二次創作小説(紙ほか)

Falsehood Concept 【完結済】
日時: 2016/03/21 20:08
名前: アウリン ◆gWIcbWj4io

 恐らく一日かそこらで連載終了すると思います。

 学校の『「走れメロス」を題材に小説を書こう!』みたいな企画で制作したものです。紙に書いたので、wordに写すのが大変www

 ほかの作品と同じく、コメントは随時募集中です。



〜1 プロローグ〜

「私」は、いつからこうなってしまったのだろうか。
 自分は孤独で良いのだ、と、思い込むようになったのは、いつからか……。

 ――いつになったら、「戻れる」のか――


〜1 プロローグ〜
>>0

〜2 一つの約束、一つの希望〜
>>1

〜3 過去の真実と悲劇の王〜
>>2

〜4 2人の勇者と最後の機会〜
>>3

〜5 エピローグ〜
>>4

Page:1



Re: Falsehood Concept ( No.1 )
日時: 2016/03/21 18:47
名前: アウリン ◆gWIcbWj4io

〜2 一つの約束、一つの希望〜


「陛下、男を連れてまいりました」
「よい。入れ」

 侵入者という報告から数十分。危険物を所持していたと言う報告から数分。再び、近衛兵が現れた。

「失礼します」

 数人の兵に囲まれて、見かけない顔の一人の男がいる。

 男は、とにかく田舎臭かった。貴族が着るような、無駄に派手な服以外は最近見ていなかったというのも手伝っているかもしれない。
 しかし、男は見ていて不快になるような事は無かった。逆に、懐かしささえ覚える。そう、どこか……今は亡き、私の最愛の妻であった、王妃を思い出す。

 彼女はいつだって人を信じ、常に他人を気にかけるような人だった。もっとも、だからこそ死んだ訳だが。
 彼女がそのような性格で無ければ、わざわざ公爵家の娘を差し置いて、伯爵家の娘を娶ろう等とは思わないだろう。

「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」

 何をしようとしたのか――そんなことは分かりきっている。しかし、聞かぬ訳にはいくまい。半ば、儀式のようになっている。

 しかし、そう思っているはずだと言うのに、私はどこか恐怖を覚える。

「市を暴君の手から救うのだ」

 男はそう答えた。まったく、悪びれる様子など無く。見ていて、恐ろしくなるほど真っ直ぐな目を向けて、言い放った。

「お前がか?」

 男は、私を暴君と、そう言った。しかし……私は知っている。

「仕方のない奴じゃ。お前などには、わしの孤独の心が分からぬ」

 「あの事件」の真相を――

「言うな!」

 身分という言葉が、男の頭の中には存在しないらしい。そして、それと同じく、恐怖も。

 男はキッと私を睨みつけ、言った。

「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。王は民の忠誠さえ疑っておられる」

 何も知らない――無知。その言葉が最も似合う人間は、どんな赤子より、この男だ。この人間社会のシステムをまるで理解していない。

「疑うのが正当な心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、お前たちだ」

 これはただの八つ当たりにしか過ぎないのかもしれない。いや、そうなのだろう。しかし、私の口からは、言葉が次々と溢れてくる。

「人の心は、当てにならない。人間はもともと、私欲の塊さ。信じては、ならぬ」

 ――例え、それが家族であっても。

「わしだって、平和を望んでいるのだが」

 ――それは「理不尽」。過去に私が経験した、「王族」の「王位」という枷が引き起こす、争い。

 私は言ってしまって、ふと気が付いた。私はまだ、平和を望む、一人の若い王の心のままだ、と――
 その証に、私はまだ自分を「私」と言う。人の前で「わし」と言うのに、心の中では「私」と言う。

