複雑・ファジー小説

偽りの唄
日時: 2015/08/30 19:12
名前: ツバメ (ID: 5Iu.5lPh)

こんにちは( ・ω・)

小説カキコに久しぶりに帰ってきたツバメです( ・`ω・´)
(名前変えてるけど)

突発に始まったのでもしかしたらやめるかもしれません!Σ( ̄□ ̄;)

「じゃあやめるまで見てやるよ!」って方はどうぞ
暖かい目で見守って下さい(*゜ー゜)ゞ⌒☆

では、ここで書いていいか不安ですが(;`・ω・)
よろしくお願いします( ´ ▽ ` )ノ

ちなみに今のところメインキャラはこの2人です↓↓↓

綾坂弘人(あやさかひろと)
白明学園の中等部3年。刀で水を操る。
麻衣とは幼なじみの関係だが、麻衣が何かあるとすぐに飛び込む為、ある意味母親的存在にもなっている。ちなみに自覚なしの片想いあり。
物事を冷静に見極める事からリーダー的存在としても慕われてるが、本人曰く「めんどいから早く片付けたいだけ」との事。

一月麻衣(いちづきまい)
白明学園の中等部3年。刀で雷を操る。
弘人とは幼なじみであり、昔から好意を寄せている。その為弘人に近づく女(又は話しかける女)には全てに嫉妬心を抱いており「早く男子校とかに行って欲しい」と学校に関しては日々後悔している。
基本的に明るく好奇心旺盛だが、それで大事件に巻き込まれる事も。本人曰く「子供だから仕方ない」と納得している。


他、後々紹介していきます(* ´ ▽ ` *)

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Re: 偽りの唄 ( No.5 )
日時: 2015/09/05 13:23
名前: ツバメ (ID: 5Iu.5lPh)

「やっぱり出たか……」

月の明かりが1人の男を照らす。辺りは騒然とし、黄色いテープの向こうには人がガヤガヤ集まっている。
まるで殺人事件が起きたかのように、どこもかしこも人々の声で溢れ返る。
しかしそんな事はお構いなしに、男は懐から煙草を出すと、落ち着いた様子でフーッと煙草を吸う。
あまりにも落ち着いている為違和感を感じたのか、部下らしき人が男に話しかける。

「“斉藤”さん。事件が起きてるのに、よくそんな平然といられますね」

「ん?」と斉藤と呼ばれた男は、部下の言葉に反応する。

「事件つっても、人が殺されてる訳じゃないだろ。それに俺はもう何十回もこの捜査に参加してるんだ。俺じゃなくてもそのくらいなら、いい加減馴れると思うぜ。何しろ殺人事件よりも、グロい事件だし」
「それは……そうですけど」

すると部下らしき人は、現場に落ちてある部品を拾ったかと思うと、スクッと軽く立ち上がる。

「でもここまでグロいのは流石に変ですよ?いくらあの人達の地元から離れているとはいえ、また事件が発生したら最悪、あの人達が出動する事も…」
「…にならないよう、俺達が何とかするんだろうが」

部下の言葉を、斉藤は遮る。
そして部下の持つ部品を受けるとると、じっくりと見つめ。

「……けどこれは流石に……どうにもならないかもしれないな……」



弘人は走っていた。麻衣と共に、出来るだけ遠く、何処までも。
心臓がバクバク聞こえる。破裂しそうなくらい。今まで感じた事のない程の速さで、不安だが今はそんな事を気にしている場合ではない。
とにかく今は、走らなければならない。出来るだけ速く。間に合うならどんな手段でも。
そう、弘人は思っていた。

「待って……待ってよ弘人!」

麻衣が途中で止まる。余程疲れたのだろう。額から汗が、滴り落ちてくる。

「弘人ってば……!」

その言葉に、弘人はようやく立ち止まる。
そして、今の己の状況を改めて確認すると、急いで麻衣の元に駆け寄る。

「麻衣!ごめん。大丈夫か」
「うん、大丈夫。……大丈夫だけど」

弘人の優しい対応に、思わず麻衣は少し戸惑う。
けど、知抄が帰らない事を聞き、弘人が家から飛び出した瞬間から麻衣はどうしても聞きたい事があって仕方がなかった。
こんな状況だからこそ、一度呼吸を整え麻衣は思いきって弘人に質問する。

