社会問題小説・評論板

僕の身分証明書
日時: 2020/02/09 16:25
名前: まぐろ

僕の名前は田仲翔大(たなかしょうた)で17歳

僕は学校に通っていた時いじめにあっていた。

別に暴力とかは振るわれなかったけど小柄でいわゆる軽度の発達障害だった僕は
周りにうまく合わせられず鬱陶しがられ失敗するごとに罵声を浴びたり
僕が机に座っているとわざとぶつかってきて「あれ?いたの?気づかなかった」
と嘲笑うように言われたり果ては独り言言うように悪口言われたり散々な日々だった。

確かに虐められる原因は自分にあるし病気を理由になんでも仕方ないと思うのは
間違いだ。

でもそれにしてもあまりにも執拗で正直人と関わる事自体に恐怖を感じていた。

早くこの場から抜け出したい。

親や教師からも「辛くても逃げるな!」と言われるけどももはや頑張って立ち向かう
という気力も無くてただ逃げたくて逃げたくて仕方なかった。

1番の逃げ方…つまり自殺を図る事にした。

ローカル線の踏切の外で電車を待つ。

勿論やるのは飛び込み自殺だ。

やがて踏切が鳴り始める。



正直今までの人生の中で1番ドキドキしている。

勿論女子と付き合ったりだとかそんな事はした事ないがきっとその時のドキドキも
こんな感じだろうか…

そしてついに電車が踏切に接近。

ドクン、ドクンドクンドクン

心臓は異常なほど高まり体から謎の汗が出てくる…

そしてついに僕は電車の前にダイブしようと飛び込む…

パアアアアーーーーーン

という電車のクラクションが鳴り響きそして…








これで僕の自殺は遂行されたと思いきや違かった。

恥ずかしながら怖くなってしまって逃げ出してしまった…

僕は自殺も満足に出来ないくらい逃げることしか頭になかったのだ。

どっちみち電車の進行妨害か何かで捕まってしまうかもしれない。

そこで僕は学生証などの身分証明書をその場にばら撒き制服のジャケットを脱ぎ捨てて
逃走する事にした。

僕は生きながらその場から消える選択をしたのだ。

正直最初から自殺など考えずにこうしていれば良かった。

辛い場から逃げ出したい時、行き場がなくなった時は生きながら消えれば良い事を
その時悟った。

冷静に考えてどうせ疎まれたりしてるなら心配される事もないのだから
生きても死んでも同じこと。
だったらうまく逃げ切って生きた方がいいだろうってね。


さてその後なんだけど身分証明書をばらまいて逃走したため当然証明書がない。

新しい証明書を作るにしても逃走中なんで作れない。

証明書がないと色々と不便だ。

というか何故ばらまいてしまったんだろう…
自分でもそれは謎の行動だった。
勢いとは恐ろしいとその時思った。
所持金は2万ちょい(お年玉の残り)なためあまり遠くには行けない。
せいぜい隣町に潜伏するくらい。

改めて自分のポンコツ具合を実感しつつ自分の町へ40分くらい歩いて戻りそこから電車で
隣町へ。

意外と行く機会がないが自分の町とはうって変わっていかにも田舎というに
相応しい光景だった。

人がいないからすぐ特定されそうだがとりあえずお腹が空いたので
駅近くにあった食堂で食事をする事にした。

「いらっしゃい。」

そこは意外にも若めの人(推定年齢20代後半)の人が一人でやっていた。

髪は黒髪で僕と同じくらいの身長で陰キャな僕に比べて非常に好青年な人だった。

「今ちょうど人がいない時間帯で料理すぐ出せるよ!
もっともいつも人なんてあまり来ないけどなw」

と自虐ギャグを交えて明るく接してくるオーナー。

僕はとりあえずカレーが食べたかったので注文してみた。

「オッケー。気合い入れて作るよ。アチョーってね!」

と正直ついていけない程の謎のテンションで料理を作り始める。

「そういえば君今午後の9時前だけど塾通いの学生さんかい?
もうそろそろ塾通いの学生さん達がうちに寄ってくる時間帯なんだけど。
因みに学生証見せてくれれば割引きくよ。」

と作りながら僕に話かけてきた。

勿論学生証なんてばらまいてきたからある訳ない。

「いいえ結構です割引は。」

と返答した。

するとオーナーは「勿体無いよ!それとも今忘れてきたとか?」

と僕に笑顔で聞いてきた。

何というかその笑顔というのは反論する気とかが無くなる笑顔だった。

僕はその笑顔に負けて情けない事にこれまでの話をオーナーに話した。

特に何も言わず「おまちどうさま。」と言ってカレーを出してきた。

オーナーも何も言わないから僕も黙ってカレーを食べ始めた。

空腹だった事と洗いざらい話した謎の解放感から何気ない普通のカレーだったが
かなり美味しく感じられた。

これが生きる味なのかなどとよく分からない事を考えながらあっという間に完食。
そしてなんとおかわりまで頼んでしまった。

するとオーナーは「嫌なら捨ててしまえ。」と僕に呟くように言ってきた。

正直僕は驚いた。
いきなり言い出してきた事もそうだったがこのオーナーがまさかそんなセリフを
吐くなんて思ってもいなかった。

「学校の連中とどうしてうまくしないといけないんだ?
合わなければ無理して合わせなくていい。
嫌がらせ?所詮そんな連中と君は交わる事もない平行線的な存在だ。
そんな連中と過ごさないといけないという考えが俺は間違ってると思うぜ。」

僕はそのオーナーの言葉にすごく勇気づけられた。
まさにそうだと思う。

僕は学校でかなり陰湿ないじめを受けた。

でもそれは僕のせいでも相手のせいでもなくただ交わってはいけない世界で
交わってしまっただけだった。

僕から自然と涙が出てきた。

しばらくしてカレーのおかわりをオーナーが出してきた。

そして横にはなんと僕の学生証が!

「これは?」

とオーナーに聞くとオーナーは笑いながら

「ごめんね。実は一部始終を君が飛び込もうとした踏切の反対から見てたんだよ。
ちょうど材料をバイクで買いに行った帰りでね。
声をかけたんだけどよほど思いつめていたのか僕の引き止める呼びかけにも
反応なくて焦ったよ。」

と答えた。

笑いながら話すような内容ではないと思うけど何という偶然なんだろうか?

そういえば電車のクラクションと同時かちょっと前くらいに人の叫びみたいなのが聞こえた
ような気がする。

ひょっとしたら無意識に反応して飛び込みをやめたのかも…

カレーがとにかく美味い。こんなにカレーがうまく感じた事は今まで無かったと思う。

「ごちそうさまでした。」

僕は会計を済ませて(学生証あったんで割引)オーナーに挨拶した。

それとほぼ同時くらいに塾通いの学生達が5人くらい入ってきた。

学生達の対応をしてるオーナーを尻目に最後に

「ありがとうございます。」

と告げて店を出ようとした時オーナーは例の笑顔で

「学校辞めたらうちで手伝い係として雇ってもいいぞ!」

と言ってくれた。




そして僕は学校を辞めてその食堂で手伝い係として働いている。

買い物とか会計とか雑用を中心の業務だけど学校に通ってた時よりも毎日が
何故か楽しい。

僕はオーナーにとても感謝してると同時にとても尊敬している。

ありがとうございますオーナー。

オーナーがいなかったら僕は本当にただのつまはじき者として終わっていたかも
しれない。

やはり人は環境次第だと思う。
環境を変えれば自分の生き方も変われる。


逃げるが勝ち!


[完]




























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