 王宮内で起きた「殺人事件」の日から、「私」は「私」を封じていた。夢を見るな、現実を見ろ、と。

「何のための平和だ。自分の地位を守るためか」

 男は言う。

「罪の無い人を殺して、何が平和だ」
「黙れ、下賤の者」

 気付けば、私は私が最も嫌う言葉を口にしていた。

「口ではどんな清らかな事でも言える。わしには、人のはらわたの奥底が見え透いてならぬ。お前だって、今に、磔になってから、泣いてわびたって聞かぬぞ」

 口では清らかな事が言える。が、実際に動く者などいない。私が知る限り、そんな人は我が妻一人だけ。

「ああ、王は利口だ。うぬぼれるが良い。私はちゃんと死ぬ覚悟でいるのに。命乞いなど決してしない。ただ――」

 男は言いかけて止まった。一瞬ためらうような動きをし、私と目を合わせる。

「ただ、私に情けをかけたいつもりなら、処刑までに三日間の日限を与えて下さい」

 男の話によると、家族の妹のために結婚式に行きたいのだとか。三日後には必ず戻ってくる、と。

 私が躊躇っていると――躊躇うのも当然だと思うが――男は無二の親友を人質として置いて行く、三日戻ってこなければ彼を殺せ。……そう言ったのだ。

 全く、バカにも程があると言うものを。私はダメもとで男の言う、親友「セリヌンティウス」を呼んだ。
 実を言うと、男に兵をつければいいだけの話である。だが、私は男に――少し興味があったのだろう、不敬罪にも問わず、セリヌンティウスを城に呼んだ。
 そして男――メロスと言うらしい――は、セリヌンティウスに事情を話す。改めて聞くと、本当に呆れたものだった。

 男が話し終わり、セリヌンティウスは、断らなかった。何故か……そう、本当に理解しがたいが、身代わりを引き受けたのだ。

 ……どうやら、大馬鹿の友は大馬鹿という方程式が出来上がったようだった。

Re: Falsehood Concept ( No.2 )
日時: 2016/03/21 18:50
名前: アウリン ◆gWIcbWj4io

〜3 過去の真実と悲劇の王〜

 私の妻――王妃は、あまりにも心が美しすぎた。「王族」として生きるのに、その心は単なる「枷」でしかない。王妃は臣下を信じすぎた。そして、私を殺害しようとし、失敗した。

 私の妹と妹の婿は両親を毒殺し、妹は私の子を殺し、妹の子は妻の殺害を計画し、そして唯一残っていた希望、最後の家族――王妃までもが、私を殺害しようとした。

 妻は自らの過ちに気付き、自害。臣下のアレキスを処刑するよう、言い残した。

 一番、信頼していたのに。
 唯一の家族だったのに。

 そしてしばらくして、私は民にも絶望した。
 妹と妹婿が私の両親を殺害し、更に私を害そうとした事も発覚。普通なら二人とも処刑のところを、私は妹に情けをかけた。何の処罰も無いと言うのはさすがに拙いので、王位継承権を剥奪。この事は民にも発表していた。

 しかし、民は私をなんと言ったと思う?「地位を守りたいが為に家族を殺す暴君」だ。

 何故気付かない。この国では王族の地を優先すると言う事は、皆知っているだろう。
 妹婿を殺しても意味など無い。もし私が死ねば、王は妹になると言うのに。息子はまだ幼かった。王になど、なれる年では無い。こうして私は全てに絶望した。

 今、私を諌めてくれる者も、本心なのか、どうなのか。
 今、目の前に居る人間が話す事も、本当なのか、どうなのか。
 私は全てを疑い、暮らすようになっていた。

 いつからこうなってしまったのか。答えは「あの日」から。
 孤独を愛するようになったのも、「あの日」から。

 「あの事件」の真相など、全てを発表など出来ない。王宮内での混乱、それは民を不安にする。他国にも見られてはならない、弱み。
 そしてこれが、その結果――

 何が正しくて、何が悪いのか。私は今、国王と言う枷に、捕らわれていた――

Re: Falsehood Concept ( No.3 )
日時: 2016/03/21 18:53
名前: アウリン ◆gWIcbWj4io

〜4 2人の勇者と最後の機会〜

「あの男はまだか」

 私は――苛ついていた。

 何故来ない。あの男は、何処で、何をしている。

 この都市からあの男の向かった村までの距離はさほど遠くない。情報によると川が氾濫したようだが、遠回りをして来ても3日あれば……いや、1日あれば十分間に合う。

「……逃げた、か……」

 逃げた小鳥は帰ってこない。私はそれを分かっていた。

「何故、『私』はあの男を気にかける……?」

 今、すでに日は傾き、残り少しで一人の男――セリヌンティウスがこの世を去る。
 私はそれを見て、自分が正しかったと、そう言うのではないのか?声高に、自身を持って。王たる私が正しいのだと、そう叫ぶのではないのか?

