二次創作小説(紙ほか)

プロローグーイギリス ( No.1 )

日時: 2018/04/09 00:16
名前: うさぎとことりの珈琲店
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「はあ?上司、何言ってるんすか?」

 会議の後、上司に呼び出されたイギリスは、上司の部屋で話を聞いていた。

「だから、何人か別の国連れてってホグワーツ魔法魔術学校に入学しろって言ってるんだ」

 イギリスの上司は黒い革が張られてふわっふわの綿が詰まったソファーに座り、ふんぞり返るみたいに大きなデスクに足を載せている。

「なんでそんなことするんです?」

 イギリスは怪訝そうに尋ねる。

「国家機密だ」

「なんで国家が国家機密教えてもらえないんすか!?」

「知らん。とにかく、お前が知るべきではない」

 そう言ってイギリスの上司はぼりぼりとだいぶ薄くなった髪を掻いた。

 だめだこの上司。

 イギリスは額を手で押さえた。

「とりあいず、俺は女王陛下のお言葉だとかくらいじゃないと行きませんから!」

「ああ」

 上司は思い出したように言う。

「昨日の議会で女王陛下とも話してきたぞ。いいんじゃないか、という
ことだ」

 イギリスは歯ぎしりをする。

「さあ、女王陛下のお言葉だぞ?」

 降参、というようにイギリスは両手を挙げた。

「しゃーねーな。じゃ、何を調査するんすか」

「ホグワーツで不穏な動きがあるようだ。それについて見てきて欲しい」

「なんすかその漠然とした言い方は。もっと詳しくお願いします」

 イギリスは顔をしかめた。これじゃあ何かが起こっても動けない。

「これ以上は国家機密だ」

「だから俺国家ですって」

 資料をペラペラとめくりながら、悠然と答える上司。イギリスはため息をついてもう諦め気味につぶやく。そして、少し資料を覗いてみたが、この話とは全く関係ないようで、情報を得ることはできなかった。

「そういうわけだ。いってこい」

 上司はにっこりと満面の笑みを浮かべた。

「いや、そもそも、年齢どうするんです?俺、もうアメリカにおっさんって言われてるんですけど。一年生、11歳ですよ?」

 イギリスは、猫から逃れることができたネズミのような目をしてにやりと笑う。

「だからお前に頼むんだろう。あの、なんだったか?間抜けな呪文があったじゃないか。えっとほあ、ほあ……」

「はいはいほあた☆ですねそんなこともできましたね俺」

 猫はまだ近くにいたようだ。

「だから、頼んだぞ」

 上司はよっこらせとでもいいそうなくらい重そうに体を持ち上げ、部屋を出ようとする。

「いや、無理です嫌です!!」

 無情にもドアは目の前で閉まった。

 残されたイギリスは、ひとり目に絶望の色を湛えている。

 ネズミはあっけなく、食い殺されてしまったようだ。

「っつってもよ〜。何人か別の国連れて行って、っつてもホグワーツのこと知らない奴もいるからなあ。誰を呼べば……」

 イギリスはとりあいずかつての友達に電話をかけた。

メンテ

プロローグー日本 ( No.2 )

日時: 2018/04/09 00:26
名前: うさぎとことりの珈琲店
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 スマホがバイブする。何度も振動して机の際に置かれたスマホは元の位置を離れ、日本の足の上に落ちてきた。

「痛た〜〜、おや、珍しいですね」

 スマホに映った着信相手に思わず目を細める。

 ここはイギリスにある、とあるホテル。今日の会議はイングランドで行われ、日本は今さっき部屋に戻ったばかりである。一晩ここに泊まったら、明日には家に帰るつもりだった。

「用事があるならさっきの会議で言ってくださってもよかったのに」

 つぶやいて、電話に出た。

「もしもし、日本です」

『Hello、イギリスだ』

 電話の向こうのイギリスの声が、日本には焦っているように思えた。

「どうされたのですか?」

『いや、日本……お前、お前んちがこれから七年間経済が安定していけるという自信はあるか?』

 日本は首をかしげる。

「経済?まあ、そういきなり不景気になることはないと思いますが。」

『そうか。なら、俺に協力してくれないか』

「協力、ですか。私にできることなら」

『上司から命令された。ホグワーツ魔法魔術学校に入学しろ、とのことだ』

「へっ?ほ、ほぐわーつですか!?え、いいんですか!?」

 日本の声が上ずった。イギリスは、うれしそうに聞こえてかなり驚く。

「あ、ああ、頼む」

「あわわ、あ、ありがとうございます!他にだれかいらっしゃるのですか?」

「いや、こちらこそ、えっと、うん。他はまだ決まってないが」

 イギリスは日本のテンションが急上昇したのについていけず、あわてて答える。電話をもってペコペコ頭を下げる日本が余裕で想像 できた。

「こちらからも誰かお誘いしておきましょうか?」

 日本はいつもの話し方に戻った。が、声色に遠足が待ちきれない子供のようなわくわくを隠しきれていない。

「ああ、ありがたい。できれば、あと……1人でいいか。頼む」

 それを聞いて、日本はほっとした。

(まあ、イギリスさんに誘える友達がいるかと言われると、微妙ですよね。こちらから誘っておきますか!)

 子供のようにわくわくしていても、八つ橋は忘れない。

「わかりました」

「ああ、日本。えっと、うん」

「どうかされましたか?」

「ん、Thanks」

「いえいえ、私こそ。では、失礼します」

 日本は電話を切ると、ベットに思い切り飛び込んだ。

 ああ、ホグワーツに行けるなんて。あの、世界で一番有名な魔法学校に!

「さて……どなたをお誘いしましょうか。こういうことに興味がおありで、なるべく暇そうな方……」

 スマホを片手に、ベットの上をころころ転がる。

 なら……あの方ですかね。

メンテ

プロローグープロイセン ( No.3 )

日時: 2018/04/09 00:24
名前: うさぎとことりの珈琲店
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「さて……どなたをお誘いしましょうか。こういうことに興味がおありで、なるべく暇そうな方……」

 スマホを片手に、ベットの上をころころ転がる。

 なら……あの方ですかね。

 日本は電話帳を開き、早速電話をかける。

 プルルルル……かちゃん。

 早っ!?ワンコールで出ましたよ!?どんだけ暇なんですか!?

