ダーク・ファンタジー小説

格安ワケあり物件「ダンジェハウス」
日時: 2019/01/25 21:10
名前: 名取

プロローグ

田舎の町が嫌で俺は高校を卒業と同時に上京を決意した。大手企業に就職し一人暮らしも始めたが仕事で失敗ばかり、当日営業部だったが成績も伸びず半年でクビ、家賃も払えなくなり困り果てていた頃、住み込みの使用人を探している求人を見つけた。
他に取られるわけには行かないと早々に電話をかけた。

面接は無かった。
電話で聞いた内容だと、家の掃除・洗濯・買い出し・食事の提供など、基本的には家政婦のような事だと言われた。それを住み込みでやってくれたら、家賃は二万円。とても安い。それでいて給料も高かった。
ルームシェアのようで、各自部屋以外(風呂・トイレ・キッチン・洗い場等)は共同だと言う。

先に住んでいる住人も居て、俺が入ることで部屋はいっぱいになるとのことだった。
初めての寮生活ともなるのでウキウキと気分は上がっていた。
ーーーそこで出会う非現実的な人や事によって俺の人生が変わるとは思いも知らず。


ーーーーーーーーーー
第一話「ダンジェハウスの住人と掟」>>1>>2
第二話「リベルテとルキ」>>3>>4

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Re: 格安ワケあり物件「ダンジェハウス」 ( No.1 )
日時: 2019/01/25 12:17
名前: 名取

第一話「ダンジェハウスの住人と掟」

午前11時、キャリーバッグ一つにインターホンを鳴らす。返答が無かったのでもう一度押してみる。
すると、屋内からバタバタと物音がした。二階の部屋だと思われる。上から下へ近づいてくる物音に扉から少し離れると、扉は勢い良く開かれ元気で大きな声が聞こえた。
「おはよう!キミが新しい使用人?」
ヒョウ柄のバンダナを頭に巻いた高校生ぐらいの顔の青年は「はい」と俺が返事をすれば家へ入れてくれた。
「入って入って!名前は?オレはジュア!」
「森本浩平(もりもとこうへい)です」
「へぇー森本か、よろしくな!」
「よろしくお願いします」
丁寧にお辞儀すると、そういうの要らないからと照れくさそうに頬を赤らめながら両手を前で振るジュアに好感が持てるなと思う。
「じゃあ、この辺で適当に寛いでてくれよ!オレ今からバイトなんだ!」
「えっ?」
「あとはサルとかリベルテとかにでも聞いてくれよ!じゃあな!」
「あ、待って!俺の部屋って…あーあ、行っちゃったよ…」
片手を上げたジュアはそれだけ言うと俺の質問も聞こえていないのかそそくさといつの間にか小脇に抱えたショルダーバッグ片手に家を出て行ってしまった。
広いダイニングに、4畳程ありそうなソファ、目前には画面の大きいテレビ、高そうな別荘だったのか?と思ってしまう。遠慮がちにソファの角に少しだけ尻を乗せ、ジュアの言っていた言葉を思い出す。
ジュアにサルとリベルテ、まるで海外の名前だ。異国籍民が多いのかもしれない。でもジュアは日本語ペラペラな上に顔も日本人そのものだ。アジア人なだけってことなのか?、そう思っていると一階の奥の部屋の扉が開く音がして咄嗟に振り向いた。

金髪に色黒の黒曜石の瞳が印象的なイケメンがパーカーにジャージのズボンとラフな格好で出てきた。俺には気づいていないのかキッチンに入り、冷蔵庫を開けて牛乳パックを取り出した。
イケメンならどんな行動も画になるなと思っていたがハッと我に返ってソファから立ち上がりその場で挨拶をする。
「あの!今日から使用人としてお世話になります、森本浩平です!よろしくお願いします!」
「ん?ああ、よろしくな」
腰から下げて挨拶すると口元に笑みを作ってくれるモデルのようなイケメンに心臓が持たないと思ってしまう。
イケメンとの会話とは何を話せばいいのかと悩んでいると、それ以上の会話が続かなくなり、イケメンはコップに注いだ牛乳を飲んでいる。
「あっ、あのお名前を伺っても…」
またハッとして名前を聞こうと、声をかけたところでキッチンの上の二階部屋から人が出てきた。

