BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

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Re: 妖と人の子  ( No.214 )
日時: 2019/05/15 22:34
名前: 大寒波

夏目長編(3)154.「夏目話・平安編154」

やはり思い過ごしであったかと 妖物は直ぐさま口を結ぶと 眼を伏せて瞬きを繰り返した

薬湯から湯気が上がり 部屋には特有の匂いが漂う


黙りこくっているのは 鍼医も同じだが その人間はやがて調剤の手を止めて溜め息を吐くと 口早に告げた


「…如何にも その通りにございます 余りに身体心神に 常に無い不具合がみえました故 先ずは緊張を和らげるべく管弦を奏してみた次第でございました」


その言が 終わるか終わらぬかの内に 室内に突風でも起きたかと感ずる様な空気の波が どうと押寄せた

夏目が はっと振り返ると白銀の妖物が 巨大な躯から ごうごうと吹きつける様な熱を発していた

離れていても分かる体温に鍼医は 一瞬眼を見開いたが すぐに平素の無表情に戻り 道具を置いて妖物の許へ近づいた

天井から見下ろす妖の真下に立つ

「もう薬湯の用は無いかと存じます 復調なさって何よりでございました」
顔を仰向けて 夏目が言うた

Re: 妖と人の子  ( No.215 )
日時: 2019/05/17 15:27
名前: 大寒波

夏目長編(3)155.「夏目話・平安編155」
常態の 燃える様な躯の熱を発した妖物は 天井に支え(つかえ)そうに 巨大な体躯を伸ばし鼻先を ふんと反らした

「ふむ その様な珍しげなもの 飲んでやらぬ事も無い」
反りくり返って言う
すっかり元通りである

その温かな躯から 再び立上る匂いがあった
通常の妖物とは また違う匂いである

「酒と海の匂いが 濃く致します」

まるで素戔鳴尊(スサノオノミコト)の様でございますな  夏目が呟く

ふん あの様な理不尽な狼藉などするものか 妖物が言う

「海上の月影を蹴散らしながら数十里ほど 海原を跳んでは駆けてゆき
月見の宴に加わっては 美酒をたらふく呑んだのだ」

悪酔いした事には 口をつぐむ。

「成る程 風雅な酒宴でございますな
私はもしや むら殿は何者かとの交戦後 直ぐ(すぐ)であったのではないか と思うておりましたが」

   ‥何故か
 妖物が慎重に訊く

「戦から帰還した僧兵の中には 今方(いまがた)の不調であったむら殿と
似通った様相を呈する人が居たのでございます」鍼医が答えた

Re: 妖と人の子  ( No.216 )
日時: 2019/05/18 14:22
名前: 大寒波

夏目長編(3)156.「夏目話・平安編156」
「躯は強張り冷えて 食は進まず 且つ巧く語れず
武者震いが治まらず 落着き無く
また負傷の自覚薄く
鏃(矢じり)が刺さったまま気付かぬ者とておりました」

妖物は黙って聞いている
「而して(しこうして)また 獣は獲物や他の獣と争う時に爪牙や角が折れ刺さり 死ぬ事もございます

殊に巨体の獣は それら異物が 身体に喰い込んでいても 傷の箇所が判然とせず 衰弱する事がありますゆえ

今方のむら殿にも 身体に異物が 残ってはいまいかと 探った次第でございましたが 怪我も無く良うございました」

鍼医は説明を終えた


 大男 総身に知恵が回りかね 式の悪口を言われた様な気もするが それは不問に付しておく


それはともかく 自分が船を漕いでいる間にも この者は 長大な四足の肢を撫で摩り 負傷や異物の有無を確かめ続けていた事を妖物は思う
朝から相当な労力を費やしての診立てであった


そうしている内に 食物の事を白銀の妖物は 思い返した

夏目が出して来る食物は 無論食べ残しでは無い

膳の内で 滋養の有る物
美味な物を選り分け 取り置き そして食べ切れぬから喰わぬかと いつも言うて差し出すのだ

Re: 妖と人の子  ( No.217 )
日時: 2019/05/20 20:46
名前: 大寒波

夏目長編(3)157.「平安編157」初出19.5/18
自分は何故 この者がこそこそと 締め出しに掛かるだなどと考えたのだろう
この者の 一体何を見ていたのか、


  …節穴は 私か


用具を取片付ける鍼医の後ろ姿を妖物は ぼんやりと眺めた
それが徐に(おもむろに)立ち上がって角樽の薬湯に巨大な鼻先を近づけて匂いを嗅ぐ

そして一息で飲み干した

思わず無言になった妖物に 美味なものではございませぬが などと鍼医が言う

甘味を付けて多少は飲み易くなってはいるが酷い味である


そう言えば この家の女の童は 薬湯を平然と飲んでいた事を妖物は思い出す
幼児が苦い物 酸い物を嫌うのは有毒物や腐敗物から 自分を守る為の本能である それを堪えて生き延びた 幼い身の上をふと思った


正面の鍼医に眼を据えると口を開く

「闘いの後、というわけでは無い 守護が極めて堅牢なこの邸に 妖物の私が進入するにあたって 如何なる衝撃損傷が あるものかと危惧し 身構えた為に 身体に影響が表れたものと思われる」


妖物が訥々と語った
早とちり者の 取越し苦労かの様で 白状したくは無かったが 懇切な診立てを受けてまでも しらばくれるわけにも行かなかった

Re: 妖と人の子  ( No.218 )
日時: 2019/05/20 20:21
名前: 大寒波

夏目長編(3)158.「平安編158」初出19.5/20
それでは うっかり外出した後で 真に(まことに)この邸から締め出された と思っておられたのでしょうか

鍼医が言わずもがなの事を訊ねた

  「 ………。」


「この邸に戻って来るにあたって 弾き飛ばされ 妖力を失い 体躯は縮み四散するかと早合点して
身を固くして意を決して おいでだったのですか」

答はなく 眼を逸らし気味で もぞもぞと身動ぎ(みじろぎ)する白銀の妖物のすぐ傍らに いつの間にか人の子が立っていた

馬手(右手)を上げて 白い大きな耳の後ろに そっとのせた


 莫迦な方で ございますな…


酷く優しげに 夏目が言うた



年経た堂々たる大妖が
元服から 幾らも経たぬ小倅(こせがれ)に莫迦(ばか)ですなぁ等と言われていた頃、


この家の総領息子(跡取り)は昨夜から今朝方に渡っての騒動の始末と対策に 走り回っていた


先ずは この家の主たる父君の所へ行き
三年前の刃傷沙汰に端を発し 今朝の一触即発の騒動に帰結した三郎君(三男)の事件のあらましを告げた

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