「……ねぇ、前から聞きたかったんだけど」
「何?」
「どうして弘人は、知抄の事になるとそんなに慌てるの?」
「……えっ?」

その問いに、今度は弘人が戸惑う。

「それは……」
「どうして?」

麻衣の更なる問いに、弘人は思わず一歩後ずさる。

「やっぱりいとこだから、親戚だからそんな心配するんでしょ?私だって親戚が同じ目にあってたら、誰であろうとここまで戸惑うよ。だからそんなに心配してるんでしょ?今日の帰りだって。……ねぇ、そうだよね?」

弘人は何も答えない。

「弘人……」

その時1つの爆発が聞こえ、東の方から大きな煙が巻き上がる。

「あっちだ!」

麻衣が駆け出そうとすると。

「麻衣!」

弘人が呼び止める。
その呼び掛けに、麻衣は直ぐ様振り返る。

「今は答えられない。けど、好きとか親戚とか、そういうんじゃないんだ。必ず答える。だからそれまで、信じててくれ」
「弘人……」

麻衣は一瞬躊躇したが。やがて。

「分かった。……でもこれが終わったら、必ず答えて」
「勿論、そうするつもりだ」

麻衣はその言葉をしっかり聞くと、弘人に合わせまた走り出す。
「知抄、待ってて!」今はそれを、ただ祈るだけだった。

Re: 偽りの唄 ( No.6 )
日時: 2015/09/06 13:16
名前: ツバメ (ID: 6mS.q2l2)

煙の方向に走っていくと、そこには倉庫があった。
どうやら此処で爆発したのだろう。その証拠に屋根には大きな穴があり、そこから煙が巻き上がっている。

「此処に知抄が……?」

麻衣が言い終わると同時に、弘人が倉庫の扉に向かう。
弘人と知抄の関係にまだ不安が残るが、麻衣もとりあえず弘人の後を追った。

「開けるぞ」

麻衣が頷くと、弘人は扉をゆっくりと開ける。
重い感じがしたが、麻衣に手助けしてもらう程でもない。
扉を完全に開ききると、麻衣が直ぐ様何かを見つける。

「知抄……!」

両手首を縛られ、ぐったりと倒れる知抄がそこにいる。
そう思うや否や走り出すと、2人は殆ど同時に知抄の元に辿り着く。

「知抄、大丈夫?しっかりして!」
「……ま…い……?」

幸い、確かに息はある。
知抄は朧気に麻衣を見つめると、その隣の弘人にも気づく。

「……ひ…ろ……と…も…来て……くれ…たんだ……ね……」

途切れ途切れに話す知抄に、弘人は「そうだよ」と優しく答える。
その言葉に、麻衣は心に何かトゲが刺さったような感じがした。
「弘人……」と呟く寸前、それを遮るように弘人が知抄に問う。

「知抄、答えてくれ。一体誰に、何をされたんだ」
「……男の…人に…急に口を…お…さえられて…それから…何も……」
「男の人?」
「なんだ…か……狼のような……マスク…か…ぶって…それで……」
「狼のようなマスク?でも知抄、何でそれが男の人だって分かるの?」

知抄は続けて答える。

「声がしたの…そうだ……何か言ってた……確か……ぉ……」
「お?」
「……誘き……」
「誘き……まさか」

後ろに何かを感じ、弘人はサッと振り向く。
そこには。

「お前らを誘き寄せる為にこいつを拉致ったが、まさかこんなにも、上手くいくとはな」
「お前は……!?」

麻衣も振り向くとそこには、全身を毛で覆われた狼のような男が、低く獣らしからぬ声で此方を見つめている。

「最近此処等で噂になってる“アッシャー”がどんな者かと友人とやらで釣ってみたがなるほど、超能力者と呼ぶに値しない、身軽な格好で生きてるもんだな。少しは俺のような“アグリシャー”が来るとは予想しなかったのか?お前ら」

狼男の言葉に、麻衣はゾワッと青ざめる。

「だったら何であんたが!こんな所にいるの!私達を誘き寄せるんなら、何もこんなとこで、知抄も拐う必要はないんじゃない?ハッキリ“あの場所”に現れて、私達と戦えばいいじゃない……!」
「俺があの場所で低級共と戦えと……?馬鹿らしい。無能な奴等とお決まりの場所で戦えば、俺の力を存分に振るえず朽ち果てるではないか。やはりここは、こういう場所でお前らの大事な人を拐ってこそ、お前らも俺も存分に戦えるという事よ」
「だからって…」