Re: 格安ワケあり物件「ダンジェハウス」 ( No.2 )
日時: 2019/01/25 12:56
名前: 名取


「リベルテ!いいもんが出来たぞ!お?お前さん誰だ?」
無精髭のタバコを口にくわえた三十代後半ぐらいの白衣を着たオジサンは白衣の内側はハワイシャツに短パンでガニ股で階段を降りてきて俺を見る。
「あ、初めまして!今日から使用人として働かせていただく森本浩平です。よろしくお願いします」
「おう、そうか…ああ!そうか!オマエか!なるほどな!」
何か思い出してくれたようで先程までの疑いの眼差しを無くし愉しそうに肩を組んでくる。今度は俺が疑いの眼差しを向ける番だった。
「オレァ、サルってんだ、そっちに居るのがヘレス。どうせ自己紹介してねんだろォ?」
「……。」
無精髭のオジサンは金髪色黒イケメンを指差して紹介してくれた。からかうように笑いながらヘレスさんと話をしようとしてるが、ヘレスさんは聞こえてないのか返事をせず牛乳パックを冷蔵庫へ戻す。
「紹介ありがとうございます、あの俺の部屋ってどこですかね?」
キャリーバッグに視線をやって聞いてみれば思い出したように「ああ」と言ってサルさんの隣の部屋を指差した。またお辞儀をして部屋に荷物を運ぼうとすると、急に真剣な顔付きになったサルさんは荷物を置いたら降りてくるように言った。

言われた通り荷物を置いたら一階に降りて、ソファに座るように促された為サルさんと向き合う形で座った。いつの間にかへレスさんは居なくてダイニングには俺とサルさんだけだ。サルさんは口を開いた。
「ここに住むからにはルールってもんが二つあってな?」
「…はい」
「一つは、ここの住人の個人情報を他者に話さない。他言無用だ」
「…はい」
「もう一つは、ここでは偽名を使ってもらう」
「偽名、ですか?」
「そうだ。ここの名前は何となっていたか見たか?」
「はい。名取となっていました」
「ああ。だから苗字は全員名取、名前はあだ名をつけて生活する」
「え、ええー!?」
「それがこの住人としての掟だ、出来ないなら即刻出て行って」
「ああー!分かりました、分かりました!守ります」
「よし。なら今日からオマエさんはラビートだ」
「ラビート…」
「おう、よろしくな、ラビート」
「はい!よろしくお願いします!サルさん」
右手を伸ばしてきたサルさんと握手をして元気よく言えば「サルでいいよバカタレ」と頭を軽く叩かれた。痛くはなかったけど驚いて予想できない行動に少し怖いなと思った。

あと二人の住人をサルが教えてくれた。
一人はリベルテ、妙な眼鏡をかけているが絶対に取るな。とのこと。
もう一人はルキ、昼間は部屋から出ないが夜ならウロウロしてるはずだから、挨拶は夜にしろ。とのこと。

