BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

妖と人の子
日時: 2018/08/29 06:25
名前: 大寒波

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです
現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります

失礼ながら書込みは遠慮します

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Re: 妖と人の子  ( No.72 )
日時: 2018/09/13 01:00
名前: 大寒波

夏目長編(3)12.
「夏目話・平安編12」  一触即発の事態は避けられたものの 両者の睨み合いは続いていた

若者は妖物から気を逸らさず集中し、妖はその者から目を離さない
膠着状態のまま 夜も明けるかと思われた頃
街の方から数人の男達が手に手に松明を持って現れた。
若者が向かっていた屋敷の主が 到着が遅いのと落雷騒ぎがあったのを案じて迎えを寄越したのだった

「休戦だ 其方の迎えが来たようだ」
若者を見知っているらしい武装した男達が 此方に駆けて来るのを見やって 妖物が言う どことなく ほっとした様子が見えなくもない

「この姿は常人の目には見えん 決着が着くまで 私は其方に付いてゆくとしよう  私の事は
『むら』『ぶち』或は
『ふ』とでも呼ぶが良い」

「…では私の事は 果樹の棗なつめ、の字を変えてみましょう『夏目』と
お呼びください 」
こちらは溜め息混じりで応える  近づく足音の方に向けた顔は やはり表情が無かった


口々に無事で何よりと 挨拶をした男達に 荷を預けて手を取られて 夏目は歩いている

首の切り傷のわけを訊かれた時に盗賊から被ったと話すと 驚いた男達の頭領が 自分が背負って連れて行く、と申し出たが 即座に断って歩き出したのだった

Re: 妖と人の子  ( No.73 )
日時: 2018/09/18 00:05
名前: 大寒波

夏目長編(3)13.
「夏目話・平安編13」
人に負ぶわれるなどは
流石に面映ゆく 承知できかねたらしい

男達は目的の屋敷の警備であったが やはり顔見知りで 夏目は自分の手を取り誘導している 頭領と話をしている

既に 先触れを一人走らせて、賊の襲撃に遭い傷を負った為 今夜は挨拶だけで失礼すると 屋敷の主に伝えてある


それは主人も末の姫様も さぞかしがっかりなさる でしょう

頭領は時折 自ら手当てした夏目の首に巻いた布に血が滲み拡がるのを横目に見ては 眉をひそめている

出血は多くとも 傷自体は浅く 仕事に支障は無い様に思えるが 流血そのものが問題なのであった

平安の世では災難や怪異、悪運や悪霊を避け 身を守り穢れを避ける為にと 沢山の制約や行事 禁忌の決まり事があり それらを占で判定し対策する事が日常なのだったが
血の汚れは最も忌むべき穢れの一つであり 占卜を司る者に その穢れがあってはならない
論外なのだった



深夜の客間の御簾から
灯明の灯りが洩れ 差す影は 時折り風に揺らいでいる 楽器を抱えた人影は 音を抑えて奏している様子であった


楽曲ではなく 幾つかの節を繰返し ゆったりと爪弾いている

Re: 妖と人の子  ( No.74 )
日時: 2018/09/18 00:10
名前: 大寒波

夏目長編(3)14.
「夏目話・平安編14」
撥(ばち)を用いず五指で奏でる琵琶の抑えた調は 室内も表の廊下も そして庭を越えて 池を挟んだ母屋にも波紋の様に 静かに広がってゆき 偏った気と空間を鎮め 浄化してゆく

夜の事とて 細く絞った清涼な音色に、母屋の女君達の部屋では 思わず御簾をかき分けて耳を傾ける女房の姿もあった

晩夏に涼を呼ぶ音色は 流水を思わせる
奏者の力量が察せられた。

とはいえ 客間で琵琶を抱えた夏目は 夜中に伊達や酔狂で鳴り物を奏しているのではない

屋敷に漸く到着して 穢れを持ち込まぬ様にと 玄関の外から 取次ぎの女房に訳を話して帰る心積りであったが そうは問屋が卸さなかった


夏目が占卜や鍼医として訪れる、個人の依頼主の一人である この家の主とは付合いが古い
特に重篤の末娘を回復させてからは この家の家人の病の治療にも 吉凶を占卜で判じるのにも 度々呼ばれている

自分は怪我を負い 血で汚れたが故に占卜は出来かねる また後日埋め合わせをする、と固辞する夏目に対して この主が

それならば 今回は占卜は取り止めとした上で 家人の体調をみて煎じ薬の処方等を頼みたい と強く引き留めたのだった

Re: 妖と人の子  ( No.75 )
日時: 2018/09/18 01:01
名前: 大寒波

夏目長編(3)15.
「夏目話・平安編15」 
古式の 太占(ふとまに)や亀卜(きぼく)は 行うのに数日間を要し その間は依頼先で起居するものなのだが 今回も予定通りに三日間の逗留を、と主は言い張って聞かない。

押問答の末に折れたのは夏目の方だった

玄関先で血が付いた狩衣を脱ぎ 清潔な上衣を肩に掛けると 取り出した琵琶を一通り掻き鳴らしてから屋内に上がり 懐から穀物を取り出し 土間に撒いた   打撒(うちまき)という魔除けである


時々立ち止まっては 琵琶を爪弾き 打撒をして
流血で乱れた気の歪みを整え 浄化しながら邸内を進んで行く 

そうして 用意された客間に 夏目が辿り着いた時には深夜をとうに過ぎていたが 落着く間もなく 部屋の中央に立って 同じ手順で歪みの修正と浄化を行う

それらを終えた夏目は
漸く 畳敷きの席に腰を
下ろし 琵琶を傍らに置いたかと思うと すぐに小さな寝息を立て始めた

Re: 妖と人の子  ( No.76 )
日時: 2018/09/19 07:37
名前: 大寒波

夏目長編(3)16.
「夏目話・平安編16」
琵琶の音が止んで程なく白湯を運んできた女房は すぐに人を連れに奥殿へ戻って行った   夏目がどう声を掛けても目を覚まさなかったからである

床に運んで 衣を掛けた夏目を残して 灯りを消した部屋は静寂に包まれる

やがて邸内からも灯りが消えて 静まり返った屋敷を濃い闇が覆った


離れの客間には 庭に張り出した池や月を眺めるに好い板間の縁台が設えられている

その広い縁台に 白銀の体毛を靡かせた獣の妖が 音もなく降り立つと客間の中へ入って行く

部屋の空間の半分位を占めるほど巨大な獣である

奥の寝室には 夏目が寝かされていたが 目を覚ます様子は無い

鋭い爪が生えた丸太じみた肢が 床の上掛けの衣を踏みそうな程近付いても身動ぎ一つせず 起きる気配も無かった

獣の大きな頭部がついに 真上から肩口を覗き込むと 漸く横向きの小さな顔が見えた


白い。さっきにも増して病的に白く血の気が無い
まさか息をしていないのでは無いかと 妖物は驚いて 顔を夏目の口許に近寄せて 呼気を確かめてみると 薄い目蓋を ぴったり閉じた青白い顔からは
微かに吐息のそよぎが感じられた

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