『おう!日本、俺様だぜ!』

「はあ、どうも。プロイセン君、ご無沙汰しております」

 一言目の声の大きさに、日本は思わずスマホを遠ざけた。

『なんの用だ?日本が俺様に用事とか、珍しいな』

「あ、ええまあそうですね。プロイセン君、これから七年間ぐらい暇ですか?」

『七年間?随分壮大だな。多分俺様はいつでも暇だぜ?』

 プロイセンの声は、どこか弾んでいて楽しそうだった。

 プロイセン君……何かいいことあったんですかね。まあいいか。

「ホグワーツって、ご存知ですか?」

『おう、この俺様があの世界的に有名なホグワーツを知らないわけないだろ!……あれ?』

 プロイセンの声が止まった。

『おい日本、まさかな、』

「ご明察。そのまさかだと思いますよ。イギリスさんがお誘いくださいました」

 まったく、この人の洞察力にはいつも舌を巻く。

『よおっしゃあああああ!!!!』

『うわなんかぷーちゃんこわれた』

『怖いわぁ(笑)』

 だれかの声が聞こえたような気がするが、日本はスルーする。まあ、プロイセン君ならうまく逃げてくれるでしょう。ついてきてしまったとしても、人数がいたほうがいいですし、という意味で。

「じゃあ、イギリスさんに報告しておきますので」

「おーう!Danke!日本!」

 絶対に話を聞いていないであろう声色の声が返ってきたのを聞いて、日本は電話を切った。

 さて、と。

 とりあえずイギリスにプロイセンが仲間になったことを報告しようと、スマホのLINEアプリを開く。そこで、イギリスとのLINEに未読のメッセージがあることに気づいた。

「あらあら、なんですか?」

 ふふ、と日本がほほ笑む。イギリスから届いたのは、ホグワーツ入学に関する予定だった。

 明日から、さっそく準備のために出かけるらしい。

『わかりました。ありがとうございます。プロイセン君が来てくださることになりましたので、メールを転送しておきますね』

 そう打って、イギリスのメールをコピーした。

メンテ

待ち合わせ ( No.4 )

日時: 2018/04/10 17:37
名前: うさぎとことりの珈琲店
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 さて、ほんとうにここで合っているんでしょうか……。

 翌日、日本はある店の前で立ち尽くしていた。

 そこは、ロンドンの街の一角にある廃墟のように小さく薄汚れた建物のパブ。名前は「漏れ鍋」という。しかし、不思議なことに、この店に入ろうとする人は1人もいない。

 なぜ誰もこの店に立ち寄らないのだろう。まだ、朝だから?とも思うが、ただ待ち合わせ場所に使っただけで、ほんとに廃墟なんじゃないだろうか。

「Hi,日本」

 後ろから声を掛けられて、日本は振り返った。

 そこには、バラの花束を肩に担いだ、いつもよりラフな服装のイギリスが立っていた。

「どうしたんです?今から彼女にでも会いに行くのですか?」

「ちげーよ!」

 イギリスは白目をむいて否定した。

「はいはい、紳士は白目なんてしませんよ。ちなみにそのバラ、何本なんです?」

「だから、彼女じゃないって!ホグワーツの先生には入学の申請遅くて
迷惑かけた上に嘘まで吐いてもらうんだからな、その礼だ」

 イギリスは日本にからかわれたのが嫌なのか強気で、でも恥ずかしそうだった。

「そうですか、今日のイギリスさんは素直ですね?」

 日本はにやにやと口角を上げる。

「ばかあ!」

「うるさいぜ、イギリス」

「せやで、黙り」

 イギリスの後ろに、三人の男が立っていた。一人は、はねた茶髪のスペイン。もう一人は、ウェーブの金髪のフランス。

 さらにもう一人は、

「ごめんなさい」

 開口一番にそう言って顔の前で手を合わせた、プロイセンだった。

メンテ

漏れ鍋 ( No.5 )

日時: 2018/04/11 19:22
名前: うさぎとことりの珈琲店
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 日本が電話をしたとき、プロイセンはスペインと一緒にフランスの家に遊びに行っていたという。電話の最中に叫び声をあげ大きくガッツポーズをしたプロイセンを、面白半分でフランスとスペインが訳を尋ねたところ、「俺様、魔法使いになれることになった」と答えたそうだ。二人が羨ましがる様子に気をよくしたプロイセンが、日本からのLINEに気づいて見せてしまったらしい。

「で、どうするの坊ちゃん。ここ、お化け出そうじゃない。入れる訳?」

 プロイセンの謝罪が一区切りしたところで、フランスが尋ねた。

 日本はもう一度漏れ鍋を見る。5人の前を通りすぎていった一人の男性が、漏れ鍋には目もくれず隣のCDショップに入って行った。

「ほら」

 フランスが言った。

「大丈夫だ。ここの店主はいい人だしな」

 イギリスはにやりと笑ってドアに手をかける。

「いや、そんなこと聞いてないからね、俺」

 フランスは周りの三人を見た。

「イギリスさんがいうにはお店はやってるみたいですが……」

「でも親分は怖いわー」

「魔法は使ってみたいけど、こんなに怖いもんかよ」

 みんな微妙そうな顔をしている。

「うるせえ行くぞ!」

 イギリスは、漏れ鍋のドアを引っ張った。



 からんからん。

 間抜けなカウベルの音が鳴って、五人は漏れ鍋に入った。中は、人でごった返している。ところ狭しと並べられた机に、これまたぎゅうぎゅう詰めに人が並び、ほとんど通る隙間などなさそうに見えた。

