BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

妖と人の子
日時: 2019/01/03 08:23
名前: 大寒波

[夏目友人帳]二次創作話
先生:斑と夏目の ほのぼのBLです

現在、短編[2話]中編[2話]長編[2話]があります
これらは全て原作に準拠した内容で完結しております

 現在更新中の
「長編(3)」
※[レス61が第1話〜]は
平安時代を舞台として
夏目は盲目で在野の鍼医 (当時の漢方医)、
先生(斑)は斑の読替えの 『むら』と呼ばれている設定で展開しております



失礼ながら書込みは遠慮します

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Re: 妖と人の子  ( No.246 )
日時: 2019/09/12 02:38
名前: 大寒波

夏目長編(3)186.「平安編186」初出'19.7/18
それを潮(しお)に太郎君が問うた

「先刻の事ですが 馬共に、 …何か粗相でもあったでしょうか」

敢えて(あえ) 何気無く訊いてみたが 鍼医はややあって問い返した

「何事か おかしな様子を御覧になったでしょうか」

あるいは と太郎君が曖昧に応じると 鍼医は嘆息して話し始めた

「…間も無く風や辺りが 乾く時季に入ります
この時分が 私はあまり得手ではございませぬ」

もう暫くすると 野分が吹き来るでしょう

声は細く呟くようである


珍しく歯切れの悪い夏目の話は意味合いが分からぬ事だったが 太郎君は黙って耳を傾け野分(のわき/秋の大風,台風)が吹くとは 一体何のことであろうかと考えを廻らせた

「聡い馬達は 悄然(しょうぜん)とした私を慮って(おもんぱかって)傍に寄り来てくれたのでございましょう」

馬は賢く鋭いものでございますゆえ

小さな声で結んだ夏目は いつになく 寄る辺無く幼けなく(いとけなく)見えた

眉根を寄せてこの様子を見下ろしていた太郎君は しかし 意外な事を言うた

「そう言えば先刻 飼い葉も与えておられましたが あれも旨そうに食んでおりましたな」

Re: 妖と人の子  ( No.247 )
日時: 2019/07/21 17:20
名前: 大寒波

夏目長編(3)187.「平安編187」初出19.7/21
少し顔を上げた夏目が 小さく返答を寄越す

「あれは莫告藻(なのりそ/ホンダワラ)にございます この時分には馬達の身体に良い作用をもたらすものなのです」


「ほう莫告藻ですか 父が受領(ずりょう)として 吾等を伴い 任地に赴いておった折に 東国にて良く喰うたものでした 旨くて滋養があるのでしたな」

太郎君が 懐かしそうに語ると 鍼医は頷きながら続ける


「発汗が増すこの時分は 馬には塩が不足しがちですが この藻の乾物はそれを補い 更に必要な滋養を摂ることができます」


莫告藻(なのりそ/ホンダワラ)は古代より餌不足や弱った馬の 特効薬的な飼い葉として 神話で名高い神馬藻の事である
現在でも海藻ミールなる 飼料に使われている

日本各地の沿岸でよく見られる海藻だが 肥料とも食用ともなり またこれを常食するウニもいる
古代から人も馬も野菜もウニも養う 有難い海藻なのである


京(みやこ)から 程近い磯辺にもよく生えている、鍼医が話すのを聞いた 太郎君が

「おお それでは直ぐに運ばせて餌に出来ますな」

「飼い葉に混ぜて与えると毛艶も良くなるなどと申します」

Re: 妖と人の子  ( No.248 )
日時: 2019/07/28 12:48
名前: 大寒波

夏目長編(3)188「平安編188」初出19.7/21
真面目くさって答えた 鍼医の顔を 太郎君がそっと覗き込むと 先刻の寄る辺(よるべ)ない印象は影を潜め、常態の冷ややかさが戻っていた

