複雑・ファジー小説

君を、撃ちます。 
日時: 2018/09/13 16:37
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ

     


                君の手は、とてもとても暖かいね。
         もう疲れたっていったら、君は怒ったりするかな。
               大好きだよ、とってもとっても。


                 だから、ね。

                  僕の、最後のお願いを聞いて欲しい。



―――――――

 ■二年が経ちました。(>>59)
  改めて、更新を開始していこうと思います。ゆったりとした更新ですが、よろしくお願いします。


 □どうも、柚子といいます。普段は別名義です。


 □
 第一話『僕』 >>01-44
 >>01 >>04 >>08 >>09 >>12 >>13 >>14 >>15 >>20 >>23 
 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28 >>31 >>32 >>33 >>36 >>37
 >>38 >>39 >>40 >>41 >>42 >>43

 第二話『私』 >>44-66
 >>44 >>45 >>48 >>49 >>50 >>51 >>52 >>53 >>54 >>62
 >>63 >>64 >>65 >>66



 □お客様
 ゆぅさん/風死さん/朔良さん/千鶴さん
 憂紗さん/日向さん/悠幻さん/涼さん
 エリックさん/環奈さん/Orfevreさん
 キコリさん



 □since.20130318〜


―――――――


( 虚空に投げたコトノハ )
( オオカミは笑わない )
( さみしそうなけものさん )

ふわりとかすった花の香 /餡子

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Re: 君を、撃ちます。 /保留解消 ( No.20 )
日時: 2013/04/04 13:42
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ
参照: 嗚呼もう。僕の描写を書く時は、辛いなぁ。

 何時もとは違う所。
 一、普段よりきつく巻いた首の包帯。
 二、普段より醜い身体。
 三、普段より白く気味が悪い身体。


 ユニットバスに張られた白濁としたお湯に浸かりながら、僕は僕の嫌いな部分をあげていく。何を考える気にもなれないあの夢のあとに、風呂に入るのは気分が悪かった。あの日の記憶をなくす寸前までの記録。頼んでいないのも知らん振りをして精神的外傷として残された、あの日の記憶は僕を呪っているみたいだ。
 残された傷はいつ何時も僕を監視して、いつかまた殺してやるぞって脅しをかけるような。そうしてまた、僕を見つけて七年前のあの日を再現するループを繰り返す。連れ込まれ、倒され、脅され、殺人未遂に至るループを延々と。

「××ー、着替えと換えの包帯持ってきたから置いておくわね」

 「母親」のいつもの声の後、足音が遠ざかっていくのを聞き水圧におされつつも立ち上がる。およそ十分くらい座っていたため、血が下がっていき目の前がくるりと反転した錯覚に囚われた。“やばい”と思ったときには遅く、頭を軽くユニットバスにぶつけ盛大な音を鳴らし、背中からお湯に浸かった。
 頭の痛みが一番酷かったが、それ以上に視界の治らなさに悶々とする。チカチカと、アナログテレビの砂嵐の中に現れる小さな光が瞼を閉じた状態でも現れ続けた。思わず不幸体質だと、僕を嗤ってしまいたくなった。けれど、嗤いたくても笑顔が出来ない。

 ――感情も、死んだのかな。

 ようやく視覚が正常になったことを確認し、頭の痛みに堪えながら再度立ち上がりさっさと浴槽から出る。風呂場の扉を開けると、程よい涼しさの風が僕の身体を撫でた。桃色になりかけた肌が、その風のお陰で正常な白へと戻る。冷たく、凍てついた印象しか与えない肌へと。
 ぺたぺたと滴る水はそのままにして、タオルを取り髪にばさっとのせる。そのままの状態で――産まれたままの姿で――僕は蹲った。流したくても流れない涙に、叫びたくても叫べない喉に、言いようのない悲しみをぶつけるために。心は涙を流したまま、何事も無かったかのように僕は髪の毛の水滴をある程度とり、身体の表面にういた水滴をすいとった。

 肋骨の凹凸をタオル越しに感じ、また少し悲しくなる。つうっとつたった液体にはっとして顔をあげた。真っ白な肌の上を黒い瞳の中から出てきた透明な汁が、一筋の道を作り上げながら顎の下までやってきていた。それから、声を上げられないままに只管汁がこぼれる。
 意味の分からないまま流れ出るソレは、僕の制御が聞かなくて。望んでいないのに僕の弱さを外へと吐き出した。迷惑で、どうしようもない位お節介。望まないままに、僕の知らない位精神的な外傷が僕には残っていたらしい。たった一夜の短い夢に壊されるほどの精神しか、僕には無かった。
 
 まだ流れてこようとする液体がたまった目を、タオルで雑にごしごしと擦る。目の周りが赤くなるまで擦った。目の周りだけ薄桃色のアイマスクをしているような風になったが、気にも留めず服を着る。下着も全て、「母親」が持ってきてくれていた。
 服を着終え、見たくない自分の首を鏡に映す。映す必要は、本当は無かった。けれど、今だけは傷を見て包帯を巻こうと思っていた。湿ったままついていた、朝おきて直ぐつけた包帯をはずし洗面台の中にべちゃりと入れる。