「誰も入っているようには見えませんでしたが……。まるでスクランブル交差点にいるみたいです」

 日本が呟いた。

「ここは魔法界でも有名なパブなんだ。どうせなら一杯飲んでいきたいところだがな。今日は忙しくなるだろうからやめておこう」

 イギリスが一同を引き連れて歩きながら解説する。

「賢明な判断です」

「もうお兄さん責任とれないもんね」

「あんなイギリス、絶対見とうないもんな」

「二度と飲むな?」

 が、振り返ると、4人はいかにも納得、という顔だった。

「なんだよお前らあ!」

 イギリスは悲壮な声をあげるが、気を取りなおしたように咳払いをしてカウンターに座る年老いた男性に声をかけた。

「すみません。今よろしいですか、sir?」

「ああ、イギリス君かね?」

 老人は振り返って言う。物腰穏やかな雰囲気がある人だが、なんだかただならぬ気配がする。

「こちら、俺たちの潜入調査に協力してくれるホグワーツの校長先生だ。すごい人だからな、怒らすなよ?」

 イギリスはにやりとした。皮肉を言うときと同じ表情だが、他4名には冗談に聞こえなかった。

「これがご迷惑をおかけしたお詫びと今回お世話になるお礼でして……」

 とイギリスが校長に花束を渡している間、日本はあたりをきょろきょろと見まわした。勝手に動いているコップ、宙に浮いて自ら珈琲をいれるヤカン、摩訶不思議なものがたくさんある。

 ふと、視界が遮られた。

「ごめんなさい!」

 同時に少女の声とバタバタと聞こえる羽音。顔に感じる生物の体温。

 次に視界が開けたとき、日本の前にはメンフクロウを抱いた少女がいた。

「ごめんなさい!うちのふくろうが……」

「あ、にh……キクちゃん大丈夫?」

 フランスも騒動に気づいたようで、日本に声をかけた。人が多いところで「日本」と呼んだらもっと混乱を呼ぶと思い、人名で呼んだのだ。

「はい、私は大丈夫ですよ。ふくろうさんのほうは……」

 日本は少女とふくろうを見る。

「大丈夫です。すみません、迷惑をおかけして……」

 少女は長いブロンドの癖っ毛で、青い瞳。腕に抱えたふくろうが、いかにも重たそうだった。

「Hola!べっぴんさんやん」

「かわいいね、君。名前は?」

 日本と少女の間にすぐさま割り込んできたのはフランスとスペイン。

「へっ!?ええと、私はポプラです。また、機会があればお会いしましょう」

 若干割り込んできた二人に警戒を見せて、それでも日本には優しく微笑んで、少女ポプラはその場から立ち去った。

「あー、キクちゃんずるい〜」

 フランスがうらやましがる。

「おーい、何やってるんだ〜?」

 店の奥からイギリスの声がした。

メンテ

ダイアゴン横丁の人ごみ ( No.6 )

日時: 2018/05/03 22:13
名前: うさぎとことりの珈琲店
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「お前ら、裏庭に来い」

「はーい」

 イギリスを追って、4人は小さな扉から店を出た。入ってきた扉が正面の入り口だろうから、こちらは裏口だろうか、というようような風貌の扉だ。

「ここにダイアゴン横丁に続いている壁があるんだ。」

 イギリスが案内したのは、裏庭を囲う煉瓦の壁だった。

「よく見てろよ、お前らも覚えてたほうがいいだろ」

 イギリスはそう言って、煉瓦の壁の煉瓦をいくつか押し込んだ。

 レンガの壁が消える。

 ひとつ穴が開いたと思ったら、それが大きくなり、崩れ落ちた煉瓦はお行儀よく床に並んでいる。

 一同は、壁の向こうに広がった活気ある通りに、思わず目を細めた。

「ここが、ダイアゴン横丁だ」

「え、大納言横丁?おいしそう」

 そういうのはフランス。

「ダイアゴンです。小豆じゃないです」

 日本がすかさず訂正を入れてくる。

「ああ、そうだ、ここから先は身分を隠すため人名を使うようにしてくれ」

 イギリスは前へと足を踏み出しながら言う。

「ダイアゴン横丁は人が多い。はぐれないようにしてくれよ」

 そしてレンガの奥の細い道を抜けると、大きな商店街が現れた。

「うわあ……」

「きれいやんなあ」

「へえ、眉毛のくせにいいところじゃない」

 多くの店が目の前に並んでいた。どの店もそれぞれに個性があり、ひとつとして同じ空気感の店は存在しない。かといってうるさく怒鳴りあっているのではなく、お互いを引き立てあい、街全体がひとつの絵のようだった。

「自慢の街だ。フランス、眉毛は余計だからな?」

「準備って、どこに行くんだ?」

「あ、お兄さんもそれ知りたーい!」

 プロイセンがイギリスの話を打ち切り、フランスがそれに乗った。

「無視するなっ!」

 イギリスはフランスを白目で睨む。

「ま、まあイギリスさんが説明して下さらないと、どうしようもありませんから……ね?」

 日本がイギリスの肩に触れ、慰めるように微笑んだ。

「そう、だよな。とっ、とりあえず銀行いくぞ!上司が軍資金を振り込んでくれてるはずだ!」

 イギリスは人ごみをかき分け銀行へと足を進めた。日本はその後ろを隠れるように、イギリスが開けた道を歩く。プロイセンがその身長を生かして二人を見失わないように追いかけ、スペインとフランスがプロイセンの両腕にしがみついているような状態になった。

「ちょっと、人多くない?」

 フランスが前のイギリスに愚痴るが、反応はない。

「ああ、聞こえてないか。ギルベルト、前どうなの!?」

 怒鳴るように言わなければ、隣にいるプロイセンにさえ声が届かない。

「大丈夫だ、ギリアーサーの頭が見えてる。くそ、あいつら勝手に行きやがって」

 プロイセンは、左右の情けない悪友たちに足を踏まれたり踏んだりしながら人ごみをかき分けていった。

 ふと、イギリスの頭の先に、一つの大きな目立つ建物が見えた。

 どの店よりも凝った細工に、豪華な窓枠。金色に光る文字は店の名を表しているような。

「グリンゴッツウィザーディングバンク……、銀行だ」

 その文字を目で捉えると、プロイセンは左右の情けない二人に声をかけた。

「よし、ちょっとスピードを上げる。しがみついとけよ!」

 いきなり速足になったプロイセンについていけず、フランスはそのまま引きずられ、スペインは走った。

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ほあた☆ ( No.7 )

日時: 2018/05/03 22:17
名前: うさぎとことりの珈琲店
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

