ダーク・ファンタジー小説

Magear/Rewrite
日時: 2019/11/30 15:51
名前: 白夜の仮面屋:Re

【魔法(マギア)】は、誰でも使える訳では無い。

魔の才を持たなかった少女の、成り上がりの物語

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Re: Magear/Rewrite ( No.1 )
日時: 2019/12/01 14:19
名前: 祝福の仮面屋(旧白夜)

『ひぐっ…お母様…死んじゃ嫌だよぉ…!』

少女は、今にも命が尽きそうなほど衰弱し切った母親に泣き付く。彼女の母親は生まれつき体が弱く、少女を生んだ二年後には今の様な状態になっていた。
目から涙をボロボロと零す少女に、母親は微笑みながら語り掛ける。

『ラフィナ…、大丈夫…貴方は…強い…一人でもきっと、生きて行ける…』
『お母様が居ないなんてやだぁ!』

少女の涙は止まらない、だが母親は今尚愛する娘の為に微笑み続けている、まるで自分の最期を悟った様に。否、もう彼女には悟るほどの気力も無いのだ、だから母親は娘の為に最後の力を振り絞り遺言を残す。

『ラフィナ…13歳になったら、【仮面屋】に…訪れなさい…そこの主人なら、貴方の力に…なって…くれる…から…』
『お母…様…?』

母親の手は、まるで陶器に触れているかの様に冷たかった。

『あぁ…ああああ…あ"あ"ああ"あああああああ"あ"あ"あ"ああ"ああ!』

少女から声にならない叫びと嗚咽が木霊する、まず父とは会った事すら無く、そして今し方母を喪う。少女は涙と悲しみを流し尽くし、感情の失われた瞳で、未だこちらに微笑みかけて来る母親の亡骸に語りかける。

『お母様…分かりました…、私、お父様と同じ、【帝都近衛隊】に入ります…!』

少女は絶望して尚、覚悟を決める。

【自分が、人々の希望になる】

と。





第1話
「凡才」





「お嬢様、あと5分で【学院】が始まりますので、ご支度のご準備を…」
「ありがとうベル、でも支度は自分でするから、貴方は薔薇の手入れをお願い」

【ラフィナ=ティンジェル】は、彼女の侍女…所謂メイドの【ベルファスト=アバン】に要件を言い渡す。「畏まりました」、とベルファストは庭園の方へ向かう、ラフィナは母親の形見であるリボンを結び、今は亡き最愛の母に挨拶を交わす。

「行って参ります、お母様」

そして彼女は玄関前へやって来る。
すると玄関には、ベルファストを含めたメイド10数名及び執事の【バーキン=シュラウド】が彼女の鞄を差し出した。

「こちらをどうぞ、お嬢様」
「ありがとう、行って参ります」
「「「行ってらっしゃいませ」」」

メイド達の言葉を他所に、ラフィナは1人【学院】の方へと向かった、この国の名は
【マーガトロイド】
通称【神の血】とも呼ばれる新資源、【神陽血(マカブル)】の恩恵により安定した生活を保障されている山の上にぽつん、と孤独に点在している小国。
【神陽血】は先程新資源と述べた様に、気化した【神陽血】は空気に触れさせる事で炎の役割を果たす、この炎にて忌々しき夜の闇を打ち払い、国に安寧の光を齎すのだ。





通学路には路面電車が通っており、彼女の通う【聖(セント)レヴノス学院】直通の快速便がある、ラフィナはそれを使い【学院】の正門前までやって来る。

「あらラフィナさん、おはよう」
「おはようラフィナ!」
「ラフィナちゃんおはよー」

敷地内を1m歩くごとに声を掛けられる、彼女は名家【ティンジェル家】のご令嬢、故に彼女の立ち振舞いに憧れを持つ生徒は多く反感を買う事は基本居ない。
ーーー一部の僻み屋を除けば

