ダーク・ファンタジー小説

時の旅人
日時: 2018/07/26 16:46
名前: N

 こんにちは!Nです。初めて小説を書きます。温かく見守ってください!

(・・・ここ、どこ?あたしは・・・何を・・・)

 プロローグ

 今は昔かそれとも未来か。時の秩序を守るため、時の神により選ばれた子供達がいた。そして、またここに1人・・・

 (聞いてくれ、どうして俺達がタイムキーパー、つまり時の秩序を守るために選ばれた人間になったかというとな。あ、まだ自己紹介してなかったな。俺は裕太。俺達の中じゃリーダーみたいなもん。そう、みんなから頼られる立派なリーダーさ!舞は産まれた時からの幼なじみ。こいつは気ぃ強くてなぁ。でもいい奴だぜ。そして、もう2人の幼なじみ、レックスとフミヒト。こいつらは産まれた時が違う。でも同い年だ。どういう事かというと俺達はまず生きている時代が違う。あの2人は俺達よりずっと未来の人間だ。なぜ生きる時代の異なる俺達が幼なじみかというと、レックスの両親は考古学者である時タイムマシンを発明した。ずっと先の話だ。そのタイムマシンで俺達の時代にやって来たレックスとレックスの両親。そして、たまたまついてきたレックスの幼なじみフミヒトは俺達と出会った。今、俺達は10才だから、確か5年前の話だ。フミヒトは10才とは思えないほどの天才。親がかなり有名な医者らしくて、人一倍医学の知識がある。確か7才で医師免許を取った。しかも、医学だけではなく、科学知識もすげぇある。医者であり科学者なんだよ、あいつは。親は仕事であちこち飛び回っているらしいから、あいつは今1人で親が使っていた研究所で研究の日々・・・らしい。よーし!俺達の紹介は終わり・・・)
「まてまてまて。」
レックスは裕太に口をはさむとため息をついた。
「どんだけ長々と自己紹介してんだ。あと、お前だけ盛りすぎだ。何がみんなから頼られる立派なリーダーだ。どこが当てはまっている。バカで能天気のおちゃらけ人間だろ。」
「何だと―!お前こそ勝手に人の考えていること読みやがって!」
「コラー!あんた達早々にケンカしてんじゃないわよ!」
舞が大声で叫んでもさして効果はない。
「あんた達――!」

 「ゴメンね、みんな。」
ケンカに入らず1人空気になっていたフミヒトは、はぁとため息をつくとにっこり、いや、ひきつった笑顔で話しはじめた。
「あの3人はお取り込み中なので、なぜ僕らがタイムキーパーになったのかは僕が説明するね。ええと、昔、時の神様っていう、まぁ名前の通り神様がね、時の秩序が狂わないように時の力をつかさどる秘宝を作り上げた。時の石、僕らはタイムストーンって呼んでいるんだけど・・・」
すると、フミヒトはまたため息をついた。
「愚かな人間の争いが多発。お陰様でタイムストーンはバラバラになった。いろんな時代にね。すると時の秩序は面白いくらい簡単に狂った。困った神様はタイムマシンで時空間を行き来できる僕らをタイムキーパーに仕立て上げ、タイムストーン探しを命じた。という訳なんだよ。・・・」
はぁとまたため息。
「・・・ったくいつまでケンカしてるんだ・・・」
フミヒトの後ろでケンカは現在進行形で続いていた。
「お前がグダグダ言っているから主人公も登場できてないんだぞ!」
「はぁ!話が進まないのはお前のせいだろーが!」
「いい加減にしなさいよ!私だっていつまでも女の子1人は嫌なんだからね!」
ワイワイガヤガヤ。
「・・・メタ発言は止めてくれよ・・・はぁもういいや、と言うことで次回から、時の旅人、略してトキタビ始まります!お楽しみに!」

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Re: 時の旅人 ( No.10 )
日時: 2018/08/24 20:46
名前: N

第8話 抱えるもの

 4人がミズキや村人達と作戦会議をしていた一方そのころ・・・
「ったく、この娘、今日も吐かなかった。」
ガシャン。なつみは兵士の1人に牢の壁に叩きつけられた。なつみは、姫との関係を言うように厳しく責め立てられた。殴られ、蹴られ、打たれ。ずっと後ろ手にされている手も痛む。なつみはすっかり弱りきっていた。ここ2、3日何も口にしていない。吐けと言われても、なつみには全くわからない。吐きたくても吐けない。なつみは牢に転がされて、起き上がる気力もなかった。
「全く、強情な娘だ。」
「ジン王君。」
ルムはジンに提案する。
「あの娘と姫を会わせてみてはどうでしょう。何か口を滑らしてくれるかもしれないですよ。」

 ガシャン。なつみは少し広めの牢に放り込まれた。そこには先客がいた。なつみと同じくらいの少女だ。なつみはもはや目も霞んで見えるほど弱り果てている。
「大丈夫ですか!?」
少女は放り込まれたなつみに駆け寄る。後ろ手に縛っている縄をほどく。少女はなつみの顔を見た瞬間後ずさりした。
「キャ、何?私そっくり・・・」
彼女がナリ王国姫君、サヤ姫だ。なつみはピクリとも動かない。唇もカサカサに乾燥している。顔もキズだらけだ。
「た、たいへん!」
サヤはなつみにゆっくりと水を飲ませる。乾ききった体に水分が染み渡る。なつみの意識がはっきりし出した時、目に映ったのは、自分そっくりの少女の顔。
「だ、誰?」
なつみはいきなり飛び上がった。しかし、弱った体が悲鳴を上げる。そして、改めて少女の顔を見る。
「あなたは、誰、ですか?あたし、そっくり・・・」
「それより!あなた顔にキズが。すぐに手当てを。」
「大丈夫ですよ、こんなかすり傷。」
「だめです。えっと、薬と絆創膏・・・」
・・・
「あー、なんか、無関係っぽいですね、王君。あれ、どうします?引き離します?」
「・・・ほっとけ。」