「っはあ、はあ、はあ」

 息を切らして、スペインは巨大な建物の前に立っていた。

「なんやのギル!人が多いとこで走らんとって!親分疲れてまう!」

 息が整うと、スペインは早速プロイセンに悪態をついた。

「そうだそうだ!」

 フランスもいつも通り悪乗りしてくる。

「お兄さんとても走れる状況じゃなかったんだよ?もうちょっと周り見て?」

 肩で息をしていたプロイセンはそこでようやく顔を上げた。

「お前らな、走らねえとあいつらとはぐれるだろ」

 そう弁解して、あたりを見渡す。

「イギリス…じゃねえアーサーとキクはまだか?」

 ふと、金髪の男と黒髪のちびが歩いてくるのが見えた。

「アーサー!キク!」

 プロイセンがそう呼びかけると、二人もこちらに気が付いて駆け寄った。

「お前らいつのまに追い抜いてたんだよ。ていうかよくわかったな、ここが」

 イギリスが顔をしかめて言う。

「そりゃ大きくBANKって書いてあればわかるだろ」

 プロイセンが答える。

「それもそうだな。おい、ちょっと建物の影に来てくれ」

 イギリスは、グリンゴッツの横にあった裏路地に向けて歩きはじめた。フランス、日本、スペインもそれを追いかける。

 まわりの人がウソのようにだれもいなくなったところで、イギリスが振り返った。

「よし、ここならいいか」

「なにをなさるつもりなのです?」

 日本が首をかしげた。サラサラの黒髪が揺れる。

「ああ、あれでしょ?あの……ほぎょら?だっけ?」

 フランスが代わりに答えるように言う。

「ちげーよほあただ!耳腐ってんじゃねえの?フランシス」

 イギリスはフランスに悪態をつき、説明を続ける。

「お前ら、その恰好で『学校』に行くつもりか?怪しすぎるだろ。俺たちはどこからどう見ても大人だぜ?」

 そういうことだったのか。

 プロイセンはうなずく。

「ほあたして子供になっても、服は上司が用意してくれたから大丈夫だ」

 イギリスはかばんから紙袋を五つ取り出して言った。

「全く、なんで上司が五つもくれんのかと思ったらよお。上司には連絡いってるってのに、何で俺にはフランシスとトーニョの事誰も教えてくれねえんだよ」

「大丈夫です、私もなにも話なんて聞いていません」

 日本は慰めるようにイギリスの肩を叩いた。

「さあ、魔法、早くやってしまいましょう」

「うん、そうだな。子供の服、用意しておけよ」

 そう言ってイギリスは、全員が服の入った紙袋を手にしたのを確認した。

「いくぞ……、ほあたっ☆」

 五人は体が光に包まれて、するすると縮んでいくのを感じた。

「ひゃあっ!」

 フランスが悲鳴を上げた。

 プロイセンが振り返ると、これまで着ていたズボンがぶかぶかになって裾を踏んずけて転んだフランシスがいた。

「あっはっははは、お前なにやってんだよ!」

 そう笑いながらも、プロイセンはすっかり目線がいつもより低くなったのを実感した。

「はいはい、早く着替えてくださいよ?」

 そこに、丈の合わないスーツの日本がいた。

「わあキクちゃんかわいい!」

 フランスが日本を抱き寄せて頭を撫でる。

「よしよし」

「やめてください、どんなに見た目は子供でも私はおじいさんなんですから!」

「おい髭!はやく着替えろ!キクに言われただろ!」

「ざんねんお兄さん子供になったから髭ないんだあ〜」

「おいクソが」

 フランスとイギリスの喧嘩が始まる。

「どうだよ!子供になった俺様は!」

 プロイセンはいつの間に着替えていたのか、Tシャツにジーンズという恰好で腰に手をあて踏ん反りかえっている。

「ええ、とてもかわいらしいですよ」

 そういう日本も子供用の服に着替えていて、さっきまで着ていたスーツをたたんでいた。

「しっかし、なつかしいね、あんたのその姿」

 フランスはすっかり身長の縮んだイギリスを見て言う。

「お互い様だな。また百年喧嘩するか?」

 にやにやとするイギリス。

「やめて!これ以上お兄さんの傷をえぐらないで!」

 フランスがウソ泣きを始める。

 ただ百年戦争の話題を出すのは本当によくないことはわかっていたので、イギリスもこれ以上何も言わなかった。

「みんなかわええわあ、楽園やんなあ」

 スペインは夢見心地で小さくなったほか4人を眺める。

「あなたもですよ、スペインさん」

 ふふふ、と微笑む日本。手にはカメラが握られている。

「あ、キクちゃん俺もその写真ほしい!」

 フランスは日本のそばに近寄り、カメラの中を覗きこんだ。

「何やってんだかこの馬鹿ども……」

 イギリスは、額に手を当ててため息をついた。

メンテ

銀行の後 ( No.8 )

日時: 2018/05/03 22:19
名前: うさぎとことりの珈琲店

 しばらくして銀行でお金を下ろし、5人は町をぶらぶらと歩きまわっていた。

「しっかし眉毛、あんたどうやってお金下ろしたの?」

 フランスはイギリスを見て言う。

「ん?アーサー.・カークランドだと言えば下ろしてもらえるように上司に言ってたからな。特に気にすることもないと思ったが」

 つんとそっぽを向いてイギリスは答える。

「そうじゃなくって、あんた子供じゃない!」

「ああ、それなら上司がなんとかしてくれてた。子供に見えるけどそういう種族でどうちゃらこうちゃらだってさ」

「なにそれ適当……」

 フランスはため息をつく。

「たすけてください」

 その横で消え入りそうなまでの声で助けを求めたのは日本。

「おいおい、大丈夫か?酔いすぎだろ」

 日本の丸めた背中を、プロイセンが優しく叩く。

 どうやら、先ほど乗ったグリンゴッツ銀行内の移動に使われるトロッコがいけなかったらしい。そのトロッコは銀行内をかなりのスピードを出して走り回っており、それで酔ってしまう人も少なくない。