麻衣が何か言おうとすると、弘人がそれを遮る。

「一石二鳥って訳か、なるほど。なら俺も、お前の期待に答えなくちゃいけないなぁ……?」
「弘人……!?」

麻衣が弘人の腕をつかむ。

「待って弘人!それじゃ相手の罠にハマるようなもんじゃない。どうして…」
「俺達が戦わずとも、こいつは何かしら仕掛けると思うぜ?例えば……」

弘人は知抄をチラリと見る。

「こいつを使ってな」
「それじゃ……」

弘人は麻衣の肩をポンと叩く。

「安心しろって。俺があいつと戦ってる隙に、お前が知抄を連れて逃げればそれでいい。もし心配なら、知抄を外に連れ出した後、もう一度此処に戻ってくればそれでいい。まぁお前の事だから、もう一度戻ってくると思うけどな?」
「弘人……」

麻衣は一瞬迷ったが、そして。

「……分かった。けど約束して?私が戻ってくるまで絶対、絶対に……」

ソッと弘人の耳に近づき。

「死なないで」

Re: 偽りの唄 ( No.7 )
日時: 2015/09/12 11:53
名前: ツバメ (ID: 6mS.q2l2)

「我等を護りし水神よ。今こそ我の一部となれ」

弘人が何事かを唱え手をパンと叩くと、その隙間から青白い炎のようなものを纏った刀が姿を現す。

「茶番は此処までだ狼男。アッシャーの力、今こそ見せてやるぜ」
「面白い。……ならば俺も、真の姿でお前の相手をしよう」

狼男がそう呟いた途端、どす黒い雄叫びが倉庫中に響く。
一陣の風が弘人を襲う。余りにも強烈な風に一瞬目を瞑ったが、気付いた時にはもう、狼男は別の姿に変わり果てていた。

「……なるほど。それがお前の、真の姿か」
「知抄が言ってた噂は、この事だったんだ……」

弘人とは遠く離れた場所で、麻衣が静かに呟く。
狼男はもう、人間と呼ぶに値しない姿に変わっていた。寧ろ大きくなった。着ていたらしい服はビリビリに破け、通常の狼より何十倍もの大きさで弘人を、麻衣をじっと見つめる。
その姿は、まさに“化け物”と呼ぶに相応しかった。

「毎夜に出てくるアスカってのも、ひょっとしたらお前の事か」

弘人が直球に尋ねる。

「さぁ……?何の事か」
「そうか……なら」

弘人が刀を大きく振り上げる。

「これで直接証明するしかなさそうだな……!!」
「弘人……!」

弘人が勢いよく走り出したと同時に、狼男もとい巨大狼が再び雄叫びを上げる。

「何してる麻衣!早く逃げろ!!」
「でも弘人が…」
「何度も言ったろう!俺がどうにかする。だからお前は知抄を連れて早く倉庫に逃げろ!!」

走りながら大声で命ずる弘人に、麻衣はようやく知抄を連れて走り出す。
それを一瞬見届け、微かに微笑む弘人。

「逃がすか!!」
「おっと、こんな時にナンパか?今のお前の相手は俺だぜ!!」

麻衣をも逃がすまいとする巨大狼が横見した刹那、恐ろしい程紅く輝く瞳目掛けて、弘人が一気に刀を降り下ろす。
その隙に、麻衣も何とか知抄の腕を肩に乗せると倉庫の扉目掛けて、ただひたすらに、真っ直ぐに走り出す。

「麻衣、ごめんね。……でももう無理だから。私を置いて麻衣だけ先に…」
「何言ってるの!そんな事出来る訳ないでしょ!!」

途切れ途切れに呟く知抄に、麻衣は厳しく叱咤する。

「麻衣……」
「……それに」

麻衣は一度、軽く深呼吸する。

「私、知抄に改めて確めたい事あるから……」
「麻衣……?」

麻衣は知抄をチラリと見ると、微かに笑みを浮かべる。
“確めたい事”とは恐らく、先程から知抄に対し、妙な態度をとる弘人の事だろう。
知抄もそれに勘づいたのか、はたまた釣られてなのか、麻衣に対し同じように笑みを浮かび返す。
そうしている間にも、巨大狼の影響で倉庫が少しずつ崩れ始める。