 「・・・そうですか、ミズキに会いましたか。」
キズの手当てをしてもらったなつみは、この少女がサヤ姫であることを知り、今、この国がどのような状況であるかを聞いた。なつみもここに連れられてくる前、ミズキという少女に会ったことを話した。
「はい。ミズキさん、とても心配していましたよ、あなたのこと。」
「それで、ミズキは無事なのですか?」
サヤは両手で顔を覆った。
「はい。あたしの力であの場から飛ばしました。多分、あたしの仲間と一緒です。」
「力?」
「あたし、人並みではない力が使えます。妖術って言うんですが、自分の想像力とそれに対する力さえあれば何でもできるそうです。・・・今は属性別妖術の他に、瞬間移動と変化(へんげ)術と髪術なら一応お師匠様に教わったんですが。」
「その、瞬間移動って言うのでミズキを助けてくださったのですね。・・・でも、そんな力が使えるのなら、どうしてなつみさんも一緒に逃げなかったのですか?」
サヤはうつむく。
「どうしてですか?捕まったら何されるかわかったことじゃないのに。」
なつみは軽く笑うと肩をすぼめた。
「実は、自分に力を使うのって、結構難しいんですよ。出来ないこともないみたいですが、今のあたしには無理みたいです。変化術は別ですけど。まぁどのみち、剣を取り上げられたので、どうしよもないですが。」
「・・・自分だけ捕まるしょうちで逃がしたのですか・・・?」
「・・・はじめは、みんながいると、戦いにくいってあの場から逃がしたんです。でも、違う。あたしは怖かったんです。みんなまで捕まったら?みんなまでこんな目にあったら?・・・だから、あたし、こんな目にあいながらもホッとしているんです。“あぁ、自分だけで良かった”って。あたしには、あたしが死んでも悲しむ人は少ないから。みんなを守れるのなら、死んでもかまわないって思うんです。」
サヤは答えることが出来なかった。しかし、なつみはサヤの肩に手をかける。
「・・・でも、あなたは違う。あなたには、あなたが死んだら悲しむ人がたくさんいるはずです。だから、あなたは死んだらだめです。生きないと、だめです。」
すると、サヤはいきなり、グッと手を握りあわせて言う。
「私は、いつも、ずっと、私を慕ってくれる人々の幸せを祈っています。そのためなら、私がどうなっても構いません。」
そのまま、2人は黙り込んでしまった。お互いに抱えているものの重さ。

 「あの、少し気になったのですが、髪術ってなんですか?」
重い空気を吹っ切るように、サヤは言う。なつみは髪の毛を1本抜くと言った。
「そのまんま、髪の術ですよ。髪の太さ、長さを操って自由自在に扱う術です。」
なつみは抜いた髪の毛をひらひらと振る。髪術はそうやって使う。剣がないからどうせ出来ないはずだが。しかし、現実は違った。髪の毛がみるみると長くなってゆく。
「あれ?出来た・・・」
(剣が無くても、髪術なら出来る!?)
「サヤさん。あなたをここから逃がすことができるかもしれないです!」
なつみは髪の毛を細く、そして長く伸ばした。そして、誰もいないことを確認するとヒュンと鞭のように振る。
(おねがい、うまくいって。)
髪の毛を伸ばして数分。
「かかった。」
なつみは小さな声で言った。くいっと髪の毛を引っ張る。そして釣れたのは。
「フフッ、これがあればこっちのもんだ。」
なつみの剣とバッグ。なつみは髪の毛で自分の荷物を手繰り寄せたのだ。なつみは手を打ち合わせ力を込める。
「秘技、変化術。」
すると、なつみの服がサヤと同じ服になった。なつみはニヤリと笑う。
「服だけ変化させた。顔まで変化させる必要はないですからねぇ。あなたにはってもらった絆創膏もいいあてつけになりますよ。」
「・・・あの、なつみさん?」
「さぁ、次はあなたですよ。・・・秘技、瞬間移動。」
なつみはまた手を打ち合わせる。視界がグニャリと歪む。
「なつみさん!」
サヤは、消えた。
「・・・さぁて、どう料理してやろう。」

 「フ、フミヒトさん。あなたはもしかして、軍師ですか?」
フミヒトの作戦に息を飲む村人達。相変わらず、フミヒトは冷静で頭がキレる。
「うまくいけば、この戦力差でも何とかなりますよ。」
その時、外からドサッと物音がした。もう、外は暗くなっている。皆、外に出てみると、1人の少女が倒れていた。
「姫様!」
ミズキと村人達は一斉に駆け寄る。4人はそっと姫の顔を見た。
「・・・こりゃ、見間違えるわ。」
サヤはミズキに気付くとすがり付くように抱き寄せた。
「なつみさんが、なつみさんが!」
その言葉に4人は顔を見合せ、うなずいた。代表してフミヒトが。
「その事、詳しく聞かせて下さい。」

 「なつみがあなたの身代わりになって、お城に残っている!?」
皆、建物に入る。サヤは、なつみの力のこと、剣を手にしたなつみか自分を逃がしたことを話した。裕太、舞、レックスはあっけにとられ、フミヒトは頭を押さえため息をついた。サヤはぶるぶると震えながら言った。
「剣を手にしたなつみさん。性格がガラリと変わってしまったみたいだった。・・・なつみさんが心配です。あぁ、なつみさん。」
フミヒトはどこか引っ掛かるような気がしたが、声をあげた。
「では、作戦開始は明日の夜明け前。いいですね。」

Re: 時の旅人 ( No.11 )
日時: 2018/09/02 16:18
名前: N

第9話 剣士の暴走とすべての発端

 「姫。あの娘を逃がすとはどういうおつもりですか?」
まだ夜深し。ジンは数名の兵士を引き連れ、牢の前に立っていた。姫は両手で顔を覆い、しゃがんだままジン達に背を向けていた。
「お仕置きが必要みたいですね。」
ジンは手を上げると、数名の兵士達が牢を開け、姫の両腕を掴み無理やり立たせた。無理やりジンと向かい合わせに立たせたしまったのだ。その時、姫の両腕を掴んでいた兵士が、いきなり吹っ飛んだ。姫は下を向いたまま、肩を上下にさせて笑う。
「・・・ッフフ、バカだなぁ。」
少女はキッと顔を上げる。頬には絆創膏。その時、奥からルムが走ってきた。
「あ、あなたは!?」
「さすが、あたしを倒した者は違うねぇ。」
「くっ。」
ルムは力を使おうと身構える。
「さ・せ・る・か・よ!」
なつみはたんと床を蹴り、牢から飛び出した。
「へへっ、脱出ぅ〜♪」
「つ、捕まえろ!」

 「お、おい!フミヒト!今城がたいへんなことになっているぞ!」
「どうした!?」
様子を見にいったレックスが戻ってきた。
「よくわかんないけど、今城中大パニックになっている。アル王国の兵士が城にみんな集まっているぞ。」
「そうか・・・作戦はそのまま決行します。皆さん、位置に着いて下さい!」

 「・・・甘い、甘いんだよ!」
なつみはバッタバッタと兵士を倒しまくる。逃げるなつみ、追う兵士。倒すなつみ、怯む兵士。その繰返しだ。なつみは一応自我を保ててはいるが、ギリギリだ。狂いつつあるなつみは、本能のまま兵士を倒しまくる。
「つまらないなぁ。手応えを感じないよ!」

