二次創作小説(紙ほか)

一松の彼女になりたい人、お越しください!
日時: 2017/03/03 22:54
名前: 白雨

 白雨です。
 普段はイチルキの二次小説ばかり書いていますが、今回は『おそ松さん』関連を書いてみました。
 私は一松が一番好きで、小説のジャンルとしてはNLが好きなのですが、おそ松さんの女性キャラは少ない…。
 というわけで、ヒロインは『これを読んでいる貴方』という事にします。
それでは、どうぞ。

第一話『出会い』

 彼との出会いは、12月の、カレンダーの通りに寒い日だった。
 バイトを終えて家路につき、曲がり角を曲ると、すぐ目の前に何かやけに黒いものがあった。ふさふさの毛と長い尻尾、三角形に近い形の耳が確認できる。

 猫だ。

 道路の隅で私に背を向けながら、何かを一心不乱に貪っている。食事の邪魔にならないよう、足音を立てぬように猫の死角に移動し、猫をそっと見守った。
 私は猫が好きで、子供の頃からずっと『飼ってみたい』と思っていた。
 けれど母親が猫アレルギーなので、一緒に暮らしている私も猫を飼えず、こうして、見かけた野良猫を観察するくらいの事しか出来ない。

 食事を終えたらしく、猫が歩き出す。この道は車があまり通らないから、堂々と横切っても平気だという事を理解しているかのような素振りだった。猫のクセに。

…なんて、感心していたら。

 近付いて来たエンジン音。こちらに曲がってくる車は少ないから大丈夫、なんて油断している場合じゃなかった。
 車の、猫が居る側のウィンカーは点滅していた。猫が車に気付いたのは、ちょうど、道路の真ん中。
 走って渡りきってしまえば間に合うかもしれないのに、足がすくんでしまったのか、猫はカチン、と固まり、動きを止めてしまった。





 気付いた時には、体が動いていた。























 耳障りなクラクションの音が静かな道に響く。私はそっと目を開けて、自分の胸元を見た。
 あの瞬間、咄嗟に抱きかかえて一緒に車を避けた猫は無事だった。私は安堵の息を漏らし、猫を放して立ち上がった。

「……いたっ!?」
 ハイヒールを履いているというのに勢いよく立ち上がったのが良くなかった。ばたん、とお尻から自分の体をアスファルトに打つ。思いっきり足を捻ってしまった。
 猫を助けた時に、というのならもう少し格好良く見えただろう。何も関係ないところで足を捻って尻餠だなんて。色んな意味で、痛い。
 はーあ、という盛大な溜息と、背後から聞こえてきた「…ねえ」という、男性特有の低い声が重なる。
「ひゃあっ!?」
 驚いて悲鳴を上げながら振り返ると、「ああ…ごめん。脅かすつもりじゃなかったんだ」と、少し狼狽の混ざった声で謝ってきたので、こちらこそ大声出してすみません、と謝っておいた。
「あの…」
「はい?」
「その…さっきの、見てた」
 さっきの、というのは私の救出劇の事だろう。それがどうしたのだろうか。
「あの猫、俺の友達なんだ。
だから、その…助けてくれて、ありがと」
 そう言うと彼は私の目の前に来て、背中を向けてしゃがんだ。私が首を傾げていると、彼が口を開く。
「今から俺の家で手当てするから。
お袋もいるし、やましい事は考えてないから、大丈夫」
 つまり、おぶされ、という事だろうか。相手が知らない男性という事もあったので、一瞬どうするか迷ったが、この状態で無事に家に帰れるとは思えなかったし、自宅に電話したところで、父はまだ仕事をしているし、車を持っていない母が私を抱えて帰るなんて多分無理だ。
「じゃあ…失礼します」
 私は彼の背に、そっと身を預けた。う、と小さな呻き声が聞こえる。
「重いですか…?」
 返答次第では家にあるポテチをどうにかしなければ、と思いつつ訊く。
「いや…平気」
 彼はそう言うと、私を背負ったまま立ち上がって、フラフラと歩き出した。
「あの…ありがとうございます」
「…いいって」

 それが、私と彼の出会いだった。
〈続〉

ストーリー、形式等を大幅に変更しました。(2016年4月5日)

後書き
第一話『出会い』、いかがでしたか?
今回は一松があまり出てきませんでしたが、第二話以降はガンガン出す予定です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
                         白雨












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Re: 一松の彼女になりたい人、お越しください! ( No.14 )
日時: 2016/12/29 00:23
名前: 風愛夜白雨

白雨改め、風愛夜白雨です。
Twitter始めたので名前合わせました。
予告通り最終話です。
いきなり時間飛んでますが突っ込まないでください。



第7話『天の川』


一松くんと、所謂「恋人同士」になってから、4年と少し。
たくさん話をして、デートもして…でも、キス以上のことは、まだ。
これから話すのは、そんな、私達らしい、消極性を含んだ関係を築いていた頃のこと。

















