ダーク・ファンタジー小説

彼ら
日時: 2019/03/16 22:11
名前: 新米作家

 私は、『彼ら』と暮らしている。名前はわからない。数もだ。沢山いるような気もするし、少しなのかもしれない。とにかく、私は『彼ら』と暮らしている。
 『彼ら』は、特に何をするでもなく、私の家に住み着いている。私に危害を加えることもなければ、気を利かせて、晩御飯を作っておいてくれるわけでもない。我々は、互いに一切干渉せず、ただ、同じ家に住んでいる。
 『彼ら』が初めに私の前に姿を現したのは、いつだったろうか。おそらく、私がここに越してきてから、数ヵ月も経たない頃だとは思うのだが。その日私が居間でテレビを見ていると、背後に気配を感じた。勿論、私の意識は、一瞬にして恐怖に支配された。相当古い家だから、何かが憑いていてもおかしくはない。背筋を凍らせたまま恐る恐る振り返ると、そこには、黒く、小さな人形が、いくつか浮遊していた。前も後ろもわからない。当然表情などない。それが余計に恐ろしかった。私は、すぐにでも襲われるのではないかと、腰を抜かして、動けないでいた。しかし、しばらく経っても、『彼ら』は、行動を起こすそぶりを見せなかった。相も変わらず、ぷかぷかと浮いているだけ。それだけだった。
 そのまま一時間もすると、私の中の恐怖は完全に消え去っていた。寧ろ、少し微笑ましいと思いながら『彼ら』を眺めている私がいた。
 『彼ら』に慣れてくると、『彼ら』は、最早私の生活の一部となった。いてもいなくても私の暮らしは変わらない。私には、追い出す意味も、権利もない。ただひとつ、以前と変わったことと言えば、人を家に呼ばなくなったことだ。『彼ら』を他人に見せるわけにはいかない。それも、元々来客の多くなかった私にとっては、変化と言うほどのことでもない。従って、君を家に呼ぶことも、もうできない。それを伝えなければと思ってね。私の勝手な都合で申し訳ない。それじゃ、お元気で。

 僕はため息をついて、長い手紙を閉じた。しばらく会っていなかったが、彼が僕を呼ばなくなったのには、そんな訳があったのか。少しの間悩んだ後、僕はペンと便箋を手に取り、机と向き合った。そして、後ろを振り返り、「彼も僕と同じようだ。君たちのことも伝えていいよな?」と、『彼ら』に向かって言った。            終わり

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