 「いいですか。作戦通り、全員松明を持って城を囲んで下さい。前列の人は盾として木の板を忘れずに!」

 「ジン王様、たいへんです!ナリ王国の連中が反乱を!」
「なんだと!?」
ジンは舌打ちをすると、命令した。
「先にあの娘を捕らえろ。ナリの連中は後回しだ。」

 「威嚇射撃用意・・・撃て!」

 「ナリ王国の連中も黙らせろ。・・・っくそ、いつになったらあの娘を捕らえられるのだ。」

 「女性の皆さんは、石の補充をおねがいします。投石器用意・・・発射!」

 「ジン王君、ナリ王国の連中は私にお任せ下さい。」
ルムは手を胸の辺りで構えると、何かを唱え始める。その時、ルムに向かってなつみが跳んだ。
「待ちな。あんたの相手は、このあたしだよ!」
なつみは本能的に広い所を探して、誘導するように跳んだ。出た場所は、城の一番上。広く、国が一望できる眺めのよい場所だった。
「準備はいい?」
「準備も何もないでしょうに。」
ルムは両手を前につき出すと、手の先で黒い魔方陣が浮かび上がる。
「すぐに終わりにします。」
魔方陣から光の玉が浮かび上がる。幕のように沢山の光達は連なると、ルムの手の動きに合わせて、一斉になつみに襲いかかった。なつみはヒュン、ヒュンと光をかわす。綺麗で美しい光達だが、とてつもないパワーを秘めているのは、自我を失いつつあるなつみも感じていた。
「・・・ッフフ、これだよ!これ。もっと、もっと。もっとあたしを楽しませて!」
なつみは腹の底から沸き上がる感情に飲み込まれていった。もう、ほとんど自我を保ててない。

 「おい、あれ!城の上の方!あれなつみじゃないか!」
裕太が声を上げる。

 たん。なつみは思い切り飛び上がると、空中で剣をルムに向けた。そして、一気にルムに襲いかかった。攻防戦が続く。しかし、なつみはゴボッと血を吐いた。それでも剣を下ろすことはない。

 「もう駄目です王様!今戦える人間はいません!ほとんどあの娘に倒されて伸びてしまいました!」
「王様、ご指示を!ご決断を!」

 「おい、アル王国の連中が引いているぞ!」
アル王国の兵士達は、ジンは、ナリ王国を捨て、自国に逃げ帰ることを決断したらしい。
「か、勝った、のか?」
「まだだ、生きて国に帰すな!」
「お止めなさい!」
血気盛んなナリの民をサヤは止めた。無駄な殺生を好まないサヤ姫の願いだった。

 「兵が、引いてゆく。」
なつみとずっと戦っていたルムは、兵が引いてゆくことに気がついた。ルムは軽くため息をつくと、言った。
「あぁ、もう終わりみたいですね。」
ルムは手を合わせると力を込める。
「ま、待・・・ゴボッ。」
なつみは血をまた吐いた。何度も血を受けた手がもう真っ赤に染まっている。
「ま、待て・・・」
黒い魔方陣。それに包まれるようにルムは消えてしまった。

 「なつみ!無事か!?」
裕太の声が聞こえる。いや、なつみの耳には聞こえなかった。
「なつみちゃん!なつみちゃん!」
なつみを見つけた舞がかけよってくる。後の3人も舞に続く。しかし、なつみの様子がおかしい。
「なつみちゃん・・・?」
「足りない。まだ足りない。もっと、もっと遊んで!」
いきなり、なつみは舞に襲いかかった。4人のなかで一番運動神経がいい裕太が、舞を引き寄せた。おかげで舞は事なきを得た。
「おい、なつみ。どうした!?どうしちゃったんだよ!」
その時、だった。なつみの息が荒くなって、震えた目で4人を見たのは。
「・・・み、みんな・・・おねがいします、あたしを止めてください。あたしじゃ止められない。あたしを、殺しても構わない。だから、おねがいします。」
少しだけ自我を取り戻した。ゴボッと血を吐く。だが、また自我を失いそうになる。
「殺すなんて出来るわけな・・・」
バキュン。裕太、レックス、舞は一斉に振り向いた。そこには、カラフルではあるが、銃を構えたフミヒトの姿があった。音と同時になつみが倒れる。
「フミヒト、お前何を!?」
「安心して、ただの麻酔銃だから。寝てるだけだよ。」
「はぁ・・・」

 その後、4人は、サヤの案内でベットルームに運び込まれた。ベットに寝かされたなつみは血を吐き続け、うなされていた。ミズキにタイムストーンを渡されたが、それどころではなかった。
「このまま、血を吐かせたほうが、いいかもしれない。薬を打って悪い物は全部吐かせよう。まだ、試したことのない薬だけど、一か八か。いい?みんな?」
「なんの薬なんだ?」
「体の善と悪を分ける薬だよ。悪いところだけ全部吐かせる。」

 「あれ、ここ、どこだ?」
「なつみ!」
なつみの目が覚め、事は終わりへと向かっていった。4人は、戦いが無事終わったこと、タイムストーンを手にいれたことを話した。
「後で、何があったか洗いざらい話してもらうからな。君の力のことも含めて。覚悟しなよ。」
フミヒトの強い意見で5人は早々に立ち去ることを決めた。サヤや、国民達はもう少しとどまって欲しそうだったが。

 「なつみさん。フミヒトさん。裕太さん。レックスさん。舞さん。すべてあなた方のおかげです。本当にありがとうございました。」
サヤは静かになつみにハグをする。5人が立ち去る。それを全員が最後まで、最後まで見送っていた。
 しかし、今回の騒動が、あんなことに発展するなんて、今は誰も知らなかった・・・

Re: 時の旅人 ( No.12 )
日時: 2018/09/17 14:39
名前: N

第10話 愛

 「全く、君って人は!」
「はい、ごめんなさい。反省してます。」
ガミガミ。なつみはフミヒトから説教を受けている。
「うわぁ、だいぶフミヒトに絞られているな、なつみ。」
その様子を影からみていた裕太とレックスは、呟いた。
「ってか、フミヒトこそなつみの止め方さあ、ちょっと強引だったよな。なにあれ、麻酔銃?」
フミヒトが言うには、薬をセットすることで使えるピストル型の銃らしい。これは、フミヒトお手製の道具だ。
「フミヒト君、もうそれくらいにしてあげなよ。ほら、ご飯出来たよ。」
なつみのお腹がグゥと鳴る。
「そいや、ここ3日くらい何も食べてない。」
「マジすか。」
「な〜つみさん。」
フミヒトの笑顔。全員、顔をひきつらせた。また、説教タイムに突入だ。