 巻き数が少ない包帯を、首にくるくると巻いていく。一周、もう一周と巻いていくたびに傷は見えなくなり、首は圧迫されていった。全て包帯を使い切り、留め具で留める。首に包帯が巻かれた何時もの光景に、また少し悲しくなった。


 何時もとは違う所。
 一、何時もより多く巻いた包帯。
 二、何時もより正常じゃない僕の感情。
 三、何時もより辛く感じた存在意義。

Re: 君を、撃ちます。  ( No.21 )
日時: 2013/04/03 23:44
名前: 悠幻 ◆3Bjz./.EWI
参照: 某友人じゃない方ですb

他の作品はROMってましたが、此方ではコメントさせて下さい。
出て行けとおっしゃれば消える所在ですw

僕が、なんか僕と重なるし、凄く読み易いんですよね。
あ、勝手に重ねてすいません((
個人的には、伏線探しが楽しくてw
>>1の深さに吃驚。おや、深くなかったかな…

頑張らない程度に頑張って下さい。
では

Re: 君を、撃ちます。  ( No.22 )
日時: 2013/04/04 13:41
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ
参照: 嗚呼もう。僕の描写を書く時は、辛いなぁ。

悠幻さん

あら、こんにちわー。
参照了解致しましたw

いえいえどうぞ重ねちゃって下さい。
柚子に重なる部分も、無きにしも非ず、ですがね←
>>1は、多分誰もが思っているよりも深くて沈んだ部分ですよ。
表面上の解釈だけでは、後々書いていったら意味が分からない部分も出てくると思います(

いい加減程度に真面目に頑張ろうと思います。
コメント有り難う御座いました。

Re: 君を、撃ちます。  一字保留中 ( No.23 )
日時: 2013/04/07 19:28
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ
参照: 嗚呼もう。僕の描写を書く時は、辛いなぁ。

 目元を骨ばった腕でこすりながら脱衣所を出た。「母親」は買い物に出かけたのか、家は誰の気配もしない。不自然なくらい静まった家は、どうも不気味で苦手だ。七年前のあの日がフラッシュバックしそうになり、思わず口を手で覆い蹲る。壁を背もたれにし、座り込む。

 七年前のあの日も同じように、遊びつかれ木に凭れかかっていた。「友人たち」と小さな雑木林に秘密基地を作り、昼時に「みんな」が帰ったころだ。僕が、忽然と姿を消したのは。刑事ドラマでよくあるパターン、口元に思い切り紺色の何かを押し当てられた。
 気づいたら既に意識をなくして、起きた時には「誰か」が胸を圧迫していた。首がきつくなり、何の声も出せなくなる恐怖が今の僕を襲っていた。伸ばした手は、首に巻かれ、強い力がこもる、きつくきつく。スパークする視界。息は喘いだ。あの日助かった命を、捨てようとする。

 段々と何も考えられなくなり、力が抜けてきた。先ほど巻いた包帯のお陰で、少しの力でもあの日と似た苦しさが蘇っている。全ての毛穴から水分が出てくる感覚に、気持ち悪さが背筋を走っていった。
 背中もじっとりと汗が出てくる。きっと今「誰か」がやってきても、僕に声は届かないと思った。実際僕は一度そういう風になったから、そう思える。消えかけた景色の中、「視界の端に写った人物」が「誰か」は、分からないまま僕は目を閉じた。














 見覚えがある、真っ白な天井が目が覚めた僕を歓迎する。端っこに見えた袋からは管が繋がっていて、僕の右腕に刺さっていた。視線を下に向けると、医療ドラマでよく出てくる人工呼吸器が付けられている。
 そこで初めて、僕が今いる場所が病院だと分かった。そう認識すると、アルコールのにおいが鼻を刺激し始める。遠く聞こえる様々な女の人たちの声。ぼやけ始めた視界に抗い、目を開け続ける。

「伊吹くんっ!」

 聞きなれた声が「椿木」だと分かるのは、遅かった。音が所作の後に続いて聞こえる錯覚で、「椿木」が視界に入ってきたとき僕の名前を呼ぶ声がした。目に涙を溜めた「椿木」は、喜怒哀楽のどれを表すかに困惑しているようだった。
 疲れたのかどうしたのか分からないが、ぼやける視界に耐え切れなくなり目をつぶる。その間に増えた声は「母親」しか分からなかった。聞いたことの無い声が、僕の周りを取り巻いているような、そんな感じがする。

 
「息子は……大丈夫ですか?」

 心配そうな「母親」の声。医療ドラマと同じ、くさい芝居が始まる気がした。ぼやける視界を我慢し、目を開ける。マスクに白い服を着た「おじさん」と「おばさん」が、僕の右側にいた。左側には「椿木」と「母親」。
 涙ぐんだ目で僕を見て、嬉しそうな表情を浮かべる「母親」に対し、微笑みかけることも出来なかった。しようと、しなかった。「椿木」も「母親」と同じで、涙をため嬉しそうに僕を見る。僕の何も知らないくせに幸せそうな表情を作れる「二人」が、僕はとても羨ましい。

