BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

かなしき貴方
日時: 2020/05/15 11:52
名前: 千葉サトエ

 お久し振りにございます。千葉サトエです。長編を書く元気は無かったので、BLの方で短編をまた書かせていただきたく思います。

 今回は、このスレッドに短編を二つ三つ収録する形で行こうかなと思っていまして、読んでくださる方の性癖に刺されば儲かりもん、程度のイキで性癖を曝しています。

 前作の「紅い花〜」を呼んでくださった方がいらっしゃれば分かると思いますが、まともな性癖じゃないです。エロは乗せませんが、う〜んギリ18禁にしなくても許されるよね、みたいなグロがある可能性があります。悪しからず。

 千葉里絵名義で書いているダクファの作品を書く元気がなく、また長らく文章を書いていなかったので、リハビリです。

 大手小説掲示板などには曝せない性癖。ここにBL書き込める場所があって良かった。感謝してもしきれません。

 作品を楽しんで読んでいただけたら嬉しい限りです。

>1 愛しきアナタ

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Re: かなしき貴方 ( No.1 )
日時: 2020/05/15 11:50
名前: 千葉サトエ


1.愛しきアナタ。



「ねえ、修一さん。今日は大変暑くありません? こんな暑いなんて思いやしなかった」

 甘えたような、それでいてどこか僕を責めたてるような柔らかな声が耳元で囁いてきます。女のように長い髪が私の首筋をそっと撫でては離れていく。そのくすぐったさに心地よさを覚えつつ、僕はまるで関心がないように聞こえるよう、注意して言葉を返すのです。

「嗚呼、そうですね。大変暑い。でもそんなに暑い暑いと言うぐらいなら脱いでしまえば良いでしょう。どうせ僕とアナタしかいない」

 僕がそう言ってちらりと彼を見遣ると、後ろのソファで艶めかしい足がおいでおいでをするように私に向けられていました。てっきり上を肌蹴させる程度だと思っていた僕は思わずその足に見入ってしまいました。

 裸になるよりも刺激的な、着物から見えるそのほっそりと美しい足に、思わず変なことを思わなかったといえば嘘になりますが、ちゃんと我慢いたしました。ええ、ちゃんと耐えられましたとも。

「そんな風に足を此方に向けて邪魔をしないでください。僕は今仕事をしているんですよ。また今度、アナタとたっぷり遊びますから」

 そんな風につれなく返してみると、彼は楽しそうに微笑みながらじっと僕を見ているのです。まるで僕なんか少しも眼中に無いような、いつも寸分違わぬ同じ笑顔。まるで作り物じみていて、僕は時折ぞくっと来るのです。

「そうね、確かにその通り。修一さんは偉い児だから、ちゃんとお仕事してくれるのね」

 彼はまるで僕を幼い子供のように褒めながら、そっと頭を撫でに近付いてきては、悪戯に口付けを寄越してくるのです。その口付けの嬉しいことといったら。まるでお預けにされていた好物がぽんと目の前に放られたよう。

 そして、暫くの間、彼はその長い髪を耳やら首筋やらに当てて擽ってきては邪魔をするのです。ですが、その邪魔が嫌だったわけではありません。柔らかな髪に触られるのは決して嫌ではなく、寧ろ幸せな時間でした。

 ですが、そのお遊びも長くは続きません。時計が一時を告げる頃に、彼はふっと邪魔をする手を止めてしまうのです。そして、すっと私から離れると

「私は少しばかり外に出るけど、夕方までには戻るから。安心しておいで。ちゃんと戻ってきますからね」

 そう言うと彼は家を出て行くのです。毎週この日の、この時間になると僕に構うのを止めてふらりと外に出て行ってしまう。長い豊かな黒髪がドアの外に見えなくなると、私は途端に何かがすっぽりと抜け落ちてしまったような虚しさに包まれるのです。

 あまりにいつもの事だから外に女でも作っているのかと思ったこともありますが、どうもそうではないらしい。ただ彼は出かけるたびに、嬉しそうな、私に向けたものとは到底思えない、生き生きとした笑みを浮かべるのです。

 僕は彼に愛されていないのだと暫くして思い至りました。お互い愛し合って、ようやく一つ屋根の下暮らせたと思ったのに。彼はどうも僕を愛していない。本当に愛し合っているのなら、彼はこんなに僕に従順に接してくれたりしないに違いない。それにもし愛してくれていたなら、あの笑顔を僕にも向けてくれたに違いない。

 もしかしたら彼は生来あのように冷たい男なのかもしれないと思ったこともありますが、僕にはどうにも彼はそんな風には見えない。本当に愛している相手には、腹の底までとは言わずとも、深いところまで見せてくれる男に感じていたのです。