「あら?ラフィナじゃない」
「げっ…」

思わずラフィナは顔を顰める。
そう、何処にでも気に入らない者の1人や2人はいるものだ、目の前にいる取り巻きを連れた赤髪の少女【ミネヴァ=マリティモ】は、彼女を逆恨みする数人のうちの1人だ。
もちろん、ラフィナはミネヴァを無視して校舎へ入ろうとするが、何を気に入らなかったのかミネヴァの取り巻き達が急に怒り出す。

「ちょっと!ミネヴァ様を無視するんじゃないわよ!」
「そうよ!名家の生まれだからって調子に乗らない事ね!」

彼女達は、ミネヴァの面子を保つ為なら何でもやる、露骨な虐めはもちろん陰湿な虐めだろうがミネヴァの為なら実行する、まるで人形なのだがそこにタチの悪さがある。
実際、過去にミネヴァ達に虐められて退学した者もいる、しかもタチの悪い事にミネヴァの虐めには一部の先輩も加担しているのだ。先輩には逆らえない、だからこそ虐めは次第にエスカレートして行く、だからこそ、教師達も下手に注意出来ずに居るのだ。
だが取り巻き達を鎮め、これ見よがしにミネヴァが口を開く。

「良いのよ貴方達、所詮は【没落才女】だもの、別に相手しなくても構わないわ」
「…………ッ!」

刹那、腰に下げた【聖騎士(パラディン)】用の剣に自身の腕が伸びたのを感じ取り、柄に触れた所で止める。
【没落才女】、それこそが彼女の【枷】にしていつまでも付き纏う【呪い】、この【マーガトロイド】に住む者にはごく一部だが【太陽神】の力の一部である【魔法(マギア)】を使用する事が出来る。本来、【魔法】は3〜5歳までには能力が開花するのだが、彼女…ラフィナは13歳になった今尚、【魔法】の力が開花する事は一度も無かった。
故に彼女は柄を握った手を緩める、【魔法】を持つ者と持たざる者が殺し合えば、100%【魔法】を持つ者が勝利を収める。それ程までに単純で、それ程までに残酷な現実はそうそう無いだろう、ミネヴァは柄から手を離したラフィナを一瞥しーーー

「分かってるじゃない、所詮貴方は落ち零れの【没落才女】、虫みたいに地べたを這いずり回っていれば良いの。行くわよ貴方達」
「「はい!ミネヴァ様!」」

そう吐き捨てると、彼女は取り巻き達と共に去って行った、玄関前に残っているのはラフィナと他の生徒達、一人の男子生徒がこちらに駆け寄って来くる。彼は自分のクラスメイトの一人だ、彼は私に向かってーーー

「気にすんな、お前は剣術や座学に関しちゃいつもクラス一位じゃねぇか」

と、励ましてくれるがその言葉が心の支えを崩す原因になったのか、ラフィナは地面に蹲り泣き出す。
「お祖父様ごめんなさい、ダメな孫でごめんなさい、お願い見限らないで…」
と、ここには居ない者に謝りながら。










「………これは?」
「名家の子息の資料だ」

男は、外郭でも無ければ中心街でも無い。そんなよく分からない場所にある、とある協会のソファーに腰掛けていた。隣に座る男は筋肉質で高身長、見るだけで暑苦しさを感じる。

「フェリド、お前の今回の客はコイツだ」
「この子は…うわ、あの【ティンジェル家】の子じゃ無いですか、私にどうしろと」
「簡単だ、その娘に力を与えてやる」
「さいですか…」

「【ラフィナ=ティンジェル】、か…」と、男はため息を吐く。【ティンジェル】、その姓を聞くだけで胃痛と腰痛と腹痛と頭痛がしてくる、「やはりハズレたか」と察するが、正直面倒くさいのだ。
何が?と言われればまぁ、彼女に力を与える事がだが。
とは言え【ティンジェル家】には、恩だの因縁だの色々ありすぎて少し困っているのだ、幾ら彼女の命令とは言えこんな怪しい男を見て彼女はホイホイと付いて来るのだろうか…。
すると、隣に座るガタイの良い男が質問してくる。「なら俺が変わってやろうか?」と、
少し頭に来た男は返答する。