 「よーし、タイムストーンをチャッチャッと探すぞー!」
「へ〜い。」
長い説教で精神的にボロボロになったなつみは、肩をすくめる。でも、なつみの体は調子がいい。きっと、フミヒトの薬のおかげだろう。ただ、少し、少しだけ違和感があるようなないような。そして、この時代に降り立ったなつみはどこか心地よい気を感じていた。よく知っている気。
「この時代に、お師匠様がいる。」
「へ?」
「はは、また力を暴走させたって知られたら、叱られちゃうな。・・・!?」
その時、後ろから強い気が近づいてきた。禍々しい、嫌な気。
「・・・みんな。あたしがせーのって言ったら、振り返らず、全力で走って下さい。」
「へ?」
「せーの!」
訳がわからない中、一斉に5人は走り出した。
「おい、一体何なんだよ!」
「いいからおねがいします!」
(駄目だ、追いつかれる。)
なつみは突然ブレーキをかけ、キッと力を込める。
「ちょ、なつみ!?」
「行ってください!」
なつみは片手を前に突き出すと力を込める。
「結界。」
なつみの手の先で結界、簡単に言うと力で膜を張り、なつみを追いかけているものを跳ね返そうとした。4人の目にも、なつみの前で何かがぶつかっているのがわかった。
(駄目だ、おさえきれない。)
パリン。なつみの結界が破れる。なつみは少し後ろに吹き飛ばされるが、片手方膝をついて踏ん張る。
「なんの用なの?」
「いやあ、お見事お見事。」
ぶわっと禍々しい妖気が渦巻く。現れたのはやはり・・・
「キュウビ。」
「相変わらず、だな。早速だけど、ついてきてもらおうか。」
「嫌なこった。」
なつみは剣を構えた。キッとにらめつける。キュウビは軽く笑うと高らかに言った。チラリと奥の方を見る。4人のいる方向だ。キュウビは、なつみが人質に弱いことを知っている。なつみはさらにキュウビをにらめつけた。
「無駄だ。私にとって、人の子1人さらうなどわけないのだから!」
キュウビがバッと手を上げる。すると、なつみの真上に大きな、大きな網のようなものが覆い被さってきた。4人に仕掛けてくると思ったなつみは不意をつかれた。大きすぎて避けられないと直感したなつみは、剣で網を切り裂こうとする。
「無駄だ。・・・伝り火。」
網に炎が灯る。炎が網を伝ってなつみを襲う。
「ひ、秘技、流水のじゅ・・・グワッ。」
なつみは流水の術で火を消そうとした。が、遅かった。それでも、なつみは剣を振るい、流水を出そうとした。キュウビは、そんななつみを嘲笑うように、網の端を手繰り寄せると、グイッと持ち上げた。炎を自分の体重でもろに受ける。
「ううっ、痛い、痛い、痛い!」
そのまま、なつみの意識は消えた。
「・・・ふふ、痛みだけ感じる炎だ。火傷こそしないが、体にかなりの痛みが走る。まさかこんなに長く耐えるとは。」
「おい!」
キュウビは冷めた目で声の方を見た。裕太が威勢よく言う。
「誰だ!なつみを返せ!」
キュウビは、ため息をつくと、
「お前らには関係ない。」
と言って消えてしまった。と、同時に、また強い妖気が渦巻く。しかし、キュウビとは違う、どこか清々しさがあった。
「くそっ、遅かった。」

 「おまっ、いや、あなたは・・・」
「フン、久しいな。」
4人の前に現れたのは、なつみの師匠。前に洞窟にいた妖怪だった。
「あいつの気がこの時代にきたと思えば、キュウビの手に落ちてしまったか。」
「あの!何なんですか!なつみちゃんは・・・」
舞はオロチに強く言った。しかし、オロチは軽くあしらうように言った。
「お前達には関係ない。これは私達の問題だ。下手に関わるな。」
「力を暴走させる。」
その時、フミヒトはゆっくりと、冷静に言った。
「どういうわけですか。」
オロチはため息をつく。
「詳しく聞かせてくれ。」

 「全く、気をしっかり持てとあれほど言ったのに。」
オロチは手を頭に置くと大きなため息をついた。
「後で説教だな。・・・お前達は、自分達のすべきことがあるのだろう。ここは私に任せて、お前達は関わるな。」
「えと、オロチ・・・さん?」
「なんだ。」
舞はオロチにおどおどと聞いた。
「オロチさん、前と比べて、なんか、やわらかくなりました・・・よね?」
「私が・・・か?」
オロチの目が一瞬、鋭くなった。舞は怯えた表情をする。しかし、オロチの鋭い目が緩んだ。
「私は、今まで1人で生きてきた。人間はおろか、妖怪とも関わりをもたなかった。あいつは、奴に、キュウビと対抗するための捨て駒だ。そう思っていた。」
オロチは自分の手を見つめると、ギュッと握った。
「あいつを捨て駒にするのは惜しい。いや、手放したくないのかもしれない。私は、あいつを弟子として、愛してしまったのか・・・!?・・・フフッ、大妖怪失格だな。」
「あの。その、キュウビってなんです?なつみを連れ去った妖怪は何者何ですか?」
「私の古くからの宿敵だ。・・・さぁもういいだろう。これは私達の問題だ。」
「あのー。」
フミヒトが不敵な笑みを浮かべる。
「オロチさんって、その、キュウビとか言う妖怪といがみ合っている。つまり、対の関係ってことですよね。」
「それがどうした。」
「あなたと対の関係なら、タイムストーンが彼のそばにあってもおかしくない。」
フミヒトは急に鋭く、涼やかな目になった。
「僕らも、連れていってください。」

 「おい、フミヒト。その話本当か!?」
裕太は小声で言う。オロチに聞こえないように。
「まさか。なつみのところに連れていってもらうためのデタラメだよ♪」
フミヒトはこれまた不敵な笑みを浮かべた。
「えー・・・」

 「・・・う、んん。どこだ、ここ・・・」
「ようやくお目覚めか。」
「!」
連れ去られたなつみは、キュウビの住む洞窟に連れ込まれた。思い切り抵抗する。
「グワッ、なんだ、これ!」
動けば動くほど、なつみの体に激痛が走る。キュウビはなつみを嘲笑うように言った。
「無駄無駄。何てったって、ものすごい力をかけているからな。その結界からは出られないよ。」
「なんのつもり?剣すら奪わないで。馬鹿にしているの?」
「まさか。」
キュウビは、結界の外側から爪をツンと立てた。とたん、なつみの体に電気走るような痛みが身体中駆け巡った。
「お前。その剣は力の源と同時に、自分の力を上手く調節させているのだろう。」
痛みで薄れてゆく意識の中、なつみはハッとした。そう言えば、なつみが我を失って暴走したのは、剣を手放して、再び剣をとった時だ。だからキュウビはなつみから剣を奪わなかったのだ。
「そ、そんな、おま・・・」
プツン。なつみの意識が切れる。キュウビは、ポンとなつみの頭をさわった。
「夢をみてもらうよ。とっても、悪〜い夢をね。」