「ヤバい。……このままじゃ弘人が……!」

2人がようやく倉庫の扉近くに来ると、知抄の言葉で麻衣は弘人の方を見る。

「弘人……!」



「愚かなものだな」

戦いの最中、巨大狼に変じた狼男が言う。

「太古の昔、同じ種族だったはずの我等が、今こうして転生しアッシャーとアグリシャーとして戦うとは。世の中皆哀れになったものよ」
「聞いた事ねぇ話だな。アッシャーとアグリシャーは昔から戦う犬猿の仲だと聞いたが……?」

弘人の刀と巨大狼の爪が、それそれが降り下ろす度に交わる。
弘人が刀を降り下ろす度に一歩、今度は巨大狼が鋭く大きな爪を降り下ろす度に一歩と、それぞれが後退り前進していく繰り返し。
にも関わらず、巨大狼はアッシャーとアグリシャーの歴史について語る。

「アッシャーは確かに素晴らしい種族だ。敵対する我等アグリシャーと違い戦いながらその強さを“信じる心”を元に強くなっている。……だが、その力を得ているからこそ、愛する者を失っても仕方ないのではないか……?」

その言葉に、弘人は一瞬後退る。

「……どういう意味だ」

巨大狼が不気味な笑みを浮かべる。

「人を信じし過ぎると、時としてそれは不幸をもたらす。神は残酷だ。折角アッシャーが、もとい人間が他人を信じる大切さとそれがもたらす強さを教えてくれた事に感謝しているというのに、それに関わらず幸不幸を与えるのだから。それ故貴様らは“英雄”と呼ばれ孤高の戦士に成り果てた……」

弘人の刀を持つ手が緩む。

「……意味が分からないな。人を信じて何が悪い?それにそんな事に構わず人には幸福と不幸どちらにも巡り会うし、それで英雄と讃えられるなら、そんな世の中ちっぽけだな。孤高の戦士にもなれすらしない……」
「……なるほど。よもやお前には、英雄と呼ばれるのが何れ程誇らしいか、分からぬようだな」

2人の間に、微かに風が吹く。

「あぁ……分かりたくないし、分かろうともしたくない」
「そうか。……なら」
「弘人……!」

麻衣が弘人の名を叫ぶ。その時だった。
巨大狼の瞳が更に紅く染まる。

「麻衣…」

弘人が麻衣の名を呼び終えた瞬間、上から光る何かがゴロゴロと落ちる。
ガラガラガッシャーンと鳴り響くと共に、それは弘人の瞳から麻衣という姿を綺麗に片付ける。

「麻衣……?麻衣!麻衣!!麻衣ーーー!!!」

辺りは、一瞬で静寂に覆われた。

Re: 偽りの唄 ( No.8 )
日時: 2015/09/12 11:52
名前: ツバメ (ID: 6mS.q2l2)

「弘人……!」

麻衣が弘人の名を叫んだ途端、上から光る何かがモノとなって落ちてくる。
それに気付いた麻衣は、一刻も早く知抄を外に連れ出そうと、扉の僅かな隙間を利用し知抄を外に追いやる。
知抄も何かを感じ、懸命に麻衣の手を離すまいとする。

「麻衣!麻衣……!!」

しかし、知抄と麻衣の手は紡ぐ事なく。
知抄が外に出た瞬間、麻衣は一気に光る何かの畳となる。
勿論、知抄がそれを見る事は出来ず。

「麻衣ーーー!!!」

辺りは、弘人の叫びでそのまま一気に静寂に覆われた。



「……だから言ったろう」

狼男もとい巨大狼が、茫然と立ち尽くす弘人に向かって言う。

「他人を信じる事で人は多大なる不幸を呼び起こす。愚かなものだな。己を信じて他人を信じなければ、こんな事にはならなかったろうに……」

その言葉に、弘人の身体はピクリと反応する。
だがそれに気付かず、巨大狼はそのまま語る。

「かつての我等もそうだった。……己ばかりか他人をも信じし過ぎた為に、我等は多くの裏切りを生んだ。それは時として多大なる戦争にまで発展し、敗北から他人を信じる愚かさを知った我等は、その力を糧としアグリシャーとして蘇った」