「いえ、人の呪いを力に変える事が出来るのは、私【祝福の仮面屋】ただ一人ですからね。残念ですが、私以外には出来ませんよ」

「フォッフォッフォッ……」と笑いなが言ってやる、するとガタイの良い男は額に青筋を立てながら、「じゃあ任せるわ」と若干怒りながら出て行った。
正直言っていい気味だ。
【祝福の仮面屋】…【フェリド=ロバート】は改めて資料を見る、彼女から頂いた恩を返す良い機会だ。彼女には最高のプレゼントをしてやろう、そう考えながらまた笑う。

「貴方がどんな力を得るのか、楽しみで仕方がありませんね…フォッフォッフォッ…」




次回
第2話
「呪文」

Re: Magear/Rewrite ( No.2 )
日時: 2019/12/01 20:37
名前: 祝福の仮面屋

「ここに来るのも…何年ぶりでしょう…」

男の名は【フェリド=ロバート】、彼は人類最後の砦【マーガトロイド】に来ていた。
彼の任務は、『名家【ティンジェル家】の一人娘、【ラフィナ=ティンジェル】の才能を開花させる』、と言うものだ。

「しかし大丈夫なんですかねぇ…彼女は」

フェリドは、少しため息を吐く。
とは言え彼からすれば、才能…つまり【魔法(マギア)】を目覚めさせる事自体は簡単だが、彼にとっても難しい点が一つ条件としてある。
その条件とは

『被験者を一度、【外郭の存在(キメラ)】に変異させる。』

と言うものだ。
成功すれば力は仮面として手に入るが、失敗すれば被験者は『人を襲い喰らい尽くす化け物【キメラ】に変異したまま一生を過ごす』と言う、正直言って無謀な賭けだ。
しかし、彼にはラフィナの母【マリーダ=ティンジェル】に恩がある、それにあの男に啖呵切ったのだからおずおずと戻って来ては左遷どころでは無い。
故にーーー

「このフェリド、貴方様の眠れる才能を見事叩き起こして見せましょう」

と決意する。
そして彼はラフィナの通う学校、【レヴノス】に向けて歩み出すが一歩で止まる。
その理由は?簡単だ、

「あれ?ここから学院には…どう行けば?」

彼は学校の場所を知らないのだ。
彼はまた「最悪だ…」とため息をつき、のそのそとした足取りで歩み出す、後に彼が学院に着くまで1時間も歩いたんだとか。





第2話
「呪文」





「では、人間と【マーガトロイド】、そして【魔法】と【外郭の存在】についての関係性を述べて下さい。」

初老の女教師が、この世界の歴史についての授業をしている、ここ【聖レヴノス学院】では実技教科はもちろん座学もある。故に文武両道を心掛ける必要があり、実技が欠けても座学が欠けても成績不振にさせられると言う、一種の縛りがあった。
故に、ここではどの科目も気を抜けず真剣に取り組む必要がある為、生徒達にはある種の緊張が常日頃から付き纏い、何かに秀でている者はそれ自体がアドバンテージとなっていた。

「誰も居ない様ね?アスラ、答えなさい」
「………」
「アスラ=ジィダオ、聞いてるの?」
「………自分メンドイんで、ラフィナに答えさせて下さい」
「え!?ちょ、アスラ!?」
「分かったわ。ラフィナ=ティンジェル、答えてくれる?」
「は、はい!」

隣の席の少年、【アスラ=ジィダオ】に拒否られ半強制的に回答を回されたラフィナ、彼女は【魔法】の才能こそ無いが勉学や運動の才能は普通にある。
それも伴ってか、彼女は座学では基本1位より下を取った事が無かった。つい先ほど女教師の言い方が優しかったのもラフィナに期待している故だろう、ラフィナは机に突っ伏して爆睡しているアスラを軽く睨み、先程の質問の解を答える。