いつものように、彼の隣で猫と戯れていた時、急にポケットのスマホが震えた。
「ごめん」
彼に一言そう言って、スマホの画面を見る。母からの着信だった。
「もしもし?」
ごく普通にそう言うと、母はすぐに来てほしい、と言った。
「どうしたの?急な用事?」
こちらは恋人様と一緒にいるのに「来てくれ」と言ったのなら、多分そういうことなのだろう。一体どうしたのだろうか、と思っていると、母の言葉が暗く発せられた。
「…!?」








病院のベッドで家族に囲まれていた祖母は、思っていたよりは軽傷だったけれど、重傷には変わりなかった。

『おばあちゃんが、階段で転んでしまって…』

まるでドラマを観ているような感覚だった。お年寄りの事故はよくある事だが、まさか自分の祖母がそんな事になるなんて、と。
階段、と言っても下の方の段から転落したこと、それによって大した勢いが出なかったこと、前のめりに転んだ為か脳に影響が出なかったこと。運が良かった、不幸中の幸いだった、とほっとしていられたのも束の間だった。
命に別状は無かったものの、祖母の足の怪我は酷く、これからは介護が必要になるらしい。
しかし、元から祖母と暮らしている私の叔母は、認知症である祖父の介護もしなければならず、祖母にまで手が回らないのだそうだ。
かといって介護士を雇ったり老人ホームに入れたりすればお金がかかる。そう考えれば、残された手は1つ。
私、母、父のうちの誰かが、遠く離れた祖母の家まで行って彼女の介護を行うことだ。
そして、父が会社に通勤してお金を稼ぎ、母が近所の沢山の人に慕われる今、誰が介護をしに行くべきなのかは言うまでもない。
「彼氏さんのこともあるんだし…私が行ってもいいのよ。家事なら出来るでしょ?」
帰り道で母はそう言ってくれたけれど、私は「考えさせて」としか言えなかった。

















戻って来るなり涙をぼろぼろ零して、嗚咽に消えかけた声で事情を話す私に、一松くんはかなり困惑しつつも最後まで話を聞いてくれた。
「私…どうしたらいいかな…?」
涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔で見上げる。どんなに不細工に見えようと気になんてならなかった。
「…行きなよ」

即答だった。

「…え?」

…引き留めないの?

「…行きなよ。おばあさんのとこ」
一松くんが繰り返す。同時に、空耳でなかったことが証明された。
「でも…私…」
一松くんと、離れたくない。続きを紡ごうとした私の手を、一松くんが両手でぎゅっと握った。すると、彼の手の温もりと同じ温度の、固くて円いものがそこにあって、解放された掌の中をそっと覗いてみた。







ぶわっ、と涙がまた溢れ出す。
私の手にあったもの、それは、銀色の輪の形をした、彼の想いだった。
「あんまり高いものじゃないんだけど…どうしても渡したかったんだ。
好き…だから…」
不器用な彼の「好き」を聞いたのは、これが2度目だった。けど、そんなことはどうでもよくて。
「今はまだ、こんなものしか渡せないけど…でも、いつか絶対に、本物が渡せるようになるから!」
一松くんが声を張り上げる。その目は決意に満ちていた。
「だから、もう泣かないで」
一松くんはそう言ってくれたのに、涙腺は言う事をきかない。涙を止められない私に、一松くんはもう一つ、贈り物をくれた。

















それまでそこで黙って座っていたプラスが、0になった。

















それから数年後のある日、1組のカップルが街中を並んで歩いていた。
男性の方は猫背を紫のパーカーで覆い、女性は左手の薬指と右手の中指に、ひとつずつ指輪を付けている。
時折言葉を交わし、ふざけ合い、笑顔を見せて。
2人は、歩いてゆく。
<了>

Re: 一松の彼女になりたい人、お越しください! ( No.15 )
日時: 2016/12/04 23:45
名前: 風愛夜白雨

後書き
第7話(最終話)『天の川』いかがでしたか?
無断長期放置してしまいましたが、無事最終話まで書けて嬉しいです。
読んでくださった皆様、コメントしてくださった臨雄那さん、ききちゃん、安ちゃんさん。
ここまで書くことができたのは皆さんのお陰です。本当にありがとうございました。

これからは別の連載をしようと思いますが、後日談とか番外編とかもリクエストがあれば書きますので、どうぞご遠慮なくщ(゚д゚щ)カモーン
それでは、ここらで失礼致します!
またお会いしましょう!


ps:TwitterのID乗っけときます。
こちらでは主にイラスト乗せてます。
→@hakuu0114

Re: 一松の彼女になりたい人、お越しください! ( No.16 )
日時: 2016/12/05 00:38
名前: みみーに

面白かったです。場面の切り替わりがすんなりしていてとても読み応えがありました。三人称視点が多めなので若干一人称視点だとか二人称視点も組み入れてみたら想像を膨らましやすくなると思いますよ。

Re: 一松の彼女になりたい人、お越しください! ( No.17 )
日時: 2016/12/05 07:58
名前: 風愛夜白雨

>>16
コメント+アドバイスありがとうございます!
次作を書くとき気をつけてみますね!

Re: 一松の彼女になりたい人、お越しください! ( No.18 )
日時: 2017/02/18 01:17
名前: 風愛夜白雨

あげます。

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