複雑・ファジー小説

君を、撃ちます。 
日時: 2018/09/13 16:37
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ

     


                君の手は、とてもとても暖かいね。
         もう疲れたっていったら、君は怒ったりするかな。
               大好きだよ、とってもとっても。


                 だから、ね。

                  僕の、最後のお願いを聞いて欲しい。



―――――――

 ■二年が経ちました。(>>59)
  改めて、更新を開始していこうと思います。ゆったりとした更新ですが、よろしくお願いします。


 □どうも、柚子といいます。普段は別名義です。


 □
 第一話『僕』 >>01-44
 >>01 >>04 >>08 >>09 >>12 >>13 >>14 >>15 >>20 >>23 
 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>31 >>32 >>33 >>36 >>37
 >>38 >>39 >>40 >>41 >>42 >>43

 第二話『私』 >>44-66
 >>44 >>45 >>48 >>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>62
 >>63 >>64 >>65 >>66



 □お客様
 ゆぅさん/風死さん/朔良さん/千鶴さん
 憂紗さん/日向さん/悠幻さん/涼さん
 エリックさん/環奈さん/Orfevreさん
 キコリさん



 □since.20130318〜


―――――――


( 虚空に投げたコトノハ )
( オオカミは笑わない )
( さみしそうなけものさん )

ふわりとかすった花の香 /餡子

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Re: 君を、撃ちます。 ( No.1 )
日時: 2013/12/14 22:10
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ

第一話 『僕』

 雑居ビルが立ち並ぶ空気の汚れた世界に、僕は産み落とされた。僕は望んでいないのに、「母親」役の女性と「父親」役を買って出た男性が愛情の伴わない性行為を行った所為で産み落とされた。その後直ぐに、「父親」は逃げたらしく女手一つで育ててくれた「母親」には感謝している。
 「父親」が居ないお陰で陰湿な虐めを受けているが、別に平気だった。下らないことに時間を費やす「クラスメイト」が可愛くて、それでいて可哀想に感じるだけ。そう口に出したら決まって言われるのが「きもちわりぃんだよ!!」なんて、幼稚な言葉だけだった。

 それが、今までの記憶。これしか思い出すことが出来無い自分がどうしようもなく嫌になったが、外界と積極的に関わろうとしたことは一度も無いから仕方がなかった。お祭りにも、キャンプにも、公園にも遊びに行ったことは無い。僕を仲間はずれにするという行為しか、彼らには出来ないから。

 そんな事を思い出していると、苦しさの中に引き戻された。僕の上半身に馬乗りになり、圧迫された僕の肋骨を気にしない「誰か」は歪んだ笑顔で首を絞め続ける。首に「誰か」の指と爪が食い込む感覚が強まってくる度に、僕は僅かに開かれている気孔から喘ぐようにして息を吸い込む。頭の隅から白くなっていく感覚に、死の恐怖というものが沸々と現れてきた。
 怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い。魚のように口をぱくぱくと開き、少しでも空気を多く吸い込もうとするが空気は入ってこなかった。大きく横隔膜を上下させてから、僕の意識は宙へと飛んだ。


 僕は「誰か」がどうしようもなく怖い。七年前に付けられた「誰か」の指と爪の痕は今も消えないまま、首に巻いた包帯で隠している。昔以上に外を出歩かなくなった僕を「母親」は可哀想可哀想と言って、頭を撫でる。僕に同情はいらなかった。可哀想と言われても、体験していない人間に可哀想とは言われたくない。声も数年近く出していなかったため、声帯が衰退しすぎて声は出なくなった。
 今視界に映っている青空が広がり、柔らかな風が吹いた世界がとても羨ましい。開放されている家の庭では、見たことのない小さな「子ども達」が遊んでいた。背の小ささからして、園児か小学校の低学年あたりの「子ども」だった。その「子ども達」と一緒に遊んでいる「少女」は、見たことがある。