「この国、【マーガトロイド】は近郊の鉱脈から産出される液体燃料【神陽血】を利用して、繁栄と安寧を得ています。」

【神陽血】の光も、太陽の光も星の光も月明かりも届かない外の世界、通称【外郭】には【キメラ】と呼ばれる化け物が存在する。
【外郭】の瘴気は人を呪い蝕み、人を人ならざる者である【キメラ】へと変貌させる。
そして【キメラ】を駆逐する者が【魔法使い】…所謂マギア能力者であり、【魔法】の強さには個人差も存在する。
能力者にはそれぞれ位級が存在し、【剣士】、【闘士】、【銃士】、【楽士】、【道化師】、【侍】、【巫女】、【神官】、【魔術師】、【】の十つの総称を【下位級(トーニス)】と呼び、
【聖騎士(パラディン)】
【竜騎士(ドラグーン)】
【闇騎士(ベリアル)】
【剣客(けんかく)】
の四つを【上位級(プライム)】と呼ぶ。
【最上位級】クラスの【位級(ランク)】を発現させる者は、この国を取り仕切る四つの名家【四公爵家】の子息のみに限られ中でも【竜騎士】と【剣客】は全魔法中最も扱いが困難とされており、使い熟すには相当の鍛錬と技量が必要である。

「流石ラフィナ、これ以上ない完璧な模範回答ですね」
「ありがとうございます」

女性教師の若干大袈裟な賞賛、だが褒められて嬉しく無い人間など居ないだろう、歯を見せる程の大笑いでは無いが嬉しさ故微笑む。するとスカートの裾を引っ張られ、下を見てみるとアスラも微笑みながら

「やったじゃん」

と褒めて来る。
彼は根暗で面倒くさがりでこそあるが、決して根は悪い奴では無い。だからこそ、こう言う時にはよく褒めてくれるし、ラフィナにとっても良き理解者の1人でもあった。
だがーーー

「貴方達聞いた?《私たち》マギア能力者ですって!」
「ぷっ!くくく…」
「まさか、此の期に及んで自分が【没落才女】である事も分からないとか…?」

ミネヴァ達は、彼女の一言が伝染する様に取り巻き達が笑っている、彼女はスクールカーストの中位くらいの者だが、伯爵家ゆえに彼女を慕う取り巻きは多い。
事あるごとに、【没落才女】である事をラフィナに突き付けようとするミネヴァ達に、周囲の生徒達はざわめいている。無論そんな事を理解者の1人であるアスラが見逃す筈も無く

「取り消せよ…今の言葉…!」

腰に携えた双刀に手を掛けながら立ち上がる。無論それを止めようと、数人の男子達(恐らくアスラの舎弟達)が抑え、落ち着く様に彼を諭すがーーー

「見え見えの挑発に乗るんじゃねぇ!」
「落ち着けアスラ!」
「勝手に言わせとけば良いんだよ!」
「あいつラフィを馬鹿にしやがった…!」

怒り心頭に発するアスラに振り払われる、それ程までにアスラは怒っていた。何しろ、友人が一番嫌な言葉で侮辱されたのだ、彼からすれば耐えろと言う方が無理な話だろう。
彼は腰の双刀の内一本を抜き放ち、ミネヴァ達に刃を向ける。

「お前らは、一体何が面白くて言ってんのか知らねぇけどよ、お前らのその言葉で傷付く奴も居るんだぞ!」

殆どの者なら、彼の眼光に射竦められ言葉も発せなくなるのだが、ミネヴァは余裕綽々と言った感じで話を続ける。

「あら、私は事実を言っただけでしょ?何もラフィナを貶すつもりで言った訳じゃ無いし、それで傷付くならあの子がまだ『事実を認められてない』って事でしょ?」

刹那、アスラの目から光が消える。
それには流石に危機を感じたのか、ミネヴァが少しだけたじろぐ。そして、アスラがミネヴァを斬り落とさんと肉薄し一刀を撃ち放った次の瞬間、教室内に金属音が鳴り響いた。