Re: 時の旅人 ( No.13 )
日時: 2018/10/20 17:29
名前: N

第11話 膨張

 「いいか、くれぐれも私の邪魔と無理だけはするなよ。」
「わかってます。」
オロチは4人に厳しい目をしながら言った。いよいよ、キュウビの住む洞窟へ突入する。と、その時。洞窟の奥から笑い声。
「やっときたね。のろまなお師匠さん。」
「てめぇ。」
キュウビは高笑いしながらオロチの前に現れた。
「今から2つ、返してもらう。1つは私の弟子。もう1つは、彼らが探している宝玉だ。」
オロチがものすごい真面目な顔で言った。
「あ、ちょっと待って、まだここにタイムストーンがあるって決まったわけじゃ・・・」
「宝玉?あぁ、あの突然現れたあれのことか。」
「いや、あるんかい!」
4人はずっこける勢いでツッコンだ。オロチは依然として真面目な顔をしている。しかし、キュウビは嘲笑うように言った。
「宝玉なら好きにせぇ。しかし、お前の弟子はそうもいかない。」
「あいつをどこにやった!?」
「お前の弟子には私の結界の中で少々怖い夢を見てもらっている。ひどくうなされているようだ。」
「キュウビ。返してもらうぞ。私の愛しい愛しい、愛弟子を!」
オロチとキュウビがぶつかり合う。双方、蹴り、殴り、払い、かわし、激しい空中戦が続く。その衝撃波は4人が吹き飛ばされそうになるほど強かった。オロチは空中で片手をつき出す。キュウビも負けじと手を大きくまわす。
「電撃の術!」
「弾け火。」
オロチの電撃とキュウビの弾け火がぶつかり合う。そのこぼれ火が、下に落ちる。落ちてゆく先には、裕太達4人がいた。4人は、声を上げて頭を守るようにしゃがんだ。オロチは、チッと舌打ちをすると、4人の上に結界を張り、こぼれ火を弾いた。その一瞬の隙を見逃さず、キュウビは力を込めた。
「馬鹿野郎。くらえ、帯締め。」
キュウビの体から半透明の帯が現れる。いつか、なつみを襲ったあの技だ。キュウビは、片手をオロチに向けて振る。オロチの隙をつき、帯がオロチの体にまとわりつく。
「くそっ、不覚。」
キュウビはオロチを締め上げると、高笑いした。そして、そのままオロチを地面に叩きつけた。
ドカン。土埃が舞う。オロチは方膝をついて土埃の中から姿を現した。
「オロチさん!」
4人はオロチに駆け寄る。オロチはくっとのどを鳴らすと、ふわりと1本の木刀を出してフミヒトに渡した。
「お前達は先に行け。あいつのこと、頼んだぞ。」

 「フン、変わったな、お前。人間をかばうなんて。」
「それはどうも。」
オロチは、自分の体から蛇のような影をまとわせると、キリッと目を尖らせた。洞窟に入っていった4人の姿はもうみえない。
「さぁ、続きを始めようか。」

 「くそっ、分かれ道だ。」
囚われのなつみを救出すべく、洞窟に入った4人は息を飲んだ。フミヒトは片手を振り言った。
「分かれよう。僕とレックスはこっち、裕太と舞はあっちに行って!行き止まりだったら、すぐに引き返してもう片方の道に入って。」
「オーケー。」
「了解!」
「わかったわ。」
3人はそれぞれ返事をすると、二手に分かれて進んでいった。

 「いたっ!」
二手に分かれたこちらは、フミヒト・レックス組。2人は見つけた。横たわり、何かに怯えるようにうなされているなつみの姿を。
「なつみ!」
レックスはなつみに駆け寄る。しかし、何か見えたいものに弾き返されてしまった。レックスは、ドンと尻餅をつく。強い妖気がレックスの体を痺れさせる。フミヒトはレックスに駆け寄った。
「そういや、キュウビが、“私の結界”って言ってたな。」
フミヒトが呟く。2人は近づけない。その時・・・
「おーい!」
裕太と舞が来た。裕太の手には、タイムストーン。
「行き止まりだったけど、こっちにあったぜ、タイムストーン。」
そして2人は、一瞬にして、この状況を把握した。
 「レックス、大丈夫?」
「あぁ、なんとか・・・」
4人に突きつけられた課題は、この状況をどう突破するか。ただ、ひとつだった。その時、裕太が口を挟んだ。
「オロチさんからもらったあの木刀を使えってことかな。」
「え?」
「だったら何で俺達に木刀渡すんだよ!」
すると、いきなり裕太は木刀を持つと、なつみの結界に向けて思い切り投げた。木刀はバチバチと音を立てて結界にぶつかる。結界を壊せはしなかったが、すぐに弾かれることはなかった。4人は顔を見合わせる。全員、木刀を握りしめる。
「行くよ!」
4人は力一杯、木刀で結界をついた・・・

 (うう、何だろ、あぁ・・・)
真っ暗な空間。どこだろう、ここは。何も見えない、考えられない。そんな空間を1人、たった1人で漂っている感覚。
ー ・・・よ ー
何か聞こえた。何だろう。
ー 邪魔なんだよ ー
(え?・・・裕太・・・さん?)
ー 目障り、消えてよ ー
ー あっち行ってよ、あんたなんかいらない ー
ー この役立たず、君なんか見たくない ー
(え?え?レックスさん?舞ちゃん?フミ?)
邪魔。消えて。役立たず。そんな言葉が、この空間にこだまする。
(いや、みんな!何で、どうしたの!どうして・・・)
なつみはバッと耳を塞ぐ。何もいないのに、何も見えないのに、言葉がどんどん近づいてくる。
(いや・・・来ないで・・・)
なつみは死に物狂いで耳を塞ぎ、鞄の中身ををかき回した。そして、あるものを手にした時、なつみの体はピタリと止まった。ゆっくりとそれを取り出す。それは、鞘に入った、小さな小刀だった。なつみは小刀をじっと見る。そして、小さく笑いだした。自分の頬を涙が伝っていることにも気づかず・・・
(そう・・・だよね。そもそも、あたしの居場所なんか、ない、よね。そう・・・あたしなんか、あたしなんか、いなくても、いいんだ。)
みんなが助かるなら、自分の命でさえ、重いものではなかった。みんなが安全なら、自分はどんなに危険なことでも受け止める。みんなが笑えるのなら・・・そう思っていた、そう思っている。そうじゃないのなら・・・
(これが、一番・・・)
なつみは、小刀の鞘から抜く。小刀の切っ先を自分の喉に向ける。小刻みに手が、体が震える。
(はは、情けないな。何が“みんなのためなら命も重くない”だ。今、こうする覚悟を固めたじゃないか。)
なつみは必死に体の震えを抑える。
(もう躊躇しない。終わりにする。)
なつみは力一杯小刀を喉に突き刺す。

 呼吸が整わない。苦しい、苦しい。そりゃそうだ。なつみは喉に小刀を突き刺したから。
(このまま・・・)
その時、体が動いたような気がした。何かを感じる。人の温もり。苦しいほどに温かい。
ー 消えて / 大丈夫か!? ー
ー お前なんか / 大丈夫だ!なつみなら絶対目を覚ます ー
ー 目障り / おねがい、はやく目を覚まして! ー
ー この役立たず / はやくオロチさんのところへ!はは、目を覚ましたら説教だな。 ー
みんなの声が重なる。夢かうつつかもわからない。なつみはみんなの声の方向に手を伸ばした。やっぱり、みんなが・・・闇のなかの光に向かって。

