BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

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Re: 妖と人の子  ( No.169 )
日時: 2019/03/20 09:27
名前: 大寒波

夏目長編(3)109.「夏目話・平安編109」
抜糸の頃には 若い怪我人は少しずつ体力を取戻しつつあった

最初は警戒と用心で沈黙を守った若者も、救ってくれた二人が桑門(そうもん/出家)で口が固く利害も無い事を理解すると 自分の氏素性は明かさないながらも 刃傷沙汰のあらましは ぽつりぽつりと話していた

勿論 若者を見つけてから人事不省の間に、主従は 考え得る限りの影響を 鑑みて(かんがみて) 近隣で押込みや盗賊の事件も 噂も無い事を確認している
見るからに貴人然とした者だが人はどんな事情を抱えているか見た目では分からないのだ

また若者の太刀には血脂が付いておらず誰かを害した様子も無かった

◇◇◇

話し続けていた夏目が 少し間を取った すると聞き入っていた太郎君が 疑問を口にする

「そこまで頑なに素性を隠す必要があったのでしょうか」
それは尤もで 恩人に対し名乗らぬのは礼儀に反する事である

それに対し夏目は
あったのでしょう と静かに答えた


衣類持ち物を見るに 身分有る裕福な者が 刀剣を持ち出す闘争の果てに
人に追われる事になる事情とは何か、それはたぶん金で手に入らぬものに因るのだろうと主従で察していた

Re: 妖と人の子  ( No.170 )
日時: 2019/03/18 19:22
名前: 大寒波

夏目長編(3)110.「夏目話・平安編110」
こ奴が執着する 金で購えぬものと言えば、と太郎君は沈思黙考する


例えば世に聞こえた名馬などは 金を積んでも手に入らぬ類いだが しかし末弟には 仔馬の頃から手塩に掛けて育てた大事な駿馬がいる
他に名馬を欲っして争いまで起こす動機とは考えられなかった


では他に何が、 そこで長兄ははた と気がついた

  「女か… 」

  鍼医は頷いた。

「あの日三郎君は 或る女君を連出しに行ったのです」

当時 下級貴族の男が恋焦がれる上級貴族の女を 思い余って拐って逃げるという恋愛沙汰の最たる行動があり この身分違いの駆落ちの事は
『女を盗む』と呼ばれていた

姫君を本当に背負って走って逃げる事もあれば 追手が掛かって姫君を連戻される事もあった
当然ながら双方必死である

成るほどと唸り それを兄弟にすら黙っていたのは他に事訳(ことわけ)でもあったか と太郎君は思いながら先を促す

盗む相手は普通 その家の娘だが 三郎君の相手は人の妻になっている女君であった

当時 貴族女性は 妻問婚(通い婚)特有の複数の相手との恋愛が可能な時期を経て 相応しい男の北の方(正室)となって相手の家に移り住むと もはや他の男とは恋愛をしない、 という建前になる

Re: 妖と人の子  ( No.171 )
日時: 2019/03/19 16:21
名前: 大寒波

夏目長編(3)111.
「夏目話・平安編111」
そうした女君には 文を贈り逢瀬をするのも一苦労だが 三郎君の相手は少し事情が違っていた
既に父母を亡くし 自分の家を出て 夫が用意した屋敷に女主人として住まっていたのだった

夫はかなり年嵩で 長年連れ添った妻を亡くし その後に 件(くだん)の女君を北の方に迎えるつもりだったが 女御として入内している自分の姫君や 宮中で 官位を持つ息子達を憚り(はばかり) 女君を本邸から比較的近い別邸に住まわせていた

有力者の事実上の正室ではあったが 女君にしてみれば 後ろ楯の父親は既に亡く 生まれ育った母の屋敷を出ていても 夫の本邸には入れずに 宙に浮いた立場である

そこへ 年嵩で行く末が案じられる夫よりも ずっと若く自分を真摯に想い 親類縁者のいる東国へ連れて行き そこで根を下ろす、と 掻き口説く男が現れたら それを頼りにするのもまた無理からぬ事と思われた

しかし夫の方でも 女君にこっそり通う男がいる事に気付いており 女だけの家では不用心だとして警備の者を増やしていた


はたしてそこに 女君を連れ出そうとする男が侵入して 手酷く返討ちに遭った という顛末であった

Re: 妖と人の子  ( No.172 )
日時: 2019/03/20 21:38
名前: 大寒波

夏目長編(3)112.「夏目話・平安編112」
ううむ と太郎君は唸り しかし馴れ初めは 何であったのだろうかと呟く

「女君の別邸があったのは何鹿(いかるが)なのです」
明確な答えに では親類の所へ出掛けた折に その方を垣間見たとかいう事かと得心がいった

そして 夏目が言う所の
素性を隠す必要が有った理由とは、と改めて訊いてみた

「女君の御夫君とは 先の式部大輔だそうでございます」

  「 なに… 」

夏目はこれも簡潔に言うたが 身の毛のよだつ話であった


式部省は 文官の人事を司り勤務評定や 論功行賞を行う
式部大輔(しきぶのたいふ)は儒者のみが任じられる首席次官(ナンバー2)で実質的なトップである
中流の貴族ながら権力は大きい
何と言っても位階六位以下の文官は自由に裁定できるので文官への影響力は絶大であった

その単なる権力者、というだけでは無く 自分達と直接利害がある有力者の掌中の珠を盗むなどとは全くもって考えられない事だった

三年前にはこの家の父もまだ出仕していた
もし 女盗みが成功するか、事が露見していたら 大輔の怒りを買い この家の家人(かじん)も一族も どのような咎め立てを受けどこまで累が及ぶか計り知れなかった 無謀を通り越して自殺行為である

Re: 妖と人の子  ( No.173 )
日時: 2019/03/20 21:43
名前: 大寒波

夏目長編(3)113.「夏目話・平安編113」
思ったよりも深刻な事態であった事に冷や汗をかいた長兄は

何と阿呆なことをしでかす奴か‥

末弟の破滅的行動に慄然としている

しかし いつの間にか不思議にも ぴたりと止んだものだと 皆で話していた末弟の乱れた恋愛沙汰だったが、言われてみればそうした末弟の 軽々しい恋の噂を聞いたのは 三年前が最後だったと思い出す。
弟は弟なりに その人を最後の恋だと 思い定めていたのかも知れないと思った

一方当時の式部大輔は 評判も悪からぬ人物で 意味も無く人事を左右する様な権勢をかさに着た次官などでは 決してなかったが その若い女君には本気だったのだろうと思われた

連れ出しに来た恋敵を 殺すつもりでさえあったのだ 身分相応以上の栄華を誇るかに見えた儒者の大輔といえども 恋う女君の前に常の泰然たる姿を失ったという事なのだろうか

太郎君が 当事者に思いを馳せていると 夏目が言葉を継いだ

名無しだと不便ゆえに怪我人が隈笹(くまざさ)に埋もれていた事から愛宕と呼んでいたと言う

「あの辺りでは隈笹の事を愛宕笹と呼ぶのでございます」

回復してきた怪我人愛宕に寺に来て養生する事を勧めると 暫し考えていたが万が一追手が来れば 寺に迷惑を掛ける事になるが故に 有難い申し出だが遠慮させて貰うとの返答であった

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