BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

【オリジナルGL】 ふたりでいること
日時: 2017/02/18 14:01
名前: はるたに

はじめまして、はるたにと言います!

今回は オリジナルGL に挑戦します!
GLを書くのは初めてなので、至らぬ点も数多くあるかとは思いますが、生温い目で見てあげてください。


【注意】

 *更新遅めの可能性有
 *パクり、荒らしはご遠慮ください
 *駄作お断りの方はブラウザバックをおすすめします
 *誤字、脱字多いです
 *完全オリジナルです
 *今後、R15くらいまではあるかも…?
 *コメントくださるとヘドバンしながら喜びます


【 おしらせ 】
>>19


【 Characters 】
 >>2


【 Episodes 】

 *Episode 0   >>1   *Episode 1   >>3
 *Episode 2   >>4   *Episode 3   >>5
 *Episode 4   >>6   *Episode 5   >>7
 *Episode 6   >>8   *Episode 7   >>9
 *Episode 8   >>10   *Episode 9   >>11
 *Episode 10  >>12   *Episode 11  >>13
 *Episode 12  >>14   *Episode 13  >>17
 *Episode 14  >>18   *Episode 15  >>20
 *Episode 16  >>21   *Episode 17  >>22【New!!】

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ふたりでいること 【Episode 17】 ( No.22 )
日時: 2017/02/18 14:01
名前: はるたに

     【Episode 17】





「幸せそーだな」

 笑い半分、呆れ半分の声で隼に言われた。なつきはそっぽを向き、唯はむふふと満足げに笑う。

「うっさいな」
「美味しかったよ、バニラ味!」
「なに食ったんだよ」
「アイスだよ、ハーゲンダ〇ツ!」
「はっ、ずりぃ! 俺も食いてえ! 今日の帰りに食いに行こうぜ!」
「帰りは唯とふたりきりでパイゼなんで」
「ずりぃ!!」

 ずるいばっかかよ。
 8月20日の正午。
 霧ッ乃中に在校していたとき、仲のよかった先生に昇降口を開けてもらって、なつき、唯、隼の三人は、校舎内に入っていた。音楽室に向かいながら、パイゼに行く行かないのことで揉めていると。
 遠くから複数のメロディが重なり合い、三人の鼓膜を震わせる。

「お?」
「真面目にやってるみたいだな」
「今年の3年は、あたしらのときなんかより、よっぽど真面目らしいよ」
「今年の3年はすげーなー」
「私たちがはっちゃけ過ぎだった、っていうのはあるよね……」
「あたしら、はっちゃけ杉田玄白」
「それは考え杉田玄白だろ」
「誰も回収してくれないよ、それ」

 音楽室はどんどん近付いてきて、合唱もどんどんは迫力を増してくる。
 とうとう音楽室前に着くと、ちょうどぴたりと演奏が止まり、先生の話し声が聞こえた。ソプラノのピッチが下がり気味だったから、そこを指摘されているようだった。
 先生の声がまだしているのに、隼は躊躇なく扉を勢いよく開けた。

「こんちゃーっす!」
「ちょっ……!?」
「隼くっ……!?」

 あまりにも予想外な行動に、なつきと唯はセメントで固められたように、硬直してしまう。
 だが、瞬く間もないほどの勢いで。

「うっさいわねェ!!」

 怒声が飛んできて、三人の肩はびくっと跳ねた。
 すごい剣幕でこちらを振り返ったのは、霧ッ乃中合唱部の顧問・伊月先生。吊り目がちな目をさらに吊り上げ、こちらを睨みつけている。
 だが、隼の姿を確認したからか、落胆したようにため息をついた。

「あんただったの……怒鳴って損したわ」
「久しぶり、せんせー!」

 まるで同級生と接するときのような軽さで、隼はあいさつすると、ずかずか音楽室に入っていく。そんなようすに、部員たちはくすくすと笑い声を立てていた。
 このやりとりは、現役時代はよくあったことだった。伊月先生のお気に入りの生徒は、たいていなにをしても許された。特に男子。いわゆるひいきだが、それに口出しする生徒はいない(口出ししたら最後、どうなるか……考えるだけで恐ろしい)。