これを見て取った太郎君は内心 胸を撫で下ろす


宮廷に出仕する身に 似つかわしい 気の利いた洒落た会話などには とんと縁の無い太郎君であるが

聡明且つ俊秀(しゅんしゅう)の若者故に声に出して静かに話をする事 そのものが 不調ある者を落着かせ 不安を和らげることを知っていた

それは世間話や たわいない話で構わないのである


「東国で食していたとは どの様にしてでございますか」

「確か冬に採った生の物を湯がいて羹(あつもの/汁物)に入れたり酢で絡めたりしていた様な」

ああ あれは腹持ち良くさっぱりして旨かったと 太郎君が往時を思い出しながら答えると
医食同源が基盤たる鍼医の夏目は興味を惹かれたようである

その様を太郎君は にこ と笑んで見ている


先頃の夏目は 常に無く物悲しい様子に見えたが
恰も(あたかも) 身内とはぐれた幼子かの様に思えてならず

典型的長男気質の太郎君は居ても立ってもいられぬ心持ちになったのであった

Re: 妖と人の子  ( No.249 )
日時: 2019/07/31 00:21
名前: 大寒波

夏目長編(3)189.「平安編189」初出19.7/30
野分の話は さっぱりだったが 太郎君はそれを胸の裡(うち)にしまい込んだ 生憎(あいにく)己には解らぬ事であったが 誰ぞ智恵をもつ者がいるやもしれんなどと考える


そう言えば この方は家人の話をしたことがあったろうか、とふと思うた

「瑠璃殿は 御兄弟はおられますか」

「……いいえ 末息子の私の上に三人おりましたが 皆みまかっております」

夏目が答えた 感情の見えない顔であった


「そう、でしたか…… お互いさびしいですな……」

太郎君が 喉が詰まったような声で言う
はっと夏目が顔を上げた


「 本当に…… 」

声は風に紛れるほどに 微かだった




待っていた従者が来た所で太郎君が話を再開する
夏目には、父から聞いた今朝からの賓客達の動きとこちらの対策を全て伝えた

すると夏目は 溜め息でも吐くかと思いきや 俯いて思案に暮れる様子をみせた
鍼医にも あの泥酔の客が昨夜の行状を仔細(しさい)に覚えていたのは慮外であったらしい やがて顔を上げて頷いた

「顔を合わせるのは避けるべきでしょうな 是非もない事にございます」
それでは仰る通りに、と鍼医は腰を上げた

Re: 妖と人の子  ( No.250 )
日時: 2019/09/04 22:43
名前: 大寒波

夏目長編(3)190.「平安編190」初出19.9/4

部屋に戻る夏目には従者を付き添わせる
では後程また、と 物陰を伝いながらも足早に 母屋(もや)へと向かう二人
を太郎君が見送った

珍しく蝙蝠扇で鍼医は面(おもて)を覆っているが 太郎君が頼んだ事である 片手が塞が
るので宮中でも無ければ 夏目は滅多にせぬ所作(しょさ)ではあった
何しろ邸内の何処に 少将の配下が潜んで見ているか分からぬのである


今現在考えるに 招待客が配下をあちこちに潜ませ覗き見や情報収集とは何事か、人の家で何を我が物顔に振る舞っているのだ などと感じもするが こればかりは咎め(とがめ)られないものなのである
宿泊中の賓客(ひんかく)であるから こうした行動を妨げがたいのでは無い 恋情ゆえのこうした行為はどの階級でも普通に行われていた

心惹かれている女の家屋敷の周囲を従者がうろうろして 時には邸内にまで忍び入って、何とか目的の女の姿をその眼で見て
主人に良い報告をと涙ぐましい努力をする 勿論女の周りの者には我が主人の良い評判を流して貰うのである
そうして目的を果して意気揚揚と帰宅した従者は

『噂通りの美女でありました』
『あれこそ佳人(かじん)というべき御方でしょう』


などと熱心に告げる。 報告を受けて想像を掻き立てられた主の男は自分も飛んで行って 物陰から女を一目見ようと 暑かろうが寒かろうが 何刻でもじっと待つのだ ご苦労な事だがここが肝腎なのである

外で妙齢の女性の顔を見る機会など皆無であるので これらの手順を踏まなければ 噂とは全然違う容貌の女性と相手の閨(ねや)で 大汗掻きながら夜中に対面する羽目になってしまう そんな事態だけは避けたい男達は手間を惜しまなかった

男であれば誰しも身に覚えの有る事ゆえに やめろとは言えぬ次第なのだった。


因み(ちなみ)に夏目が手にしている蝙蝠扇(かわほりおうぎ)は竹骨の紙扇で、扇いで
涼を納る(いる)夏の実用品であるが、木製の冬扇 檜扇(ひおうぎ)は扇ぐ(あおぐ)のには使わぬ装身具である



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