 何を焦っている。何を考えている。

 私は気付けば――そう、気付けば、だ――係の者を呼び、刑場へと向かう支度をしていた。

「よろしいのですか?」
「よい。奴の死顔を拝んでやりたいのでな」

 普通の町人に扮した兵を引きつれて、私は刑場へと、足を進めた。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 もう、ダメだ。

 私は心の中で、完全に諦めた。あの男は私に夢を見せて、姿を消した。ただの――普通の人間だったのだ、彼も。

 しかし。

 いきなり、人々の海が割れた。そして、私は見たのだ。何とも無様で――何とも美しい男の姿を。

 逃げた小鳥は、帰ってくるなり、親友に自分を殴れと言った。
 親友は、逃げて帰って来た小鳥に、自分を殴れと言った。
 その2人の無く姿は、無様で、しかし美しくもあり――

 群衆が声を上げる。2人を、メロスを解放しろと叫ぶ。しかし、私にはそんな声もよく聞こえていなかった。

 私は2人に歩み寄る。
 2人に何を言うかは決まっている。こうなる事を望んでいた、過去の私の言葉があるのだ。私は、自分をさらけ出すだけで良い。


 ――自分も仲間に入れてくれ。


 たった一言。それさえ伝わればいい。

 彼らは勝ったのだ。私の心に、私の過去に、人々に。

「万歳。王様万歳」

 気が付けば、辺りは歓声に呑みこまれていた。

 ふと、2人に目を向ける。2人の男は――メロス、そしてセリヌンティウスは、全てが分かっていたと言うように、微笑んでいた。

Re: Falsehood Concept ( No.4 )
日時: 2016/03/21 18:55
名前: アウリン ◆gWIcbWj4io

〜5 エピローグ〜

 勇者。それは勇気ある者に与えられる称号。私は今、その勇者の前に居る。

 誇らしい事なのだろう、本来なら。だが、今は――鬱陶しい。

 何故なら私は今、書類整理を行っている真最中なのだ。セリヌンティウスの元へ行ってもらいたいと、心からそう思う。

 ――のだが。

 それを口に出せないのは、メロスがあまりにも純粋で、私を気遣ってここに居ると、分かってしまうからなのだろうか。

「メロス」
「なんだ」

 私がメロスに問うと、相変わらず不敬罪にでもなりそうな返答が返ってくる。しかし、毎度のことだ――私は話を続けた。

「わしはまだ、お主を完全には信用できとらぬようだ」
「そうか」

 そんなことは分かっている。そう彼は、目で伝えてきた。

 私はまだ、完全に誰かを信用など、出来ない。それ程までに、心の傷は大きかった。メロスが思っているように、全てがハッピーエンドになる確率は、かなり低いのだ。

 だが、今、私は確かにメロスを『男』ではなく、『メロス』と呼ぶ。
 メロスも私を『王』ではなく、『ディオニス』と呼ぶ。


 ――『仲間』と、呼ぶ――


 メロスは待っていてくれるであろう。私が自分の事を『私』と言える、その日が来るまで。

 しかし、一つ問題がある。

「大馬鹿の友は大馬鹿という方程式が正しければ、わしも大馬鹿になってしまうな」

 メロスはそんな私に、こう返す。

「お前も大概、大馬鹿者だ」

 恐らくこれは、セリヌンティウスも同じように返すだろう。
 私は昔、逃げていたのだ。現実から、全てから。これが大馬鹿でなければ何だと言うのか。

 だが今、私は戻ってきた。小鳥のごとく、戻ってきた。

「この国の未来が心配ね……」

 新しく王妃の座に着いた女の声が聞こえたような気がしたのは、ご愛嬌だ。

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