 「うう、ハァ、ハァ。」
「なつみ!」
少しずつ目を開ける。そこには4人の顔。
(みんな!)
体が重い。それでも、はやく体を起こしてみんなに抱きつきたかった。しかし、なつみの脳裏にあの言葉が浮かぶ。
ー 消えて 役立たず 目障り 邪魔 ー
なつみは目を見開く。自分で呼吸が荒くなるのがわかる。
「どうしたの?なつみ。」
ー 目障り。消えて。 ー
「よかった!目が覚めて。」
ー あっち行ってよ。 ー
また、みんなの声が重なる。どっちが本当の声かわからない・・・

 「なつみ!」
なつみが目を覚ました。4人に安堵の息が漏れる。
「大丈夫か?」
皆、思い思いに優しい声をかける。それが、本人にその通りに聞こえてないとも知らずに。
「ハァ、ハァ、いや、嫌。」
なつみは、怯えた表情で座ったまま後ずさりする。呼吸は荒い。
「どうしたの?なつみ。」
なつみは耳を塞ぐ。その時。外で大きな音がした。何かを察したようにみえたなつみは、思い切り、自分の剣を外に投げた。

 オロチとキュウビは掴みあったまま地面に落ちる。それでもなお、ずっと掴みあったっている。その時、洞窟から剣が飛んできて、キュウビの頭にスコーンと当たった。剣は、コロコロコロと洞窟の方へ転がる。と同時にコツコツコツとなつみが姿を現した。
「お、おまっ!」
キュウビが焦る。その理由は・・・同時に4人も洞窟からかけてきた。
「よくわかった。あたしなんて・・・ただ、“みんなの隣”(ここ)があたしの居場所であるうちに果ててやる。キュウビ・・・」
剣を拾い上げる。なつみの体が小刻みに震える。そっと目をつむる。その場がふわりと妖気で渦巻く。キュウビも、オロチも、4人も、一斉に身構えた。なつみが何かに呑み込まれてゆくような。
「お前を、道連れにして!」
目を見開く。なつみのまわりに風が起こる。足からどんどんなつみの色が変わってゆくような。そしてなつみは、自我を失った。抗わなかったから、早かった。なつみは剣を構えてキュウビに突っ込んでいった。
「くそっ。」
オロチは、なつみを止めるべく力を奮った、が、しかしなつみは両手を打ち鳴らして手を払った。と同時になつみとキュウビのまわりに大きな結界が張られた。
「ネェ、邪魔しないでよ。ここは、あたし達のステージなんだから。」
なつみは、剣の先をキュウビに向ける。
「さぁ始めましょう。楽しい楽しい、遊びを。」
キュウビも、ため息をひとつつくと、手を広げた。そのまま、ポンと宙に浮かぶ。
「剣を投げたのは、自我を失わせるため、か。いいだろう、おもしろい。相手になってやろうじゃないか。」
なつみはタンと地を蹴り、キュウビに向かっていった。でも、やはり、キュウビは強かった。なつみも引けはとらないが、決して優位には立てなかった。それでも、どんなに攻撃を受けても、どんなに、血を流しても、なつみは止めることができなかった。自我を失っているから。いや違う。その、自我を失った行動は、なつみの望む行動だったから。
「うぉぉぉぉぉぉ!」

 「くそっ。このままでは、あいつが壊れてしまう。」
4人はオロチに駆け寄った。
「オロチさん!」
フミヒトが言う。一見冷静だが、芯はこの上なく焦っている。
「なつみを止めることは、できないんですか!」
「結界を張られた。あいつは強いがまだまだ未熟だ。結界を破ってみろ。あいつにかなりの負荷がかかってしまう。・・・命の保証もできないぞ。」
「そんな・・・」

「さすが、奴の弟子。こんなに体力が持つとは。」
もうかなりの長期戦だ。なつみは人間離れこそしているが、生身の体は悲鳴をあげている。
「秘技、火矢。」
「流水の術!」
キュウビは高く浮かび上がると、たくさんの火矢を出した。なつみも、目の前に水で渦を巻き、構える。キュウビはなつみに向かって手を伸ばす。矢が一斉になつみに向かう。その時、なつみの背中に冷たいものが走った。
(え、なんだ?)
一瞬、我に帰る。と同時に、頭の中で、暗く、おぼろげなものがザッピングする。
ー い・・・ひたす・・・げなさ・・・ ー
ー かあ・・まは? ー
ー はや・・・・っ! ー
ー はや・・くぞっ・・・ ー
ー かあ・・!・・さま! ー
頭の中で、血飛沫と悲鳴がこだまする・・・
(何、これ。何これ!)
なつみは、訳のわからないものに振り回される。このことを知るのは、ずっと、ずうっと、後の話だ。
 脳裏でザッピングする、訳のわからないが、ただただ恐ろしいもの。その間に、火矢は近くまで迫っている。
(・・・火・・・矢・・・?)
はっと、なつみは、声を上げてしゃがみこんだ。
「いや、いや、いやぁぁぁ!」

「なつみが、怯んだ!?」
なつみは、結界の中で怯えている。火矢がなつみの頬や腕をかする。オロチは、なつみの結界が薄くなったのを見逃さなかった。
(今しかない!)
オロチは、結界に突っ込んで行った。
「僕らも!」
4人は、木刀で結界を突いた。何度も、何度も。そして、ついに・・・
 パリン。結界が壊れる。同時に、木刀も粉々に砕けた。なつみは、糸がプツンと切れたように、崩れるように倒れた。やはり、負担は大きかった。4人とオロチはなつみに駆け寄る。オロチは大声で叫んだ。
「瞬間移動!」
ピカッ。オロチと4人となつみはその場から消えた。
「チッ、逃げられた、か。」

 「なつみ!なつみ!」
あぁ、みんなの声が聞こえる。同時にあの声も重なる。なつみは、勢いよく飛び起きると、座ったまま後ずさりした。
「イヤ、こ、こ、こ、来な・・・」
大丈夫?とみんなの手がなつみに伸びる。その手はなつみを追い詰めた。その時、なつみの後ろからポンと手が頭に触れた。
「全く、そんなに怯えて。何かあったんだろ。僕らのことが、恐ろしく、信じられなくなるような何かが。」
「フミ・・・」
フミヒトは、なつみの顔を近づけた。
「うん。傷は塞がったな。」
「あ、あの。」
「いいよ。僕らを信じられなくなったのなら、それで。でもね、」
フミヒトは、なつみの頭を自分の胸元にポンと近づけた。なつみがフミヒトに体を預けさせるように。
「僕らを信じなくてもいい。でも、僕は、僕らは君を見捨てない。君を理解して、君の全てを僕は受け入れる。過去も未来も受け入れる。」
フミヒトの心臓の音が聞こえる。
(あぁ、暖かい。)
「あたし、あたし、」
なつみは、震える声を絞り出す。涙が滲む。
「あたし、もうみんなの手をわずらわせないようにするって誓う。」
「うーん、ちょっと違うなぁ。」
4人はそう言いつつも笑った。
 「おい、もういいか。」
少し離れた所でオロチが見ている。なつみは、フミヒトから離れると、オロチの前に手を着いて座った。
「お師匠様、申し訳ございませんでした。」
なつみは思い切り頭を下げる。
「一時の感情に負けて、自分から自我を失わせるような真似をしました。・・・どんな罰でも受けるつもりです。」
なつみは目をつむり、息をのむ。しかし、オロチは、なつみの頭をかきむしると、
「強くなったな。」
とだけ言った。そして、なつみを含む5人に言った。
「そろそろ行け。」
5人がタイムワールド号に戻る前、オロチは、フミヒトにそっと囁いた。
ー あいつのこと、頼んだぞ。 ー

