ダーク・ファンタジー小説

優しい蝉が死んだ夏 ( No.3 )

日時: 2018/09/05 18:43
名前: 立花 ◆FaxflHSkao


【 優しい蝉が死んだ夏 】




「じゃあ、ちょっとバンジージャンプしてくるね」

 教室の窓に足をかけた風子がこっちを見て笑った。風が吹いて彼女の綺麗な黒髪が揺れる。息が止まったかと思った。
 何も考えられなくなって、いつの間にかわたしは彼女の元に駆け寄っていた。机や椅子が足に勢いよくぶつかり鈍い音を立てる。わたしはいつの間にか右手を前に突き出していた。
 必死に伸ばした手が風子の腕を掴むことはない。落ちてく彼女の姿は美しく見えた、気がした。


 きっと風子は笑っているのだろう。頭から血を流して倒れる風子を窓から見下ろして、わたしは深い溜息をついた。
 鳴き止まない蝉の声は、何かの悲鳴に聞こえた。黒板に書かれていた「死ね」という文字を消していると、救急車のサイレンの音が聞こえてきた。死んだのかな、とただ純粋にそう思った。




「 登場人物 」

*槙野(まきの)つくも(通称マキ、本作の主人公。病気で余命があと少し)
*遠野風子(とおの ふうこ)(御門に恋した後輩)
*御門雪無(みかど ゆきな)(マキの恋人)





1 あの日捕まえて無残に殺した蝉が、わたしの耳元で泣いている。
「槙野つくもの告白」>>04-07
2 明日天気になあれと靴を飛ばしたけど、別にそんなのどうでもいいんでしょう。
「遠野風子の初恋」 >>08-10
3 どこにも行かないでと縋り付けるほど、わたしは強くなかったんだ。
「槙野つくもの幸福」 >>11
4 突然降り出した大雨が、わたしの罪を洗い流してくれているように感じた。
「御門雪無の後悔」 >>12-14
5 生きるって何だろうねって、そんな単純な質問に誰も答えてくれない。
「槙野つくもの愛情」 >>15-16
6 わたしが殺したあの蝉は、きっと優しい蝉だったのだろう。
「遠野風子の決別」 >>17-18
7 最後まで、さよならは言えなかった。
「槙野つくもの悪戯」 >>19
8 好きを伝える方法は、たった一つしかなかったのに。
「御門雪無の啼泣」 >>20-21 >>23
9 雨が止んだら、その傘は捨ててね。
「遠野風子の秘密」 >>25
10 大声で叫んだ「ありがとう」が、どうか君に伝わっていますように。
「槙野つくもの結末」 >>26-27

あとがき >>28

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