「命に別状は無いので、大丈夫でしょう。ですが、重篤な高次機能障害による記憶障害や麻痺が残る可能性も有りますので……まだ、なんとも」

 上っ面の同情を前面に出し「医師のおじさん」が言う。僕は後遺症があろうが無かろうが、重要性を知らないから別にどうでもいいと思っている。けれど、「医師」の発言を聞いた「母親」と「椿木」は絶句した様子だった。
 人工呼吸器のゴムが頬に食い込むのがとてもいずく、今はそのことだけが頭にあった。それ以外は、どうでも良い。「椿木」が囁いた“大丈夫だよ”も、「母親」の直ぐにでも崩れ落ちそうな表情も。今はどうでもよかった。

Re: 君を、撃ちます。  /保留解禁 ( No.24 )
日時: 2013/04/06 22:59
名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ
参照: スクロールが短くても、書いているのは1500字オーバーです。


 「母親」と「医者」「看護師」が部屋を出て行ってから、僕は一滴ずつポタポタと落ちる点滴を見つめていた。「椿木」はベッドのそばの椅子に腰掛け、僕の左手をぎゅっと握っている。何時も以上に冷え切った体は、「椿木」の温かさの侵食を拒んでいるみたいだ。
 普段なら「椿木」に少し触れられただけで、触れられた部分が熱くなる。けれど今は何もならないのが、不思議だった。それ以前に、どうしてこの時間に「椿木」が病院に来ているのかが分からない(時刻は午前十一時五分前後)。

「伊吹くん、死んじゃいたかったの……?」

 か細く震えた「椿木」の声。初めて聞いた弱弱しい声に連動するかのように、僕の左手を握る「椿木」の両手も細かく震えていた。俯いていて、表情までは分からないけれど、きっと泣きそうなんだろう。
 僕は握られたままの左手を、「椿木」の両手から遠ざけた。不自然なくらい大人しいまま、「椿木」は両手を自分の膝の上へと置く。小刻みに震えたままたまにぴくりと動く肩が、「椿木」が泣いていることを示していた。

「……伊吹くんが死んじゃったら、伊吹くんのお母さんも私も悲しむんだよ? 伊吹くんが居なくなったら、伊吹くんのお母さんは一人ぼっちなんだよ? 愛されてるんだから、伊吹くんは。だから、死んだらだめなんだよ?」

 今僕が言葉をしゃべることが出来たなら、きっと感情を抑えることが出来なかったと思う。“君に、一体何がわかるのか、僕に教えてくれないか”と、言いかねなかった。僕の闇の何をしって、気休めを言ってるのかが理解できない。
 僕は無表情のまま、左手を右上の針のところへと持ち上げた。腕が少しだるいのは、首を絞めたときに満足についてもない筋肉を無理やり使ったから。右腕に張られたテープをはずし、ゆっくりと針を抜く。気づかれないように、痛みに耐えながら。

 針を抜き終わると、刺さっていた場所から血の滴が顔を覗かせた。針からは体内に入るべき液体が、一定感覚で垂れている。僕は血にも、針からでる液体にも興味を示さず、人工呼吸器のゴム紐に手を掛け、はずした。

 決して新鮮とは言いがたい空気ではあったが、久しぶりに呼吸をしている感覚がする。無理やりに吸わされる空気ではなくて、生きるために必要だと感じて吸っている感覚。嬉しいような、悲しいような複雑な感情が僕の脳内を占領した。

 僕はゆっくりと上体を起こし、腰をひねり「椿木」を見る。僕より少しだけ小さな体が、何時も以上に小さくか弱く見えた。そっと僕は首を触る。きつくしめていた包帯は取り払われていて、肌が露出したままだった。
 残ったままの「誰か」の傷を気持ち悪がられても、別に構わないと思った。頭で色々思うことは置いておき、ふわりと「椿木」を僕は抱きしめる。言葉が出せない僕に出来る精一杯だった。

 驚いて顔をあげた「椿木」に、首のソレを見せないようにぎゅっと抱きしめる。“ありがとう”とも、“ごめんね”とも伝えられない代わりに、今までの感謝を込めてぎゅっとした。
 数秒しか経っていないはずだけれど、僕と「椿木」の周りだけは時間が延びている錯覚があった。数十秒、もしかしたら数分近く僕が「椿木」に抱きついていたかもしれない。けれど、今はもう、どうでもよかった。


 「椿木」から離れ、僕は申し訳なさそうに笑う。謝れない僕の精一杯だ。真っ直ぐに僕を見つめる「椿木」は、僕が支えられるほど小さな存在ではなくて。それでもまだ、僕は「椿木」を支えなくてはならないと心のどこかで思っていたみたいだった。
 突然のことで、何がなんだか分かっていない「椿木」の頭を優しく撫で、僕はまたベッドに横になる。布団は掛けないまま、ただじっと天井を見つめた。「母親」の声も遠すぎて聞こえないのか、もう病院に居ないのか分からないが、「母親」が迎えに来てくれることを只管願う。


 もう、あの日のデジャヴはいらないんだ。


 心の中で吐き出した声は、僕も気付かないうちに空中分解してしまった。

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