「あら、なっちゃんと唯ちゃんも! はやいわねえ」
「練習聴いてみたいなって、思ったので……」

 唯が蚊の鳴くようなちいさい声で言うと、伊月先生は笑顔で手招きしてくれた。ここで、ようやくふたりは音楽室に入る。
 割と気さくな先生だし、ユーモアもあるひとだ。だが、よく分からないところに怒りのスイッチがあるため、いつ逆鱗に触れるか分からない。それが原因なのか、大半の生徒は、伊月先生と接するとき、かなり腰が低くなり、おそるおそる会話をする。

「向井先輩、平井先輩、吹屋先輩、こんにちは!」
「「「こんにちは!」」」

 なつきたちが全員、音楽室に入ると、部長が元気な声ではきはきとあいさつをする。それに続くように、部員たちもあいさつをしてくれた。三人はにっこりして、それに返事をする。

「「こんにちは!」」
「ぃよっす!」
「普通にしろや」

 なつきが肘で小突くと、隼はへらへら誤魔化し笑いをする。そのようすに、部員はまた、くすくすと笑みをこぼした。
 音楽室のすみにみっつ、椅子を並べて座り、集合時間になるまで、三人は後輩たちが指導を受けている姿を見ていた。

ふたりでいること 【Episode 18】 ( No.23 )
日時: 2017/09/02 01:22
名前: はるたに

     【Episode 18】





 布団にもぐりこんで、もうすぐ1時間が経つ。
 霧ッ乃中で演奏会について、ひととおり説明を受け、唯や隼と別れ、風呂や夕食を済ませ。
 いつもなら、もうぐっすりの時間なのに……。
 目はぱっちり。
 胸はもやもや。
 眠れない理由は、もう分かっている。いつものことだから。
 すこしでももやもやを拭いたくて、なつきは布団から出、薄いカーテンの隙間から、空を眺める。 雲が多くて、星空はまったく見えない。見えるのは、三日月の端っこと、そこから漏れる細い光だけ。
 ちゃんと月が出ていないせいか、気のせいなのか。家のまわりも、普段よりいくらか暗く感じた。
 鈍色をした雲のおかげで、なつきの心はますます沈む。気晴らしのために、外を見たはずなのに。
 カーテンを閉め直すと、なつきはふたたび、布団にもぐる。
 ぺらぺらのタオルケットが、なんだか頼りなく感じる。
 胸のなかをぐちゃぐちゃに掻き回されている感じがして、タオルケットをちからいっぱい握る。

(…………また、会えない……)

 体中の血の温度が上がったみたいに、からだの内側を熱が駆け抜ける。
 なにか詰まったみたいに息が苦しくなり、胸をおおきく上下させながら、強くタオルケットを握る。

(今度はどれくらいかな)

 1ヶ月? 2ヶ月? もっと?
 ばさっと頭からタオルケットをかぶり、ちいさく吐息を吐く。
 まっ暗な視界。

(駄目だ、こんなの……)
「ぶはっ」

 勢いよくタオルケットを蹴飛ばし、からだを起こす。

「なに考えてんだろ……」

 こんなこと考えたって、唯に会えるわけでもないのに。
 ――結局、眠りの世界に落ちたのは、朝日が見え始めた頃だった。

   〇

「おめでと、唯ー!!」

 勢いよく飛び込むと、唯はぎゅっと強く抱き締めてくれた。なつきは唯の首元に、ぐいぐいと顔をうずめる。

「ありがとう、なっちゃん!」

 なつきの頭に、唯の頬が押し付けられる。頭上から降ってくる唯の声は、泣きそうに湿っていた。唯の背を、子どもを甘やかすようにとんとん、とたたく。

「えへへー、受かってなによりだよ〜」

 唯はなつきから離れ、ふわっと愛らしい笑顔を浮かべた。
 ――私立推薦受験の結果発表後。
 部活を既に引退したふたりは、合格していた唯を祝うため、唯の家に来ていた。

