複雑・ファジー小説

優先席
日時: 2015/10/10 19:03
名前: 猫又 ◆yzzTEyIQ1. (ID: 055Fg/TC)

○はじめに
 
 初めまして、猫又と申します。
亀更新のくせして3作品同時進行してます。
でも、書きたかったんだから仕方がないw

 さて。今作はちょっと短めのお話です。
いつも通りの不可思議な物語になりますが、せっかくの短編なのでこの先の展開や世界観等々、何かに気付いた読者様は考察、推理コメントしてくれると嬉しいです。
(ズバリ言い当てられて、そのまま途中放棄するかもしれませんがw)

それでは、どうぞよろしくお願いしますm(_ _)m


○ 読む上でのお願い。

・根拠の無い中傷や荒らし等々、迷惑行為は絶対に止めて下さい。

・コメント・アドバイスは大歓迎です。

・文才はありませんが、温かい目でご覧下さい。(・ω・`)

 それでは。まもなく発車いたしま〜す。

○目次
・プロローグ >>1

・列車
>>2-3 >>5

Page:1



Re: 優先席 ( No.1 )
日時: 2015/09/23 20:22
名前: 猫又 ◆yzzTEyIQ1. (ID: IHxLpbu0)

◇プロローグ

 その日。俺は駅に居た。
なんてことはない。駅にいるのだから列車を利用しに来たのだ。
 まぁ都会では駅にショッピングモールが隣接している場所もあるそうだが、俺が今いる駅はいやに馬鹿デカイくせして駅の機能しか果たさないような洒落っ気のない駅だった。
 そういうわけで、俺は特に寄る場所も無いので早足で改札口へと向かうその途中で、ふと自動券売機が目に入った。

「…………」
 特に券売機に対して思い入れがあったわけではない。ただ俺は子供の頃から列車が好きで、昔母親と一緒に切符を買って列車に乗った思い出が券売機を見た瞬間、沸々(ふつふつ)と湧き出してきたのだ。
あぁ……懐かしい。あのころは色んな夢を信じられていたし、列車に乗ればどこまでも行けると信じていた。自分には無限の可能性が眠っているのだと夢見ていた……。
「……残念ながら。現実ってのはそんなに甘くなかったけどな」
 どうやら温かい思い出に浸りすぎていたようだ。腕時計を確認すると俺が乗る列車の発車時刻が徐々にせまっていた。すぐに感傷的になっていた自分を抑えこみ、改札口へと走る。
その最中(さなか)、俺は振り払った思い出についてまた考えていた。

 そう。人生そんなに甘くなかった。
親や教師に才能を見極められ。自分の才能に見合った切符を持たされ。そして“どこに行くのかも分からない列車”に詰め込まれて……仕事という単純作業の毎日に駆り出されるのだ。
 列車と同じだ。才能があるやつは遠くに羽ばたける。その才能を認められ、華やかな舞台へと送り届けられる。しかし、認められないやつは近場を回り続ける。ぐるぐる、ぐるぐると、風景一つ変わらない列車の中で気の遠くなるような時間を過ごす。
そうして揺られ、揺られていつの日か――
「山田様。ですね」

「――あぁ。……はい。山田です」
 またしても思考にふけってしまった。
改札口にいた駅の係員に声をかけられ、俺は現実に引き戻される。
「伺っております。こちらが、今回利用される列車の乗車券です」
「……どうも」
 いかん、いかん。どうも今日は感傷的になり過ぎている。ネガティブな考えが頭に張り付いて離れない。駅も街(まち)も今日で見納めだからといって、そこまでセンチメンタルになることなんてないじゃないか……。
 ――というのも、俺は今日この街から去る。
数年しか住んでいなかったがなかなかに面白い場所だった。
だが元より長期出張のようなものだし、いつかこの街を離れるだろうなとは思っていたのだ。
「まもなく。3番乗り場に到着いたします」
「ありがとう」
 なんてことはない。
俺は俺自身にそう言い聞かせると、駅員と簡単に言葉を交わしたのちにプラットフォームへと続く階段を一歩ずつ、着実に登って行った。
 そうしてこれから予約していた列車に乗って決められた目的地へ進む。

これは、ただそれだけの話。

Re: 優先席 ( No.2 )
日時: 2015/09/26 18:13
名前: 猫又 ◆yzzTEyIQ1. (ID: IHxLpbu0)

◇列車

「ついに。今日でこの場所ともお別れか……」
 駅のホームへと続く階段を登りながら俺は1人、改めてそんなセリフを吐いてみる。
最近見た映画に影響されたのかもしれないし、もしくはただ単純に住み慣れたこの場所から去ることへの恐怖心を、無意識のうちに和らげようとしたのかもしれない。とにかく俺はそんなセリフを吐きながらホームへと足を踏み入れる。
 階段下から見た時はよく分からなかったが、改めてプラットフォームを見てみると、ほとんど乗客らしい人影はなかった。まだ昼間だというのに駅の清掃員がほとんどで、乗客は若い男にシワが目立つ女。そしてくたびれたスーツを着込んだ50歳そこらの俺ぐらいしかいない。

