BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

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Re: 妖と人の子  ( No.241 )
日時: 2019/07/11 08:31
名前: 大寒波

夏目長編(3)181.「平安編181」初出19.7/8
それにしても これはどうした事だと 太郎君は独りごちた

馬達が親しみの仕種(しぐさ)を頻繁に鍼医に示していた

悍馬(かんば)で 気難しい次郎君の栗毛の乗り馬は 主人以外の者には洟(はな)も引掛けないのである

その悍馬が 蘆毛の前にいる鍼医に 隣の馬房から首を伸ばして頭をひた と肩や腕に押付けたり 鍼医の腰を鼻面で押して 細い躯を揺らしたりしている 何れも親愛行動である

少なくとも長兄は 次弟の栗毛に そんな事をされた例(ためし)がない


何だその様(ざま)は 甘い菓子に釣られて懐くとは 喰い意地の張った馬達め


その光景を眺めつつ太郎君は呟く

飼い馬の中でも 白い老馬は飛び抜けて賢い
その姿からは人智を越えるかの如き印象を受けることがあった

それが鍼医の背に 肩越しに頭を置いて そっと自分の方に引寄せている
隣の栗毛も 鍼医の衣服の袖を軽く咬んで毛繕いの疑似行動である


仲の良い事だ と八つ当たり気味の太郎君であったがしかし おやと首を捻った

先刻同様 鍼医は柔らかく蘆毛の首を撫でていたが 老馬に背を押されて少しずつ馬に近付いてゆく様に見えたのである

Re: 妖と人の子  ( No.242 )
日時: 2019/07/18 23:38
名前: 大寒波

夏目長編(3)182.「平安編182」初出'19.7/8
横合いからは 栗毛も咬んだ袖を軽く引いている

他の馬の高い嘶き(いななき)が聞こえた 上機嫌の時に上げる声である


廏の中を湿った生温い風が すうと吹き通り降雨の直前を思わせたが 外は陽射し眩しい快晴である
鵙(もず)がギィギィーと鋭く高啼きした

太郎君は顔を顰めて(しかめて)いた
何か違和感があった


鍼医は老馬に手を伸ばしていると思しい(おぼしい)が その背は今や 被さった馬の頭や逞しい首や 鼻面に囲まれて 太郎君からは夏目の姿が 確とは見えなくなっていた


首を伸ばして目を凝らしたが その間も鍼医は背を押されて 馬達に近付いてゆく 健脚の鍼医とも思えぬ覚束ぬ(おぼつかぬ)足取りに思えてならない

堪(たま)らず


 「 瑠璃殿! 」

覚えず 大声になったが 構わず飛び出した太郎君は 夏目の腕を取り廏の外に連れ出した


外へ出て陽射しを浴びると 太郎君は詰めていた息を吐いた 再び滝の様な汗を掻いていた

すぐに廏の外壁に設えられた横木に鍼医を座らせる

さぞかし不審な顔をするに違いないと思うたが 案に相違して夏目は黙って太郎君を 見上げているだけである

Re: 妖と人の子  ( No.243 )
日時: 2019/07/13 22:56
名前: 大寒波

夏目長編(3)183.「平安編183」初出19.7/12
汗を拭う太郎君(たろうぎみ/長男)は少々 言(げん)に窮(きゅう)していた

今方(いまがた)の事を 巧く説明する自信が無いのだった 元々 弁舌が巧みな質(たち)では無い

見たままを言うなら 単に人馬が給餌(きゅうじ)を介して殊の外 親しげにしていたというに過ぎぬが 太郎君は そうとは思っておらぬ様であった


この総領息子(跡取り)は所謂(いわゆる)霊力や感応の力などには無縁である その種の力が多少有る弟妹とは違い寧ろ(むしろ)鈍感でさえあるが いざという時の嗅覚が働く


武官としての実戦経験を境に 必要に迫られて身に備わった生き残る為の 直感といえる


先刻は その嗅覚が急を告げるのに 従ったのであった
さりとて 余りに感覚的な事柄を下手に口にするのも憚(はばか)られて 太郎君は口籠(くちごも)っているのである


その太郎君に鍼医(はりい)は畳んだ布を差出すと
黙って 事訳(ことわけ)を話し出すのを待つ様子であった


受取った布で汗を拭うと 持ち主と同じ白檀の香が漂った さっぱりとして人心地がついた太郎君は 漸く(ようやく)口を開いた

Re: 妖と人の子  ( No.244 )
日時: 2019/07/18 22:56
名前: 大寒波

夏目長編(3)184「平安編184」初出19.7/17
「吾が家の馬共を 可愛がってくださっているのですな 菓子など与えて頂いて」

「常の事ではございませぬ 此度(こたび)は朝霧に格別の働きがあったためにございます」

鍼医は小さな声で言うた
飼い主に無断で 大事な乗り馬に餌(え)を与えるなどは無論軽率な事である

しかし咎める気など まるで無かった太郎君は慌てて言を足す

「いえ 貴重な菓子を吾等(われら)の馬に与えて貰うて良いのかと思うたのです もう吾が家では干柿は底を尽きました故」

この家でも干柿を作り 荘園からも送らせているが 来客の多いこの邸では 夏迄に使い切ってしまう

干柿は当時の人にとって間食にもなる貴重な甘味であり菓子(果物)なのだ

また馬の好物は 我が国では人参で欧米では林檎と相場が決まっているが 其々(それぞれ) 甘味を好んでいるに過ぎず 馬は甘いおやつを喜ぶのである


「干柿 でございますか」
小首を捻りながら 懐の麻袋より 橙色の果物を取出した夏目は 蔕(へた)と種を除き幾つかに裂いた物を眼前の大男に 掌に載せて差し出した


いや違う そういう事では
と思いつつも 何となく受取る

 「旨いですな」

Re: 妖と人の子  ( No.245 )
日時: 2019/07/19 00:59
名前: 大寒波

夏目長編(3)185.「平安編185」初出19.7/17
口をもぐもぐさせながら太郎君が長閑な事を言う

「病者に出す物ゆえ 時折酒にて拭うたり 揉んで柔らかくなどしております」
鍼医が しかつめらしく答える


業務上の説明等は 能弁にすらすら語れても 肝腎な話になると 口下手の二人故に干柿を介して何やら おかしな事になっている


馬に与えた物も蔕(へた)と種を除き 裂いてあった事を 美味な果実を食べつつ太郎君は思い返す それは夏目が馬の扱いを心得ている事を示していた


馬は意外にも 消化管が強くは無い あの体格で胃の容量は10L前後であり 同じ草食動物の牛は最大の第1胃だけで150L前後なのに比すると非常に小さい

つまり馬は餌を少量ずつ長時間摂取するしかないのだが 殊に乗用馬は激しい運動後には食道梗塞(喉つまり)を起こしやすいので 飼料は小さくして与えるに越した事は無いのである

先刻の夏目が それを弁えて(わきまえて)いた事を馬とは切離せぬ生業の武官は好ましく思うたのであった


干柿を良く噛んで食べながら思索を廻らせる太郎君を前に 一方の夏目も足許に視線を落とし 考え事をする様子である
やがて夏目は 明るい陽射しの中で顔を上げた

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