「これで念願の栄黎生だね!」
「うん……よかったぁ……」

 心の底から安心しきった彼女は、とうとう泣き出してしまった。ちいさい子どものように、大粒の涙をぼろぼろ流しながら、よかった、よかったと声を漏らした。

「もう、そういうのは封筒開けたときにやりなよ」

 指で涙を拭おうとする唯を、なつきはぎゅっと力強く、しかし壊れものを扱うように優しさを込めて抱き締める。唯は、なつきの背に腕を回し。

「だって、なんか……なっちゃ、ん、がいると、安心、しちゃって……」

 しゃっくりのせいで途切れ途切れになりながら、唯はそう言った。なつきの胸に顔を押し付けながら、唯はまだ泣き続ける。

「もう……子どもじゃないんだから……」

 艶やかな唯の髪をなで、なつきは呆れ半分で笑った。
 子どもというワードに反応したのか、唯はバッとからだを離し、ぷうっと頬を膨らませた。目も耳もまっ赤。

「子どもじゃないもん!」
「ぶふっ……余計子どもみたいっ」

 思わず吹き出すと、欲しいものを買ってもらえなかった幼稚園児みたいに、彼女は腕をばたばたさせた。

「子どもじゃないってば!」
「はいはい、分かった分かった」
「分かってないでしょ!」
「分かったってば、小学生」
「私は中学生!」

 むきーっと歯を食いしばる唯に、なつきは悪意を込めて。

「こんなくだらないことでムキになる時点で、小学生同然だわ」
「もう! こんなこと言うためになっちゃんは来たの!?」
「えー、それは違うよー。英黎合格おめでとー。ってことでご飯作ろう」

 するりと唯のわきをすり抜け、なつきはキッチンに足を運ぶ。3年間、唯の家で何度も料理をしたなつきは、何がどこにあるかなんてすべて分かっていた。
 唯が後ろでぶつぶつ言っているのを聞こえないふりして、慣れた手つきで食材を取り出し、彼女の合格祝いを作る。
 とびきり豪華なのを、あげなくちゃ。

ふたりでいること 【Episode 19】 ( No.24 )
日時: 2017/09/03 14:01
名前: はるたに

     【Episode 19】





 案の定、霧ッ乃中合唱部訪問以来、唯とは会えていなかった。
 10月に入り、師走橋高校の文化祭が近づき始め、準備に追われている頃。

「違う! 違うんだってば!」

 顔をまっ赤にして、詩紗から慌てて携帯を奪い取る。屋上に響き渡った声に、恋那は耳をふさぎ、くちびるを尖らせる。

「うっさいなあ、なつき……」
「そんなに焦るってことは、やっぱりぃ……」
「ちーがーうー!!」

 どすどす地団駄を踏みながら、なつきは携帯を、スカートのポケットにねじ込む。
 にやにやしたままの詩紗を、なつきは目を吊り上げて睨んだ。

「あんたらね! プライバシーの侵害だよ!!」
「だって、すごーく仲良さそうだしぃ……」
「向井くん? だっけ? 毎日のように連絡とってんじゃん」
「それは……合唱仲間だし……」
「部活内での恋愛、素敵ジャーン」
「あのねえ……。確かに仲はいいけど、男女だからって、必ずしも恋人同士とは限らんでしょ!」
「一理あるかもぉ。……なつきちゃんのことだしぃ」
「待ってどういう意味!?」
「ちょっと三人とも?お喋りもいいけど、作業進めてね」

 歩み寄ってきたクラス委員長に厳しく言われ、三人は言葉を詰まらせると、

「「「はーい」」」

と声を揃えて、背景の色塗りに戻った。
 文化祭でなつきたちのクラスは、劇をすることになった。
 クラス委員長が各自の希望を聞きつつ、てきぱきと担当を振り分けてくれ、三人は大道具を担当することに。始めこそ、慣れなくて戸惑うこともあったが、数日もすればあるていどは分かるようになり、作業が楽しくなってきていた。もちろん、専門用語はなにひとつ分からないが。
 大道具の大まかな説明が書かれた紙を確認しつつ、慎重に色塗りを行う。色を塗ったり、切った紙を貼り付けたりする作業が多いが、集中することができてなかなか――。