「辞めなさいアスラ」
「どけよセリス!アイツにも現実って奴を教えてやる!」
「貴方…【四公爵家】に泥を塗るの?」
「…………ッ!」

【四公爵家】の一角であり、代々【竜騎士】の位級を受け継いで来た【ベルニクス家】の娘、【セリスティア=ベルニクス】の持つ長槍により止められる。つまりセリスティアはこう言いたいのだ、
『自身のその時の感情一つで、【四公爵家】に泥を塗る事になるぞ』
と。
「…………チッ」と軽く舌打ちをするアスラ、そして彼はミネヴァを一瞥し

「運が良かったな」

と吐き捨て教室の外へと歩いて行く、彼の行き場所を知っているのか彼の後を走りながら追いかけるセリスティア、そしてその場に1人残されたラフィナは…そこから逃げ出す様に走り出した。
授業は急遽終了し、取り敢えず他のクラスが終わるまで教室で待機との事だった。










「くっ…うぅ…」

学院敷地内の木陰で、ラフィナは1人泣いていた。まるで、あの場から逃げた様に走り出したラフィナは他の者からすれば、さぞ滑稽に見えたのだろう。
アスラの自分に対する優しさが、自分の無力さを更に…重く強く証明して行くのだ。
彼はたった1人でミネヴァ達に立ち向かったと言うのに、自分は何も言い返せずに逃げ出した愚か者で、セリスティアは【四公爵家】最強と謳われる【ジィダオ家】の子であるアスラに一歩も引かなかったと言うのに、自分は止める事すら出来なかった臆病者だ。

「ラフィ?」
「フィーア…」

声の方に振り向くと、1人の少女が居た。
金髪灼眼のラフィナと対照的に、銀髪冷眼の少女…【ソフィア=ティンジェル】は、未だに【魔法】を開花させる事の出来ない正真正銘の落ち零れであるラフィナと違い既に【聖騎士】の位級を開眼させていた。それ故に彼女は分家の娘でありながら、本家の娘であるラフィナとの才能の開きに、「実はソフィアが本家の娘であり、ラフィナは実は養子」と言う根も葉もない噂が立っていた。

「ラフィ…大丈夫…?」

彼女の優しさには何度も助けられた、だからこそ差別され、虐められた。

「ラフィ…貴方ならなれるから…」

ソフィアは毎度毎度の様に、ラフィナを何度も励ましてくれた。だが、だからこそ、虐めは更にエスカレートし、仕舞いには身内にすら見限られた。

「実はね?私も【帝都近衛隊(オーディナルレギオン)】に…」

まるで自慢話の様に語りかけて来る。羨ましい、でも憎い、まるで自分を見下している様なその話が憎い。

「だからラフィも…」
「うるさい!気安くラフィって呼ぶな!」

本音が爆発する、まるで制御の効かなくなった【神陽血】の貯蔵庫の様に、火を吹いたまま止まらない機関銃の様に、ラフィナの本音はぶち撒けられる。

「同情なら辞めてよ!どうせアンタだって、私には到底無理だって心の底じゃ腹抱えて笑ってるんでしょ!?」
「ちが…ラフィ、私は…」
「違う!?何が!?なら何でアンタはずっと見てただけなの!?何でアスラやセリスみたいに助けてくれなかったの!?ねぇ!」

ラフィナはハッ、とソフィアの方に目を向ける。彼女の目には涙が溜まっており、今にも溢れ出そうだった。

「ラフィ………」
「ッ……うぅ!」

ラフィナは走り出す、【マーガトロイド】を抜け、【マーガトロイド】を囲む城壁都市【キャンデラ】も駆け抜けて、【外郭】の森の中へと入る。

「何で…誰も認めてくれないの!?」

彼女は叫ぶ、自身の思いを、誰にも認められて来なかった悲しみを、誰も自分を認めようとしなかった事に対する怒りを。
そして更に森の中へと踏み込んだ瞬間、木の後ろから宝石を持った男が現れた。

「だ、誰!?」
「初めましてお嬢様、少しだけ眠っていただけますかな?」
「な、何をーーーーーッ!?」

男がラフィナを捕まえ、彼女の目の前に涙の形をした宝石を持って来る、宝石は怪しい青色の光を発していた。
そして、彼女がその宝石を除いた刹那、彼女の意識は闇に堕ちると共に【外郭】の森の中から【マーガトロイド】まで、《元》ラフィナだった【キメラ】の雄叫びが響き渡った。