 「なつみ。さっきの、火矢のこと、どうしたんだ?」
なつみの呼吸が一瞬止まる。
「・・・よく、わかんないんだよね。ただ、怖かった。何か大切なものを失ったような。そんなような気がした。」

オマケ Dr.フミヒトのなつみメモ

 なつみの暴走は剣を手放すことによって起きることがわかった。彼女も気づいているようだ。
 次に、火矢の件。何かを失ったようなと言っていたが、これは僕の勝手な想像だが、火矢は、彼女のトラウマなのではないか。もっとも、彼女は覚えてこそないが、本能的に恐怖を感じたのではなかろうか。すると、彼女の背中の火傷の跡にも結びつけられる。
 次に、やはり恐れていた事態になった。彼女は、自分の命を軽んじる傾向があると思う。僕が、できるだけ彼女の側にいてあげたくては。

Re: 時の旅人 ( No.14 )
日時: 2018/10/21 13:10
名前: N

第12話 

 オレンジタイムストーンを手に入れた5人は、次の時代に降り立った。そこは、とても活気のある街だった。それにしても・・・
「なんか見覚えあるような・・・」
5人は首を傾げた。そして、フミヒトがはっと言った。
「ここ、サヤさんとこの、えと、ナリ王国じゃない?」
・・・
「ああ!」
そうだ。そこは紛れもない、ナリ王国だった。
「お祭りかな?凄くにぎやかだけど・・・あれからどれくらいたったんだだろう。」
裕太は目を輝かせている。しかし、フミヒトは冷静に言った。
「とにかく、今僕らが出ていくのは、少々目立ちそうだな。目立たずに様子を探れればいいんだけど・・・」
「任せてよ。」
なつみはニヤリと笑って手を合わせると、妖気がなつみの周りを渦巻いた。
「ど?変化の術だよ。」
なつみは、どこにでもいそうな、地味な男の旅人姿に変化した。
「んじゃ、行ってきま〜す。」
 「なんか、なつみ、柔らかくなったよな。」
レックスが微笑ましそうな顔をした。
「あぁ、ずっと敬語だったのに、だいぶ砕けてきたな。最も、俺達2人はさん付だけどな。」

 「あれから丸1年。来週、ナリ王国の独立記念日だから、それに向けて今、式典の準備中ってとこね。それと・・・」
なつみが報告する。そして、ため息をつく。
「あたしら、ここじゃ英雄扱いだよ。フミの読み通り、堂々と表に出てたら大騒ぎになってたんじゃないかな。」
うかつに表には出れない。皆、そう察した。
「僕らは、ここに関わらずにタイムストーンを探そう。なつみ、方向は分かるかい?」
なつみはスッと目を閉じる。
「えっと、そっち。」
「分かった。じゃああの森を抜けよう。」
「了解!」

 「だいぶ開けたね。」
舞は声をだす。ここは、どこだろう。少し街に入って行った5人は、活気がない雰囲気に顔をしかめた。
「うーん、タイムストーンは、もうちょっと先かな?・・・っ!」
なつみは何かに気がついた。街を警備する兵士の姿。見覚えのある顔・・・
「みんな、静かに、戻るよ。」
なつみは小声で囁く。その時。
「お、お前は、あの時の小娘!」
兵士がこちらに気がついた。
「走って!」
全員駆け出した。しかし、なつみは兵士に向かっていった。剣を抜いて。
「なつみちゃん!」
「走って、早く、絶対、捕まんないで。」
なつみはわらわらとわき出てくる兵士達をバッタバッタとなぎ倒していった。
 「どうやら僕らは、アル王国に入り込んでしまったらしいね。」
4人は走った。ひたすらに走った。そして、ナリ王国に入った。息を切らしている彼らに・・・
「あ、あなた達は・・・」

 (あれ、あたし、えと・・・)
目の前に広がるのは闇。布袋みたいなものを被せられ、後ろ手に縛られて転がされている。剣は勿論、没収されている。
(あぁ、あたし、しくじったんだな。)
やはり、あの大人数相手じゃ体力が持たなかった。ましてや、先のキュウビの件で、平然としているがなつみの体はボロボロだった。
 コトコトコト。何かに乗せられている。
(馬車・・・かな?どこに向かっているんだろう。)
しばらく馬車に揺らされ、どこかに止まった。両腕を捕まれ、引きずられるように運ばれる。なつみは、体の力を抜く。今は、目が覚めていることを悟られないようにした方がいいと判断したからだ。
 どれくらい運ばれたのだろう。なつみは、ドサッとある場所で投げ出された。数名の人の気配。その時、なつみは、腹に強い衝撃が走った。
(ぐふっ、がはっ。)
腹を蹴りあげられたのだ。視界を塞がれているため、身構えることができなかった。なつみは、蹴られ、蹴られ、髪を踏まれ、もみくちゃにされた。そして、一瞬にして、視界に光が差し込む。そこにいたのは・・・
 「久しいな、小娘。」
アル王国国王、ジン。すぐ後ろには、魔方陣を使うジンの腹心、ルムもいた。
「吐け、何の目的でこの国に入った。」
兵士の1人がなつみの首筋に剣を添える。
「吐かねば、首と体が離れるぞ。」
吐かねば殺す。そう脅迫される。なつみは何も言えなかった。前回は、本当に何も知らなかったが、今回は、知らなかったとはいえ、意図的にこの国へ入って、彼らと接触してしまったから。ジンはため息をつく。
「もういい。首をはねろ。その首、ナリの連中に送りつけてやる。」
(あぁ、あたし、死ぬんだ。)
なつみは、そっと目を閉じる。その時。
「父上、入ります。」

 「ええっ!タイムストーンを探してアル王国に入って兵に見つかった?」
なつみに逃がされた裕太達4人は、ナリ王国姫、いや、女王サヤに遭遇した。サヤは、タイムスストーンの存在を知っている。4人は、すぐさま城に招かれ、話を聞かれた。
「そうですか。すぐになつみさん救出の手をうちましょう。でも、どうすれば・・・」