 窓を開け、外の空気をめいっぱい吸い込む。正常に、何も詰まることなく肺に向かう空気を感じながら窓の桟に両肘を置き、「少女」と「子ども達」の笑い声を耳に入れる。久しぶりに聞いた「誰か」の笑い声は、普段は雑音でしかなかったが少しだけ心地が良かった。僕にも居た「弟」は気づけば居なくなり、今は何処に住んでいるのかも分からない。そのため、今庭で遊んでいる「子ども達」くらいの大きさなのだろうかと、自然と想像してしまっていた。

「あっ! 久しぶりっ、××くん!」

 僕の名前を呼んだのか、よく分からなかった。名前の部分だけ外部の力で消されてしまったような、ノイズが入り込んだラジオの様に掻き消される。けれど「少女」が僕の名前を呼んだことに変わりは無かった。返事が出来ない代わりに、七年ぶりに作った笑顔を浮かべ小さく手を振る。それを見て「少女」は不思議そうな顔をしたが、直ぐに笑顔に変わり手を振り返した。
 「少女」は学生服を着ていて、その服の裾を「子ども達」に引っ張られながらまた遊びに戻っていく。僕もたまには外に出ようと思い立ち、病院で患者が来ているような服のままベッドから降りた。必要最低限の運動しかしない足は、全体重を支える際にグラリと力が抜けかけたが無事に部屋から出る。

「××、どこに行くの? ……もしかして、外?」

 階段の下から話しかけてきた「母親」に、階段の柵から少し身を乗り出しこくりと頷く。ゆっくりと不規則なリズムで階段を居り、玄関へと向かう。階段を下りてからは、壁を支えにしないと歩けないほど、足が疲れていた。玄関で黒いサンダルを履き、外界へと踏み入った瞬間に世界が変わったような錯覚をする。
 眩しい太陽が頭や肌をじりじりと焼き、熱せられた部分をふわりと吹いている風が優しく撫でる。家の横にある庭まで、壁伝いに歩いていくと笑い声が一際大きくなった。力が抜け、庭の芝生の上にどたっと膝が折れると「少女」と「子ども達」が驚いたように此方を見る。僕は、力の入らない体をごろんと仰向けにした。

「××くーん……。大丈夫?」

 「少女」と「子ども達」が、僕の周りにやってくる。「少女」のふわっとした茶髪が風でゆれた。「子ども達」は不思議そうに僕の顔を覗き込んだあと、僕が笑いかけると一瞬呆けた顔をしたが直ぐに嬉しそうな笑顔を見せた。
 炎天下の中で遊んでいた「子ども達」の手は、どれも暑く湿っていた。僕の顔や腕は、悴んだときと同じくらい冷たく赤くなっている。それが気持ちいいのか、「子ども達」は仰向けになったままの僕にぺたぺたと触れてくる。

「初めてこの子達と会ったのに、××くん直ぐに仲良くなっちゃうんだね」

 凄い、と笑った「少女」が発する僕の名前が分からないまま、僕も優しく笑顔を見せた。

Re: 君を、撃ちます。 ( No.2 )
日時: 2013/03/18 21:20
名前: ゆぅ

はじめまして@
ゆぅと申します#

急にすみません><

お話、読ませて頂きました#
最初から最後まで引き込まれっぱなしでした。

まだ始まったばかりなのになぜかすごく長編読んだみたいな気分にみまわられます$

書き方も人物に「」がついていて何か言葉には表せない凄さみたいナンが伝わってきちゃいました#


色々曖昧ですみません><


「少女」と「××」そして「誰か」の関係が気になります@


また来させて頂きますね#
でゎでゎ、長文失礼致しました。

Re: 君を、撃ちます。 ( No.3 )
日時: 2013/03/19 12:26
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ

ゆぅさん

初めまして、柚子と名乗る柑橘系です。
「少女」と僕が、第一章のキーパーソンになります、多分。
「誰か」が誰なのかは、作者でも不明ですw

この作品も、多分長編になるので読んで下さっている方々が疲れてしまいそうで怖いですが(苦笑)
謎を広げて、色々と伏線も張って頑張りたいと思います。

Re: 君を、撃ちます。 ( No.4 )
日時: 2013/04/02 16:45
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ

 少しすると「子ども達」は元気良く「じゃーねー!!」と言って、僕の家の庭から出て行った。「少女」は変わらず仰向けになったままの僕の傍に座り、遠くの青空を眺めている。僕は起き上がり、体育座り(三角座りとも呼ばれている)をして「少女」と同じように空を眺めた。真っ白な雲が、高く高く上り青と白の美しいコントラストを作り上げる。仕上げとばかりに数羽の鳥が、雲へ向かって飛び立ちだした。

「××くんは、私のこと覚えてるかな?」

 その言葉を聞いて、僕は「少女」のほうを見る。「少女」は少し戸惑った風だったが、僕に笑顔を向けた。綺麗な茶色の髪に、近所をよく通る同年代くらいの子達が来ている制服。フクロモモンガのような大きな黒い目が、僕の瞳を覗き込む。
 どきっとした僕の心臓は、一気に鼓動のペースを早める。初めての感覚に焦る脳内は必死で落ち着くように信号を出すが、無意味なようで更に鼓動は早まった。意識すればするほど早く大きく鼓動する心臓が主張し、僕の意識を全てそこに集中させる。太陽の熱さとは違う熱が、頭の芯をじわっと溶かすような、そんな錯覚に襲われた。

「……なんて、ね。えへへ、××くんが覚えて無くても無理は無いよね、うん」

 僕と繋がっていた視線を青空へとうつし呟いた「少女」の横顔は、寂しさと悲しさが入り混じり複雑な感情を漂わせる。その表情が僕を申し訳なさに苛ませたが、思い出せないのは仕方が無かった。僕の部屋に、「誰か」を思い出すための道具は一つもないから。
 窓際においてあるクイーンサイズのベッド。丸い形の白いラグに、黒の丸テーブルと白と黒のクッションが一つずつしかない。クローゼットに入っているのは、全て今着てる患者服と同じようなものだけで外出用のものは一つもなかった。それでも、今まで不自由なく暮らしている。

「私、そろそろ帰るねっ。ばいばい、××くんっ」

 立ち上がり駆け出した「少女」の背中は思っていたよりも小さく、僕だけでは支えきる事が出来ない何かがあった。「じゃあね」とも「また今度」とも、何一つ言えない口に、首に、僕はそっと触れる。氷のように冷たいだけの口と首。僕の体の冷たさが、そっと僕の心や全てを縛り付けた。
 僕の心と連動するように集まってきた雲が、雨を降らす。独特のにおいと、僕の冷え切っている体よりも温かい雨粒が直ぐ僕を濡らしていった。道路には水溜が出来て、排水溝へと雨水が落ちていき、木々に雨粒が落ちる。水分を吸いすぎた服は、骨が浮き出るほどに痩せた僕の体にぺったりと張り付いた。今なら流れても可笑しくない涙は、流れない。その代わり、僕の胸が痛くなった。

 ただいまも言わずに、家の中にはいる。ずるずると引き摺った足のせいで、サンダルには芝生が少しくっついていた。びちゃびちゃの濡れ鼠のまま、まっすぐ風呂場へと向かう。母親はキッチンにいるらしく僕には気づかなかった。体に張り付いた服を脱ぎ去り、肋骨が浮いた身体が脱衣所の鏡に映し出される。真っ白な体に浮かんだ青と紫の血管。僕は、僕の身体が嫌いだった。
 服を全て脱ぎ去り、そっと手を首へと持っていく。小刻みに震えだす手で、首に巻かれた包帯の留め具に指をかける。徐々に荒くなる息があの時の事件を思い出させる。「誰か」の手が僕の首を締め上げ、意識を失った記憶。まだ捕まっていないその「誰か」がまたやって来て、今度こそ僕を殺すのではないかと考えながら過ごす日々は予想以上に辛いものだ。

 留め具を慎重にはずし、包帯をとっていく。一日ぶりにみた首にはくっきりと「誰か」の爪痕と指のあとが残っている。目を閉じ包帯を取りきり、タオルを手にとって風呂場へと入った。冷たい体にかけられるシャワーはとても気持ちが良く満たされたが、僕の心は貪欲で何も満たされない。

「××? 廊下濡れてるけど、雨に当たったの? 風邪引かないように、ちゃんと温りなさいよ」

 小さく聞えた「母親」の声は聞き流された。

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