弘人はまだ俯いたまま。

「……しかし己だけを信じる事を決めた我等に対し、貴様らは、貴様らは違った。我等と同じく敗北から他人を信じる愚かさを学んだはずなのに、貴様らは、その醜さを糧とせず他人を、信じ続ける事を選んだ。糧とした我等はその後勝ち続け、糧としなかった貴様らは敗北し続けたのにも関わらず」

弘人が顔を上げる。その瞳からは狂気は愚か、殺気すら感じない。
刀をギュッと握りしめる。その後の間、僅か。

「だからこうなっても仕方ないのだ。今のは我の幻術。だがそれが幻となって終わったか実物となって落ちたかは、当の我にも分からん。だが、だからこそ貴様は、人を信じる愚かさを、改めて身に感じたのではないか?この平和な世に起こった悲劇だからこそ、貴様は…」

刹那。

巨大狼が口を閉じる事なく、弘人は巨大狼の眼前にまで迫る。
いや“迫っていた”の方が確実だろう。
巨大狼はそれに気付いたかと思うと、直ぐ様弘人の刀を避ける。

「貴様……余りの情けに狂ったか……!?」

だが弘人は狂ってなどいない。先程も言ったように、弘人は狂気どころか殺気すら窺えないのだ。
となると本能のまま。理性を失い戦っているのか。
どっちにしろ、今の弘人は巨大狼から見ても恐ろしく感じた。

「……っ……これじゃ拉致があかんな」

流石の巨大狼も、自身の状況に焦りを感じる。
一刻も早く目の前の敵を倒さなければ。でなきゃどんな残虐な法で来るか分からない。

そして。

「……仕方ない。もう少し楽しみたかったが、これで終わりにさせて貰うぞ」

巨大狼の爪が大きく伸びる。それを使い弘人を真っ二つにするつもりだろう。
先程と同じく瞳を紅く染まらせ、爪にも光を集中させる。

「死ねえぇぇぇぇぇ……!!!」

その時だった。

「風水輪(壱)」

刀で円を作るように回すと、そこに風と自身の持つ水の力が反応し、大きなわっかが出来上がる。
その中心部分を真一文字に描くと、巨大狼に向けて真っ直ぐに、弘人の放った輪が勢いよく突き進む。

「……んだ…と……」

巨大狼に直撃すると、バブルのように大きく弾け、巨大狼と共に消滅する。
後から凄まじい爆発も添えて。

「貴様……貴様あぁぁぁぁぁぁぁ……!!!」

弘人も幻術か何かを用いたかどうかは知らぬが、何故か爆発は倉庫の屋根を貫通しただけで、倉庫自体壊れる事はなかった。
辺りは、先程と同じく静寂となり弘人の髪がよく靡く。

「……れ…は……」
「弘人……」

幻として落ちたらしく、先程巨大狼が放った光るモノは一瞬にして消える。
当然、麻衣は少し頭を打っただけで大した怪我もなく生きていたが、弘人はそんな事に気付く事なく。

「弘人……!」

そのままバタリと倒れてしまった。

Re: 偽りの唄 ( No.9 )
日時: 2015/09/13 15:38
名前: ツバメ (ID: 6mS.q2l2)

「……ん……」

目を開けると、天井が見えた。朧気だが隣に人がいるのが分かる。
弘人はその朧気な目をゴシゴシ擦りながら、何とか今自分が置かれてる状況を把握しようとする。

「ここは……」
「弘人……!」

声が聞こえる。振り向くとそこには麻衣がいた。
よっぽど泣いたんだろう。目は赤く腫れ、持っているタオルは涙でグッショリ濡れている。
弘人は、手伝ってもらいながらゆっくり起き上がると、今自分が真っ先に思い付いた質問を麻衣にぶつける。

「麻衣、ここは……?」

そう問うと、麻衣は優しく答える。

「私の家よ。ちなみにここはお父さんの寝室。待ってて。弘人のお父さんも来てるから、今一緒に呼んでくるね」
「えっ、お父さん?父さんも来てるのか……?」

寝室から出ようとする麻衣を、弘人は呼び止めるように問う。

「詳しい話は後で。とにかく今はお父さん達を呼びにいかないと。弘人が起きた所で、色々話したい事があるらしいから……」

話が終わるや否や、麻衣は障子を閉め、急いで父達を呼びに行く。
その様子に、弘人は何処か不安と焦りを感じていた。



「弘人君。こうやって面と向かって話すのは久し振りだね」
「はい。そう言われてみると、そうですね」

互いの両親が、弘人が待つ寝室に来ると、麻衣の父親が弘人の傍らで正座になるように座る。
弘人も正座になろうとしたが「君はまだ起き上がりだから、そのままでいい」と麻衣の父親に頑なに止められる。
仕方なく弘人がそのままの状態でいると、麻衣の父親は一度深呼吸したかと思うと、ゆっくりと話始める。