「あなた方が酔いに強すぎるんです……我が国の安全基準ではあんなのあり得ません」

 日本はイギリスをキッとにらむ。

「わ、悪かったよ」

「分かればいいんです」

 酔いも落ち着いたのか体を起こした日本はむすりと言った。

「眉毛〜、あんまり菊を怒らすんじゃないで?」 

 スペインがイギリスの脇腹を突っついた。

「やめろ」

「まあまあ、お金も手に入れたわけですし、買い物に行きましょう。私、楽しみなんですよ?」

 日本が笑った。眉間には皴があり、まだ少し疲れているようだが、もう大丈夫そうだ。

「あ、ああ。そうだな」

 イギリスは笑った。ぎこちない笑顔だった。

「もう、イギリスは日本に言われると調子ようなるんやから」

「そうだ、えこひいき!」

 スペインもフランスと笑った。

「ケセセ、さっさと行こうぜ俺様だって楽しみなんだ」

 プロイセンはイギリスの肩を叩いて笑った。

「お、おう。とりあえず、えっと、ホグワーツから入学に必要なもののリストをもらってんだ。これを見てくれ」

 イギリスはポケットから紙を一枚取り出した。

 四人はそれを見る。

 どうやら、ホグワーツの入学案内の手紙らしい。

「まずは……、とりあえず、手紙に書いてある順番で行くぞ。最初は、制服だな。いい店を知ってる。ついてこい」

 そう言ってイギリスは歩き出した。

メンテ

制服採寸 ( No.9 )

日時: 2018/05/03 22:23
名前: うさぎとことりの珈琲店
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

 こうしてまず連れていかれたのは、「マダムマルキンの洋装店」というお店。中に入って店主と話してみるに、店主は「マダムマルキン」ではなさそうだったが。

「ホグワーツの制服なんだけど……。男子5人」

 イギリスが店主の、深緑のローブを着た女性に言う。

「あら、新入生ね?ちょっと待って、持ってくるから……」

 女性は店の奥から少し小さな黒いローブと踏み台を持ってくる。

「じゃあ、ここに立ってちょうだい」

 プロイセンはぴょんと台に飛び乗る。

「とりあえず、これを着てね」

 店主の持ったローブをみて、プロイセンは目を見張る。

「でもそれ、明らかに俺よりでかいだろ?」

 店主は微笑む。

「大丈夫。これから採寸していくのよ」

 店主に手伝われながら、プロイセンはローブを羽織る。

「どーだ!俺様似合うだろ!」

 ドヤ顔で裾を引きずり、長いそでをぱたぱたさせて日本達を見るプロイセン。

「ギルベルト君、それ十四まt……いえなんでもないです」

「ぶかぶかで似合ってるとか」

「ちょ、俺様さみしーぜ?」

 日本とフランスに笑われ、プロイセンはちょっとすねた顔をする。

 その間にも、店主は裾や袖の長さを合わせ、ピンで留めていく。

「じゃあ、次の子、おねがいね」

 プロイセンからローブを脱がせ、店の奥 に行きながら店主は言った。次に台に上ったのはフランスだった。

「そうだ、みんな、寮ってどこに入りたいか考えてる?」

 フランスにローブを着せて、店主が言う。日本は首をかしげる。

「寮?寮ってなんのことですか?」

「ああ、悪い、こいつら俺以外イギリス人じゃなくて、ホグワーツに詳しくないんだ」

 すかさずイギリスがフォローを入れる。

「あらそう?ホグワーツには4つの寮があって、その寮のメンバーと7年間過ごすことになるの」

 店主は優しく、ホグワーツの寮について教えてくれた。

「寮はホグワーツの創始者の四人の魔法使いになぞらえていて、その人にあった寮に選ばれるわ。勇敢な者はグリフィンドール、知恵を持つ者はスリザリン、勉学に励む者はレイブンクロー、博愛の精神を持つ者はハッフルパフってね」

「へえー、俺ならどこに行くんやろなあ!」

 わくわく顔でスペインが言う。

「知恵には自信があるぜ!名前もかっこいいしスリザリンはどうだ?」

 スペインと同じ表情のプロイセン。

「ギルベルト。……まあ、最近じゃあスリザリンに行きたがる人はいないけどな」

イギリスは暗い顔をして言う。プロイセンの方をちらっと見ながら。それが忠告だと気づいたのは、プロイセンだけだった。

「そうね、大半の子がグリフィンドールに行きたがるわ」

 店主も困ったように笑う。

「なにかあったの?」

 フランスが眉をひそめる。

「70年くらい前に、ね。闇の魔法使いとの戦いがあって。闇の魔法使いのほとんどがスリザリンの出身だったし、スリザリン生の一部は闇の魔法使いに加勢したの。そして、その人達を倒すのに活躍した伝説の子、ハリーポッターがグリフィンドール生だったのよ。彼の仲間だった人もグリフィンドール生が多かったわ。それで、グリフィンドールの人気が高いの」

 店主はフランスに答え、簡単に70年前の出来事を話した。

「そう、ですか……。戦いというのは、大規模なものだったのですか?」

 日本が言うと、イギリスは、

「そうだな、そうとう死者が出た。戦場はホグワーツだったから、その中には学生も含まれている。

 と答えた。痛々しい表情だった。

「子供、まで?」

 スペインが呟くように言い、唇を噛む。みんな、沈黙した。

「あなたたちみたいな反応は新しいわね。この話を知った状況が状況だけど、大抵の子がグリフィンドールかっこいい、俺もなりたいって言うのに」

 店主が苦笑して沈黙を遮った。そこで、国たちははっとする。

 これまで多くのことを体験しすぎているせいで、あまりにも子供らしくない発言をしていた。ふつう子供が純粋に感じるのは「グリフィンドールすごい」であって、「70年前に起こった戦争はどのようなものだったか」ではない。

「でも、戦いで活躍した伝説の子の寮か、いいな、グリフィンドール!」

 キラキラと目を輝かせるプロイセン。

 フランスは苦笑する。

 プロイセン、さすがに無理があるよ。

 店主は、フランスに台から降りるよう促した。

メンテ

子供の真似 ( No.10 )

日時: 2018/05/03 22:25
名前: うさぎとことりの珈琲店
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