 「父上、入ります。」
ガチャリ。部屋の扉が開く。
(父上?)
なつみはそっと目を開ける。そこには、そこそこ美形の自分よりも少しばかり歳上の青年がいた。
(奴の、息子か。)
なつみは、ほんの少し、キツイ目でその青年を見てしまった、気がした。その時、青年の鼓動が一気に速くなる。
(か、かわいい・・・)
「父上、その女の子は一体・・・」
青年の声が聞こえなかったのか、頭に入らなかったのか、青年の言葉を無視したジンは声を荒げる。
「さっさと殺してしまえ。」
「父上!」
青年がジンに噛みついた。
「何をやっているのですか!小さなおなごを殺すなど・・・」
「ニンか・・・こいつは、1年前のアル王国を陥れた張本人だ。」
(やっぱり、憎まれているよね。)
ナリ王国では、英雄扱いされていた。でも、ここでは国を貶めた極悪人なんだ。なつみはそう感じた。
「父上!おなごを殺すのは酷すぎます。どうかおやめ下さい!」
ジンは、チッと舌打ちをすると、くるりとなつみに背を向けた。
「地下牢にでも放り込んでおけ。」

 地下牢に放り込まれたなつみは、はぁとため息をつく。後ろ手に縛られた手が痛い。
(あぁ、体がついてこなかった。情けない・・・)
地下牢なので、外は見えないがそろそろ夜だろうか。なつみは、地下牢の鉄格子に縛っている縄を擦った。何とか切れないかと・・・だが。
(はぁ、駄目か・・・)
なつみはそのまま鉄格子に寄りかかると、そのうち、意識が遠退いていった。もう、夜だ。
 ガチャリ。コツコツコツ。何だろう。これは、足音?なつみは、バッと目を覚まし、身構えようとした。勿論できないが。人の気配はすぐ後ろ。そして、なつみの手を掴み、なつみの首筋に小刀を添えた。
「静かに、動かないで。」
ごくりと息をのむ。と次の瞬間、なつみの手の縄がハラリと切れた。
(えっ!?)
「ごめんなさい。父上が手荒なマネをして。」
なつみは、手首を擦ると、キッと振り返り、睨み付ける。そこにいたのは・・・
(奴の、息子だな。)
「何?国の王子様が何のようで?」
すると、王子、いや、ニンと呼ばれていた青年は、手をヒラヒラさせた。
「い、いや、そんなつもりで・・・」
あたふたする青年になつみはため息をつく。と同時に罪悪感もふつふつと感じる。なつみは、ふっと軽く笑うと言った。
「縄を切ってもらった人間にさすがにあの態度はなかったか。気を悪くしないでおくれ。」
なつみは、取り上げられなかった鞄をドサッと地下牢の奥に放った。
「僕は、ニンって言います。あなたは?父上に、国を貶めた極悪人と言われたのですが、僕にはそう見えないんです。」
「そうですね。あたしもこんなに悪人になっていたなんて思いませんでしたよ。」
ははっと笑う少女に、ニンは不思議に思った。
「どうしてですか?」
「へ?」
「何で、そんなに笑っていられるんですか?」
少女は一瞬、きょとんとした目でニンを見たが、プッと吹き出した。
「やめて下さいな。いいんですか、王子様がそんな風にあたしと接して。」
「真面目に聞いているんです。」
(この子は、何で笑っていられるんだろう。殺されるかもしれないのに。どんな目に遭わされるかわからないのに。)
「何ででしょうね。」
(この子は、一体・・・)
「あなたの・・・名前は?」
ニンの問いかけになつみは少し困った顔をした。そして、小さな声で、
「なつみ。そう、呼ばれている。」
とだけ言った。
「なつみ・・・殿・・・」
その時、地下牢の外から声がした。
「あ、すみません!あの、呼ばれているみたいで・・・」
ニンは慌てて地下牢から出ていった。
「・・・随分、健気な王子様だな・・・」
(やっぱり、かわいい。絶対、殺させたくない。)

 ギィ。また人の気配。でも今度は1人ではない。
「何の用で?」
そうは言ったものの、なつみはわかっていた。この後自分の身に起こることを。ジンは、ふっと笑う。後ろにはルムも控えている。ニンもついてきていたが。
「連れていけ。」
兵士達がガチャリと牢の鍵を開ける。縄はニンが切ってしまったから、また縛り直すため1人は新しい縄を持っている。
「お待ちください父上!」
ニンは、ジンに噛みついた。
「一体何を!相手は女の子ですよ!」
その時、なつみに触れた兵士が吹き飛ばされた。
「なめないでいただきたい。剣がなければ何もできないか弱いおなごではないんで。」
なつみは、ただ剣妖術が使えるだけではない。それなりの力はある、護身術位なら。なつみは、兵士達をバッタバッタと張り倒す。
「父上!止めさせてください!なつみ殿に手荒なマネは・・・」
その時。ジンはニンの胸ぐらをぐっと掴んだ。
「いい加減にしろ。」
ジンは、ニンを突き飛ばすと、ルムに言った。
「少々罰が必要だな。・・・ルム。」
「いいんですか?王君。」
「構わん。」
ルムは、手を合わせると何かを唱え出した。すると、ニンの下に黒い魔方陣が浮かびあがる。と同時にニンが苦しみ出した。ルムがニンに力を加えているのは目に見えて分かる。
「あーもう。」
なつみは、ドカッとあぐらをかいて腕を組む。
「これでいいんだろう。」
(どんな事情があっても、他人は巻き込みたくない。)
その後、縛りあげられたなつみは、兵士達に連れてかれてしまった。そして、ニンは魔方陣から解放された。ジンは、再びニンの胸ぐらを掴むと、なつみがいた牢に突き飛ばした。
「父上・・・」
「しばらくはそこで頭を冷やせ。」
ガチャリ。鍵を掛けられた。
(なつみ殿・・・)

 時しばらく。なつみが戻って来た。ニンは、無理矢理牢から出されると、今度はなつみが放り込まれた。顔中傷だらけで、ゴホッゴホッと咳き込む。なつみの身に何が起こったかは言うまでもない。
「な、なつみ殿!・・・父上!」
「行くぞ、ルム。」
「はい、ジン王君。」
地下牢には、なつみとニン2人きりになった。ニンはその場から消えたと思ったらすぐに戻って来た。最も、なつみにはそんなこと考える余裕はなかったが。ニンは、動かないなつみに手を伸ばし引き寄せる。そして縄を切るとなつみを揺する。
「なつみ殿!なつみ殿!」
なつみはゆっくりと起き上がると、ははっと笑った。
「ざまぁないね、情けない。」
「なつみ殿、顔に傷が!今薬を・・・」
「止めときなさいな。あんたの父さんが何をしたのかわからないの?」
「いいから!いいですから黙って薬を塗らせてください。」
「・・・」
ニンは鉄格子の間から手を伸ばすとなつみの顔に薬を塗る。
「・・・っ!」
時々、傷がしみる。
「ご、ごめんなさい!・・・すみません。」
「・・・あなたは、奴とは、あなたの父親とはえらい違うんですね。」
ニンは薬を塗り終えると、ふふっと笑った。
「あれでも、昔は心優しいアル王国の君主だったんですよ。父上は、魔王族狩りを止めた張本人ですからね。」
「魔王族?」
「少し昔話をしましょう。」





 

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