眠薬。奴隷の収穫である。すると、グチャと耳にねっとり纏わりつく音が聞こえた。
『邪魔が多いな。貴様も気を付けろ。』
化け物に血と思われる液体がべっとりとついていた。少女は何も答えない。分かったという意思表示だ。闇市場が血に染まる一日前の話。

機械人形と魂喰い ( No.5 )
日時: 2018/02/11 15:58
名前: こあく (ID: 9Zr7Ikip)

13日の金曜日

酷く脆いな、少女の感想はこれだけ。今見ている光景は、人間という生命体には耐えられないだろう。同種族の愛に満ち溢れている人間には。


事の発端は情報屋がから貰ったとある聖国の内部資料。幹部達の名前が記されており、その1人が闇市場を支配しているらしい、という情報を見た時だった。それからというもの簡単に怪物がそいつを闇市場に誘い出し、借りた部屋で拷問中という事だ。
『どうにも口を割らん。全く、手間をかけさせるな、早くそいつらの情報を吐けば苦痛を味わう事は無いのだぞ?』
化け物が言葉にする。苛立ちを込めて。この男が選ぶのはどちらか。苦痛か、それとも味方か。人情で溢れている人はきっと苦痛を選ぶだろう?そんな事は無い。人間誰しも自分の事だろう。何故?答えは簡単、その時の感情に縛られやすいからだ。
「わっ、分かった。情報を提供しよう。」
そう言った男の剥ぎ取り中だった爪から剥ぎ取り用の玩具を仕舞う。少女は今も化け物の後ろからずっと男の事を見ている。そう、ずっと。
『では問おう。貴様がこの闇市を支配していると聞く。この闇市の存在は王は知っているか?』
闇市、奴隷商売やら薬やらの汚い場所。人間の欲望の末路だ。
「あぁ、そもそもこの計画は王様が立てたからな。この国の事は全て掌握している。あとこの闇市の奴隷は王様のお気に入りだ。」
震える声で男が喋る。そして化け物が質問する。この繰り返しだ。何度も何度も問いかける。しかし、それは永遠とはいかない。全てには終焉が待つ。
「そっ、それで質問は終わりか?俺は約束に答えた。俺を返してくれ!」
叫ぶ。醜い姿になり、血が流れている。
『情報提供有難う。…やれ。』
小声で少女に合図する。すると少女は男の目の前に立つ。無気力な死んだ目で。まるで鉄槌を下す死神のように。そして、その右手に持っているナイフを振り上げる。
「やめっやめてくれぇぇ!約束とちがっ……!」
一気に少女が振り下ろしたのちに、男は項垂れる。絶命したのだろう。脳天に刺さったナイフから血が溢れる。
『まぁ、良い情報が手に入ったから良いだろう。にしても違うとはなんだ?私は奴を解放するなど言っておらんがな。勘違いもいいところだ。』
ブツブツと化け物は言葉を呟く。少女は血がかかったことが嫌なのか、手で服を払う。しかし取れるわけもなく、「着替えてくる。」と言葉を残し、その部屋を出た。
13日の金曜日の夜の出来事。

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