今日は、家事は済ませてあるからゆっくり休んでいいと言われ、お言葉に甘えることにした。
俺は夜までダイニングで待つことにした。

Re: 格安ワケあり物件「ダンジェハウス」 ( No.3 )
日時: 2019/01/25 19:50
名前: 名取

第二話「リベルテとルキ」

夕方になって夕陽が沈みかけてきた頃、ガチャと玄関の扉が開く音が聞こえ、部屋から同時にヘレスさんが出て来てリビングダイニングの扉が開くのを待った。
扉が開いて姿を表したのはスーツ姿に茶髪の前髪は後ろで結び、耳からしたは鎖骨下まである巻き髪が首の横に垂れてる。白い肌に目を完全に隠した丸眼鏡と言うよりサングラスをかけた人。どこを探せばそのサングラスは見つかるのかと思うほど可笑しな妙なサングラスに、この人がリベルテさんなんだと一発でわかってしまった。
唖然としている俺に気付かず二人は話を始めた。
「おかえり、お疲れだな」
「いや、いつもよりはマシだ」
持っていた鞄をヘレスさんに渡し、片手でネクタイを緩めるリベルテさんはとても色気が出ていて少しドキッとする。
「と言って、また徹夜でもしたんじゃないか?」
「たった二徹、どうってことない」
「少しは寝た方がいい」
二徹と聞いて驚く俺と気にしていないリベルテさん、心配そうに声をかけるへレスさん。
ヘレスさんがリベルテさんの頬に手を添える。一瞬見つめあった二人に疑問符が浮かぶ。すぐにリベルテさんは頬にある手を払いのける。
「着替えてくる」
「ああ」
ヘレスさんとは反対側の部屋へ戻ったリベルテさんを見送ったヘレスさんは意外にも平気そうにしていてリベルテさんが出てくるのを待っている。
何だか居づらい雰囲気に部屋へ戻ろうとソファを立つとリベルテさんが部屋を出てきた。
タイミング悪い!と思うのとリベルテさん着替え早い!と思うのに肩を上げて驚く。
リベルテさんはヘレスさんから自分の鞄を「すまん」と言って受け取り、俺を見る。いつから気づいていたのかは知らないが俺に近づいてきて、目前に立つと語るように話した。
「俺はリベルテだ。今日からお前が使用人になると聞かされている、ここの掟はサルから聞いているか?」
「あ、はい」
「フッ、ここのヤツらは変わり者だらけだからな、何かあったらいつでも相談に乗ってやるぞ」
親切でいい人そうだけど少し上から目線な態度のリベルテさん。兄貴肌なのかな?両手を細い腰に当てて自慢げに話す様子を見るとここの住人を気に入っていることがわかる。
ここに来たばかりの俺はまだ何も知らない、故に相談に乗ってくれるのは有り難いとお礼を言えばそれに被せるようにヘレスさんが横槍を入れてくる。
「それは助かります!よろしくおねが」
「リベルテはドSだからな」
「ふえ?」
「何が言いたいんだ?ヘレス」
「ククッ、べつに。相談なら俺が乗ってもいい」
「お前に相談しても解決しないだろう」
なんだか楽しげで親しげの二人は親友なのだろうと思えた。あと、先程サルさんが居た時は無口と言っていいほど話さなかったヘレスさんはリベルテさんの前だとこんなにも話すことに驚いた。

Re: 格安ワケあり物件「ダンジェハウス」 ( No.4 )
日時: 2019/01/25 21:07
名前: 名取


「そろそろジュアも帰ってくるだろう」
「あっ!ジュアさん帰ってくる前に少し確認したいんですけど…」
「なんだ?」
今日初めに会ったのはジュアさんだったが、どうしてもその容姿のことで気になって俺はリベルテさんに聞いてみた。
「ジュアさんって、まだ高校生…ですよね?」
「「……ぷっ、ははははっ」」
リベルテさんとへレスさんは一度キョトンとしたあと吹き出して笑った。ヘレスさんは相変わらず笑ってもイケメンで、リベルテさんは顔が整っているのかもしれないと思った。
でも、そんなに笑う程俺はおかしなことを言ったのだろうかと首をかしげた直後、玄関の扉が開く音が聞こえ、走ってくる音が近づいてきて勢い良くソレは帰ってきた。
「ただいまー!」
「おかえりなさい、ジュアさん」
「おう!森本!」
「ラビートだぞ、ジュア」
「え?ああ!ラビートか!」
にこやかに笑みを浮かべたまま俺の肩を叩いて挨拶を交わすジュアさんにリベルテさんが名前を訂正した。それにジュアさんはすぐに理解した。
あれ?俺、リベルテさんに名乗ったっけ?と思ったが目前の話が変わって聞くのはやめた。
「それよりジュア、また子どもに見られたぞ」
「え?…なあ!?なんだってー?」
「えっ!いや、スミマセン!」
リベルテさんが含み笑いを上品に口元に手をあてながら抑えてジュアさんに言うと、暫し目を点にした後ジュアさんは顔を真っ赤にして不服さ全開で俺に詰め寄ってきた。慌てて謝ると、ヘレスさんが制止の声を出した。
「まあ、無理もないさ」
「ヘレスまでぇー…」
顔をガックリと下にさげたジュアさんはあからさまに落ち込んでて、なんだか申し訳なくなるけど、元はと言えばリベルテさんがジュアさんに言わなければ良かった話で。
「リベルテさんが言うからですよー!」
「ふふ、すまん」
リベルテさんの耳元で小さく文句を言えば、まだ多少笑っていたリベルテさんは笑いながらも謝った。視線を感じてヘレスさんを見れば眉間にシワがよっていて俺を睨んでいた。それも一瞬、怖いと思った時にはいつも通りの顔に戻っていてジュアさんを見ながら俺に説明した。
「ジュアはこれでも24だ」
「あーやっぱり……ええ!?24!?」
「そんなに驚くことないだろー?!」
どう見ても18歳のジュアさんは童顔だとわかった。不満げな顔も頬を膨らませて隠そうとしないところがまた子どもらしさが出ていて、俺より歳上なのだから気をつけようと思った。