「アーサーさんち、内戦あったんですね」

 店を出てすぐ、真っ先に日本は言った。

「ああ。魔法関係だから、公にはしてないんだが」

 イギリスは苦々しく笑う。

「あと、やっぱり名前と見た目だけじゃダメだね。振る舞いも子供っぽくしないと、怪しまれるよ」

 フランスが人差し指を振った。

「子供っぽくとは、どういう……」

 首をかしげる日本。

「それなら親分に任しとき!……えーっとなぁ」

「アメちゃんいるか?」

 悩むスペインに向け、プロイセンはポケットに手を突っ込んで言った。

「いるいるいる!もちろんいるで!」

「俺も俺も!」

 スペインとフランスがプロイセンにしがみつく。プロイセンは含みのある笑みをして日本とイギリスを見た。

「私も欲しいです!」

 日本は目を輝かせ(るふりをし)てスペインとフランスに並ぶ。

「俺は……いい」

 イギリスはプイとそっぽを向いた。

「ありゃ、子供は子供でも反抗期だね」

 フランスはそれを見て笑い、ポケットに手を入れたプロイセンを見る。アメは?というように。

「あるわけねーだろ。俺は日本ちのおばちゃんじゃねーぞ?」

「さーぎーしー、さーぎーしー」

「うそつきー!」

 スペインと日本はプロイセンを引っ張ったりつついたり。でもその顔は笑顔だった。

「こら、やめろキク!トーニョ!」

 ギルベルトは二人を押さえつける。

「アーサー!次の店は!?こいつら邪魔でしょーがない!」

「あ、ああ、わかった、次は……教科書だな」

 イギリスは日本を、フランスはスペインを引っ張り、解放されたプロイセンは四人の後をひょこひょこついていった。

メンテ

杖選び ( No.11 )

日時: 2018/05/03 22:29
名前: うさぎとことりの珈琲店
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

 教科書を買い、鍋やら薬瓶やら望遠鏡やらをそろえ、だいたいの物をそろえ終えた一行。教科書を買った後に一回、そのあといろんな学用品をそろえた後に一回、漏れ鍋に荷物を預けに行った。そして今は、3度目の買い物に出ている途中である。

「なーなー次はー?」

 道の途中で見つけたアイスクリーム屋のチョコアイスをなめながら、スペインは言う。

「えっと、杖、だな。魔法を使う上で不可欠なものだ。これがなかったら、まず魔法は使えない」

 入学案内の手紙を読みながら、レモンのアイスを食べるイギリス。

「ああ、あんたのほぎょらステッキみたいな?あんなのは嫌だなあ」

「あんなのとか言うなよ!ていうかほぎょらじゃねえ!」

 薄ら笑いのフランスに、白目で抗議するイギリス。

「ま、きっといいのを選んでくれるさ。……オリバンダ―さんなら」

 そういってイギリスが手をかけた店の扉には、「オリバンダ―の杖」と書かれた金属のプレートがあった。



「オリバンダ―さん」

 イギリスは店に入るなり、奥にそう呼びかけた。

 カウンターの奥には背の高い棚がいくつもならんでいて、迷路のよう。棚の中におさめられた細長い箱の上には、ほこりが積もっている。

 ふと、棚の横から壮年の男性が顔を出した。

「ひぇっ!」

 フランスが変な声を上げる。

「新入生かな?誰から試す?」

 モノクルの向こう側から灰色の瞳に見つめられ、恐ろしく空気の読めないスペイン以外は後ずさる。男性から、恐怖すら覚えるような不思議な力、それこそ魔力のようなものが漂っている気がした。

「えっ?じゃ、俺からー!」

 スペインは右手を大きく上げて言う。

「ふーん、なるほど」

 オリバンダ―はスペインを見たあと、近くにあった棚に歩み寄る。

「君、利き手は?」

「右やで!」

 棚をいじるオリバンダ―に尋ねられ、スペインは威勢よく答える。

「そうか……、なら、これはどうかな」

 スペインに一本の杖が差し出される。

「ドラゴンの心臓の琴線に、よくしなるヒイラギ……、振ってみなさい」

 スペインは杖を受け取ると、頭上まで右手を高く持ち上げ、思い切り振り下ろした。

 店の中を風が吹き抜ける。それぞれの髪が、風に撫でられふわりと揺れた。

「はは、元気がいいね。君にはドラゴンが合うようだ。でも、これじゃない」

 店主は笑ってスペインから杖を取り、また棚の方へ向かう。

「すげー!俺、今……!すごいなあ!」

 さきほどまで杖を持っていた手と仲間たちを交互に見て、スペインは興奮した様子で言う。

「おっちゃんおっちゃん!一番かっこええやつにして!」

 スペインがオリバンダ―に叫んだのを聞いて、イギリスがあっとつぶやく。

「ス……アントーニョ。杖は選ぶものじゃなくて、杖に持ち主が選ばれるんだ」

「そうだね。でもここで一本、一番デザイン性の高い杖を試してみるかい?トネリコのドラゴンの心臓に琴線。……どうぞ」

「シンプルやけど……綺麗でかっこええなあ」

 持ち手のあたりに花のような模様が彫られていて、金の輪っかがついている。丸みを帯びた形の杖だ。

「ほな、いくで!」

 スペインは、それを思いっきり振り下ろした。

 ばさぁ、と音がして、熱風が吹き付ける。思わず顔を覆い、少しして目を開く。

「……!な!誰か親分助けたって!」

 スペインは炎の壁に囲まれていた。熱く、燃えるだけの壁。すすのようなにおいがして、思わずせき込む。

「アクアメンティ!」

 アーサーの声が響いた。だんだんとスペインの周りの炎は収まっていく。スペインが小さくなった炎ごしにイギリスを見ると、杖を構えていた。

「あ、アーサー……」

 細長い木の棒に赤い石が付いただけのシンプルなデザインの杖を握るイギリスの表情は、苦々しかった。やっちまった、と顔に書いてある。

「その杖は……。サクラにユニコーンのたてがみのやつだね?俺が小さいころ、祖父がある人に売っているのを見たよ。祖父が、宝石を付けた唯一の杖だって言ってた……。なぜ君が?杖も君を認めているみたいだし……」

 オリバンダ―は懐かしそうに、だが不審そうに言った。

「いろいろあったんだよ。トーニョはもういいだろ。他の3人も見てやってくれ」

 火が消えたのを見届けて、イギリスは不機嫌そうに言った。

メンテ

杖選び2 ( No.12 )

日時: 2018/05/15 14:03
名前: うさぎとことりの珈琲店
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