 だから、今日は彼の後を付けてみようと思ったのです。一度くらい、彼が毎日どこに通ってるのか見てみようと思っても罰は当たらないでしょう。そう思うと、僕は暫く書斎で彼の足音に耳を澄まして、玄関の開く音が聞こえると、僕もそうっと階段を下り、ドアを開け彼のあとを付けていくのです。

 右に左にと歩き回り、彼は時折思い出したようにふっと後ろを振り返りました。まるで僕が付いてきていない事を確かめるように、じっと後方を見据えてからまたスタスタと歩き出すのです。

 十分ばかり歩いた頃でしょうか、彼がぴたりと立ち止まりました。ようやっと目的地に着いたと顔を上げると、そこは僕の行き付けの歯科医院でした。ですが今日は定休日です。それに、いつもなら歩いて三分ばかりの距離を、彼は何でか遠回りをして十分もかけて歩いていたのです。

 一体全体なぜそんなことをしたのかも、どうして歯科医院なんぞに通っているのかも分からず頭を悩ましていると、中から僕の歯をいつも診てくれているT先生が出てらっしゃいました。

 そして彼の顔をご自身の顔に引き寄せると軽い口付けを交わしたのです。そのときの彼の顔ときたら。まるで乙女のように甘く、艶やかな笑みを口元に浮かべていたのですから、僕は膝から崩れ落ちました。

 彼が愛しい人に見せる表情を知ってしまったのですから。彼が毎日僕に見せていたあの笑顔はやはり作り物だったのです。真に彼が愛していたのはT先生であって、僕ではなかったのです。

 一生妻は持たず、彼と連れ立って生きていこうと誓ったのに。僕は、失恋したのです。薬指に嵌めたきらきらと無闇に光る指輪も、あの頃は嬉しかったのに、今では僕にとっては呪いか何かのように思えてなりませんでした。

 こんな指輪も、約束も、全てが一瞬で無意味なものと成り果てて、僕は確かにこの瞬間死んでしまおうと誓ったのです。確か父の残したピストルが、書斎の引き出しに弾と一緒に有った筈です。

 そのピストルで脳天でも何でも打ち抜いて死んでやろうと思い、家路に着きました。帰りにもう一度歯科医院の方を見ましたが、彼はもうT先生と連れ立って中に入ってしまった後だったのでしょう。周りには誰も居らず、ただ真昼の太陽がじりじりと僕のことを照らしつけていました。

 夕方、彼はいつも通り生き生きとした表情を浮かべながら帰宅しました。そして、数時間もするといつもの作り物めいた笑みに変わってしまうのです。それが今日の僕にとってどれほど辛かったことか。

 僕は、伴侶に失恋したのです。生涯連れ添おうと誓った相手に恋をして、破れたのです。僕が死んだら彼はあのT先生の元に行くでしょう。僕のことを忘れられないまま、年老いて死んでいけばいい。ずっと僕のことを胸に抱きながら生きていけばいい。

 小さな罪悪感と、一生消えない僕の彼への愛が、彼の中に残り続けばいい。そんな非道なことを思い描きながら、僕は今右手にペン、左手で銃を構えています。口の中に銃を突っ込んで死んでしまおうと思います。

 この手紙、いや、遺書を彼に見せないでください。見せたら彼の中での僕が弱くなってしまいます。彼には、悩み続けてほしいのです。自分のせいで僕が死んだのか、と。

Re: かなしき貴方 ( No.2 )
日時: 2020/05/15 12:00
名前: 千葉サトエ


【一話あとがき?】

 1話目、分かる人には本当に申し訳ない話となってしまいました。江戸川乱歩の「妻に失恋した男」に寄せた作品となっております。江戸川作品だいすきです。はい。

 限りなく話しの大筋は似ていますが、全く別のものですし、視点も違います。オマージュだなんて言えない。パロディとも言えない。そんな中途半端な感じです。

 そもそもミステリーじゃないです。最初は乱歩作品に出てきたように最後に少し刑事でも出すかと思いもしたのですが、まあ自殺ですし。刑事いりませんね。

 乱歩ファンに怒られそうでビクビクしながら書きました。文体などは寄せていませんが、いかがでしょうか。結局自殺したのかもわからない胸糞な話になってしまい申し訳ありません。(耽美な話が書きたかったのにな〜おかしいな)

 何話かこういう風に話を続けていくので、読んでもらえると喜びます。久し振りに文章書いたけど楽しかったです。私が楽しいだけの話ですが、良かったら読んでやってください。

 感想とかもくれとは言わない、言わない。

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