「……ふう」
 その惨状に俺は思わずため息を吐く。
「この路線の利用者は年々減少傾向にあったと聞くが……まさか、ここまで酷かったとはな」
 俺もこの駅を利用する以上、ある程度の知識は頭に入れていたし、同僚からもこの路線は過疎化していると重々聞かされていた。
だが実際にその現実を目の当たりにしてみて、俺は正直驚きを隠せなかった。
「……まぁ今日のところは自分のことだけを考えよう」
 とはいえそんなことは所詮(しょせん)他人事だ。気になりはするが、俺には責任も何も無い。俺はそんな言い訳をしつつ俺は車庫から出てきたこの駅始発の列車に乗り込んだ。

Re: 優先席 ( No.3 )
日時: 2015/09/27 20:19
名前: 猫又 ◆yzzTEyIQ1. (ID: IHxLpbu0)

 案の定というか、当然席は空いていた。
予約していたのが自由席だったのでなおさらかもしれないが、乗客が3人しかいないのではどちらにしても同じだろう。そんな考えを巡らせながら俺はよく外の景色が見える窓側の席に座った。

 俺はこういう時、外の景色を眺めたい人間だ。
ずっと昔、小さい頃に窓から見た光景を今でも忘れていない。今まで色々な、それこそ話せば長く暗い話になりかねない人生を送って来たが、そのたびに色んな場所に出かけ、車窓から見える景色に心を支えてもらった。 
だからなんだと言われればそれまでなのだが、とにかくそんなこんなで俺は窓側に座る。
 すると前方の車両から、駅員らしい人影が近づいてきた。
「切符を。拝見いたします」
 どうやら切符にハンコを押しに来たらしい。
「あぁ、どうぞ」
 特に逆らう理由もないので俺はカバンからさきほど駅員から渡された切符を取り出す。
「失礼致します」
 駅員は無表情のまま両方から挟み込む列車独特のハンコを切符に押し、それが終わると俺に切符を手渡した。
「どうも」
 俺は手短に会釈(えしゃく)をすると、また窓の外を眺める。ちょうど窓が菜の花の黄色で埋め尽くされていたので少しうっとりしていると、また後ろから声がした。

「お客様」
 さっきの駅員だった。
「まだ私に何か?」
 しまった……まだ居たのか。
趣味とはいえ、窓の外を見て微笑んでいる姿を人に見られるというのはどうも恥ずかしい。もう少し周囲を確認すべきだったかと後悔するが、そんな俺に対して駅員はこう切り出した。

「優先席へ移る気はございませんでしょうか?」

Re: 優先席 ( No.4 )
日時: 2015/10/01 16:57
名前: 風死  ◆Z1iQc90X/A (ID: pcVc9ZHc)

始めまして猫又様(もしかしたら雑談で話しているかもしれない)、風死と申します。
違うほうの小説も実は読ませてもらっていました。
中々の文章能力と、カキコには余りない物語のスタイルで面白いなと思いました。
今回も50台の男が主人公ということで(?)それだけでカキコにはない個性があって良いですね^^
更新頑張ってください。


P.S

……いや、ファジーの小説で、もう1つのほうにもコメントしてましたね(汗
申し訳ありませんでした。

Re: 優先席 ( No.5 )
日時: 2015/10/10 19:00
名前: 猫又 ◆yzzTEyIQ1. (ID: 055Fg/TC)

「優先席……ねぇ」
 そう思いながら俺はこの車両の壁に掛けられている『自由席』と書かれたプレートを見る。
ただでさえ乗客が3人しかいないんだ。それなら優先席はさぞ寂しいことになっているのかもしれんな。しかし、
「自由席と優先席では料金もサービスも違うでしょう。残念ながら私は今、価値のあるようなものを持ち合わせていないもので……」
「いえ、その必要はございません。なにぶん過疎化している路線なもので、乗っていただけるだけで結構です」
 やんわりとだが誘いを断ろうと俺に、駅員はそう淡々と説明したうえで「迷惑でなければ」と続ける。
「今から優先席へと御案内いたします。まずは試乗という形で乗っていただいて、それから考えてみてはいかがでしょうか?」
「試乗。か……」
 正直。俺はこのまま外の景色を見ていたかった。が、優先席がどうなっているかも少し気になる。ある程度の予想はできるがそれでも百聞は一見に如かずと言うではないか。
「分かりました。ではお言葉に甘えて、試乗させてもらいます」
 そう自分に言い聞かせとりあえずという形で返事をすると駅員は「そうですか」と嬉しそうな声を発し、私に向けて何かを差し出してきた。
「では。こちらが優先席の乗車券でございます」

 それは1枚のカードだった。
切符どころか、乗車券という名前すら不適切なほどに豪華な紙片。駅員の言葉から察するにそれが優先席の乗車券ということらしい。
「これは……」
 俺は初めその見た目の美しさに絶句した。金色のチケット。カードとも呼べるその紙片は俺が今持っている、紙の切符が少し大きくなったような自由席の乗車券と比べるのもおこがましいと感じさせるほどに立派なものだったからだ。
だが、しばらくその乗車券を見ているうちに俺は当たり前の疑問を抱く。
「ん? 試乗するにもチケットがいるんですか?」
「えぇ、優先席ですので。利用者がほとんど居ないとはいえ、乗車券が必要です」
「とすると、わざわざ私のために……」
「はい。山田様はあらかじめ自由席と優先席。両方を予約させていただきました」
「…………」
「とはいえ、前述した通り料金は発生いたしません」

 淡々とした口調。奇妙な行い。
それを含めた駅員の態度に少々不安に駆られたが、俺はとりあえず席を立つことにした。

Page:1



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大7000文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。