「はいはい!じゃあ次、俺のな!」

 威勢よく挙手したのはプロイセン。

「俺は左利き!」

「うん、君はとても分かりやすいね」

 オリバンダーはプロイセンを見ると、一番近くの棚から黒い杖を取り出した。

 蛇が巻き付いていて、十字架が付いたデザインだ。

「お〜、かっけー!」

 プロイセンは杖を受け取り、オリバンダーを見る。

「振ればいいんだよな?」

 オリバンダーはうなずく。

 ぶんっとプロイセンが左手を振り下ろした瞬間、ガタガタと棚が揺れた。ガラガラと音を立てて四角い箱が落下する。棚や箱にはほこりが積もっていたものだから、その場の何人もが咳き込んだ。

「げほっ、どうだった?」

 口元を覆ってフランスが問う。

「なかなかいいね。彼はこれで決まりだ。黒檀にヒッポグリフの尾だね」

 オリバンダーはプロイセンに杖を返してもらいながら、笑った。


 そのあとすぐにフランスはコルクにマーメイドの鱗の杖に決まったが、問題は日本だった。何本試しても見つからない。5本以上試したところで、オリバンダーはお茶にしよう、と言った。

「しっかし、何やったん?眉毛はなして杖持っとったん隠しとったん?」

オリバンダーの入れてくれた紅茶をすすりながら、スペインはイギリスに不審げなしせんを投げかけた。

 カモミールの香りが立ちのぼる。

「新品の杖ではなく、誰かがすでに持ち主になった杖の所有権を得るには、元の持ち主を殺さなければならない」

 丸い机のイギリスの向かい側で、オリバンダーはまっすぐにイギリスを見た。

「つまり――、そういうこと、ではないか」

 イギリスは目を逸らし、苦々しい顔で頭をかく。ソーサーごと持ち上げたカップも、すぐ机に戻してしまう。

「そういうことだ、俺は人を殺した。仕方なかったんだよ」

 まわりにいた国たちは困惑すた表情でお互いを見比べる。誰か、これについて知っている人はいないのか、と。

「正当防衛だ。警察も了解ずみだぜ。杖狙いだったわけでもないし、そうするしかなかったんだよ」

「君にいったい、何が……」

 オリバンダーが呟くが、それを遮ってフランスが言う

「さて、こんな話はこれで終わりにしてさ、キクちゃんの杖はどうするの?」

メンテ

キングス・クロス駅 ( No.13 )

日時: 2018/05/15 15:05
名前: うさぎとことりの珈琲店
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

 それから数日後のこと。しばらく宿屋もしている漏れ鍋に泊まっていた5人は、荷物をまとめてキングス・クロス駅に向かった。

 そう、今日が入学式だ。

「9と4分の……3番線?どこにあるん、そんなの」

 入学準備をカートに詰めて押しながら歩く一同。

 荷物があまりに大きいし、魔法道具特有の変なものがのぞき見え、さらには大人数なので、周りの一般人利用者から変な目で見られたのは言う間でもない。

「あるよさがせば。ヒゲ、お前いつの間にフクロウ飼ってんだよ」

 イギリスはフランスのカートに乗った、ひときわ大きいかごを見やる。

 よくある、下が平らで上が丸く、持ち手がついているような鳥かごで、その中には大きな金色の瞳のワシミミズクがおとなしく、でもどっかりといすわっていた。

「ざんねん眉毛、こいつミミズクなんだな〜。名前はフランボワーズ。お兄さんに似て美しいでしょー」

「ええ、とてもかわいらしいですよ。私のミーには劣りますけど!」

 そういう日本の腕には、子供にしてはかなり大きい黒猫がいる。

「おまえの親……親?バカっぷりはなんなんだよ」

 すでにペット自慢を受けたことがあるプロイセンが、ため息をつく。しかし日本はむふふと口元を緩めた。

「かわいいんだから仕方がないでしょう?」

 そこで、イギリスが足を止める。

「あそこだ」

 イギリスが指したのは、9とかかれた改札口と、10とかかれた改札口の間の柱。その周りには、同じように大量の荷物を持った若者たちがいた。

「ちょっと見てろ」

 イギリスはその柱に近づく。

 周りに集まっていた若者たちが、数人よけた。

「なにをなさるんでしょう?」

 日本が呟いて首をかしげる。

 ふいに、イギリスは柱に向かって走り出した。

「坊ちゃん!?」

「頭おかしゅうなったんか!?もとからやけど」

 フランスとスペインが同時に叫ぶ。

 イギリスがカートごと柱にぶつかる。カートはへしゃげ、中身は床に散乱し、周囲からイギリスに冷たい視線が注がれる。

メンテ

Re: 【ヘタリア】【ハリーポッター】悪友島国の魔法学校生活 ( No.14 )

日時: 2018/05/15 15:42
名前: うさぎとことりの珈琲店
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

 なんてことはなく。

 イギリスは柱に吸い込まれ、次の瞬間には姿を消していた。

「おお、あの新入生、勇気あるなあ。あそこまでビビらずに突っ込んでいくやつはなかなかいねえぞ。グリフィンドールこないかなあ」

 近くにいた若者の一人が声を上げた。

「あの人、ホグワーツの先輩じゃないの?」
 
 フランスが呟く。日本はうなずいて、彼の元に近づいた。

「すみません。9と4分の3番線って……」

「お前らも新入生か?」

「はい。知り合いが先に行ってしまわれて、よくわからなくて……」

 彼が、ははあとうなずく。

「さっきの子の知り合いだな?あの柱に向かって歩くんだ。それだけでいい。その向こうに9と4分の3番線があるぞ。ほら、行ってみろ」

 その先輩はぐいぐいち日本を押して、柱の前に連れていった。

「やめてくださいよ、私無理ですって」

 それでも周りの若者たちは道を開けてくれる。

 日本の目の前にあるのは、イギリスが消えていったあの柱。

「ほら、いけるって」

 先輩は青い目を細めて笑うと、日本と距離をおいた。

「むう……。しかし、私は日本男児。こんなところでくじけるわけには……」

 日本は黒猫をぎゅっと抱いた。

「みーちゃん、行きましょう」

 日本の目がするどく、柱をとらえる。

 強く、足で床を蹴った。

 走り出すと、もう止められなくなった。一緒に滑り出したカートが体をひっぱっている。柱はもう、目前に迫ってきている。

 思わず目を閉じたが、思っていたような衝撃はなく、まだ走り続けていた。

 おそるおそる立ち止まって、目を開く。

 日本は、紅色の蒸気機関車が停まった、プラットホームに立っていた。

メンテ

Re: 【ヘタリア】【ハリーポッター】悪友島国の魔法学校生活 ( No.15 )

