社会問題小説・評論板

偽りの言葉
日時: 2017/09/10 00:21
名前: ららん

―私はどうして生まれてきたの?―

たまに、そう考える。

ただ、正確な答えが出たことは一度もない。もう、こんなこと考えるのは時間の無駄だってわかってる。でも、考えてしまう。

だって私が生まれたことは、きっとこの世界にとって無意味だから。私を必要とする人は、この世には一人もいない。そもそも私の存在すらも、気づいていないのだろう。

では、もし、私が死んだら――?

ちゃあんと、この心の傷は、癒えるのだろうか。

心の鉄の鎧は、綺麗に外れるのだろうか。

最期ぐらいちゃんと、微笑めるのだろうか。

――知らない。わからない。

だから私は、死なない、生きる。いつか微笑める時が来るまで。


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Re: 偽りの言葉 ( No.1 )
日時: 2017/09/10 00:30
名前: ららん

私はいつもの足取りで学校に行く。
寝起きで少し、頭がボヤボヤする。
周りでは、同じ制服を着た同級生らしき人々(同級生かどうかは定かではない)が、スマホ片手にみんなで話している。その中には、校則違反なのにもかかわらず、爪にでかでかとネイルアートをしたり、髪を茶色や金色に染めている子さえいる。

その子達は、私には話しかけようとしないし、勿論のこと、私も話しかけようとはしない。

そう。これでいいのだ。

これで私が話しかけたら、いじめられるかもしれない。いや、いじめられはしないけれど、きっと白い目で見られる、間違いないだろう。

 首にかけていたヘッドホンをもう一度付け直した。すると、悲しそうなバラードが流れ出した。
 ああ、そういえば、この曲のような子がいたな、と思い出した。私が名前と顔、どちらも正確に思い出せる、世界にたった一人の人。

 山田汐里。中学生のころ、よく話していた、気がする。

 暗くて、地味な、私みたいな子だった。髪はいっつもボサボサで、メイクなんか少しもしてなくて、メガネをかけていて、色白で、ガイコツみたいな子だった。いや、本当に、骸骨だった。でも、とってもまじめだった。

 でも、汐里は、死んだ。

Re: 偽りの言葉 ( No.2 )
日時: 2017/09/11 00:39
名前: ららん

拒食症による、心臓発作だった。私も薄々、彼女の病気に気づいていた。

死ぬ直前、彼女は階段を上ることさえ困難になっていた。私がそっと肩を支えてあげると、なんとか、登れる。肩には、ごつごつとした骨が飛び出ていた。私はそれに触れるたびに、ぎょっとして、手が震えた。

――摂食障害は食べろと言ってはいけない。

どこかでそんな本を読んだ。だから私は一つも食べ物に関しては、汐里に口を出さなかった。

それどころか、嘘をついた。大丈夫、大丈夫――。しおり、そんなに痩せ過ぎを気にしてはいけないよ、と。偽りの言葉ばかりはいていた。

……でも、今更ながら、思う。一言でもいいから、『食べろ』と言ってやりたかった。せめて、入院を進めてやりたかった。そうすれば、汐里は生きていたかもしれない。

――でも、あの頃の私にはできなかったんだ。弱虫で、たった一つだけの、大切な大切な友情を、壊したくなくって。でも、汐里が死んでしまったのなら、友情が壊れてしまったのと同じだね。私が死んだのと、同じだね。ああ、なんて私ってバカなのだろうか。思わず、情けなさからか、笑ってしまう。ホント、だから誰からも必要とされないのよ。

 悲しげなバラードがまだ流れている。

 それとは裏腹に、楽しそうな同級生たちの声、そよそよと拭く春風。ぽかぽかと、温かい。

 まるで私以外に、だあれも人がいないみたいだ。
 

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