「知抄ちゃんの記憶は私が消しておいたから安心しなさい。明日に行っても通常通り、君達と普通に関わる事が出来るよ」
「そうですか。わざわざありがとうございます」
「……と言っても、本題はそれじゃないんだけどね」

麻衣の父親“一月忠宏”は「さて」と本題に入る。

「今日、麻衣も学校を休ませ、弘人君も此処に泊まらせたのは他でもない。昨日君達が、知抄ちゃんを救う為に戦ったあの巨大狼についてだ」

その言葉に、弘人と麻衣、2人の顔が一気に強張る。

「お父さん。やっぱりあれは、知抄も噂してたアスカっていう化け物なの……?」

その問いに、忠宏は顔色を変える。

「どうしてそれを……」
「昨日、知抄から聞いたの。毎夜に現れる狼の巨大型化け物がアスカって言われて、最近噂になってるって……」

それを聞いて、弘人の母親“綾坂奈津子”も顔色を変える。

「……やっぱり。古の獣達が、現代に何らかの形で姿を現してるって訳か」
「母さん。古の獣達ってのは……?」

弘人の問いに、奈津子は頷いてから説明する。

「古から、私達アッシャーと敵方のアグリシャーは1つの種族として存在していたの。けど、ある人間による裏切りで戦争を起こしちゃってね。それで他人を信じる愚かさを知ったある一部の種族達は、アグリシャーとして私達から離れていくようになったの」
「分裂……ですか」

麻衣の解釈で、奈津子は更に続ける。

「アグリシャーとなった彼等を失った私達は、その後も他人を信じ続ける度に戦争を起こして、敗北していった。時には、多くの仲間が彼等の罠で売られたり、仲間自身、裏切られた事だってあるわ。……けど私達は決して彼等を信じ続ける事を諦めなかった。なんでだと思う……?」
「なんで……ですか?」

奈津子は答える。

「……彼等の中にはね、私達に協力してくれる者もいたの。勿論、人間よ?だから彼等を信じ続ける事を諦めなかったお陰で、時には戦争に勝った事もあったし、彼等を何処かで救った事もあった。そして私達、まぁ厳密に言えば私達の御先祖様は、そうして彼等と夫婦になり子孫を残す事で、今の私達を、アッシャーを生み出す事が出来た……って訳」

奈津子の説明が終わると、弘人が付け足すように。

「そしてアグリシャーとなった彼等は、アグリシャー同士が夫婦となった事で、血を更に濃くし、力も強くしていったって訳か」

弘人の父親“綾坂壮司”も頷きながら。

「アグリシャーとなった彼等の多くは、獣としての力ももつ者も多かったからな」
「そっか。それで……」

と、此処で麻衣の母親“一月奈那子”が話を変えるように問う。

「それで、これからどうしましょう……」
「あの化け物がアスカかどうかはまだ不明として、私達も本格的に動かないと、多分次の敵は、弘人が風水輪を放っただけじゃ済まないだろうし……」

“風水輪”という言葉を聞き、麻衣が困惑した顔で弘人を見つめる。

「弘人、風水輪って…」
「あぁ、それなら…」
「とにかく」

壮司が2人の会話を遮るように、話を纏め始める。

「これからは獣が現れた日だけじゃなく、毎夜、何時もの森や街を巡回する事。街は、警察にも協力を要請し、子供は0時、大人は最低でも2時か2時半までの巡回とする。1人での単独行動は絶対に禁止。隊長は何かあった時のために、携帯だけじゃなく他の奴等にも分かる何か合図を工夫しておく事。今の“黒士隊”に関する連絡はそれで以上だな」
「分かりました。警察には今日にも、協力を要請しますか?」
「あぁ、そうしてくれると助かる」
「分かりました」

奈那子の言葉を最後に、大人達を始め、麻衣も弘人と一緒にゆったりとした足取りで部屋を後にする。

「今日にも、刀の手入れをしないとな……」

弘人の言葉に、今度は麻衣が、不安と焦りを感じていた。

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