日時: 2018/05/15 23:46
名前: うさぎとことりの珈琲店
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

「わあ……ここが……」

 日本が吐息を漏らし、あたりを見渡していると、背中に何かがこつんとぶつけられた。

「じゃまやで、日本!」

「アントーニョさん!私は菊ですよ」

 振り返ると、スペインがいた。ぶつけられたのはスペインのカートのようだ。後ろには、プロイセンとフランスもいる。

「せやな。すまんすまん」

 スペインはケラケラと笑う。

「おう、新入生!来れたか!」

 背後には、日本を走らせたあの先輩が立っていた。

「はい。お陰様で、無事に」

 日本が微笑んで答える。

「じゃ、俺は友達と待ち合わせしてるから、行くな」

 そう言って、彼は立ち去ろうとするが、数歩進んだところで振り返る。

「俺はニコラス・フィリップス。グリフィンドールだ。なんかあったら、また聞けよ!」

 4人に笑顔を見せ、今度こそ彼は雑踏の中に消えていった。

「親切な人でしたねぇ」

 日本が呟く。

「さて、アーサーはどこに行ったかな?」

 フランスの言葉で、一同はぐるりと周囲を見渡した。

 辺り一面、親子で作られた人ごみ。身動きひとつとるのも大変だ。さっきのニコラスはよく動いていたなあとつくづく思わせる。

 そしてその奥に見えるのは、紅色の汽車。「ホグワーツ特急」と書かれているのが読めないこともない。

「おーい、キク、フランシス、アントーニョ、ギルベルトー!」

 汽車の方から、わずかに声が聞こえ、そちらを向く。だが、アーサーの姿は見えない。

「こっちだ、こっち!」

「あそこだ!」

 ギルベルトが汽車を指さす。正確には、汽車の窓の一つ。

 その窓から、アーサーは身を乗り出し、こちらに向かって叫んでいた。
 
 4人は、人ごみをかき分けかき分け車体に近づく。

 ようやく5人で話せる距離になったとき、イギリスは4枚の切符を取り出した。

「これがホグワーツ特急の切符だ。あそこで駅員に渡してくれ」

 イギリスが指したのは、汽車の乗り口のあたり。駅員も確かに見える。

「俺はこの辺のコンパートメントを取ってるから、早く行ってこい。あと、お前らの席をとっといてやるのはお前らがはぐれたら俺が上司に怒られるからであってつまり俺のためなんだからなそれと」

「こいつは放っておこう」

 フランスは切符を取って、イギリスに背を向ける。

「そうだな」

 残りのプロイセン、日本、スペインも最後まで話を聞かずフランスについていく。

「なんなんだよばかあ!」

 イギリスが叫ぶと、まわりにいた何人かが振り返った。

メンテ

ホグワーツ特急 ( No.16 )

日時: 2018/05/20 19:25
名前: うさぎとことりの珈琲店
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

 しばらく、イギリスが取ってくれたコンパートメントの中で待っていると、汽車が動き始めた。

 最初こそ、みんな窓の外の世界に驚いたりもしていたが、なんせ田舎。変わらない草原と空の空間に飽きてきている。

 話すこともなくなり、5人のコンパートメントはしんと静まり返っている。イギリスはさっき車内販売で買ったカエルチョコレートをかじっていて、プロイセンにいたっては窓にもたれかかってすでに眠っていた。スペインも、まだ目は開いているものの、うつらうつらとしている。

「ねえ!」

そこに、明るい女の子の声が響く。

「ロングボトム先生のヒキガエル見てない?」

 コンパートメントの入口にが、息を切らし、ぼさぼさになった茶髪の少女が立っていた。あのとき、漏れ鍋でメンフクロウを抱えていた少女だ。

「えーと、見てないですが……」

「そっか、あの人、またなくしたんだって。何回目だろうなあ」

 日本が答えると、少女は腕組みして考えるようなそぶりを見せた。

「ロングボトム先生って……?」

 フランスが首をかしげる。

「ホグワーツの薬草学の先生だよ。もう90近いおじいちゃんで、私のひいひいばあちゃんの教え子だったんだって」

 少女は明るい声で答えた。しかし、プロイセンはいまだ眠ったままで、スペインもなにやら呟きながら寝返りを打っていた。

「協力してくれてありがとう!もうすぐ着くから、そこの眠ってる人も起こしてあげてね。あと、制服に着替えといたほうがいいよ!」

 少女はそう言ってコンパートメントを出た。パン、と元気よく音が鳴って、ドアが閉まる。

「うにゃ?」

 その音で、まだ完全には眠っていなかったらしいスペインが目を開けた。

「あの子って……」

 日本がぼそりと呟く。

「すっごくかわいいマドモアゼルだったね。さて、忠告に従ってこいつを起こしますかー」

 フランスはそういうと、揺れる電車の中を歩きプロイセンの前に立つ。

「おーギルちゃん起きて―!!」

 フランスはプロイセンを揺さぶった。

「むにゃあ……ヴェスト……俺様まだおやすんでるぜ〜むにゃむにゃ」

「ギル、目ぇ覚まし」

 ぱあん、と軽い音が鳴る。スペインはプロイセンの頬に思い切り平手打ちを食らわせた。

「痛っ!?ヴェスト……じゃなくてスペイン!何すんだよ!」

 ようやく意識を取り戻し、プロイセンは赤くなった頬を押さえて抗議した。

「おい、プロイセン、もうすぐホグワーツに着く。さっさと着替えろ」

 トランクから取り出したシャツを手にして、さっきまで何もしていなかったイギリスが言う。

「あい、わかったよ」

 プロイセンはトランクをイスの下から引っ張りだして言った。

メンテ

Re: 悪友島国の魔法学校生活『削除してください』 ( No.17 )

日時: 2018/05/24 23:29
名前: うさぎとことりの珈琲店 ◆CUAIkLw/ms
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

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メンテ