「んで、向井くんって何者よ?」
「ぐッッ」

 不意打ちに、なつきは危うく塗る箇所をはみ出しかける。
 恋那は悪びれるようすもなく、けろっとした顔でなつきを見つめていた。
 さっき携帯を取り上げて揉めていたのは、隼とのやりとりを見られたためである。顔文字を文末に必ずつける隼の癖は、身近な人間なら誰でも知っていることだが、知らないひとからすれば……まあ、カレカノに見えなくもない、のか?

「まだ引きずんの、あんた……」
「気になる」

 好奇心できらきらした目を、こちらに向けてくる。しかし、その瞳からは、ありありと邪気を感じる。

「友だち。以上」
「あんな可愛い顔文字まみれなのに?」
「友だちだってば」
「ほんとかな〜?」
「ほんともほんと。そいつは誰彼構わず顔文字送りつけてくるんだよ」

 なつきと恋那が騒ぎ立てる横で、詩紗が黙々と作業を進める。

   〇

 下校時刻になり、駅で恋那と詩紗と別れたあと。なつきの足は、隼と待ち合わせた、パイゼリアだった。
 今日は授業後に、パイゼリアで夕飯を食べようという話になっていた。 近況報告会ではないが、なつきと隼は、定期的にパイゼリアで集まり、愚痴だったり、相談事だったり、くだらない雑談だったりをしている。そうして、高校のほうでは曝け出しづらい、素の自分を吐き出して、心のおもりを取り除くのだ。
 夏の暑さが遠のきつつある道を歩いていると、ポケットの携帯がちいさくバイブする。見てみると、隼からのLILEだった。

[悪い、やっぱ部活で遅れるm(。>__<。)m 先入っててくれ〜〜(T^T)]

 あー。確かに。漫画でこんなやりとり見たことあるわ。
 文化祭準備中の恋那のにやにやを思い出し、ついそう考えてしまう。だが、そのあとすぐに首を振った。
 こいつが彼氏はない。

[おっけ。先入ってるー]

 適当に返事を返し、店に入ると、もはや知り合いレベルの店員に、席に案内してもらう。
 席に通されると、なつきは背負っていたかばんを下ろし、向かいに隼が座るよう、荷物の隣に自身が座る。そして、ゲームを立ち上げ、イヤホンを装着する。

Re: 【オリジナルGL】 ふたりでいること ( No.25 )
日時: 2017/09/03 14:04
名前: はるたに

お久しぶりです!←

予想していたとおり、PCが動かなくなってしまったため、
更新速度はナメクジ未満になりそうです……。
意地でも完結はさせます……!!!!

なので、気長に更新を待って頂けると幸いです……。

ふたりでいること 【Episode 20】 ( No.26 )
日時: 2017/09/11 01:45
名前: はるたに

     【Episode 20】





 ポイントを使い切ったところで、タイミングよく隼が来たらしい。正面に座る布擦れの音が微かに聞こえ、なつきはイヤホンを耳から外した。
 目の前の隼は、呆れとも、哀れみとも取れるような、なんとも言いがたい表情で、こちらを見ている。

「相変わらず好きだな」
「新しく入れちゃったんだよね、ゲーム。めっちゃ面白いの」
「どれよ」
「このRPG。ストーリーがやばい。語彙力を失うくらいに」
「常にないだろ」

 鉄板な会話で話し始めたふたり。なつきメインで話が進み、いつの間にかなつきが、隼にそのゲームをプレゼンしていた。

「んでね、人類滅亡の危機に立ち向かうわけさね」
「よくある流れだけど、設定面白いな」
「オススメだよマジで」
「家帰ったら入れとくわ」
「フレコちょうだいね」

 そこでようやく、なつきのゲームへの勧誘は終わり、携帯をテーブルに置く。そして、メニューを開くことなく、ベルで店員を呼んで注文を告げると、ドリンクを取りに立ち上がる。いつもの流れなので、隼はなにも言わず、スマホを立ち上げ、そちらに視線を落とした。
 ドリンクを取ってもどって来ると、隼が携帯を覗きながら、すこし口角が上がっているのが見えた。なにか見てニヤついているらしい。よほどイイコトなのか、ドリンクを片手に戻ってきたなつきにまったく気づく気配がない。