次回第3話
「契約」

Re: Magear/Rewrite ( No.3 )
日時: 2019/12/03 21:55
名前: 祝福の仮面屋

「やっぱりここに居た」
「………んだよ、悪いか」

セリスティアは、学院敷地内にある池のほとりに仰向けになったアスラを発見する。この2人は家の事もあり、2人でいる事が多く幼馴染の様な関係だった為、落ち込んだ時に行く場所くらい分かるのだ。
アスラは、二限目の事をまだ引きずっているのか表情が硬い、少し不安げな表情のセリスティアはアスラに話し掛ける。

「アスラ…まだ根に持ってる?」
「バーロー、ンな訳あるかよ」

彼はそう言っているが、ラフィナの事を心配しているのか、彼の表情はまだ曇っていた。

「………アスラ、あのね…」

セリスティアが声を掛けた瞬間、【外郭】の森林の方から爆発音が鳴り響く、学舎内の廊下から声が聞こえる。

「セリス、行けるか?」
「………うん」

アスラは跳ね起きると、【魔法】を使い一気に加速する。
【縮地】
【剣客】の固有技能であり、マギアを一瞬だけ強く放出する事で瞬間的な高速移動を実現する、魔法制御に長ける【剣客】だからこそ出来る技だ。
彼は加速を続けながら、【下位級】に一つだけある空白の【位級】の名を、ボソリと忌々しそうに呟く。

「【仮面屋】か…」

理論上こそ【上位級】だが、とある理由で【下位級】となり、そしてまたとある事情から【位級】から消された禁断の【位級】、アスラは【縮地】をもう一度行いラフィナの方へと駆け抜けた。





第3話
「契約」





「ここは…?」

ラフィナは、眼が覚めると森の中に居た。
そしてラフィナは少しの間思考する、つい先程まで自分は学院を抜け出し、【外郭】の森の中へと走って行き木の裏に居た怪しい男が持っていた宝石を見た瞬間ーーーここに居た。

「…っ!」

気配を感じたラフィナは近くに生えていた木の裏に隠れる、するとそこにカボチャ頭の化け物が現れる。

「(【キメラ】……!?)」

そう、あの化け物達こそが【外郭の生物】とも呼ばれる【キメラ】であり、ラフィナ達【魔法使い】が戦い、駆逐するべき存在だ。
そのうちの一匹が、こちらの存在に気付いたのか木の裏に回って来る、しかし不幸中の幸いと言うべきかこちらには剣がある。
覚悟を決めたラフィナは、剣を片手にキメラと対峙し一匹目掛けて剣を振るうーーー

「やぁぁぁぁぁ!」
「ケキャ?」

が、それも虚しくバチィン!とラフィナが吹き飛ばされる、【魔法】を持つ者と持たざる者では越えられない壁がある。
弾き飛ばされたラフィナを見て、カボチャ頭の化け物達はケタケタと笑う、ラフィナはその三匹の化け物に彼女の一番嫌いな人物を重ね合わせ。

「ふっ!」

もう一度剣を振るが、化け物に手の甲を蹴られ痛みに剣を手放してしまう、化け物達は…またケタケタと笑っている。

「いったぁ…!」

負けじとラフィナは拳を振るうが、化け物に足を掛けられ倒れ込んでしまう、そして化け物達はこれ見よがしにラフィナを全員で踏み付け始めた。
自分を見下ろしながら、今尚ケタケタと笑い続ける三匹の化け物に、あの三人の顔を重ね合わせる。悔しいのに言い返せず、だがそれを良い事にまた虐めを繰り返すあの三人に、この化け物達はとっても似ていた。




〜アスラside〜

「着いた…って何だありゃ!?」

【外郭】の森の中へと入ったアスラの目に映った者、それはラフィナに似た金色の毛を持った狼の様な化け物だった。化け物は遠吠えを上げアスラ目掛けて襲い掛かって来るがーーー

