社会問題小説・評論板

明日の涙
日時: 2018/01/01 19:02
名前: ヤシロギ


彼女の声を初めて聞いたのは、知り合って一年半後だった。

乾いた空気の中で、歪に切り裂かれた制服を拾い上げる彼女。
それを背後から下卑た笑顔で眺める「皆」は、自分がいかに醜いのかを全く知らない。もしかしたら大人になっても、気づかないままなのかもしれない。
彼女はそれを全く気にする様子もなく、無表情のままで土埃を払う。そして、こちらを見ないまま静かに口を開いた。
私はほとんどその唇を読むようにして、その呟きを聞いた。
聞いたのは、私だけだった。

「………今、なんか言った?」
「は?誰が?」
「あ、えっと…あいつが」
「何も聞こえなかったけど。てか、喋る余裕もないんじゃないの?」

「皆」は揃って笑っていた。
私は彼女を見る。彼女は既に背を向けて歩き出していた。
「皆」は彼女が何も言わずに全てを受け入れるのを、自分に都合のいいように解釈している。ショックだから何も言えずにいるのだと思い込んでいる。

私は、そうは思わないけど。

『…………まあ、いいか』

彼女の声を聞いたのは、それが初めて。

いじめを受ける彼女の、強い言葉だった。

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