(きっっっしょい)

 思わず眉間にしわを寄せ、漠然とそう思う。友だちなのに酷いとか言われそうだが、スマホを覗き込んでニヤつくひとって、客観的に見るとかなり気色悪いし、不気味。
 乱雑にテーブルにコップを置くと、隼が激しく肩を震わせ、こちらを仰ぎ見てきた。

「な、なっ、なっ……!?」
「なににやにやしてんの、気持ち悪い」
「べ、べつににやにやなんか……っていま気持ち悪いっつった!?」

「酷ぇ……」とぼやきながら、椅子に座るなつきに、じっとりした視線を向ける。一方のなつきは、隼なんていないみたいに、なに食わぬ顔でドリンクを口に含む。その反応は予想の範囲内だし。
 スマホをかばんに入れ、隼はため息をついて。

「愛想がねえ」
「あんたに振りまく分の愛想は、持ち合わせてない」
「そういうとこだけどなー……まあいいか」

 がしがし頭をかくと、仕切り直すように隼はテーブルに身を乗り出す。心なしか、目がキラキラと踊っているように見える。なにかろくでもないことを言い出しそうな顔だ。

「なあ聞いた? 来週の土曜、演奏会についての説明あるって」
「えっ、ほんと?」

 ドリンクをあわてて飲み込み、なつきは隼を振り返った。
 なつきの目に映ったのは、さっきとは違って、小刻みにからだを震わせて、笑いを堪える隼の姿。まるで、新しいおもちゃのイイ使い方を見つけた、意地の悪いおとなみたいだ。
 からかわれている感じがして、なつきはどもる。

「な、なによ」
「いや、分かりやすい奴だなーと思って」

 喉の奥でくつくつ笑う隼は、さっきまで気持ち悪いひと扱いされて文句を言っていた隼とは、全然違う。ただ、いまのこいつも、スマホ見てにやにやしてたときと同じくらい、気持ち悪い。
 ふいっと顔を背け、なつきはむずがゆい感覚を押さえ込みながら、ドリンクをぐいっと飲む。
 ぐびぐびドリンクを喉に流し込むなつきに、隼はまた声をかける。

「会えるもんなあ」
「…………なに、悪い?」
「べつにぃ? でも、『説明あるらしい』としか言ってないのに、すげえがっついたよな。ほんとだいすきだな、おまえってば」

 ぐうの音も出ない。

「会えてないんだもんな」

 すべてを見透かすような、ねっとりした言い方が隼らしくなく思えて、たまらなく居心地が悪くなる。
 胸のなかで渦巻く不快感を、誤魔化すために飲んでいたドリンクもなくなり、なつきは空になったコップをテーブルに置く。

「…………うん。先輩たちが引退して、バタバタしてるみたいだし」

 隼とは目を合わせず、コップの底に視線を落としながら、唯とのやりとりを思い出す。
 最高学年になった彼女は、部内で特別な役割を担ったわけではなかった。しかし、元から誰かに、なにかに尽くすことに努力を惜しまない彼女は、最高学年として、部長・副部長のサポートや、顧問との中継をすすんで行っているらしい。おまけに、今度の劇では主役を演じるのだとか。
 忙しなく毎日を過ごす唯に、かんたんに「会おう」なんて言うのは、迷惑だと思った。

「相手を思いやる気持ちは分かるけど、お前はもちっと素直になったほうがいいんじゃね」

 そうぼやくように残して、隼はドリンクを取りに立ち上がる。

「うるさいね」

 もうドリンクバーコーナーに行ってしまった隼の背に、悪態をつく。
 ――いや違う。迷惑になると思ったとかじゃない。


 ――あたしはただ、言えなかった。

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