「うおっ!」

アスラはとっさの判断で、腰の二刀を鞘から抜き放ち狼の突進を受け止める、【四公爵家】でも最も武闘派と言える【ジィダオ家】の子息たるアスラ、少し地面に尾を引くが無事受け止めて見せる。

「アスラ!大丈夫!?」
「セリス!良い所に来た!」

アスラの少し後に、巨大な翼竜の背に跨ったセリスティアが飛来する。【飛翔】と呼ばれる【竜騎士】の固有技能であり、【上位級】の四つはそれぞれの【位級】ごとに、特殊な異能を所有している。
そして【竜騎士】の固有技能【飛翔】は、巨大な翼竜による対地飽和攻撃である。

「アスラ!」
「言われなくても!」

怯んだ狼に抱きつくアスラ、狼は異物を振り解こうと必死に暴れるが、手放さない。

「落ち着けぇぇぇ!」

そして、アスラが狼の顔に手を触れた刹那、狼の動きが止まりアスラの意識は狼の中へと吸われていった。






〜ラフィナside〜

踏み続けられ、トドメの代わりに蹴り飛ばされたラフィナは宙を舞い、硬い地面に叩きつけられる。
それを見て笑う化け物達、ラフィナは心底うんざりしていた、ラフィナは化け物達に向かって言い放つ。

「もう、良いでしょ…?帰ってよ…」

ラフィナの一言に、化け物達はキョトンとした顔で肩を竦めラフィナの元から去っていく、ラフィナは安堵の息を付いた次の瞬間ーーー

「な!?」

彼女の髪が乱雑に握られ、化け物の腕から生えた鉤爪が押し付けられる、それにラフィナは耐えられず悲痛の叫びを上げる。

「やめて!髪に触らないで!これは死んだお母様と同じ金色なの!お母様の形見なの!これを無くしたら、私はお母様の事を思い出せなくなっちゃう!」

彼女の悲痛の叫びにも、化け物達は耳を貸さなず容赦無く切り落とそうとする、ラフィナは泣きながら叫ぶが、誰も助けに来ない。
ラフィナは、涙で顔を歪めながらも抵抗を諦めない、彼女は自身の心情を暴露するが抵抗だけは辞めなかった。

「私は帝都近衛隊に入らなきゃ駄目なの…髪を大事にしなきゃ行けないの…!そうじゃなきゃ、私は…誰にもティンジェル家の子供だって認めて貰えない…」
「ケキャキャキャキャキャ!」

涙をこぼすラフィナに構わず、化け物は自身の鉤爪を振るう。
かに思われたがーーー

「ケ…ケキャ…?」
「テメェ、女にとっちゃ髪は大事なもんなんだぞ、そいつを乱雑に握るたぁ…」

顔を四つに切り分けられる、ラフィナは斬撃の方向に目を向けると怒りに発し過ぎて怒髪天を突きかねない程の怒りを宿したアスラが、鞘から抜いた双刀を手に、化け物達に呪詛を吐きながらやって来た。

「テメェら全員……皆殺し!」

修羅の如く怒るアスラが、狼狽え逃げ惑う化け物達を蹂躙して行く、ある者は首をへし折られまたある者は体を細切れにされて行く。
化け物を一通り駆除したアスラは、ラフィナの方に向き直り彼女に語り掛ける。

「お前、さっき…誰も認めてくれないって言ったよな」
「だって本当の…」
「馬鹿野郎」

ラフィナの言葉をアスラは遮る。
何しろ、アスラはそんな言葉を聞きたい訳では無いのだ。
寧ろ「逆に言いたい事がある」とアスラは、ラフィナに向けて言い放つ。

「少なくとも、俺達【四公爵家】は…お前の事を認めてない奴なんて1人もいねぇぞ?」



刹那、ラフィナの涙から再び涙が溢れ出る。彼女はアスラの胸に飛び込み泣き続ける、彼女の啜る声を聞き、アスラは実感する。
「この少女は、本当に辛かったのだ」
と。








次回第4話
「代償」

Page:1



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