「おいおい、相変わらずうるさいねー。ここは幼稚園児の集まりかよ」
初めて聞く声に顔を向ければ、二階から男が見下ろしていた。
黒髪の癖毛が伸びきっていて長さもバラバラな上に色んな方向に跳ねているボサボサ頭を掻きながら白い肌と短い眉毛、ツリ目には碧の瞳。内側にボーダーの服を着て黒いワイシャツで襟を立てて、黒いズボン。黒いな、が第一印象。どうやらこの人がルキさんかもしれない。
「ルキ!おはよう!」
「元気だねぇ、寮長さんは」
ジュアさんが片手を上げて元気よく声をかけるとニヤケ顔のままルキさんは応える。
「もう夜か、風呂には入ったのか」
リベルテさんが左の腕時計で時間を見てルキさんに問うと、ルキさんは腕を組んだリベルテさんに寄って行き「それよりメシだろ?」と言うので、俺が作りますと口を開いた瞬間誰かに背中を押された。
「うわっ!たたっ、危ない!」
背中を押されて崩れたバランスのままルキさんにぶつかりそうになるが、ルキさんがギリギリで体を引いて俺はルキさんとリベルテさんの間を通り過ぎ、ソファに顔をぶつけた。
一体誰が背中を押したんだよと振り返ればヘレスさんが居て、ルキさんはその時俺に初めて気づいたようだ。
「はあ?誰だよオマエ」
「あっ、今日からお世話になるラビートです。よろしくお願いします」
咄嗟に床に正座して挨拶する。笑われないかと心配になったが、ルキさんが言った言葉は予想していなかった。
「へぇー、ウマイのか?」
「えっ…あ!料理ですか?まあまあだと」
「ケッ、青臭いねぇ」
俺が答えている途中で苦虫を食べた表情で言葉を遮るルキさんに何か違ったのか?と周りを見ればヘレスさんは降ろしていた金髪の髪が全て逆立っていて、リベルテさんの眉間にはシワが寄ってる。ジュアさんを見れば、彼は元気に話を変えた。
「よし!じゃあ飯にするかー!俺も腹ペッコペコだよー!今日はラビートの歓迎会も含めて酒だ酒ぇー!オレ、サル起こしてくるから、リベルテは飯よろしく!」
「ああ、わかった」
「なら俺は風呂を炊いてくる」
「頼んだ!」
それだけ言うと床に正座のままの俺を置いて三人は移動を始めた。ルキさんは俺を気にも止めずリベルテさんの後を追う。
「徹夜明けかよ、健康な時が一番ウメーのによ」
「黙れ」
「あーあーコワイコワイ」
「ラビート、コイツの相手をしてやってくれないか?」
「うえ?!」
「おいおいリベルテくん酷くねぇ?あのこと言っていいのかよ?」
「…あのこと?」
いきなり呼ばれて一応ルキさんの近くのリビングテーブルの椅子に腰掛ける。エプロンをして野菜を切っていたリベルテさんが「あのこと」と聞いて手が止まる。
なんだかリベルテさんはルキさんとはピリピリした空気を出してる、もしかしたら嫌いなのかもしれないと察する。
「ラビート、リベルテくんってば実はーーーあだっ!」
「風呂、出来たぞ。さっさと入れ」
振り返ったルキさんが俺の近くでヒソヒソ声で話した途端にルキさんの後頭部に何か当たる。
ルキさんは後頭部を擦りながらぶつかった物が飛んできた方向を見ればヘレスさんが無表情で言った。
ルキさんは聞こえるぐらい大きく舌打ちをついて風呂へ向かう。ヘレスさんは見向きもせずキッチンに入りリベルテさんの手伝いをしようと話をしている。
ルームシェアでもやっぱり仲の善し悪しは出るんだなと思うとこれからの事に苦労しそうで苦笑いした。

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